サービスイノベーションとプラットフォーム理論

359 Views

December 28, 19

スライド概要

デジタル化(DX化)が本当に大きな変化をもたらしている。だから、これについて、正確、且つ、幅広い理解が求められている。このような大きな変化を示唆していたはしりの一つに、2004年、Valgo&Luschによって提唱されたSDL(サービスドミナントロジック)があった。世の中は、GDL(グッズドミナントロジック)からSDLに根本的に変わると言うもの。他にも幾つかあるが、最近の変化の動向を示唆していた大きな基石だったと思う。そこで、SDLを踏まえて、最近の動向、例えばUber,Airbnbに代表されるシェアリングエコノミーなども、もう一度、考え直してみても良いのかなと考えてみた。そんなことから、「サービスイノベーションとプラットフォーム理論」という名前でまとめてみた。

profile-image

定年まで35年間あるIT企業に勤めていました。その後、大学教員を5年。定年になって、非常勤講師を少々と、ある標準化機関の顧問。そこも定年になって数年前にB-frontier研究所を立ち上げました。この名前で、IT関係の英語論文(経営学的視点のもの)をダウンロードし、その紹介と自分で考えた内容を取り交ぜて情報公開しています。幾つかの学会で学会発表なども。昔、ITバブル崩壊の直前、ダイヤモンド社からIT革命本「デジタル融合市場」を出版したこともあります。こんな経験が今に続く情報発信の原点です。

シェア

またはPlayer版

埋め込む »CMSなどでJSが使えない場合

関連スライド

各ページのテキスト
1.

サービスイノベーションとプラットフォーム理論 - SDLに基づくUber,Airbnb分析他からの示唆 - B-frontier研究所 高橋 浩 Views of Golders Green Cemetery, London

2.

目次 1. はじめに 2. SDLからの視点 3. サービスイノベーションの広範な 展望 4. サービスイノベーション・キャンバス 5. 今後の動向に向けて 2

3.

1.はじめに • イノベーションの性質とプロセスが大きく変化 して来た。 イノベーションはサプライヤー、パートナー、顧 客、発明家など各種アクターのネットワーク経 由での共同作業になった。 ・・・Chesbrough 2003;他 ⇒network-centric 有形商品よりも情報中心の無形製品に焦点 が当てられるようになった。 ・・・Glazer 1991 ⇒ information-centric 他アクターと共創の価値(経験)に焦点が当て られるようになった。 ・・・ Prahalad and Ramaswamy 2004;他 ⇒ experience centric 3

4.

情報中心の無形イノベーションの例 • IT活用のブレークスルー・イノベーション ・・・ Facebook、YouTube、Google、 Twitter、Second Life、など • 既存業界での新しいプロセス ・・・AppleのiPhone、AmazonのKindle(書 籍)、など • 新たなユーザー経験の開発 ・・・ Netflix、SaaSなどのクラウドコンピュー ティング、など 4

5.

サービスの幅広い概念化が必要に! • 人々はどのようにしてサービスを経験しイノベ ーションを起こすのだろうか? ⇒それに関わるITの潜在能力を説明するアイデア やフレームワークが必要になった。 SDL(サービスドミナントロジック)とは・・ • 『他のアクターの利益のためにスキルと能力 を活用するアクターによって発生するサービス 交換』! – SDLは交換される製品形式でのアウトプットでは なく、提供するプロセスに焦点を当てている。 5

6.

SDLの基本的考え方 コンピューターを名詞やモノとして表現するの ではなく、・・ 動詞やサービスとして、コンピューティングとし て捉える考え方 • SDLは、サービスと多くのコミュニティに仕える ためにITを活用するサービス基盤 ・・・Khoshafian 2007 • SDLは、企業中心ではなく、サービス中心 ・・・Khoshafian 2007;他 • SDLの方向で新たな環境変化に対応するフレ ーム開発に挑戦(問題意識) 6

7.

2.SDLからの視点 SDLの視点とは・・ • 発明家、起業家、イノベーターなどのあらゆる 種類の有形/無形イノベーションを超越した精 神的モデルとしてサービスを俯瞰 • 全ての製品イノベーションがサービスイノベー ションであるならば、「サービスイノベーション 」と「製品イノベーション」の区別は必要なし! – 製品は、サービスを提供するためのメカニズム、 媒体、または乗り物に過ぎない。 • 以下、サービスイノベーションに向けたモデル を3相互関連要素、4メタ理論で構築 7 R. F. Lusch, S. Nambisan, " Service Innovation: A Service Dominant Logic Perspective", MIS Quarterly, 2015.

