自動運転車とMaaS

118 Views

March 13, 21

スライド概要

“自動運転車:Connected Autonomous Vehicles(CAV)”のことは世間で盛んに話題にされている。関連して、トヨタのWoven Cityなども話題になっている。但し、自動運転車というのは、本当のところ、1) どういう経緯で普及していくのだろうか?とか、2) そのプロセスでの課題にはどんなことがあるのだろうか?などは、誰でも興味を持つテーマでありそうだが、案外明確にされていないのではないだろうか。そんな問題意識から、関係しそうな資料を探し出し、雑駁な資料を作成してみた。

profile-image

定年まで35年間あるIT企業に勤めていました。その後、大学教員を5年。定年になって、非常勤講師を少々と、ある標準化機関の顧問。そこも定年になって数年前にB-frontier研究所を立ち上げました。この名前で、IT関係の英語論文(経営学的視点のもの)をダウンロードし、その紹介と自分で考えた内容を取り交ぜて情報公開しています。幾つかの学会で学会発表なども。昔、ITバブル崩壊の直前、ダイヤモンド社からIT革命本「デジタル融合市場」を出版したこともあります。こんな経験が今に続く情報発信の原点です。

シェア

埋め込む »CMSなどでJSが使えない場合

関連スライド

各ページのテキスト
1.

自動運転車とMaaS - AIセントリック・スマートシティの構築に向けて - B-frontier研究所 高橋 浩

2.

問題意識 • AIで再定義できる重要な領域の一つがモビリティ • 新しいAIベース・モビリティはユーザー、市場、社会 を理解し満足させるユーザー中心の技術が基盤 AIセントリック・スマートシティ(スマートモビリティ内包) • “自動運転車”も“MaaS”もこのような総合的ビジョ ンの元で初めて真の能力を発揮しうるか? – 現状は、自動運転車情報は技術情報過多か – MaaS情報はビジネスモデルが曖昧過ぎか – 単独で考えるのには限界があるのではないか? • このような問題意識から、少し将来のことにはなる が、主として(技術情報ベースでなく)社会技術的視 点から今後を考えてみる。 2

3.

目次 1. はじめに 2. 自動運転車(CAV)の側面 3. MaaSの側面 4. スマートモビリティ像 5. これからの自動運転車とMaaS 3

4.

1. はじめに はじめに • 自動運転車(CAV)もMaaSもまだまだ未熟 • スマートシティも未熟ではあるが、種々の要 素を統合して取組む姿勢が顕在化 • スマートシティは持続可能な世界を考える上 で新たな要素に挑戦する恰好な場 • 活発化しているスマートシティプロジェクトの 中で自動運転車とMaaSも統合して考える。 – 焦点領域をスマートモビリティと捉える。 – 統合手段の一環として高度なAI機能を想定する。

5.

用語 • CAV:Connected Autonomous Vehicle – 周囲を理解し、人の入力なしに責任を持って移動、ナビゲート、 動作ができる車両 – 同時に、接続機能を備えているため、積極的、協調的、および 十分な情報に基づいて調整することができる車両 • MaaS:Mobility as a Service – 統合された旅行計画、予約、チケット、リアルタイム情報サービ スをオールインワンデジタルプラットフォームを通じて提供 – 自家用車に代替できるパーソナライズされたモビリティのマルチ モーダルサービスをサブスクリプションまたは「従量制」で提供 • Smart City: – 自律性、接続、共有、デジタル、クラウドベースの技術を戦略的 意思決定と運用に取り入れて統合 – 持続可能で、創造的で、情報に基づき、費用対効果の高いおよ び人々に焦点を当てた、総合的能力に重点を置いた都市環境

6.

CAVの特性と狙い • • • • • • ドライバーの負担軽減に加えて、 エコドライブと省エネの重視 強化された安全性とセキュリティ より良い道路スペースの割り当て 適切な交通渋滞の管理 など

7.

MaaSの特性と狙い • 包括的な旅行計画 – 予約、発券、各消費者のニーズに合わせたカスタ マイズ、調整されたリアルタイムの情報サービス、 など • 公共交通機関を補完し、カーシェア、ライド シェアサービスなどにおけるCAVの使用も組 み込みを視野に

8.

