価値創造と価値獲得

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March 14, 23

スライド概要

デジタル化の進展で製品、サービスの提供形態も変わった。製品販売から成果ベースサービス販売への移行がB2B業界でも進んでいる。しかし、これはプロバイダー側が成果に対する責任を負う新たな形態であり、価値創造と価値獲得のバランスがとりわけ難しい。その結果、既存企業も新たな形態への移行に難渋しているとともに、新たな形態への移行に関する知見が必ずしも明確でなく、情報共有も進んでいない。しかし、DX化の推進により、この方向性は今後拡大して行く。そこで、これについての知見をまとめて参考に供することにする。

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定年まで35年間あるIT企業に勤めていました。その後、大学教員を5年。定年になって、非常勤講師を少々と、ある標準化機関の顧問。そこも定年になって数年前にB-frontier研究所を立ち上げました。この名前で、IT関係の英語論文(経営学的視点のもの)をダウンロードし、その紹介と自分で考えた内容を取り交ぜて情報公開しています。幾つかの学会で学会発表なども。昔、ITバブル崩壊の直前、ダイヤモンド社からIT革命本「デジタル融合市場」を出版したこともあります。こんな経験が今に続く情報発信の原点です。

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各ページのテキスト
1.

価値創造と価値獲得 デジタル化の困難性 Ⅱ B-frontier研究所 高橋 浩 ー デジタル化は何が難しいのか?(第2弾) ー

2.

自己紹介 - B-frontier研究所代表 高橋浩 • 略歴: • 元富士通 • 元宮城大学教授 • 元北陸先端科学技術大学院大学 非常勤講師 • 資格:博士(学術)(経営工学) • 趣味/関心: • 温泉巡り • 英語論文の翻訳 • それらに考察を加えて情報公開 • 主旨:“ビジネス(B)の未開拓地を研究する” 著書: 「デジタル融合市場」 ダイヤモンド社(2000),等 • SNS: hiroshi.takahashi.9693(facebook) @httakaha(Twitter)

3.

目的 • デジタル技術の普及によって、製品、サービス、ビジネス モデルなど、多様なビジネス活動の本質が根本的に変わっ た。 • 代表的な変化は、製品販売から成果ベースサービス販売へ の移行の広がりである。 • 背景には、IoTやクラウドなどで製品販売以降でも製品の動 作状況の常時監視が容易になったことがある。 • このような変化はDX化推進によってB2Bビジネス世界でも 幅広く進行している。 • しかし、この変化に適切に対応する手法の開発やそれらに ついての情報共有は上手く進んでいない。 • そこでその理由と今後の対応を明確化する。 3

4.

目次 1. はじめに 2. オープンイノベーションにおける価値創造 と価値獲得 3. 価値創造と価値獲得プロセスの調整 4. 事例分析 5. これからのプロバイダーと顧客の関係 4

5.

1.はじめに はじめに • デジタル時代の到来で、現在、産業企業は製品販売から成 果ベースサービス販売に移行するビジネスモデル革新を進 めている。 先行事例 ジェットエンジ ン:GE、ロールスロイス 建設機械: キャタピラー、コマツ 農業機械: ジョンディア、クボタ 産業機械: ABB、ファナック • しかし、なかなか成功事例が増えない。 5

6.

成果ベースサービス販売の困難性 • なかなか成功例が増えない背景に従来の製品販売やサービ ス販売とは根本的に異なる側面がある。 • 成果に対して責任を負うことは、基本的に利益確保のリス クがより高くなり、ビジネスも不安定になる側面がある。 • 多くのリスク(例:機器のダウンタイム、高いメインテナンスコ ストなど)がプロバイダー側に移るため • そこで、成功には価値創造と価値獲得の適切な調整が必要 だが、これがなかなか難しいようだ。 • この状況への適応には、自社と顧客双方のビジネスモデル 変革が必要になる。 6

7.

