Industry 4.0 と日本の取組み

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January 08, 17

スライド概要

インダストリー4.0やIoTが大変話題になっている。膨大な情報が出ているが、特に日本企業へのビジネスモデル面での影響を中心にまとめてみた。

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定年まで35年間あるIT企業に勤めていました。その後、大学教員を5年。定年になって、非常勤講師を少々と、ある標準化機関の顧問。そこも定年になって数年前にB-frontier研究所を立ち上げました。この名前で、IT関係の英語論文(経営学的視点のもの)をダウンロードし、その紹介と自分で考えた内容を取り交ぜて情報公開しています。幾つかの学会で学会発表なども。昔、ITバブル崩壊の直前、ダイヤモンド社からIT革命本「デジタル融合市場」を出版したこともあります。こんな経験が今に続く情報発信の原点です。

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関連スライド

各ページのテキスト
1.

インダストリー4.0と日本の取組み -ビジネスモデルにどのような影響を与えるか- B-frontier研究所 高橋 浩

2.

目次 Ⅰ.SMARTFACTORY Ⅱ.インダストリー4.0とミッテルシュタント Ⅲ.日本のGNT企業 Ⅳ.日本とドイツの比較 Ⅴ.IoT普及に伴なうビジネスモデルの変化 Ⅵ.日本の取組みの方向性と課題 2

3.

Ⅰ.SMARTFACTORY インダストリー4.0発表・浸透の経緯 2013年4月 HANNOVER MESSE 2013 インダストリー4.0提案 2014年4月 HANNOVER MESSE 2014 インダストリー4.0一色 企業名: FESTO KUKA BOSCH ABB IBG SAP ・・・ SmartFactory by Prof. Detlef Zuehlke 2015年4月 HANNOVER MESSE 2015 インダストリー4.0の先にあるもの 3

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製造業の生産に影響を与えるメガトレンド 増大する複雑性とダイナミックスが今日の製造業 生産における主要な挑戦 4 http://www.acatech.de/fileadmin/user_upload/Baumstruktur_nach_Website/Acatech/root/de/Aktuelles___Presse/Presseinfos___News/ab_2013/Detlef_Zuehlke.pdf

5.

明日の工場を創造する我々のビジョン 製造業、特に中規模製造業(ミッテルシュタント) は、市場の変更要求に対する適応能力と、生産地ド イツのイノベーションにより、ドイツ経済と安定雇用、 繁栄のバックボーンを成している。 急速に増大しているコスト・効率の圧力下で顧客固 有製品と納期短縮のメガトレンドが世界市場で大幅 強化された競争への対応を求めている。 機械工学分野におけるイノベーションのリードはドイ ツ競争力の要である。 この目的のため、現在の伝統的で階層的なオート メーション技術システムは交換が必要になってい パンフレット: SmartFactoryKL Pioneer of Industrie 4.0 より 5

6.

Smartfactory kl 極めて短い時間内でも、どのようにして生産ライ ンを設定・切り替えできるか? (時間) 新製品を最小限サイズでも、どのようにして機 械生産できるか? (サイズ) ドイツのような高賃金国であっても、どのように したら仕事を維持できるか? (賃金) それは非常に簡単:明日のスマートファクトリで http://www.smartfactory.de/ HPより 6

7.

明日のスマートファクトリ 明日のスマートファクトリは完全にモジュール化される。 標準化されたインターフェースと最新ICT使用によって、 「Plug & Produce」をモットーとした高柔軟性で自 動化された生産が可能になる。 明日のスマートファクトリは、製品個別化とコスト耐性 を強化し、より短い製品サイクルに対応する説得的 回答を提供する。 明日のスマートファクトリは、ドイツ製造業の最前線に、 新しく熟練した仕事と決定的競争優位性をもたらす。 7

8.

プラグ・アンド・プレイ方式の開発 MiniTec HARTING Rexroch FESTO PILZ PILZ:FA機器メーカー FESTO:オートメーション機器メーカー Rexroch:産業機器メーカー(ボッシュ・グループ) HARTING:産業用コネクター・メーカー MiniTec:産業機器メーカー RITTAL:エンクロージャー/温度管理システム・メーカー Getriebebau NORD:産業用駆動装置メーカー ・・・・・・・・ http://www.smartfactory.de/ HPより 8

9.

