第4次産業革命とプラットフォームエコノミー

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December 02, 16

スライド概要

今、第4次産業革命が話題だ。そして、“革命”と言うからには、例えば、第1次産業革命は「何々・・」の理由で英国・マンチェスター地区で発生した、と云ったような必然性も登場してくると想定される。
ただ、これは最初からは明確に成らないものかもしれない。でも、技術面だけに注目するのではなく、文化面、組織面、経済面、社会面などとの関係にも着目する必要があるのではないか。こんな問題意識から、ウォーラーステインの「世界システム論」をヒントに若干の考察を行ってみた。

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定年まで35年間あるIT企業に勤めていました。その後、大学教員を5年。定年になって、非常勤講師を少々と、ある標準化機関の顧問。そこも定年になって数年前にB-frontier研究所を立ち上げました。この名前で、IT関係の英語論文(経営学的視点のもの)をダウンロードし、その紹介と自分で考えた内容を取り交ぜて情報公開しています。幾つかの学会で学会発表なども。昔、ITバブル崩壊の直前、ダイヤモンド社からIT革命本「デジタル融合市場」を出版したこともあります。こんな経験が今に続く情報発信の原点です。

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各ページのテキスト
1.

第4次産業革命と プラットフォームエコノミー -「世界システム論」からの示唆 B-frontier研究所 高橋 浩 (ロシア プトナラ台地)

2.

問題意識 • 現在話題の第4次産業革命は全ての国 が等しく第1次、第2次、第3次産業革命を 達成し、その後に取り組むことを前提にし ている風だが、本当だろうか? • また、ある産業や地域が活性化する際、 嘗ては踏み台にされる地域や労働力、産 業があったが、今回はどのようになるだろ うか? 2

3.

目次 0. 1. 2. 3. 4. 5. 「世界システム論」とは ビジネス偏在の実態 ビジネス“中核”発生のメカニズム 世界システムと最近のビジネス環境 ビジネス環境の再解釈 新たな知見と今後への示唆 3

4.

0. 「世界システム論」とは ウォーラーステインの「世界システム論」 世界システムとは・・ 複数の文化体を含む広大な領域に展開す る分業体制であり、“ある世界の「周辺」の 経済的余剰を「中核」に移送するシステ ム”である。 各国を独立した単位として扱うのではなく、 より広範な視座から世界を俯瞰する。 (例:イギリス(中核)の第1次産業革命は西インド諸島(周辺) の砂糖プランテーションの経済余剰を移送して成立した。) 4

5.

1. ビジネス偏在の実態 IT企業(米国) デジタル化を制した米国 IT系プラットフォーマーが 新ビジネスモデル創出で 世界を支配している IT企業(中国) 通信会社 5

6.

$100万 【単位:mil.US$】 順位 国名 2015年 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 米国 中国 日本 ドイツ イギリス フランス インド イタリア ブラジル カナダ 韓国 ロシア オーストラリア スペイン メキシコ インドネシア オランダ トルコ 19 スイス 664,005 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 サウジアラビア アルゼンチン 台湾 ナイジェリア スウェーデン ポーランド ベルギー タイ イラン ノルウェー オーストリア アラブ首長国連邦 エジプト 南アフリカ 香港 イスラエル マレーシア デンマーク シンガポール フィリピン コロンビア 646,002 630,448 523,006 493,831 493,042 474,775 454,288 395,297 390,039 388,315 374,261 370,296 330,159 314,732 309,236 299,413 296,284 295,091 292,734 292,451 292,091 18,036,650 11,181,556 4,124,211 3,365,293 2,858,482 2,420,163 2,073,002 1,815,759 1,772,589 1,550,537 1,377,873 1,326,016 1,225,286 1,199,715 1,143,796 858,953 750,696 717,932 トップIT系プラット フォーマーの経済規 模は世界20位の国 家に相当している $10億 01 アップル(Apple) 02 アルファベット(Alphabet) 03 マイクロソフト(Microsoft) 04 アマゾン・ドット・コ(Amazon.com) 05 フェイスブック(Facebook) 06 エクソン・モービル(Exxon Mobil) 07 ジョンソン&ジョンソン Johnson & Johnson 08 バークシャー・ハサウェBerkshire Hathaway 09 ジェネラル・エレクトリック General Electric 609. 16 543. 41 448. 77 396. 95 368. 35 361. 92 323. 19 355. 85 265. 43 アメリカ アメリカ アメリカ アメリカ アメリカ アメリカ アメリカ アメリカ アメリカ 6

7.