成果ベースサービス販売への移行 • プロバイダー(主にメーカー)は製品およびサービスのパ フォーマンス結果に責任を負う。 • 例:エンジンの性能、機能などについて • 欠点/障害に対するペナルティも受け入れる。 • 例:エンジンの故障などについて • また、顧客の日和見的行動への対応も発生する。 • このことは、プロバイダー、顧客双方が価値創造(例:ラ イフサイクルコストの削減)と価値獲得(例:価値の分 配)を注意深く再定義する状況をもたらす。 7

8.

プロバイダーと顧客の新たな相互作用 • このような状況に対し、プロバイダーと顧客が連携して 新たな価値創造を行うために、ビジネスモデルの「オー プン化」がしばしば起きる。 • それでも価値創造・価値獲得の再定義を推進しようとす ると、従来の企業間関係に対立と困難が生じるリスクが ある。 • 例: • 以前、スペアパーツで収益を上げていた企業は存続不可にな り退出か、あるいはプロバイダーへの依存を受け入れなけれ ばならない。 • 顧客もプロバイダーへの高い依存を受け入れる代わりに、顧 客の課題、ニーズのプロバイダーへの要求が一層厳しくなる ことが起こり得る。 8

9.

持続可能性の探索 • そこで、どのような状態がプロバイダー、顧客にとって長 期的に安定なのかが問われる。 • それには、価値創造と価値獲得のバランス確保が一定程度 「見える化」可能なフレームワーク構築が望ましい。 • そして、それに基づいて、オープンイノベーションベース の価値創造と価値獲得を持続的に推進することが求められ る。 9

10.

2.オープンイノベーションにおける価値創造と価値獲得 オープンイノベーションにおける価値創造と価値獲得 • 価値創造には多くの関係者の知識を活用するための「オー プン性」が必要とされる。 • 一方、価値獲得にはより厳格な保護的プロセスが必要にな ることが多い。 =⇒「オープン性のパラドックス」 • 従って、場合によっては、オープンイノベーションからク ローズイノベーションへの復帰もありうる。 10

11.

使用価値と交換価値(概念導入) • 使用価値:価値をリソース(人的資源など)を消費するプ ロセス(オープンイノベーションプロジェクトへの貢献な ど)の結果と見做す。これが新製品や新サービス。 • ・・「イノベーション」は暗黙的にこちらに焦点を置く。 • 交換価値:価値は(交換された)リソースにカプセル化さ れていると見做す。リソースには犠牲(例:購入コスト) と推定利益(リソースのその後の利用に関連)がある。 • ・・「オープンイノベーション」は暗黙的にこちらを想定する。 11

12.

価値創造・価値獲得 vs 使用価値・交換価値による・・ 4つの価値プロセスの導入 Ⅱ Ⅰ 価値実現 価値創造 価値獲得 価値提供 (Value Realization) (Value Provision) 価値参加 価値交渉 (Value Partaking) (Value Negotiation) Ⅲ Ⅳ 使用価値 交換価値 12

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4つの価値プロセスの解説 Ⅰ• 象限:価値実現 • 価値創造者(プロセスを実行するアクター)がリソースに 埋め込まれた潜在的価値を実現する。 Ⅱ• 象限:価値提供 • 後の潜在的な使用を想定してリソースを評価(実行)する 交換パートナーにリソースを提供する。 Ⅲ• 象限:価値交渉 • リソースへのアクセスやリソース所有権について交渉し適 切な利益を確保する。 Ⅳ• 象限:価値参加 • 他アクター(価値受領者)が元はあるプロバイダー(ある いは顧客)のリソースを使用して価値創造に参加する。 13

14.

注意点 • Ⅱ象限で交換されるリソースにはまだ特定の用途ある いは特定のビジネスモデルがリンクされていない可能 性がある。 • Ⅳ象限は他の誰か(一般には顧客側)が収益化の目的 で彼等の価値実現のために受信したリソースを活用す ることを意味する。 14

15.