9 http://mcpl2010.uc.pt/MCPLFactoryOfThings_DZ.pdf

10.

W3C: World Wide Web Consortium (W3C)~アプリケーション開発のためのオープンWebプラットフォーム EMMA: W3C内のExtensible MultiModal Annotation markup language USDL: W3C内のUnified Service Description Language OMM: W3C内のObject Memory Modeling 10

11.

FoT:factory of things 11 http://mcpl2010.uc.pt/MCPLFactoryOfThings_DZ.pdf

12.

12 http://www.gtai.de/GTAI/Content/JP/Meta/Events/Reviews/JGIF%252014/jgif14-zuehlke-1.pdf

13.

Ⅱ.インダストリー4.0とミッテルシュタント “隠れたチャンピオン”は過去10年間でドイツの輸出増加に大きく貢献 “隠れたチャンピオン”は最近10年で10%成長(10年間で2.5倍) 輸出額の変化(2000-2011) 輸出額/名目GDPの変化 50 1800 45 1600 40 1400 1200 30 10億USドル パーセント 35 25 20 1000 800 600 15 10 400 5 200 0 0 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 ドイツ:輸出/GDP*100 日本:輸出/GDP*100 ドイツ 一人当たり輸出額(2011年)ドル 住民百万人当たり“隠れたチャ ンピオン”企業数 “隠れたチャンピオン”企業数 米国 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 ドイツ:輸出(10億USドル) 日本:輸出(10億USドル) 日本 フランス 18,863 4,859 6,258 8,784 16 1.2 1.7 1.1 1316 372 215 69 “隠れたチャンピオン”の定義 ①世界市場で業種上位3位 以内orその企業が位置して いる大陸でトップ ②売上高が50億ドル未満 ③一般にほとんど無名 by ハーマン・サイモン 13

14.

ドイツの“隠れたチャンピオン” B to C市場 製造業B to B市場 非製造業B to B市場 観賞魚用飼料 世界最大級のリ チウム生産企業 商用食器洗浄システム 製造業界向け資源 犬のリード シガレット製造機 ホビー 高圧水洗浄剤 製造業、非製造業 双方向け部材 電子機器用特殊接着剤 風力発電システム 製造業界向け部材 医学理科学教材 非製造業界向けシステム 教育 災害で被災した機 器、設備復旧サー ビス (ディザスターリカバ リー) ショッピングカート 空港手荷物カート 製薬業界向け包装システム サービス マイクロ電子機 器組立システム グミのお菓子 非製造業界向け製品 食品産業 製造業界向け各種システム

15.

ドイツの“隠れたチャンピオン”のプロフィール B to C市場 非製造業B to B市場 製造業B to B市場 ”隠れたチャンピオン”企業の平均売上高は約400億円、平均従業員数は2,000人位15

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B to C市場の例 犬のリード Flexi マンフレッド・ボグダーン社長 ①直接取引重視:世界中に直系子会社 ②顧客重視:各国の顧客対応要員強化 ③環境適応能力の高さ:ニーズ変化に対 応するR&D、特許取得強化 16