CAVの評価は? • CAVは従来の自動車の後継車たり得るかもし れないが、 • その一方、車の制御と責任を人間から巨大な AIシステムおよびワイヤレス接続機能を備え た自律的マシンに移行するという大変革が伴 う。 • これらの大変革の妥当性の評価と判断がどの ように行われるかは現在不明(特に消費者の 反応)

9.

スマートシティとの関係性 • スマートシティは自動車の所有権の削減など を通じて持続可能な成長を積極的に推進す る場 • 自動車業界は個人所有より共有所有への車 のビジネスモデル変革が必要になる。 • スマートシティへの対応の方が自動車業界に とっても対応が容易か?

10.

AIの役割とスマートシティ • 特定領域対応のAIアルゴリズムを導入し、 データ収集とそれに基づく学習、適応が可能 • 自動運転車、MaaSなど、各要素技術、基盤 技術の組み合わせや調整が容易化

11.

スマートシティの概要 Yigitcanlar, T.; Han, H.; Kamruzzaman, M.; Ioppolo, G.; Sabatini-Marques, J. The making of smart cities. Land Use Policy 2019, 88, 104187.

12.

2.自動運転車(CAV)の側面 CAVのメリット • • • • より多くの自由時間 より安全な交通と事故防止 アクセシビリティ、快適性、乗り心地 カーシェア、ライドシェアの容易化 • 交通渋滞、環境悪化、大気汚染、騒音公害 の改善 • 運転できない人の社会的排除の抑止 • など

13.

CAVの影響あるいは懸念事項 • • • • プライバシー喪失、旅行データの悪用 責任配分の見直し 車使用の増加の危険性 CAVが従来型車両と共存する移行期間中の 交通事故、混雑などへの対応 • 行動適応、状況認識、ユーザー抵抗など社 会的・心理的課題発生の懸念

14.

CAVの今後 • 約束された豊富なメリットの存在にも関わら ず、現状の都市交通システムに簡単には統 合できないか? • 特に、一般の人々が、利益は兎も角、懸念事 項に対してどのように反応(対応)するか? • 技術主導での導入は、環境的・社会的持続 可能性と矛盾する可能性も

15.

CAVの従来型自動車体制を超える役割 • • • • • 私的所有(自家用車など)の代替的輸送手段 「必要に応じた」共有オプション より包括的なモビリティの可能性 MaaSの戦略的中心となる可能性 公共交通と連携した相乗的効果達成の可能性 • ファーストマイル、ラストマイルのソリューション の可能性 • 旅行行動が不均衡に自動車にならない効果 • 都市および土地利用の観点からの理想的シナリ オの可能性

16.

CAVの方向性 • 前提としては、これまで以上にクリーンである 必要性 • 電気自動車モデルの方がベターか? • 自律化(自動運転)と電動化の共有使用へ • 自律化(A)、接続性(C)、電動化(E)、共有使 用(S)⇒CASEビジョン

17.

しかし、移行は単純ではない • • • • • • • • • • 更なる技術革新だけでなく、 法律の整備 危機と雇用に対する新たな倫理 道路インフラと土地利用の見直し 新たな交通安全の定義 サイバーセキュリティとプライバシー ビジネスモデル 交通渋滞と旅行行動 受容性、信頼性、顧客の準備 それらの統合、ほか これらが皆準備されたとしても、20XX年頃(?)までにほぼ同 質になり、且つ、CAV価格が適度に安価になることが条件

18.

3.MaaSの側面 MaaSの現状 • 強力な概念ではあるが、本質的実装は未完 成(現状は初期の段階) • 一方で、非常に誇大宣伝されている。 • 最も純粋とされる未来型のMaaSは – 「旅行計画、予約、チケット、情報サービスを提供で きるオールインワンプラットフォームを使用して自動 車に代替できるマルチモーダルモビリティサービス」の 提供か?

19.

MaaSが自家用車の真の代替となるなら • 車の使用を“必要に応じて”厳密に提供 • 道路上の車の数を劇的に減少させ、 • 移動遅延を大幅に削減させ、 • 大気汚染、騒音、エネルギー消費の抑止、交 通安全推進と事故の防止、健康と福祉、社会 的結束、アクセシビリティ、家計支出面の改 善、など • 居住空間を車の運行や駐車場から解放し、よ り人間中心の環境構築を実現へ

20.