8.

3相互関連要素 サービスエコシステム:効果的な行動を通じて作 成されるA2A (アクターツーアクター)ネットワ ーク構造の中でアクターがサービス交換し価 値創造する組織論理 サービスプラットフォーム:リソース液化し、リソ ース密度を高めて適切なリソース束へのアク セスを促進し、イノベーションを活性化させる サービス交換の効率化と有効性を高める場 価値共創:リソース統合を通じてサービス提供 者とサービス受益者が共同で作った価値や経 験 8 R. F. Lusch, S. Nambisan, " Service Innovation: A Service Dominant Logic Perspective", MIS Quarterly, 2015.

9.

ITとサービスイノベーションの関係(1) • ITがサービスイノベーションに及ぼすより広い インパクトを認識・・・Yoo et al.(2010) • 製品における情報(デジタル)技術の重要性 を強調・・・Yoo et al.(2010) 次ページ • デジタルイノベーションの基盤となる製品ア ーキテクチャの必要性を強調 – デジタル製品の階層化アーキテクチャが物理製品 のモジュラーアーキテクチャとどのように組み合わせら れるか? – 階層化されたモジュラーアーキテクチャとイノベー ションのための組織化との関係は? 9

10.

階層化アークテクチャ、およびモジュールアーキテクチャとの絡みあい(概念図) Youngjin Yoo Case Western Reserve 大学 教授 Management Information Systems and Strategy Yoo, Y., Henfridsson, O., and Lyytinen, K. 2010. “The New Organizing Logic of Digital Innovation: An Agenda for Information Systems Research,” Information Systems Research (21:4), pp. 724-735. 10

11.

ITとサービスイノベーションの関係(2) • 基盤となるデジタルインフラストラクチャーにも 同様の焦点を当てる必要がある。 ・・・Tilson et al.(2010) • 広範な社会的・制度的状況にデジタル技術を 適用する社会技術プロセスに焦点を当てる必 要がある。・・・Tilson et al.(2010) 次ページ 11

12.

デジタルインフラストラクチャーの社会技術的ダイナミズムの概念モデル 世代性 有効になった新しい接続パターン 社会的カテゴリのぼかし 新しい安定した社会構造 集中制御、分散制御間の闘争を反映 David Tilson Rochester大 学準教授 Computers and Information Systems コントロールポイントを発揮しようとするか、他 のコントロールポイントを無効にしようとする Tilson, D., Lyytinen, K., and Sørensen, C. 2010. “Digital Infrastructures: The Missing IS Research Agenda,” Information Systems Research (20:4), pp. 748-759. 12

13.

ITとサービスイノベーションの関係(3) • プラットフォームとプラットフォームを包むエコ システムの観点からアプローチする。 ・・・Tiwana et al,(2010) – ソフトウェアベースプラットフォームに重点 • プラットフォームやエコシステムが市場や産 業の進化を形作る際の意義の認識が重要で ある。 ・・・Tiwana et al,(2010) 次ページ 13

14.

進化の力学 Amrit Tiwana Georgia大学 教授 Management Information Systems ⚫進化の比率 ⚫包囲 ⚫派生的変異 ⚫生存率/死亡率 ⚫持続力 長 期 短 期 ⚫合成可能性 ⚫可塑性 Tiwana, A., Konsynski, B., and Bush, A. 2010. “Coevolution of Platform Architecture, Governance, and Environmental Dynamics,” Information Systems Research (21:4), pp. 675-687. 2013年刊行 14

15.

既存研究を踏まえた方向性 • 既存研究はサービスイノベーションに直接 焦点を当てておらず、概念の狭い領域に 課題を見出して取り組んでいる。 • より大きな文脈でサービスイノベーション、 特にプラットフォームとエコシステムを位置づけ て論じる必要がある。そうすることで、・・ – (従来克服できなかった)製品とサービスの区別 を克服して、区別無しとし、 – A2Aネットワーク、共創、情報中心、経験重視のイ ノベーティブな視点に現れるが、認識ギャップが 残存し制限が発生していた部分を克服する。 15 R. F. Lusch, S. Nambisan, " Service Innovation: A Service Dominant Logic Perspective", MIS Quarterly, 2015.

16.