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非製造業B to B市場の例 最近の受賞例 2010TOP 100 Innovator Product Innovations Vienna University of Economics and Business / Germany 2010Best Product "Pub Equipment "UC SeriesEurogatsro Warsaw / Poland 2010Innovation PrizeUC SeriesEUROPAIN Paris / France 2010Caterer and Hotelkeeper, Equipment & Supplies Excellence AwardUC SeriesHotelympia London / UK 2009Silver MedalUC SeriesDanubius Gastro Bratislava / Slovakia 2009Great Gold Medal for Outstanding QualityUC SeriesNovi Sad Fair / Serbia 20091st Prize, Category: Hygiene ConceptsGS 500 Energy+Eurogastro Warsaw / Poland 2008Gastro-Innovations PrizeGS 500 Energy+Intergastra Stuttgart / Germany 2008Hotelympia Golden AwardGS 500 EnergyHotelympia, London 20071st prize FCSI AwardGS 500 EnergyFCSI conference, Prague 2007"Grand Prix de l'Innovation" catégorie Grand MatérielGS 500 EnergySirha Lyon 20071st prizeGS 200 coolEurogastro Warsaw 20061st prizeMT innovative TechnologyHoreca Prague 20062006Product of the Year 2006MT SeriesHO.RE.KA Czech Republic 2006"Apria" 1st prize in the environment categoryMT SeriesEquip'hôtel Paris, "Apria“ 2006Gastro-Innovations PrizeMT-Series Hygiene conceptIntergastra Stuttgart 20051st prizeGS 300 power requirementsEuropain Paris 2002Hotelympia Golden AwardGS 200 & GS 300Hotelympia, London UK 2002Golden Salima (Zlatou Salimu)GS 302 dishwasher Czech Republic ①直接取引重視:世界中のニーズに対応できる後継者育成 ②環境適応能力の高さ:ニーズ変化に対応できる新製品開 発、R&D、特許取得強化 The Winterhalter family 設立者: Karl Winterhalter, CEO: Jürgen Winterhalter CEOの息子: Ralph Winterhalter. ~ 17

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製造業B to B市場の例 DELO 世界トップレベルの工業用接着剤企業 Dr W.D.Herold(夫)は、元はDELOの役 員。DELOの工業用接着剤部門を取得し て独立。 その後、S.Herold(妻)が化学 工学の学位を取得して合流。 対象は飛行機、自動車、家電製品、ス マートカード、ガラス、ディスプレー他 ①直接取引重視:世界中に直系/連携子会社 ②顧客重視:各国の顧客への指導機能充実 ③環境適応能力の高さ:R&D比率の充実 従業員数:400人 年間売上額:8200万ドル R&D比率:売上の15% 18

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ドイツの“隠れたチャンピオン”の戦略 主戦略 市場を意識的に狭く定義⇒絞った市場をグローバル 化で拡大【“フォーカス&グローバル”戦略】 目標と成 成長指向の高い目標設定と積極経営⇒選択市場へ 果 の執拗な拘り【最近10年10%成長。10年間で2.5倍】 イノベー ション 技術と市場をバランス良く統合⇒大企業を上回るイノ ベーション実現【一人当たり特許保有大企業の5倍以 上。特許あたりコスト大企業の5分の1】 顧客との近さを技術以上に重視⇒顧客コンタクト従 組織構成 業員比率を拡大【従業員の25~50%顧客コンタクト 戦略 対応(大企業は平均して5~10%)】 従業員モ 独自職業訓練システムと有能な従業員⇒高い忠誠 ラル 心と低い離職率【離職率年2.7%(ドイツ平均7.3%)】 Hermann Simon, “Hidden Champions (1): what German companies can teach you about innovation” 19

20.

“隠れたチャンピオン”の強さの源 (1) No.1になりうる市場・製品領域を絞り込む • 営業やサービスの業務効率化の面で、圧倒的な No.1シェアと品質を目指す。 • 市場をどう定義すればNo.1シェアを目指すこと ができるかをよくよく考え実践する。 • 顧客へ提供すべき価値は何で、それを提供する ためには何が必要かを徹底的に考察する。 – No.1シェアを目指すことで、さまざまな相乗効果が生 まれる(全社員の一体感など)。 – 顧客群と商品群が絞り込まれることで、全社員が目 標を共有しやすくなる。 – 海外の事業現場と経営者の情報伝達経路が短くな り、意思決定のスピードやトップ営業の効率が増す。20

21.

(2) 外部リソースの活用 • コアとなる技術は自社開発を行う一方、他の 周辺技術は、積極的に社外技術活用 (3) ハードとサービスを組み合わせる • 製品(ハード)とサービスやソフトを一体化して 顧客の信頼を維持 • サービスの質の高さを強みにし、顧客ニーズ を製品開発に反映することで競争力を維持 21

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ドイツの“隠れたチャンピオン”の強み ビジネスサービス重視! ドイツの “隠れたチャンピオン” 経済性 重 要 性 定刻の配送 アドバイス 顧客との密接さ サービス 配送の柔軟性 システム統合性 価格 流通 ベンダーとの協力 特許 通常の 多国籍企業 生産ネットワーク ボリューム市場 新製品 製品品質 製品専門化 顧客「ニッチ」市場 商品サービス ドイツ製 広告 競争パフォーマンス ハーマン・サイモン,「グローバルビジネスの隠れたチャンピオン企業」より22