MaaSの初期の例 • • • • • • • ヘルシンキ、バーミンガム(whim) ヨーテボリ、ストックホルム(UbiGo) ハンブルグ、シュツットガルト(Moovel) ウィーン(WienMobilLab) イタリア(myCicero) ダンディー、ノースファイブ(スコットランド) ハノーバー、・・ いずれもまだまだ未完

21.

MaaSとCAV • 理論的にはMaaSのカーシェアリング、ライド シェアリングスキームにCAVをコアとして組み込 むと、MaaSの可能性は最大化できるかも • CAVは公共交通へのファーストマイル、ラストマ イルの近接サービスと位置付けることができる。 しかし、 • 公共交通サービスと民間交通サービスの境 界を完全に統合させる必要があるか? • MaaSベースのAIセントリック・デジタルサービ スはこの前提の組み合わせを目標としうる か?

22.

上記構想の課題1 • 文化的慣行への広範な影響 • 全ての人々の所有権に対する態度の変更の 催促 – 車の所有(自家用車)とリース、レンタル、シェア に対する態度は変化しつつはあるが – など

23.

上記構想の課題2 • ビジネスモデルの不確実性 – 先行MaaSプロジェクトにおける大きな課題 • 結果として、MaaSを導入し、運用管理を開始 した場合のアクター間のコラボレーションの複 雑性 • モバイルプロバイダー間の利害の対立が発 生する懸念 – 特に公共交通機関事業者と各種民間サービス事 業者の間で

24.

4.スマートモビリティ像 スマートモビリティのイノベーションは重複 技術寄りイノベーション AV(自動運転:A) 狭義CAV ITS 接続(C) EV(電動化:E) 広義CAV サービス寄りイノベーション シェア(S) DRT(デマン ド交通) サービス統合イノベーション MaaS MaaS DRT:Demand Responsive Transport スマートモビリティはスマートシティのコアに

25.

スマートモビリティの全体像(例示) 狭義CAV 広義CAV ITS DRT AV EM/EV ST(共有) ・CAVはシェアサービス実装も可能 ・CAVはDRTサービス実装も可能 ・CAVはEVを実装も可能 Luke Butler, Tan Yigitcanlar, Alexander Paz, “How Can Smart Mobility Innovations Alleviate Transportation Disadvantage? Assembling a Conceptual Framework through a Systematic Review”, Appl. Sci. 2020, 10, 6306

26.

スマートモビリティが生み出す価値 • 車にアクセスできない、または運転できない 人々の交通機関へのアクセスを改善 • ユーザーのニーズに敏感に対応できる輸送 サービスを実現 • 輸送システムの効率改善とシェアモビリティ への移行の促進 • 輸送中に費やされる「時間価値」の改善

27.

スマートモビリティが生み出す価値(続) • ドアツードア輸送を提供するDRTサービスは 公共交通機関のファーストマイル、ラストマイ ルアクセスを実現可能 • シェアサービスは社会的相互作用を増加させ、 孤立感減少の効果も • 自動運転は、高齢者、障害者および免許不 要で、地域に不慣れな人の地域からの除外 緩和の効果も

28.

但し、懸念事項も • アクセシビリティの向上は自家用車のアクセ シビリティも向上させ、全体としては、自動車 の所有需要を高め、一人当たりの走行距離 を増加させる可能性 • その結果、混雑の増加、都市スプロール現象 の拡大、インフラ投資や家計の交通費の増 大などに繋がる可能性

29.

可能な懸念事項緩和策の例 • シェア(共有モビリティ)の利点の強調 • この変化は消費者にどのようにアピールする かに依存 • 自家用車への拘りは地域依存も大きい。 • 政策と規制、国民の意識向上、土地利用介 入などによってサポートされる文化的変化も 関係 • 従って、単純ではない。幅広い活動、息の長 い対応が必要に

30.