SDLの再概念化 • サービスとは:他人や自分の利益のためにリソ ースを適用すること • リソースとは:アクターが支援のために引き出 すことができるもの – 何かがどのように使用されるか、または使用でき ないかの関数で、物そのものの機能ではない。 • オペランドリソース:アクターがサポートを得るために 働くリソース(有形で静的) • オペラントリソース:他のリソースに作用して効果を 生み出すリソース(無形で動的) 16

17.

SDLの再概念化(続) • 交換とは:商品の視点では専門活動の成果 のアウトプット。しかし、サービスの視点では 専門活動のパフォーマンス。これを交換する。 • 価値とは:その提供が顧客や受益者にとって 有益な場合に発生するもの – アクターたちは絶えず新しい結びつきを形成し、 コンテキストは常に流動的であり、経験価値は動 的である。 – 企業は直接価値を提供することができず、単に 価値共創のためにアクターと交流できるのみ 17

18.

SDLの4つのメタ理論 メタ理論名 メタ理論の内容 アクターツーアク ター(A2A)ネット ワーク A2Aネットワーク リソース液化 全てのアクターが他のアクターのネットワーク内で のリソース統合者で、潜在的なイノベーターまたは 価値の共創者となる形態 リソース液化 リソース密度 リソース密度 リソース統合 リソース統合 関連する物理形態または装置から情報を切り離 すこと。この分離は組織のパフォーマンスを高める ため、仮想層と物質層を絡み合わせることを可能 にする。(その結果、デジタル化に付随する社会技 術的プロセスが、新しい社会的つながりと認知モ デルを生み出す助けとなる ・・・Tilson et al.2011) 希望するサービス提供のためのリソースを如何に 迅速に動員できるかの度合い。または、最も効果 的かつ効率的にリソースを動員できる手法やアル ゴリズム、あるいはその成果 全ての社会的、経済的アクターをリソース統合者と 見做す。(全てのイノベーションは、既存リソースを 再結合した結果・・・Arthur 2009) 18 R. F. Lusch, S. Nambisan, " Service Innovation: A Service Dominant Logic Perspective", MIS Quarterly, 2015.

19.

3.サービスイノベーションの広範な展望 サービスイノベーションとは・・ • 多様なリソースを再構成し他のアクターに価値 を体験させられる新たなリソースを生み出すこと – これは受益者を含むアクターネットワークも包含 • このような概念化にはITの役割が有効 – 受益者の経験価値実現にITの役割・・・Yoo 2010 – 多様なパートナーの取り込みにITの役割 – サービス交換が行われる場で関連するリソース へのアクセスにITの役割 • アクターにはより良い密度を求め価値共創が 改善されるサービスプラットフォームが不可欠 19

20.

サービスイノベーションの広範な展望図 ① 1. A2Aネットワーク 2. 3. ② リソース液化 4. 5. リソース密度 ③ リソース統合 20 R. F. Lusch, S. Nambisan, " Service Innovation: A Service Dominant Logic Perspective", MIS Quarterly, 2015.

21.

① サービスエコシステムとは・・ • 『エコシステムとは、その能力と役割を共 進化させ相互作用するエンティティのコ ミュニティで、全体的有効性と生存のた めに依存し合っているもの』である。 ・・・Iansiti and Levien 2004;他 What the New Dynamics of Business Ecosystems Mean for Strategy, Innovation, and Sustainability • 『サービスエコシステムとは、共有される制度的 論理とサービス交換を通じた価値共創によっ て結ばれた、主に疎結合の社会経済的アクタ ー群の比較的自己完結的、自己調整的シス テム』である。 A2Aネットワーク ・・・Vargo and Lusch(2011) 21

22.

ITの役割探索のための サービスエコシステムの3つの側面 1.構造の柔軟性と完備性:お互いの関係を築き あう大部分が疎結合のシステムであって、価値 観を共有する社会経済アクターの集合とそれに 続くサービス交換の構造を具備すべき 2.共有可能な世界観:相互にかなりの認識ギャ ップを持つ様々なアクター間でも共通の制度的 論理を維持可能にすべき 3.参加のアーキテクチャー:サービス交換を調整 するエコシステム内で共有される制度的論理や アクター間で実施・維持されるルール・原則を順守 すべき 22

23.