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Ⅲ.日本のGNT企業 中堅・中小企業のビジネス環境 • 日本のイノベーションシステムの特性は大企業 中心。しかし、変化のスピードに対応できていな い。 • ・・・・そうこうしている間に、大量生産形態の下請 け企業は国内では成り立たない経済環境に! • 中堅・中小企業は新たな変化への適応を余儀な くされている! – 国内外ニッチ市場に迅速に対応可能な企業へ – 主体的な企業経営者の力量発揮へ • 従来とは異なる変化対応の切り口を発見し、そこ から新たな実践を試みるべき時期に来ている! 23

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GNT企業として顕彰されている例 日本の企業 企業名 業種 本社 売上高 創業 キャステム 精密部品成形加工 福山市 45億円/200名 1970 インテリジェントセンサーテクノロジー 味覚センサー 厚木市 未公開/26名 2002 日本ミクロコーティング(Mipox) 磁気記録デバイス研磨 立川市 38億円/未公開 1925 東成エレクトロビーム 電子ビーム/レーザー加工 瑞穂町 未公開/80名 1977 野呂英作 多色混合毛糸 一宮市 未公開 1973 日本分析工業 分取液体クロマトグラフィー 瑞穂町 未公開 1965 電子制御国際 コイル試験機 羽村市 未公開/42名 1968 メトロール 旋盤用刃先位置決め センサー 立川市 未公開/118名 1976 東洋ボディー 中小型トラック据付荷台 武蔵村山市 未公開/97名 1952 シギヤ精機製作所 円筒研削盤 福山市 72億円/277名 1911 タカコ 精密油圧ポンプ 京都精華町 単独65億円 /1248名(海外含) 1973 新日本テック 超精密金型製造 大阪鶴見区 未公開/75名 1954 細谷祐二「グローバル・ニッチトップ企業論」白桃書房(2014)で調査した「優れ たNT型企業」40社中、インタビュー記事が充実している12社 24

25.

中堅企業組織ルーチンの抽出 運用効率性と有効性 企業名 開発成功時は 安価納入を前提 に開発費半額顧 客負担受注も 鋳造による精密 部品成形加工 ⑥資源利 用向け部 門移動 米国企業特許に抵触しない独自製 法開発。しかし、米国企業圧力で大 口顧客失う。そこで、小ロット顧客を 急激に開拓し、加工対象拡大 利用サードの別 会社を作成。そ のデータも踏まえ てリードユーザーイノ ベーションを誘発 インテリジェント センサーテクノ ロジー 味覚センサー 日本ミクロ コーティング 磁気記録デバイス研磨 電子ビーム/レー ザー加工 成長と資源配分の動力学 ①インセンティ ②マッチング ③部分統 ④オープンイ ⑤インセンティ ブによる効 を通した効 合とシステミッ ノベーション促 ブ構造改 率性 率性 ク適応 進策 変策 キャステム 東成エレクト ロビーム 戦略能力とイノベーション 米欧日民間航 空機用国際認 証プログラム Nadcapなど国際 資格逸早く取得 ニーズを持つメー カーと密接に関わ り逸早く製品開 発しトップ継続 中小企業同士 が対等の立場で もっと協力/連携 し合い集まれれ ば大きな力にな ると認識 世界最新加工 機1号機を導入。 その装置で完成 品メーカーの試作 品加工を請け負 うビジネスモデル 25

26.