MaaSの役割 • 複雑な利害関係者間のコラボレーションと情 報共有の促進に有用か • 潜在的なユーザーを最適プロバイダーに接 続させる可能性も • 輸送システム効率の改善を通じて管理コスト の削減効果も

31.

CAVの役割 • ドライバーの必要性を排除することで、運用コ ストを大幅に削減する可能性も • 自家用車のインテリアを移動式オフィス、住 居、または娯楽、コミュニティハブに活用する 可能性も

32.

空間的・時間的な影響 • サービス適用範囲と頻度の改善・調整で公共 交通サービスとのギャップを埋められる。 • 公共交通機関のノードや雇用拠点との接続 機能を調整することで、公共サービスとの接 続を強化できる。 • オンデマンドでサービスを提供することで、公 共交通機関の柔軟性を向上させられる。 • 結果、選択肢が限られている地域にもより多 くの選択肢を提供できる。

33.

心理的・情報的な影響 • 旅行の安全性を向上させられる。 • 既存の交通手段の認識を改善させられる。 • 情報に基づいた意思決定を行う能力を向上さ せられる。 • これらを、交通弱者、高齢者など、消費者の 慣行とニーズに応じて適切に対応することが 必要である。

34.

制度的側面 • 国内または国境を越えたデータ管理や共有 の基盤の確立 • 高齢者、移民、障害者など不利な立場にある グループの新技術への適応を支援する制度 の整備 • 自家用車の使用を抑止する駐車/駐車場制 限、および意思決定への一般市民の関与 • 公共の価値と社会的目標が維持されること の保証、など

35.

5.これからの自動運転車とMaaS これからの自動運転車とMaaS • CAVは単に新たなサービスの創出だけでなく、 • DRTの新たなサービス提供形態の創出、 • 共有(シェアモビリティ)との組み合わせによ る新たなサービス提供形態の創出、 • 更には、DRT型CAVで近場の公共交通の駅へ。 公共交通で目的地近郊の駅から再びDRT型 CAVで目的地へ、など • 新たなサービスソリューションの選択肢拡大 にも有用

36.

これからの自動運転車とMaaS(続) • MaaSは全体を統合するコンセプトとして、より 強力なサービスを総合的に提供するのに有 用 • しかし、このような成果を得るには、公共・民 間各事業者の連携の進化や、一般ユーザー の意識改革、制度面の改正など、多面的な 困難な課題の克服が必要

37.

これからの進め方は? • 一挙に全体的な質の変革と同質化が期待で きる訳ではない。 • その際は、スマートシティと、その中核として のスマートモビリティの構築などへ • その成熟化を一定地域に限定して推進する ことから開始するのが現実的か

38.

トヨタのWoven City

39.

ドバイ シンガポール 深セン ベルリン 自動運転がスタンダードな存在へ

40.

想定される移行プロセス(例) 2030? 第一 ステップ 2040? 20XX年頃 スマートシティ 内での試行 (開始済) 課題1 第二 ステップ スマートモビリティ の広域拡大 (開始済) 第三 ステップ 課題2 スマートモビリティと既存体系 の共存/移行の成熟化

41.

暫定まとめ • スマートモビリティの実現には技術面のみで ない多様な課題の総合的克服が重要 • それには、スマートシティ内での先行実施など、 試行の場から踏み出すのが現実的 • それでも取り残される課題や状況に応じて対 応する必要のある課題は多い。 課題1 課題2 など • 柔軟なフレームワークを保有しつつ、データド リブン型でAIの高度活用も計った取組みが重 要か • 今後、多方面の課題詳細化が待たれる。

42.

更なる課題の登場か (前提)コロナ禍の影響やデジタル化促進でモビリティのニーズも大きく変 化している(例:オンライン化の拡大やVRなどの影響の拡大、など) • CAVのビジョンはどのように変質するだろう か?(物理面以外の拡大は?) • MaaSのマルチモーダルが想定する各モード はどのように変質するだろうか? • 未来の公共・民間交通事業者はどのように変 質するだろうか? • AIの高度活用に不可欠なデータ整理と学習 はどのように成熟化するだろうか? – “安全”に関わる学習は高精度データによる高水準AIが要求されるので

43.

関連Slideshare 画像をキッ クすると当 該slideshare にジャンプ MaaS