第1の側面: 構造の柔軟性と完備性 • サービスエコシステムは、サービス交換と価 値共創に参加する大部分が疎結合の多様な 社会経済的アクターの集合から構成されてい る。 – アクターは比較的自由に出入りし、 – 他アクターと共同作業や交換を行うことも自由 – かなり公平な差配も保有 • そのため、エコシステムの構造的柔軟性と構 造的完備性の双方が必要である。 23

24.

• 構造的柔軟性と適応性は、デジタルインフラ ストラクチャに関するビジネスの敏捷性にも 関係する。・・・Tilson et al.2010;他 – デジタルインフラストラクチャは高度にスケーラブ ルで、アクターの絶え間ない進化をサポート – サービス交換をサポートするダイナミックな接続 性およびその他の機能も保有 • 構造的完備性とは、ネットワーク内で多様な アクターを結び付ける絆や関係性の性質 – 構造的完備性は、アクターに衝撃を与え、その結 果、より魅力的で相互に接着可能な構造の作成 を容易化 24

25.

第2の側面: 共有可能な世界観 • 継続的市場の妥当性と持続可能性を自律的 に感知し対応するアクター群によって自己調 整力が担保される。 ・・・Lusch et al.2010 • デジタル化進展で、アクターは情報をすばや く共有し、より優れたITベースの感覚・応答戦 略によって利益獲得が容易になる。 • 多様なアクターは、『エコシステムの生き残りを 保証する世界観』を共有できる制度的論理を 必要とする。 25

26.

• 共有の認識は、ネットワーク内のアク ターの多様な専門知識と能力間のシ ナジーを生かすために重要である。 ・・・Nambisan and Sawhney 2007 The Global Brain: Your Roadmap for Innovating Faster and Smarter in a Networked World 著者: Nambisan, Sawhney 2007年刊行 • 共有される世界観によって、アクターはリソー ス統合の機会を一貫して解釈し、迅速に連携 してリソース交換/リソース統合ができる。 • ITの役割は様々なアクター間で情報を迅速 に共有可能にするだけでなく、環境の変化を 一貫して観察できるようにすることである。 26

27.

第3の側面: 参加のアーキテクチャー • サービスエコシステムではコラボレーティブな 価値共創を発生させる方法、イノベーション からの「権利」をアクター間で共有する方法を 明確にする必要がある。 • 異なるアクターが集まりサービス交換を行う ためのロードマップ、参加者の貢献が一貫し た方法で調整・統合・同期化される仕組みが 必要である。・・・Nambisan, Sawhney 2007 • これによって、効果的なアクターは、官僚組 織のような強力な指揮統制構造なしに、一層 調和して行動することが可能になる。 27

28.

• アクターの貢献と相互作用の調整を容易にす るために透明な交換規則が必要である。 – サービスエコシステムにおけるオープンなビジネ スプロセスと標準の採用に影響を与える。 • 参加のアーキテクチャーは参加者が交換か ら価値を実現(報酬獲得)する手段を定義す る必要がある。 – ネットワークへの参加を促す様々なタイプのイン センティブ設計から、参加者間で収益や価値を共 有する新たな方法の設計まで • 何れもITによる価値創造の透明性向上で、 共存する価値を公平に共有することが可能に なる。 28

29.

② サービスプラットフォームとは・ • 有形・無形のリソースから成り、アクターとリソ ースの相互作用を容易にするモジュラー構造 – 主な利点は、リソース液化を活用してリソース密 度を向上させること – 日々のサービス交換においてアクターを支援す ること – 相互作用するアクターが新しいソリューションを模 索したり発見したりするサービスイノベーションの 場として機能すること • モジュール化の本質は如何にしてリソース液化 をうまく活用してリソース密度を向上させるか リソース液化 リソース密度 29

30.

第1の側面:モジュラーアーキテクチャー • 階層モジュラ構造は、統合された構造または 単純モジュラ構造よりもリソース密度のレベ ルを向上させる。 – 階層モジュラアーキテクチャは、モジュラアーキテ クチャと階層アーキテクチャのハイブリッド • 階層アーキテクチャでは、各レイヤ ーは異なる階層に関連付けられ、異 なるレイヤーに渡る複数コンポーネ ントは単一の製品によって束縛され ない。 ・・・Yoo et al.2010 30

31.