オープンイノベーション能力 • (新しい環境に適応しようとする)焦点企業は4つの価値 プロセス全てを習得する必要がある。 • • • • 焦点企業は他の人(顧客)にリソースを提供する必要があり、 適切なリターンを(顧客と)交渉する必要があり、 パートナー(顧客)による後の価値創造にも参加する必要がある。 そして、自社利益とパートナー利益のバランスをとる必要がある。 • このような能力はダイナミックケーパビリティ*1と言える。 *1:「急速に変化する環境に対処するために内部および外部の能力を 統合、構築および再構築する企業の能力」(Teece et al. 1997) 15

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4つの価値プロセスの補足事項 • リソース交換を最適化するため多くの企業はプラット フォームを構築する。 • このコミュニティに参加するアクターは価値評価の現実的 な機会(即ち、後の使用価値で利益を得られる)を発見し た時に真に動機付けられる。 • その間、4つの価値プロセスは全体として公平性と信頼性 が維持されていなければならない。 • しかし、その一方、価値交渉では選択的開示が起こり得る。 • これが「オープン性のパラドックス」と関係する。 • 知識から利益を引き出すためには知識を保護する必要がある場合が多いから 16

17.

3.価値創造と価値獲得プロセスの調整 プロバイダーと顧客の調整 • 産業企業(プロバイダー)は一般にビジネスモデル革新の必 要性は強く認識している。 • しかし、プロバイダーと顧客が共同で価値創造し、公平に価 値分配するのは以下のような理由から不明確であった。 • プロバイダーの内部問題が重要なのか外部問題が重要なのか? • 既存の「リソースの慣性」などの、変革を妨げる特性の克服法は? • 価値設定の仕方(「顧客の目標達成」の促進をどの程度優先すべき か、など)の曖昧性 • プロバイダー、顧客の一方に偏らない関係性(あるいは対 話)の仕組み確立が必要である。 17

18.

調整条件の設定 • 【基本認識】プロバイダーの専門知識と顧客の運用知識は 時間の経過とともにその顧客により高い使用価値を提供す る(ハズ)。 • そこで、顧客の使用価値に焦点を合わせプロバイダーも顧 客との整合性(調整)を高める。 • これが結果的に競争上の長期的優位性に繋がる。 • 広義の価値創造とは、プロバイダーと顧客がこのような高 い価値創造を徐々に実現できるように(4つの価値プロセ スを通じて)一連の活動を行うこと 18

19.

このために必要なこと • 価値創造がその価値を実現するためのコストよりも大きく、 価値余剰が(プロバイダー、顧客をも含めた)パートナー 間で公平に分配されるような適切なガバナンスメカニズム が設計され実行されること • そして、価値創造と価値獲得のプロセスだけでなく、それ らが相互に適合し、整合していることを保証すること 19

20.

実際にどのように進めるか? • 但し、実際に整合性(調整案)を作成および維持する方法 は実践にまかされているのが実情である。 • 従って、整合性維持には、 • 整合性の状況の特定 • 整合性からの逸脱あるいは潜在的な再調整などの監視 が必要になってくる。 20

21.

4.事例分析 事例分析の方法 • これらの課題に対しケーススタディ分析によって取組む。 • 「4つの価値プロセス」モデルに準拠しつつも、収集デー タ等を元に、プロバイダー、顧客が共有しやすい価値創造、 価値獲得の全体構造モデルを作成する。 • このモデルに基づきプロバイダーと顧客双方から収集した データを分析する。 ⇒次頁以降に枠組みと結果を示す。 21

22.