運用効率性と有効性 戦略能力とイノベーション ①インセンティ ②マッチング ③部分統 ④オープンイ ⑤インセンティ ブによる効 を通した効 合とシステミッ ノベーション促 ブ構造改 率性 率性 ク適応 進策 変策 企業名 野呂英作 多色混合毛糸 代理店各国一 社。国内製造に 限定 実施義務無し試 験機(コイル試験) を不可欠検査に 電子制御 国際 コイル試験機 メトロール 旋盤用刃先位置決めセンサー 顧客要望に応じ た多品種生産を 垂直統合的に 新日本テッ ク 超精密金型製造 用途を絞った専 用機に特化 工作機械向に加 えB2Bインターネット 販売で世界へ トヨタとの共同開 発ノウハウを工作 機械分野他へ 伊藤園他大手ベ ンディングカーボディ を全量直接取引 工作機械中でも 円筒研削盤に特 化 円筒研削盤 精密油圧ポンプ 大手が手掛けな いニッチ市場目 指す 特許は存在せ ず模倣可能だが 市場小で旨味無 工作機械に標準 採用され世界トッ プシェアに 東洋ボ ディー 中小型トラック据付荷台 タカコ ⑥資源利 用向け部 門移動 手間コストが掛か り他企業が手を 出さない分野へ 日本分析 工業 分取液体クロマトグラフィー シギヤ精 機製作所 成長と資源配分の動力学 原理が公知で特許が取れないので 工法のノウハウと絶えざる工法改善で 対処 全てを投げ出して新型ポンフ開発゚に 没頭。現在、民生用で世界シェア75% 中小企業同士 の連携 大企業自身ニーズを提示できなくな り丸投げしてくるのに対応し、自立 26 的にソリューションを提案

28.

中堅企業変化の経緯 外部変化 大手メーカー・グローバル化 下請け 独立化 市場向け情報発信 客観性のあるベンチマーク (標準認定、標準化等) 中堅企業の 自主的変化 全企業 顧客ニーズ探 索能力向上 外部連携 産産連携 産学連携 大企業が果たしていた ハブ機能を一部代替 統合力を確保 多くの企業 コミュニティ主導企業など 自前技術を生かした初期 製品開発。高評価の延長 での後続製品開発時にユー ザー企業などと連携強化 有力中堅企業経営者の イニシアティブで多様な組織 形態のコミュニティ(企業連 合orプラットフォーム)が登場 資源配分を変えている例も あるがオンリーワン技術依存で 分野はかなり限定されている 地域中小企業群受注、 活性化の受け皿などに なっている

29.

Ⅳ.日本とドイツの比較 ドイツの“隠れたチャンピオン”との比較 焦点の絞り込み 外部連携 挑戦的 目標と リーダー シップ 競争優位 下請け からの脱 却 グローバル指向 日本の中堅企業 高度に有能な従業員 顧客への近さ 日本とドイツの相違は“新しいニーズ収集とソリューション提供の段階の相違”か? 1. 2. 3. トップクラスの顧客から「課題、難題」が潜在ニーズとして持ち込まれる。 世界トップ顧客の潜在ニーズを「嗅ぎ取り」、他のトップ企業で確認。挑戦目標を立てる。 トップクラス企業へのソリューション/新技術を提案。次世代製品に搭載し世界に訴求。世 界デファクトスタンダードに影響力を行使する(標準化への発信力)。 日本は1.レベルの段階か? 29

30.

ドイツ型経営の特徴 • 第一次世界大戦以降「経営共同体」の概念 が重視されている。 – 利害関係者によって提供される「諸力の共同体」 • 他国に比べ多様なステークホルダーの存在 を前提とする傾向が強い。 – 経営陣に労働者の席がある(しばしば50%)。 • 上場企業が少ない。 – ドイツ900社、日本3500社 – 人口100万人あたり9個(ドイツ)、22.6個(日本) – また、家族経営が多い。 30

32.

顧客特性の相違 「グローバルニッチトップ型中堅企業の成功に学ぶ」三菱総合研究所 32

33.

提供価値(商品)特性の相違 ドイツは、モノよりもソフトウェアを強みとしている企業が多い (機器にデータやノウハウを組み込んでいる)。 こうした企業は、ユーザーとのコミュニケーションを密にし、ノ ウハウを累積的に蓄積し、他社の追随を許さないポジション に至っている。 一方、日本は、材料技術・加工技術を強みにしている企業が 多い。 33 吉村哲哉、「グローバルニッチトップ企業の企業戦略の特性の類型化の試み」、研究・技術計画学会秋季大会,2014

34.