• 階層モジュラ構造では、各コンポーネントは 不均質な製品の形式およびタイプと容易にイ ンタフェースが取れる。 • 機能設計階層内または複数の設計階層にわ たるコンポーネントを含むサービス交換を容 易にする。・・・Baldwin and Clark 2000 • そして、高度なモジュール性はサービス交換 のより良い調整を可能にし、価値共創のより 多くの機会を創出する。 31

32.

第2の側面: 交換のルール • サービスプラットフォームは交換のための構 造を提供する。 • 階層モジュラー構造はアクターによるリソース 統合の性質を形作ったり統制したりするルー ルの組み込みが可能である。 • 情報セキュリティ、プライバシープロトコルか ら知識管理プロトコルまでのさまざまなIT機能 の実装の意義を明確化できる。 • より高レベルのリソース液化、リソース密度か ら導かれる特性を引き出すのに有効である。 32

33.

③ 価値共創とは • SDLは、アクターの組織化やサービス交換の 場だけでなく、価値共創やリソース統合の基 礎となる活動など暗黙のアクターの役割の探 求を動機づける。 リソース統合 • 全ての社会的・経済的アクターが、様々な種 類のリソースを統合し価値創造する。 • 利益を得るアクター(顧客)は常に価値共創 の一部である。 • また、全ての企業はサービス提供者とサービ ス受益者の二重の役割を担っている。 33

34.

第1の側面:リソース統合における役割 • インターネットやその他のICTの出現に伴い、 顧客価値の共創範囲と深さは急激に変化し た。・・・Nambisan 2002;他 • SDLでは、サービス交換の性質と達成されるリ ソース統合タイプに応じた役割を特定する。 1.アイディア発案者は、既存市場の製品をどうしたら 新しいサービス構想に使用できるかの統合の役割 2. 設計者は、既存の知識あるいはリソースを新サー ビスに混在させたり合致させて提供する役割 3.仲介者は、受益者が複数エコシステムに渡り知識 を相互授受しサービスイノベーションを仲介する役割 34

35.

第2の側面:価値共創のための支援 アクター間の相互作用促進のために・・ • アクターのプラットフォームやリソースへのア クセスを容易化する支援を行う。 • 多様なアクターが相互作用を通してお互いに 学び刺激しあうことでイノベーションを活性化 させる支援を行う。 • コミュニケーションチャネルを多様化させるこ とで知識統合とサービス交換の機会を拡大さ せる支援を行う。 35

36.

S-D 論理とサービスイノベーション(まとめ) テーマ 定義 主要な問題 サービスエコシステ ム Service Ecosystem (S-D Logic: Actorto-Actor network) 共有の制度的論理とサー ビス交換による相互価値 創造で結ばれた、疎結合 された社会経済的(資源 統合的)アクターの比較 的自己完結的で自己調整 的なシステム 1. サービスエコシステムの構造的柔軟性と構造的 完全性の両方を強化する必要がある(また、両 者の潜在的な競合を管理する必要がある)。 2. 認知的に離れたアクター間で共有された世界観 を開発し、維持する必要がある。 3. アクター(複)と彼等のサービス交換を調整する ための参加アーキテクチャを考案し、実装する必 要がある。 サービスプラット フォーム Service Platform (S -D Logic: Resource liquefaction; Resource density) 有形と無形のコンポーネン ト(リソース)で構成され、 アクターとリソース(または リソース束)の相互作用を 容易にするモジュラー構造 1. リソース密度を高める適切なモジュラーアーキテク チャを考案する必要がある。 2. サービスプラットフォームを介したサービス交換のた めの交換またはプロトコルのルールを定義し実装 する必要がある(すなわち、アクター/リソースがプ ラットフォームとどのようにインターフェースできるかを 規定)。 価値共創 Value Cocreation (S-D Logic: Resource integration) リソース統合の基礎となり、 サービスエコシステムに異な るアクターの役割を組み込 むプロセスとアクティビティ 1. (受益者の役割を含む)重要な役割を定義し、 各アクターの役割によって創造された、または共創 された価値の性質を説明する必要がある。 2. (1)多様なアクター間の相互作用を促進する メカニズム、(2)異なるアクター(役割)に対 応するための内部プロセスの適応、(3)サービ スエコシステム内の資源統合活動の透明性の向 上に焦点を当てて、資源統合のための環境整備 36 を行う必要がある 。

37.