ケース選択 • スウェーデンのグローバル企業(プロバイダー)とB2B ベースの顧客の6対を採用する。 R5 R6 ソリューション 機械装 企業 置企業 機器企 業 通信企 業 鉱物処 理装置 制御システ 森林伐 ムと機械 採機 設備 鉱物処 理装置 ネットワーク 機器とソ フトウェア 鉱山企 業 鉄鋼企 業 鉱山企 業 製紙企 業 鉱山企 業 テレコム企 業 主な製 金属材 品/サービ 料や治 ス 具 鉄ペ レット 金属材 料や治 具 紙パル プ製品 金属材 料や治 具 ネットワークア クセスとテレ コム 企業の タイプ R1 R2 機器企 業 機器企 業 プロバイ ダー側 主な製 鉱物処 (P) 品/サービ 理装置 ス 企業の タイプ 顧客側 (C) R3 R4 22

23.

収集データに基づく全体構造モデル 想定されるアクティビティ ・価値向上の機会を探る ・価値提供概念を作成する 価値創造の機会を 特定する ・win-winの機会を優先する ・潜在的利益を評価する 価値分配につい て合意する ・価値構造をカスタマイズする ・納品(配信)プロセスを設計する 価値提供を設 計する ・納品(配信)リスクを評価する ・性能評価指標を設計する 利益計算式を決 定する ・運用能力を開発する ・改善の機会を探る 価値創造プロセスを 洗練する ・インセンティブを再調整する ・公正な価値分配を確保する インセンティブ構造 を規制する フェーズ1: 価値提案の定義 フェーズ2: 価値提供の設計 フェーズ3: 使用価値の配信 23

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4つの価値プロセスとの関係 ほぼ次のような対応関係になる。 24

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データ分析の仕方 • 各フェーズに該当するインタビュー結果を価値創造、価値 獲得に分類し、成功例と失敗例を評価する。 • 失敗例: • 潜在的な価値をパートナーに伝えきれない。 • 価値をパートナー間で共有する方法を定義できない。 • 技術の変化に連れて価値獲得メカニズムを調整して公平な利 益を共有することができない。 • などなど 25

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フェーズ1:価値提案の定義 価値創造 • 価値創造の増加を明確にするため、その機会を探索する共 同作業を実施する。 • プロバイダーに顧客の運用に対する大きな責任を負わせる ことで、新しい機会を特定し発見させることがポイントに 成りやすい。 「私たちは自分のマシンの能力を知っており、生産データに基づい て、フィルターソリューションが40%の出力で機能していることが わかりました。・・私たちはお客様とビジネスチャンスを探求し、パ フォーマンスベースの契約での成果の保証をお客様に提供しまし た。」 R1:機器企業(P) 26

27.

フェーズ1:価値提案の定義(続) 価値獲得 • 価値獲得のメリットを共有する方法について議論する。 • Win-winの機会など • アイディア出しを優先させ、最も実現可能で潜在的に収益 性が高いものを選択する。 「アウトソーシングを通じて、パートナーの強みを活かすことがで きると認識しました。・・プロバイダーの深いドメイン知識、規模 の経済、才能を引き付ける能力で私たちのビジネスに利益をも たらすことができる分野です。最適化を組み合わせて、収益性 の高い形で拡大することです。」 R6:テレコム企業(C) 27

28.

フェーズ2:価値提供の設計 価値創造 • 価値の創造方法、性能の測定方法など、より詳細な議論を する。 • 製品、サービス、デジタル要素(センサー、運用分析、な ど)の最適構成を共同で選択し、顧客向けにカスタマイズ する。 「成果契約の構築に関する中心的な問題は、識別、評価、およ び選択する必要のあるさまざまなオプションです。カスタマイズの 余地は高いですが、すべての選択肢には特定の利点とトレード オフがあります。」 R5:機器企業(P) 28

29.

フェーズ2:価値提供の設計(続) 価値獲得 • 定義された運用条件の元で様々なシナリオでコストと収益 がどのように流れるかについて合意形成する。 • ガバナンス構造の定義に該当する。 • この延長で利益計算式を決定する。 「サプライヤーにプロセスの一部を引き継ぐように依頼した場合 のリスクは何ですか?それらが失敗した場合はどうなりますか? これはどのように管理できますか?・・より長い期間で共創を成 功させるためには、これらの問題を解決することが重要だと思い ます。」 R2:鉄鋼企業(C) 29

30.