世界の億万長者にも世界的ITプラットフォーマー創業者が多い 世界 順位 1 2 60 79 資産 (10億$) 75.0 67.0 資産 (兆円) 8.48 7.57 Bill Gates Amancio Ortega ビル・ゲイツ アマンシオ・オルテガ マイクロソフト(3) ザラ アメリカ スペイン 3 Warren Buffett ウォーレン・バフェット バークシャー・ハサウェイ 4 5 6 7 8 Carlos Slim Helu Jeff Bezos Mark Zuckerberg Larry Ellison Michael Bloomberg カルロス・スリム ジェフ・ベゾス マーク・ザッカーバーグ ラリー・エリソン マイケル・ブルームバーグ テレフォノス・デ・メヒコ アマゾン(9) フェイスブック(6) オラクル ブルームバーグ アメリカ 85 60.8 6.87 メキシコ アメリカ アメリカ アメリカ アメリカ 76 52 31 71 74 50.0 45.2 44.6 43.6 40.0 5.65 5.11 5.04 4.93 4.52 9 Charles Koch チャールズ・コーク 9 David Koch デイヴィッド・コーク コーク・インダストリーズ アメリカ 80 39.6 4.47 コーク・インダストリーズ アメリカ 75 39.6 11 12 13 14 15 16 Liliane Bettencourt Larry Page Sergey Brin Bernard Arnault Jim Walton Alice Walton 4.47 リリアンヌ・ベッタンクール ラリー・ペイジ サーゲイ・ブリン ベルナール・アルノー ジム・ウォルトン アリス・ウォルトン ロレアル グーグル(2) グーグル(2) LVMH ウォルマート ウォルマート フランス アメリカ アメリカ フランス アメリカ アメリカ 93 42 42 67 67 66 36.1 35.2 34.4 34.0 33.6 32.3 4.08 3.98 3.89 3.84 3.80 3.65 17 18 19 20 21 22 23 24 25 S. Robson Walton Wang Jianlin Jorge Paulo Lemann Li Ka-shing Beate Heister & Karl Albrecht Jr. Sheldon Adelson George Soros Phil Knight David Thomson ロブソン・ウォルトン 王健林 ホルヘ・パウロ・レマン 李嘉誠 ベアテ・ハイスター&カール・アルブレヒトJr. シェルドン・アデルソン ジョージ・ソロス フィル・ナイト デイヴィッド・トムソン ウォルマート 万達集団 投資家 長江集団 アルディ ベネチアン 投資家 ナイキ トムソン アメリカ 中国 ブラジル 香港 ドイツ アメリカ アメリカ アメリカ カナダ 71 61 76 87 82 85 78 58 31.9 28.7 27.8 27.1 25.9 25.2 24.9 24.4 23.8 3.60 3.24 3.14 3.06 2.93 2.85 2.81 2.76 2.69 26 Steve Ballmer スティーブ・バルマー 59 23.5 2.66 Forrest Mars, Jr. フォレスト・マース・ジュニア マイクロソフト(3) マース アメリカ 27 アメリカ 84 23.4 2.64 27 27 30 31 Jacqueline Mars John Mars Maria Franca Fissolo Lee Shau Kee ジャクリーン・マース ジョン・マース マリア・フランカ・フィッソロ 李兆基 マース マース ヌテラ 恒基兆業地產 アメリカ アメリカ イタリア 香港 76 79 98 88 23.4 23.4 22.1 21.5 2.64 2.64 2.50 2.43 32 Stefan Persson ステファン・パーション H&M スウェーデン 68 20.8 2.35 33 34 35 36 Jack Ma Theo Albrecht, Jr. Michael Dell Mukesh Ambani ジャック・マー テオ・アルブレヒトJr. マイケル・デル ムケシュ・アンバニ アリババ(23) アルディ デル リライアンス・インダストリーズ 中国 ドイツ アメリカ インド 51 65 51 58 20.5 20.3 19.8 19.3 2.32 2.29 2.24 2.18 37 Leonardo Del Vecchio レオナルド・デル・ヴェッキオ 80 18.7 2.11 Susanne Klatten スザンネ・クラッテン ルックスオティカ BMW イタリア 38 ドイツ 53 18.5 2.09 39 40 Georg Schaeffler Paul Allen ゲオルク・シェフラー ポール・アレン シェフラー マイクロソフト(23) ドイツ アメリカ 51 63 18.1 17.5 2.05 7 1.98 名前 名前(読み) 関連 国籍 年齢

8.