日本とドイツの大企業/中堅企業比較 ドイツ 自動車 大 企 業 中 堅 企 業 鉄鋼 化学 機械 カメラ ホビー 教育 製造業 フォルクスワーゲン BMW ティッセンクルップ BASF シーメンス ライカ Tetra, flexi,… 3B,… DELO,Uhlmann,KARCHER, GROHMANN,… Chemetall,… 資源 BELFOR,… サービス 各種システム ENERCON,Winterhalter, Wanzl,HAUNI,… 食品産業 HARIBO,… 日本 トヨタ ホンダ JFEスチール 三菱化学 日立製作所 ニコン 製造業である程度類似企業が存 在(ハイテック寄り、規模小) ? 住民百万人当たり“隠れ たチャンピオン”企業数 ドイツ 日本 16 1.7 34

35.

日本とドイツの類似点・相違点 ドイツ 類似点 大 企 業 相違点 類似点 中 堅 中 小 相違点 企 業 日本 多様な製造業分野をカバー 転職が少ない 多様な製造業分野をカバー 転職が少ない 業界主導企業が存在 国内/国際標準化容易 同一業態に多数企業乱立 国内標準化がまとまらない 外圧で国際標準に遅れて追随 中小企業の多い国 中小企業の多い国 中規模企業が多い 業態が多様 グローバル化が進展 最近の成長軌道の実績 国内各地域に万遍なく立地 輸出比率が高い 家族経営が多く後継者手当て 零細小規模企業が多い 製造業(下請け)が多い グローバル化が未進展 横ばい乃至縮小 3大工業地帯近辺での立地 輸出比率が低い 後継者に課題を抱えている 35

36.

Ⅴ.IoT普及に伴なうビジネスモデルの変化 IoTを活用したFoT(スマートファクトリ)化とは? • 製品開発・販売モデルから 常にモノがネット ワークにつながって いる世界 ⇒サービスパーツを提供し保守モデルへ ⇒更には利益に応じた成果ベース課金モデルへ 航空機エンジン:適切な飛行時間とエンジン出力 空調機器:快適な空調環境の提供 • IoT化による変化⇒業務を~ • • • • 事後対応型から事前対応型へ 現場対応型から遠隔対応型へ 不明瞭なデータ蓄積型からデータ活用型へ 過去実績型から未来予測型へ 36

37.

IT化 ⇒ 効率化 IoT化 ⇒ 価値創造 IT化(効率化)よりIoT化(価値創造)の方がポジティブ IoT化促進 ・ 共振化 デジタル化 促進 IoT普及はデジタル化を促進 デジタル化はIoT化を促進 37

38.

これまでの「情報化社会」 大半はアナログデータのまま データは散在 利用はローカルネットワーク内 デジタル⇔アナログ連係には 物理的制約 これからの「IoT社会」 全てがデジタルデータ 全データが集中的に管理 利用が実世界の社会規模で可能に 供給側ドリブンからユーザー側ドリ ブンへ IoTによる技術革新 物理要素:小型化・省電力化・低廉化 情報処理要素:クラウド大規模化/低廉 化・分散処理高度化・人工知能 接続機能:通信費用低廉化 38

39.

IoT化 & デジタル化 の増殖! 一目瞭然化 組織に蓄えられた記憶や組織自 体の“見える化”(一目瞭然化) 仕事をより抽象化 知性をよりプログラム化 価値創造と価値獲得の乖離 39

40.

価値創造と価値獲得の乖離 機能価値の 限界 機能のコモディティ化 モジュール化 摺合せ価値の減退 サービス化 へのシフト サービス化は機能価値低減の克服策として登場 (ポジティブな側面もあるが)ネガティブな側面も強い サービス化 ⇔ 価値獲得の手段強化と裏腹 40

41.

価値創造と価値獲得の関係⇒使用価値にシフト 使用価値 (利用量課金) 価値獲得 AHS: Autonomous Haulage System (無人ダンプトラッ ク運行システム ) どのような価値から お金を徴収するか? 機能価値 (製品価格徴収) 機能価値 (製品機能効果) 使用価値 (利用効果) 価値創造 顧客のためにどのような価値 を最大化するか? 41

42.