フェーズ3:使用価値の配信 価値創造 • 価値創造プロセスの改善に向けた取組みを実装目的だけで なく、時間経過とともに価値創造範囲の拡大や改善に向け ても行う。 • 広範なトレーニングプログラムの実行なども 「プロバイダーには比較するデータがありません。一方、私たちは 生産データについての知識が豊富なので、重要な問題を知って います。それは機械ではなく、製造業者に理解してもらいたいオ ペレーター情報です。・・機械を販売するだけでなく、オペレー ターに機械を最大限に活用してもらいます。」 R4:製紙企業(C) 30

31.

フェーズ3:使用価値の配信(続) 価値獲得 • 双方の当事者が市場の変化で不利にならないように、あ るいは長期的に公平な関係を維持できるように、インセ ンティブを継続的に再調整する。 • 契約策定時に全ての不測事態を予測することは困難なの で 「契約には、一定の能力を提供することに基づく支払いが伴 います。これは、報酬またはペナルティが合意されたKPIの 達成と密接に関連します。この種のリスクと収益分配の合 意は、・・時間の経過とともに、パートナーが契約のためだけ でなく、より緊密な関係を構築するのにうまく行動します。」 R6:通信企業(P) 31

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全体構造モデルによるまとめ 1. 各フェーズのプロセスは価値創造、価値獲得活動の反復 サイクルによって成功裏に次の段階に進む。 2. しかし、反復が不充分なために調整を実行できない場合 にはそのフェーズは失敗する。 3. その意味で、プロバイダーと顧客間では価値創造と価値 獲得の両方が繰り返されるアジャイル手法の方法で進め られる側面がある。 ⇒この状況を次頁に示す。 32

33.

全体構造モデルによるまとめの図 失敗 失敗 失敗 成功 成功 成功 フェーズ3: 使用価値の配信 フェーズ2: 価値提供の設計 フェーズ1: 価値提案の定義 33

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5.これからのプロバイダーと顧客の関係性 各フェーズで実施すべき要点 • 第1フェーズ:価値提案の定義 • 成果ベース・サービスの提供は価値提案の定義から出発する。 • プロバイダー、顧客共同で定義した目標を達成するために早 い段階から両者間の「スウィートスポット」特定の様々な努 力を行う。 • そして、主要ステークホルダーの潜在的利益とコミットメン トが保証され、様々なボトルネックが解消された場合にのみ 次のステップに進む。 34

35.

各ステップで実施すべき要点(続) • 第2フェーズ:価値提供の設計 • 目標は新しい成果ベース・サービスの概念を契約に変換する ことである。 • これには初期の高いレベル(抽象的)の概念を顧客要件を直 接満たすカスタマイズされた価値に変換する必要がある。 • そして、交渉の入力として収益とコストを割り当てる利益計 算式まで落とし込む。 • 実現可能な価値提供を設計し、共同の価値獲得の計算式を決 定できた場合にのみ次のステップに進む。 35

36.

各ステップで実施すべき要点(続) • 第3フェーズ:使用価値の配信 ✓成果のパフォーマンスを継続的に達成、維持、改善してゆく ためには、当事者が共同事業に強くコミットすることが必要 である。 ✓当該フェーズの期間中、市場環境、機器動作環境は変動しう る。そこで、定期的に主要評価指標を評価し、改善点を探す 努力を地道に進めてゆく。 ✓また、環境に合わせてインセンティブ構造を長期に渡って規 制して行く。 36

37.