また、最近勃興著しいシェアリングエコノミーを見てみよう 極めて幅が広い シェアリングエコノミー:産業全体の進化と発展軌道の深層探索 PiperJaffray, 2015. Sharing Economy: An In-depth Look at its Evolution and Trajectory across Industries 8 <http://collaborativeeconomy.com/wp/wpcontent/uploads/2015/04/Sharing-Economy-An-In-Depth-Look-At-Its-Evolution-and-Trajectory-Across-Industries-.pdf>.

9.

代表的シェアリングエコノミー企業の一覧(1) 社名 時期 本社 所有形態 社名 時期 本社 所有形態 Airbnb 2008 San Francisco Private Feastly 2011 San Francisco Private AirPooler 2013 Cambridge, MA Private FlatClub 2010 London, UK Private AllTheRooms 2013 New York, NY Private FlightCar 2012 Cambridge, MA Private BlaBlaCar 2006 Paris, France Private FlipKey 2008 Boston, MA TripAdvisor Boatbound 2012 San Francisco Private FLOOW2 2012 Luxembourg Private Breather 2012 Montréal, Quebec Private Flytenow 2013 Boston, MA Private Carma 2007 Cork, Ireland Private Freelancer 2009 Sydney, Australia Public Carpooling.com 2001 Munich, Germany Private Fundly 2009 Palo Alto, CA Private CircleUp 2011 San Francisco Private Getable 2010 San Francisco Private Cohealo 2011 Boston, MA Private Getaround 2011 San Francisco Private CouchSurfing 2004 San Francisco Private GetMyBoat 2012 San Francisco Private Crowdcube 2010 Exeter, UK Private Guevara 2013 UK Private CrowdFlower 2009 San Francisco Private Hailo 2011 London Private CrowdRise 2010 Detroit Private Holidu 2014 Munich, Germany Private CrowdSource 2010 Swansea, IL Private HomeAway 2005 Austin, TX Public Deliv 2012 Menlo Park, CA Private Homejoy 2012 San Francisco Private DogVacay 2011 Santa Monica, CA Private Homestay 2013 Dublin, Ireland Private Drivy 2010 Paris, France Private HourlyNerd 2013 New York, NY Private EatWith 2012 San Francisco Private HouseTrip 2010 London, UK Private Etsy 2005 Brooklyn, NY Private Indiegogo 2008 San Francisco Private eYeka 2006 Paris, France Private Instacart 2012 San Francisco Private 9

10.

代表的シェアリングエコノミー企業の一覧(2) 社名 時期 本社 所有形態 社名 時期 本社 所有形態 JustPark 2006 London, UK Private Rover.com 2011 Seattle, WA Private Kickstarter Inc 2009 New York, NY Private ShareDesk 2012 San Francisco Private Krrb 2010 Brooklyn, NY Private Shuddle 2014 San Francisco Private Lending Club 2007 San Francisco Public Sidecar 2012 San Francisco Private LiquidSpace 2010 Palo Alto, CA Private Storefront 2012 San Francisco Private Luxe Valet 2013 San Francisco Private Style Lend 2013 San Francisco Private Lyft 2007 San Francisco Private TaskRabbit 2008 San Francisco Private MonkeyParking 2013 San Francisco Private Tilt 2012 San Francisco Private Elance-oDesk 1998E , 2005 o San Francisco Private Tok Tok Tok 空白 Franche-Comte, France Private 9flats.com 2009 Berlin, Germany Private Tripping 2010 San Francisco Private Onefinestay 2009 London Private TurnKey 2012 Austin, TX Private Parking Panda 2011 Baltimore, MD Private Uber 2009 San Francisco Private Pathway GDS 2012 London Private UpCounsel 2012 San Francisco Private Peerby 2011 Amsterdam Private Vacatia 2012 San Francisco Private Pillow 2014 San Francisco Private Villas.com 空白 Amsterdam Priceline PivotDesk 2012 Boulder, CO Private Wefunder 2012 San Francisco Private Postmates 2012 San Francisco Private Wimdu 2011 Private RelayRides 2008 San Francisco Private Hamburg, Germany RocketHub 2009 New York, NY Private Yard Club 2013 San Francisco Private Roomorama 2008 New York Private YourParkingSpa ce 2006 San Francisco Private Roost 2013 San Francisco Private 10 サンフランシスコ(シリコンバレー含):40 他米国:18 ヨーロッパ:22 その他:2