『サービスイノベーションの広範な展望』まとめ • デジタル世界でサービスイノベーションは加速 • 殆どのイノベーションは情報の物質からの分離 とグローバル通信ネットワークの急速な発展で 、ますます無形・デジタルで実現可能に • また、社会現象の周辺で創造され、共創されて 来ている 。 • 本稿は、SDLに4つのメタ理論を導入 • また、サービスエコシステム、サービスプラットフォ ーム、価値共創の3つの枠組みは、より大きな 文脈でサービスイノベーションの価値ある洞察 を可能にしている。 37

38.

4.サービスイノベーション・キャンバス SDLベースのデジタルサービスイノベーション・キャンバス 1 サービスエコシステム Service Ecosystem 2 A2Aネットワーク A2A Network A2Aネットワーク 3 構造の柔軟性と完備性 Structural Flexibility and Structural Integrity 共有される世界観 Shared Worldview 5 4 参加のアーキテクチャー Architecture of Participation 6 サービスプラットフォーム Service Platform 7 リソース液化 Resource Liquefaction 8 リソース液化 モジュラーアーキテクチャー Modular Architecture リソース密度 Resource Density 9 交換のルール Rules of Exchange リソース密度 10 11 12 リソース統合 Resource Integration リソース統合 価値共創 Value Cocreation 13 価値共創のための支援 Support for Value Cocreation 38

39.

Uberの場合 項目 内容 備考 1.サービスエコシステム △ 業界(自動車、移動)の激革新力 極めて流動的 2.A2Aネットワーク × Uber(起業家)が単独で作成 他アクター従属 3.構造の柔軟性と完備性 〇 需要に応じた変動価格制 完備性は? 4.共有される世界観 △ Uberと顧客は共有(便利で安価) 既勢力とは軋轢 5.参加のアーキテクチャー △ 運転手はOK/NGの両方か? 賃金に不満 6.サービスプラットフォーム 〇 強力なプラットフォーム力 時価総額7兆円 7.リソース液化 〇 モノは運転手、情報はUberへ Uber支配型へ 8.リソース密度 〇 高度,スマホ電池残量情報なども 個客コントロールへ 9.モジュラーアーキテクチャー ? AWS上に自前ソフト 不明確? 10.交換のルール ◎ スマホ経由で明快 サービス性向上 11.価値共創 〇 価値共創の場の提供は強力 手数料モデル 12.リソース統合 〇 運転手と顧客共創の価値は限定 価値の総量は大 13.価値共創のための支援 ◎ Uberが運転手と顧客を支援 Uber機能強力 現象面、サービス面の記述には有用と思われる側面も有るものの、 ビジネス面(収入、コスト面など)、ビジネスモデル面記述の考慮が少い。 また、新規ビジネスモデル構築のキャンパス的でなくアクター群の定義も抽象的 新サービスの特徴チェックには有効か? 39

40.

Airbnbの場合 項目 内容 備考 1.サービスエコシステム △ 2.A2Aネットワーク × Airbnb(起業家)が単独で作成 他アクター従属 3.構造の柔軟性と完備性 〇 信頼のためのデザイン 信頼性*1 4.共有される世界観 〇 どこでも繋がる世界 Airbnbが構築 5.参加のアーキテクチャー 〇 ホームのようにくつろげる場所 Airbnbが構築 6.サービスプラットフォーム △ 7.リソース液化 △ ホストは家、情報はAirbnb 8.リソース密度 △ ホストの推奨価格アルゴリズム 9.モジュラーアーキテクチャー ? AWS上に自前ソフト 不明確? 10.交換のルール 11.価値共創 △ 12.リソース統合 〇 ホストと顧客共創の価値は限定 13.価値共創のための支援 △ Airbnbがホストと顧客を支援 経験価値次第 Airbnb特有のデザイン性の強いメッセージの記述が上手くできない。 ビジネス面(収入、コスト面など)、ビジネスモデル面記述の考慮が少い。 “社会に有益な何かを行う”などサービスの多様な側面も記述し難い。 40

41.

Platform理論への直接相互作用の導入 専門サービス提供 者 消費者 直接的相互作用 改良 MSP 加入 代替ビジネスモデル 加入 Platform Andrei Hagiu ハーバード・ビジネス スクール準教授 垂直統 合 定義1:2つ以上の異なるサイド間の直接的相互作 用を可能にする。 定義2:各サイドはPlatformに加入(affiliate)する。 41 A. Hagiu, J. Wright, “Multi-sided platforms”, International Journal of Industrial Organization 43 (2015)

42.