これらの活動から見られる・・・ プロバイダーと顧客の関係性変革 • デジタル化の進展で、プロバイダーと顧客は次のような関 係性見直しでサービス中心モデルを洗練させられる。 • 4つの変革内容 ① ② ③ ④ 補完的機能の拡充 関係性固有の資産の拡充 知識共有ルーチンの拡充 プロバイダー、顧客間パートナーシップのガバナンスの推 進 37

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①:補完的機能の拡充 • プロバイダー、顧客双方はそれぞれのパートナーの知識、 機能を所有することの重要性認識を深めている。 • プロバイダーは顧客の運用知識、ビジネス知識、顧客はプロバイ ダーの専門知識、提供製品に関するデータ分析力、など • このような能力はパートナーがそれぞれのパートナーとの 機能の組合せ可能性を評価・拡大するのに有用である。 • この延長で新たな関係性を通じて価値創造・価値獲得の拡大が可 能になる。 38

39.

②:関係性固有の資産拡充 • プロバイダーは顧客サービス運用のために共同で基盤シス テムへの投資を行う可能性がある。 • データの収集および共有の容易化のため • 更にサービスが進化するに連れプラットフォーム開発になる場合 もある。 • 関係性が成熟しビジネスチャンスが増えるに連れて運用プ ロセスの追跡で共同チームによるデータ分析なども必要に なる。 • これらへの対処のため、双方とも人的資産への投資が必要である。 39

40.

③知識共有ルーチンの拡充 • 知識共有プロセス整備のためのハードウェア(センサーな ど)と分析ソフト拡充および知識共有の透明性の向上を計 る必要がある。 • サービスが一層進むと透明性、データ分析の向上に加えて、イン センティブ調整が必要になることがある。 • 更に、データと知識の活用のためのより良い方法を発見す るための工夫も必要になる。 • 例:マルチレベルの共同チームの設立 40

41.

④プロバイダー、顧客間パートナーシップの ガバナンスの推進 • コラボレーションを成功させるための効果的かつ効率的な ガバナンスが必要である。 • 制御と柔軟性のバランス確保のため • 関係性が発展するに連れて非公式のガバナンスメカニズムがより 重要視されるようになる。 • 信頼性がより重要になる。 • それに伴い、パートナー間の交渉がより容易になり、複雑な問題 でもより柔軟に話し合えるようになる。 41

42.

プロバイダーと顧客の関係性変革:まとめ ① 補完的機能は相互に有益な関係を築くための基盤になる。 ② 関係性固有のシステムおよび人的資産への投資は関係性 維持にとってキーポイントである。 ③ 相互信頼が強くお互いへの忠誠心とコミットメントを確 認できるようになれば、継続的改善と革新に向けた投資 を長期的目標に向けて推進できる。 ④ デジタル化でビジネス環境の変化は加速しているので、 信頼に基づく非公式なガバナンスは柔軟な対応を促進さ せる。 42

43.

結論:価値創造と価値獲得 1. 最初から価値創造と価値獲得を同時に検討する。また、 価値分配(例:Win-win構造など)を最初から考慮するこ とが成功の重要な要件になる。 2. 価値創造と価値獲得を一致させる。このため各フェーズ 毎に様々な要素を調整する。これが不充分なまま契約す ると失敗する。確実にステップを踏んで各条件をクリア できるまで反復実行する必要がある。 3. 環境の継続的変化に対応できるように再調整する。そう しないとすぐ不採算になる。強力なプロバイダー、顧客 の関係性、信頼およびリスクと報酬の真の共有モデルの 維持が重要である。 43

44.

文献 • 2節は主に、Henry Chesbrough et al., Value Creation and Value Capture in Open Innovation, Journal of Product Innovation Management 35 (6), 930-938, 2018. を参考に加筆、 修正した。 • 3,4節は主に、David Sjödin et al., Value Creation and Value Capture Alignment in Business Model Innovation: A Process View on Outcome-Based Business Models, Journal of Product Innovation Management 37(2), 158–183, 2020. を参考に加筆、 修正した。 44