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35歳以下限定世界富豪にAirbnb創業者が浮上 Airbnb 1位 マーク・ザッカーバーグ 416億ドル(約5兆366億 円)――Facebook創業者でCEO 2位 ダスティン・モスコヴィッツ 93億ドル (約1兆1,259億円)――Facebookの 創業メンバー 4位 エドゥアルド・サベリン 53億ドル (約6,399億円)――Facebookの 創業メンバー 7位 ネイサン・ブレチャージク 30億ドル(約3,625億 円)――Airbnbの共同創業者でCTO 7位 ブライアン・チェスキー 30億ドル(約3,625億円) ―― Airbnbの共同創設者でCEO 7位 ジョー・ゲビア 30億ドル(約3,625億円) ―― Airbnbの共同創設者でCPO 11

12.

Airbnbの創業者 Airbnb創設者3人は左から ジョー・ ゲビア(34歳)、 ネイサン・ブレチャージク(32歳)、 ブライアン・チェスキー(34歳) 資産額はそれぞれ約30 億ドル(約3,625億円) • ジョー・ゲビアとブライアン・チェスキーは米国最高の美術大学ロード アイランド・スクール・オブ・デザインの出身。 • ジョー・ゲビアはCPO(Chief Product Officer)で、企業カルチャーを 考え、デザイン美学を打ち出し、未来の成長機会をイノベートする役目。 – ジョー・ゲビアには2016年TED講演「Airbnbの成功の裏にある信頼のため のデザイン」がある。 • ブライアン・チェスキーはCEOで、より楽しくユニークな旅づくりを目指して、 会社のビジョン、戦略、成長を牽引する役目。 • ネイサン・ブレチャージクはCTO 12

13.

デジタル時代を担う企業の種類・所 在地・ステータスは偏在している 「企業プロフィール」 • 上位は殆どIT分野で米国西海岸企業 – GAFA(米国4大インターネット関連企業)など • 最近勃興のシェアリングエコノミー企業の本社所在地 もサンフランシスコ(シリコンバレー含)に偏在 「所得水準」 • 世界7位までの億万長者中 4人までが米国IT企業 創業者(ビル・ゲーツ(1位)、ジェフ・ベゾス(5位)、 マーク・ザッカーバード(6位)、ラリー・エリソン(7位) • [35歳以下]長者でもfacebook,Airbnb関係者が占有 13

14.

2. ビジネス“中核”発生のメカニズム シェリングエコノミーに焦点を当てる * プラットフォームエコノミー での5つの働き方パターン *:シェアリングエコノミーの狭義解釈を克服するためBRIEで用いられている用語 1.グローバル入札/サイバー契約労働 BRIE - 例:eLance/ Odesk(upwork) Berkeley Roundtable on the International Economy 2.産業のサイバー転換 -例:タクシー-- Uber、ホテル--Airbnb 3. 非公式な作業のサイバー形式化 - 例:TaskRabbit, Instacart 4.仮想委託--Apps店舗 5.仮想プロジェクトの資金調達 - 例:Indiegogo、Udemy Martin Kenney Professor: Community and Regional Development University of California, Davis John Zysman Professor: Political Science University of California, Berkeley 14 M. Kenney,” Value and Work in the Platform Economy”, BRIE presentation, May 5, 2015

15.

プラットフォームエコノミーにおける 労働と価値創造・価値獲得(全体図) 上位、中位、下位3層に分かれる 既存勝ち 組領域 プラットフォーム起業 家と資金提供のベン チャー・キャピタル 上 位 層 経 済 報 酬 マネタイズされてきた プラットフォーム・エコ システム領域 プラットフォーム エコノミー領域 中 位 層 下 位 層 参加者数 15

16.

プラットフォームエコノミーにおける 勝ち組ベンチャーの特別の働き(上位層) ~「中核」 プラットフォーム起業 家と資金提供のベン チャー・キャピタル 起業家と従業員がもし成功すれば 彼らが最大の勝者になる! 参加者数 16

17.