IoT化はチャンスと脅威を創出 これまでの「情報化社会」 「コンテンツ」を集める機構 SNSなど 「行動情報」を集める機構 パーソナライズなど 「モノの機能」を訴求する機構 宣伝/HPなど 消費者向け、企業向けにギャップ モノとモノに関わるコンテンツ、顧 客行動情報間にギャップ デジタル化領域局在化 これからの「IoT社会」 「コンテンツ」を集める機構 SNSなど 「行動情報」を集める機構 パーソナライズなど 「モノの情報」を集める機構 スマート化 消費者向け/企業向け一体化 コンテンツ、顧客行動情報、モノ の情報の一体化 遍くデジタル化した環境を活用可 42

43.

IoT化&デジタル化によるチャンスと脅威 チャンス 脅威 既存ビジネス領域縮小 使 用 価 値 新ビジネス領域拡大 使 用 価 値 使 用 価 値 価 値 獲 得 価 値 獲 得 機 能 価 値 機 能 価 値 機能価値 価値創造 使用価値 価 値 獲 得 機 能 価 値 機能価値 価値創造 使用価値 機能価値 価値創造 使用価値 43

44.

IoT アプリケーション領域とIoT活用手法 産業 領域 IoT能力 環境 製造業、物流、 農業・繁殖、リサ サービス産業、 イクル、環境管 銀行・金融、政 理サービス、 府当局、仲介業、 エネルギー管理、 など など 社会 市民/その他の 社会構造に向け た政府サービス、 電子インクルー ジョンなど 自 モニタリング、制御、最適化を 律 結びつけてかつては夢でしか 化 なかったような高レベル自律 性を実現 最 モニタリングデータを製品の 適 働きを制御する機能と組み合 化 わせて製品性能を最適化 制 製品機器やクラウド上の遠隔 御 コマンド/アルゴリズムによっ て制御 監 センサーと外部データを使っ 視 て製品状態、稼働状況、外部 環境をモニタリング 44 Sundmaeker論文 Vision and Challenges for Realizing the Internet of Things 293 2010, p.49などから

45.

事例1. KRONES(飲料充填装置の世界的メーカー)の事例 従業員1万2千人 遠隔監視/診断サービスでIoT導入 情報を顧客と共有しコミュニケーション を円滑化⇒顧客から他社製装置も含 めて一体管理をしたいとの希望 他社製装置提供企業の対応案は・・・ 接続インタフェースを開示してもらって 作り込む? しかし、もう一つの案は、対応を渋って いる間に顧客から見放され、KRONOS 社製の類似装置に置き換えの運命! 「信頼できる接続性と遠隔監視によ るサービス性」がビジネスの生命線 先行企業の標準による機器間連携 が始まる可能性 45

46.

事例2. ケーザー・コンプレッサー(空気圧縮機メーカー)の事例 安価で使い易くあらゆる製造現場で利用され る空気圧縮機メーカー 従来は圧縮空気の品質、コンプレッサーの省 エネ性能、稼働率などで競争 ケーザー社はそのような中、顧客に代わってコ ンプレッサー運用を実施 供給空気容量に応じて課金する新ビジネスを開 始 ⇒コンプレッサー販売から圧縮空気販売に ビジネスモデルを転換 圧縮空気は固定費から変動費に替わ り初期費用不要に 大口圧縮空気ユーザー だけでなく、小口 ユーザーの開拓に成功 46

47.

Ⅵ.日本の取組みの方向性と課題 業界の競争はどのように変わっていくか • 全ての産業でデータを核としたビジネスモデ ル革新が生じる。 • 産業の垣根を越えた大変革が不可避! • 企業・産業の壁を越えた他社との連携が必要 になる。 • ユーザーニーズを踏まえた迅速かつ柔軟な 価値創造への転換が必要になる。 • “試行錯誤の中から新たなビジネスモデルが 生まれる”との認識での挑戦が必要になる。 47

48.

新たに醸成されるIoT社会 技術面に関わる傾向 組織面に関わる傾向 • モジュール化が拡大 • プラットフォーム構築競争 が激化 • プラグ&プレイ的技術が登 場 • ビジネスモデル構築競争が 激化 • 可視化領域が拡大 • シミュレーション適応領域が • バーチャル空間での操作 が拡大 拡大 • 最適化領域が拡大 • 複雑化する社会 • 新たなBPR的活動が再来 • 産業の区分けが曖昧化 48

49.