相互作用を成立させる信頼性の醸成 Airbnbのアルゴリズムビッグデータモデル クレジットカード パスポート Facebook,LinkedIn 顔写真 過去のクチコミ情報 ゲスト、ホスト相互評 価 ホストサービス評価 ”SuperHost” 総合的背景チェック など 42

43.

『サービスイノベーション・キャンバス』まとめ • 記述能力にまだ欠陥が認められるものの、ビジ エスモデル論などを補完することで、新たなサー ビス分析の手段の一つに成りうる。 • この延長で新たなビジネスモデル論、プラットフ ォーム理論の修正・改善に発展させられる可能 性がある。 • 適応事例は不十分だが、サービスエコシステム 、サービスプラットフォーム、価値共創の枠組み の延長で、より大きな文脈でサービスイノベーシ ョンの洞察を豊にできる。 43

44.

5.今後の動向に向けて プラットフォーム理論の創始者たち A.経済学視点 両面市場モデルとその活用など ロチェ & ティロール(2003) パーカー & ファン・アルスタイン(2005) 1. 市場としてのプラット フォームが如何に異 顧客グループ間取 引を仲介させるか? 2. ネットワーク効果が 如何にプラットフォー ム競争を活性化さ せるか? 2014年ノーベル経済学賞受賞のトゥルー ズ第1大学のジャン・ティロール教授 「プラットフォームの経済学」の創始者 B.経営学視点 リーダーシップ論など ゲイワー & クスマノ(2002) 1. 製品プラットフォーム が如何に企業のイ ノベーションを成功 に導くか? C.工学視点 モジュラー技術アーキテクチャ バルドウィン & ウッドワード(2009) Gawer & Cusumano(2002) Imperial College London 1. 製品プラットフォーム が如何にモジュラー 型製品イノベーション を支援するか? MIT Sloan School Carliss Y. Baldwin 44 Harvard Business School

45.

SDLベースのサービスイノベーション論とプラットフォーム理論との関係 特徴要因 SDLベースのサー ビスイノベーション 論 プラットフォーム論 ベースのサービス イノベーション論 A.経済学視点 B.経営学視点 C.工学視点 ネットワーク効果 ビジネスモデル創 造 モジュラーアーキ テクチャー 考慮せず、 あるいは重視せず 重視する。 最近、A.の学者 がネットワーク効 果万能を修正し出 している。 強い相関をもちつ つ上部構造を拡充 良:階層モジュー ル構造が多様な サービスイノベー ション向けに相性 が良いと判断 『特性:共創(cocreation)を強調す るが、価値創造の プロセスそのもの に重点を置いてお 悪:元々はモノに り、直接的なビジネ 対する概念。階層 ス指向価値の創造 モジュールと言う ではなさそう。』 がSDL固有ではな さそう。 A. C.の流れも踏ま えつつ、リーダー シップ論や個別企 業戦略論にも立ち 入る。 弱い相関をもちつ つ上部構造を拡充 重視せず 強い相関をもちつ45 つ上部構造を拡充

46.

A.経済学視点 デジタル放送業界の分析に用いられた マルチサイデッド・プラットフォーム・モデル MARGHERITA PAGANI Professor at EMLYON Business School (France) DIGITAL MARKETING Margherita Pagani, “DIGITAL BUSINESS STRATEGY AND VALUE CREATION:FRAMING THE DYNAMIC CYCLE OF CONTROL POINTS”, MIS Quarterly, Vol. 37 No. 2, pp. 617-632/June 2013.のp.626 Figure.5

47.

B.経営学視点 新たなビジネスモデル創造は トランザクション型Platform領域で 婚活支援サイト Annabelle47Gawer Big data: Bringing Competition Policy in the Digital Age Understanding Digital Platforms – Prof. A. Gawer – November 2016

48.

まとめと今後の課題 • 多様なサービスイノベーションが登場してきた。 • SDL 論とプラットフォーム理論は重複部分と独 立部分があり、多様なサービスイノベーションを カバーする際、補完関係を期待できる。 – 例えば、SDL論は3種のプラットフォーム視点のいず れとも異なるが、一部はA.経済学視点、C.工学的 視点と重複し、上部構造の内容を充実させている。 • その一方、依然、双方を合わせてもデジタル時 代のニーズに対応不可能な分野も残している。 • 今後更なる詳細化が必要。相互関連要素、メタ 理論を含む構造も今後の材料と考えられる。 48