「中核」「周辺」への分離を加速するプラットフォームエコノミー領域-1 プラットフォームエコノミーにおける契約労働 「価値創造」は償われるものよりも多いか? (中位層) 1.グローバル入札/ サイバー契約労働 Amazon, Mech Turk, oDesk(upwork) 2.産業のサ イバー転換 3. 非公式な作業 のサイバー形式化 Ebay, Amazon Market, Taskrabbit, Instacart Uber, Craigslist, AirBnB 17

18.

「中核」「周辺」への分離を加速するプラットフォームエコノミー領域-2 仮想委託と仮想プロジェクトの資金調達モデル (中位層) 4.仮想委託 5.仮想プロジェクトの資金調達 Youtube, Amazon自費出版本 Zynga, King Digital, Supercell Kickstarter, Indiegogo 起業家精神で上部につながることができる 18

19.

プラットフォームエコノミーにおける無償労働 巨大な分散価値創造(下位層) ~「周辺」 無償労働例:インターネットのサーフィン Facebook、Pinterest、YouTube、LinkedInにコンテンツ掲載 オープンソース・ソフトウェアの作成 狭義のシェアリング・エコノミー:Wikipedia、カーンアカデミー ・・・・・・・・ 充分な訪問者が 居れば有償化可 能かもしれないが 参加者数 下位層では生み出される膨大な量の価値と 直接的な報酬の不在が観察される! 19

20.

1.グローバル入札/サイバー契約労働 •最低価格を競うルールが存在する •大部分は無力な請負業者 -稀少スキルを持っている業者は例外的 •学習可能性に加え請負業者のための多少の 上振れはあり得ても・・ -永久的な仕事につながりうるか?(疑問) •社会的傾向としては・・ -正社員を代替する機能があり、・・ -より効率的な仕事への人の割り振りの可能性 20

21.

2. 産業のサイバー転換 (「消費財の投資財への変換」も含む) •利便性、効率性、遊休資産の動員の機能あり •多くの場合、断片化された産業の巻取り •競争に対する障壁の打破(タクシールール、 他) ‐Airbnbのホテル税支払い、 Uber/ Lyftの商業 保険取得のようないくつかの初期の利点の 浸食もあった。 •大幅に無力なサービスプロバイダ対プラット フォーム所有者の関係性 ‐請負業者(サービスプロバイダ)向けの少々の上 振れはあるが、・・ 21

22.

3.非公式作業のサイバー形式化 •サイバー形式化の歴史は長い -eBay、Craigslist •膨大な数の巨大プラットフォーム •クラウドへの制御と監視の動き •社会的成果 -より大きな効率性と価格発見 -より大きな税制と信頼面での透明性 -プラットフォーム所有者への力のシフト 22

23.

4.仮想委託モデル •プラットフォーム所有者は無料でコンテンツ取得 •コンテンツプロバイダが全ての費用を負担 •コンテンツプロバイダは2つの形式を保有 ‐プラットフォーム所有者を通じた支払い受取り ‐聴衆からの補助的収入 •出演、紹介文、プロダクトプレイスメント、アイテム •ロングテールによって特徴づけられるコンテンツプロ バイダのリターン •社会的成果 ‐ 新しい仕事の膨大な機会 23

24.

プラットフォームエコノミーを加速する信頼性の充実化 例:Airbnbのアルゴリズムビッグデータモデル Airbnbの例 クレジットカード パスポート Facebook,LinkedIn 顔写真 過去のクチコミ情報 ゲスト、ホスト相互評価 ホストサービス評価 (”SuperHost”) 総合的背景チェック など 24

25.

プラットフォームは目的と機能が分散化 分類 プ ラ ッ ト フ ォ ー ム エ コ ノ ミ ー 領 域 細分類 事例 A プラットフォームのた めのプラットフォーム インフラ、ツールを提供 B ツールを作るプラット フォーム Github使用のオープンソースソフ Zenefits、Wonolo、 Job Rooster トウェアプログラムのリポジトリ C 小売店やビジネス用 電子e-marketplace 物理的商品のための仮想市場 Etsy、eBay 小売プラットフォーム Amazon 他アプリ拡散プラットフォーム Apple,Androidの "店舗” 仮想委託プラットフォーム YouTube、Amazon selfpb 1 仕事仲介プラット フォーム グローバル入札 Upwork、Innocentives 2 サービス産業を変革 するプラットフォーム 消費財を投資財へ変換するプ ラットフォーム Airbnb、Uber 3 仕事仲介プラット フォーム 時々の非公式作業 Task Rabbit, Homejoy 4 ファイナンス仲介 /5 資金調達プラットフォーム Kickstarter、Indiegogo AWS M. Kenney, J. Zysman,” Choosing a Future in the Platform Economy:The Implications and Consequences of Digital Platforms”, 25 Kauffman Foundation New Entrepreneurial Growth Conference, Discussion Paper, Amelia Island Florida – June 18/19, 2015

26.