競争力の源泉や力を入れるべき方針/ 戦略はどのように変わっていくか • データを活かした事業展開のためにはプレイ ヤー間の戦略的連携が鍵になる。 ⇒『適切な連携パートナー探索と連携の模索』 • データをいち早く押さえてビジネス化した者が勝 ちの世界へ突入する。 ⇒スピードが生命。これを実現するための『コー ポレートガバナンスの見直しや組織構造改革の 推進』 49

50.

勃興する巨人との競争をいかに勝ち抜くか • “隠れたチャンピオン”の3大特性は….. ①直接取引重視 ②顧客重視 ③環境適応能力の高さ ・・英米流戦略論とは異なる驚異的効果を上げている。 • 日本のGNT/中堅企業は潜在的能力はあるが、 従来克服できなかった文化的壁も立ちはだかる。 • 文化的特性を意識しつつ、海外進出への圧倒的 貪欲さを身に付け、“隠れたチャンピオン”キャッ チアップ戦略が有効と思われる。 50

51.

ドイツからの示唆 “フォーカス&グローバル”戦略による幅広 い最終顧客ニーズ獲得は・・・ ⇒価値創造と価値獲得パラダイム・シフトに有利 ⇒製造拠点の国内維持、高賃金確保に有利 コア技術は徹底して自社開発を行う一方、 他周辺技術は、積極的に社外技術活用の オープン志向は・・・ ⇒多様な知恵を結集させるプラットフォーム形成に 有利 ⇒顧客ニーズに柔軟&スピーディーに対応する経 営戦略に有利 51

52.

日本の取組みの方向性 中小企業のIT/IoT活用による底上げ ケイレツを超えた大企業と中小企業の オープンな連携 グローバル・ニッチ需要に即応可能な組 織体制の整備 顧客需要に柔軟に対応できるフレキシ ブル構造の実現 価値創造の使用価値提供への抜本的 シフト 52

53.

日本の課題 経営トップの理解促進 ICT/IoT戦略投資の活性化 グローバル・ニッチのニーズ・キャッチ アップへの貪欲な挑戦 新しい価値創造力の強化 企業組織従業員が新環境に積極参 加可能なインセンティブ等の整備 53

54.

参考文献 • • • • • • • • • • 細谷裕二,「グローバル・ニッチトップ企業」,白桃書房,2014. 細谷裕二, 「グローバル・ニッチトップ企業に代表される優れたものづくり中小・中堅 企業の研究-日本のものづくりニッチトップ企業に関するアンケート調査結果を中心に」, RIETI Discussion Paper Series 13-J-007, 2013. 稲垣京輔,「中小製造業経営者にみる協働組織の形成と協働関係を構築する能力に関す る研究」, RIETI Discussion Paper Series 13-J-021, 2013. 吉村哲哉、「グローバルニッチトップ企業の企業戦略の特性の類型化の試み」、研 究・技術計画学会秋季大会,2014 ハーマン・サイモン,「Hidden Champions of the 21st Century(グローバルビジネスの隠れ たチャンピオン企業)」,中央経済社,2012. Hermann Simon, “Hidden Champions (1): what German companies can teach you about innovation”,http://www.whiteboardmag.com/hidden-champions-1-what-german-companiescan-teach-you-about-innovation/ Hermann Simon, “ Hidden Champions (2): why do these hidden, global, innovative, extremely profitable companies thrive?”, http://www.whiteboardmag.com/hidden-champions-2-why-dothese-hidden-global-innovative-extremely-profitable-companies-thrive/ Sundmaeker, “Vision and Challenges for Realizing the Internet of Things “, 2010 Detlef Zuehlke, “SmartFactory—Towards a factory-of-things”, Annual Reviews in Control 34 (2010) 129–138 http://www.acatech.de/fileadmin/user_upload/Baumstruktur_nach_Website/Acatech/root/de/ Aktuelles___Presse/Presseinfos___News/ab_2013/Detlef_Zuehlke.pdf 54