成功プラットフォームが 「中核」「周辺」分離を加速 •プラットフォーマーが主たる価値を提案 •大規模な新しい価値を創造 •彼等の所得が不平等を促進か? •プラットフォーム所有企業の労働者(正社員) とプラットフォーム所有者は大規模に利益を 得るが、比較的利益に卑しいか? •参入障壁はデジタル化で溶解の方向へ ⇒少数の大規模な勝者と契約労働者、委託労 働者に分離へ 26

27.

3. 世界システムと最近のビジネス環境 社会全体で労働が一層分解されてきている  仕事と非仕事の両方で、オンラインの人間活 動が価値を創造することが増加している。 ⇒「人間の営みの商品化」とも言える。  しかし、ほとんどの「ロングテール」の仕事は実質 的収入に充分な価値を生まない。  但し、いくつかは貴重な集積を形成する。  プラットフォームエコノミーの拡大はこのよう な傾向を増長させる。 この環境は新たな分業体制を促進させる! 27

28.

この状況を「世界システム論」的視点で例示 例1:産業の偏在 • 「英国が工業化したために、インドは容易に工業 化できなくなった」 • 「シリコンバレーが先進IT化したために、日本は 容易に先進IT化できなくなった」 例2:歴史的な「中核」「周辺」の構造 • 近代の世界システムは西ヨーロッパを「中核」とし、 ラテンアメリカや東ヨーロッパを「周辺」として成立 した。 • 現代の世界システムはシリコンバレー&国際金 融資本を「中核」とし、それ以外の国・地域・グ ローバルITユーザーを「周辺」として成立している。 28

29.

例3:「中核」となれる条件 • 世界システムの「中核」とは世界的規模での 分業体制から多くの余剰を吸収できる地域で あり、工業生産を中心とする地域である。 • 現代の世界システムの「中核」は・・・ベン チャー人材育成、資金調達、IT技術者獲得が 容易で、イノベーション成功確率が高い特定 の地域に限定される。 例4:「周辺」になる条件 • 「周辺」は食料や原材料生産に特化させられ 「中核」に従属させられる地域である。 • 現代の「周辺」は・・サービス利用やせいぜい 機器の部品開発程度に特化させられ「中核」 に従属させられる地域である。 29

30.

例5:「中核」「周辺」は一国内でも発生 • 経済格差は国と国の間というより産業革命の 進展したヨーロッパの国内でも起きた。世界 でもっとも繁栄していたはずのイギリスの内 部でイーストエンドとよばれる巨大スラムが発 生した。 • 世界で最も第3次、第4次産業革命が進展し ている米国で、ITトップ企業やUber席巻など で懸念されるデマンドワーカー(Uberの運転 手の否定的な捉え方)が蔓延している。 30

31.

例6:第4次産業革命をこの視点で見れば・・ • 各国が順番に第1次産業革命から第2次、第 3次と進むわけではない。 • 米国は第2次産業革命が製品の品質・洗練 度が差別化の中心になった段階で日本に敗 退。そこでビジネスモデル構築が差別化の中 心である第3次産業革命に舵を切った。第4次 産業革命はこの延長線上にある。 ⇒日本は米国に遅れているので、単に追随の 努力をすれば良いということでは無い。自分 が中核となるポジションを定め、その獲得に 向けた戦略と努力が必要になる。 31

32.

4. ビジネス環境の再解釈 従来“準中核”地域に所在していたベンダーが 新ビジネス環境で「中核」プラットフォーマーへ の道を歩もうとする時の壁は大きい。 1)制約事項 – – – – 文化面:匠の文化、摺り合わせへの拘り 組織面: 学術面: 自前主義・縦型嗜好・垂直統合への拘り 政治面: 2)ブレークスルーするエコシステム構築のための要 因 -流動化した社会で自己目的を追求できる個人・組織 32

33.

もし、プラットフォームエコノミーが 社会的に適切な回答であるなら? •“幸運”な個人のための報酬を拡張すべきか? -多くのプラットフォームエコノミーの勝ち組は一 回限りの「ヒット」であるかもしれない。 •起業家精神を意識的に増大させるべきか? - 我々は先験的に誰が勝つかを知ることはでき ない。 •創作的活動はサポートされるべきか? •格差拡大(?)のリストを上回るメリットはあるか? •消費は全体として増大するか? 33

34.

5. 新たな知見と今後への示唆 • 「モノ+サービス」統合サービスを顧客とつな がりサービス提供し続けなければならない 第4次産業革命の時代では、・・ • いずれかの段階でサービスの品質・洗練度 が差別化の中心になる段階が来るかもしれ ないが・・ • そうなれば日本的取組みが再び脚光を浴び る可能性があると考えられるだろうか? 34

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• 但し、単に製品の品質・洗練度に類する差別 化では通用しない。 • 現状の日本のおもてなしの優位性はボリュー ム・ゾーンに対応できない。 • 第4次産業革命は高デジタル化世界なので、 遍くグローバルに(ボリューム・ゾーンで)サー ビスの品質・洗練度を提供する必要がある。 • それには、第4次産業革命に整合の取れた新 たなサービスの品質・洗練を開発する必要が ある。 35

36.

• その際、サービスの高度化に向けた新タイプ の顧客との連携が必要である。 • 第3次産業革命時代では製品の品質・洗練度 向上に拘りの顧客の存在が有用だった。 • しかし、サービスの高品質化は単にうるさい 顧客の存在だけでは達成できない。 • 真に高レベルのサービス洗練の共創者にな りうる顧客との連携の姿勢が問われる。 36

37.

以上を踏まえて 第1次、第2次、第3次産業革命の経緯と 第4次産業革命の見通し(推測) 第1次産業革命 イギリス 革命の 中味 得意 分野 米国・ドイツ 米国 米国・ドイツ (日本?) (中国?) 日本 中核 周辺 第2次産業革命 デジタル化がステップアップ 第3次産業革命 第4次産業革命 植民地(インド、 西インド諸島、 セイロン他) 低賃金国(中南米、 世界中の膨大な 東欧など)or国内 無償ITサービス利用 者+単純労働者 低賃金労働者 膨大な無償サービス利 用者+単純労働者 +価値創造に見合う 対価獲得ができない サービス提供者 蒸気機関 電気 化学 石油・内燃機関 自動車 クラウド・AI・IoT・BD などの先進IT技術 とシェアリングのよう な新経済構造 コンピュータ/通信 E-business ビジネスモデル変革 柔軟な雇用環境が B2Cでは米国の エンジニアリング革命 優位は継続か? 実施で米国優位に B2Bは? 「人間の営みの商品化」

38.

若干の観察 • IoT分野(B2B)では独占的勝者はいないのでは ないか?(IICディレクター、Richard Mark Soley氏 の発言)。 – データ分析もクラウド(大量データ分析)とフォグ(中間 蓄積データ分析)と分散化へ – 複数企業連携でないと実現できない分野も多く、独占 性が発生しにくいかも? – また、スケール確保しないとコスト高になるので、 「オープンデータ+DIY」的取組みの広がりもありそう • しかし、IoT分野(B2C)で先行したAirbnb,Uberなど は独占の典型 • 標準化/NPO/無償と有償分野の線引きと有償 サービスの差別化工夫が必要そう 38

39.

「第4次産業革命」のスコープが複数案並立している状態か? Airbnb,UberはれっきとしたIoTシステム(B2C)で 第4次産業革命のハシリと考えられるが・・ B2C サービス業 Airbnb,Uberなども含む プラットフォームエコノミー Society 5.0 B2B Industry 4.0 IIC、IVIなど 案3 案2 案1 製造業 注:第4次産業革命期は製造業のサービス化も一層進展し、 従来の製造業、サービス業の境界も曖昧化が進むだろう 39

40.

暫定まとめ • 各国の歴史、経路依存性に照らして、得意不 得意がありそうだ。 • B2C的分野(IoT2C)は米国の独走が継続か? • B2B的分野(IoT2B)は分野毎に細分化されそう で、日本にチャンスが訪れる分野もあるかも しれない。 新たな「中核」、「周辺」の綱引きが発生しそう なので、「中核」ポジション確保の戦略が必要 多様な側面(市場、顧客嗜好、産業、政策、 技術、文化、科学など)の影響を受けそうなの で上述の視点からの詳細な検討が必要 40