JABCT49_シンポジウム「認知行動療法のプロセス研究の最前線」_話題提供「認知行動療法のプロセス研究の潮流」

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October 14, 23

スライド概要

日本認知・行動療法学会自主シンポジウム「認知行動療法のプロセス研究の最前線」にて行った発表スライドです。
発表のなかで入りきらなかったスライドも追加しています。

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各ページのテキスト
1.

日本認知・行動療法学会第49回大会 自主企画シンポジウム 認知行動療法のプロセス研究の最前線 話題提供 認知行動療法のプロセス研究の潮流 富山大学学術研究部人文科学系 重松 潤

2.

日本認知・行動療法学会 利益相反(COI)開示 筆頭発表者名: 重松 潤 演題発表に関連し、開示すべきCOI関係にある 企業などはありません。

3.

心理療法のプロセス研究 • プロセス研究の目的 セラピーのどの要素が精神に影響を与えるかを発見すること(Krause, 2023) • 基本的な問い(Krause & Altimir, 2016) • 心理療法において何が変化するのか? • この変化はどのように起こるのか? • 心理療法のプロセス研究は,変化のメカニズムを明らかにするための強力な ツールであり,現時点では広く実施されている • インタラクションや時系列に焦点を当てている • 確実で再現性のある結果はまだ不足

4.

プロセス研究の視点:「マクロ」と「ミクロ」 • マクロなプロセス変数:継続的変化,治療関係(主に治療同盟),治療的介入 • ミクロなプロセス変数:変化のイベント,困難なエピソード(主に不和),治療的介入

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プロセス研究でこれまでわかってること 結論 1. 継続的変化の主な内容は新しい意味の構築である 2. 治療同盟は継続的変化と結果に強く関連している 3. 治療の異なる段階で異なる介入を必要とする 4. 変化のイベントは継続的変化と結果に肯定的な影響を及ぼす 5. 決裂・不和については,重要な事実はその修復である 認知行動療法ではなにがわかっているのか?

6.

そもそも認知行動療法とは? Strunk et al(2021) a. 認知および行動のプロセスが精神病理学の発症と維持に 関与している b. それらのプロセスが精神病理の進行中に存在する可能性が 高いという前提に基づいた心理療法を指す包括的な用語 認知行動的変数や精神病理学的変数の関連性に重きが置かれてきた

7.

認知行動療法においてもプロセス研究への関心は高い

8.

認知行動療法におけるプロセス研究の例 • 慢性腰痛患者のうつ病に対するデジタル認知行動療法における変化のメカニズム:多施設共同無作 為化臨床試験の媒介分析(Lutsch et al., 2023) 調整変数や媒介変数を 設定・検証 どこまでミクロか?

9.

CBTの研究でよく扱われる変数 変数の例 • 注意 • スキーマ • コーピング • アクセプタンス • 脱中心化 • ソーシャルスキル • マインドフルネス • 脱フュージョン • 自動思考 • 行動活性化 などなど… 留意点 • どの変数が(最も)重要かは,セラピーの見立てやターゲットによって変わる • プロセス研究の変数として妥当か? • プロセス研究の手法とマッチしているか?

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関係性への着目 • 心的外傷後ストレス障害の認知行動療法における治療同盟と症状改善の関係を評価(Beierl et al.,2021). • 治療開始時の治療同盟は治療結果を予測する 関係性を変数とした研究の増加 指標の妥当性が課題

11.

認知行動療法におけるプロセス研究の例 • 非癌性慢性疼痛とオピオイド使用障害に対するマインドフルネス認知療法:実現可能性と変化の 知覚プロセスに関する質的パイロット研究(Ellerbroek et al., 2023) インタビュー調査による メカニズムの検証 どこまで実証的か?

12.

認知行動療法におけるプロセス研究の例 • アンへドニアの成人に対する2つの認知行動療法におけるホームワークの遂行と臨床症状に関する個 人内および個人間のダイナミクス解析(Cernasov et al., 2023) 個々の変化のプロセスの理論モデルによって予測される仮説をより直接的にテストできるように 複数のセッションにわたって(前後だけでなく)関心のある構成を評価する必要がある

13.

セッションにおける治療上の変化の探索 Sudden gainへの着目:Lemmens et al.,(2021). • Sudden gain前のセッションで変化への準備性がある • 例:認知:気づき,開放性,行動:代替行動の受容, 望ましい行動の活性化の決意や計画,治療同盟 • 改善が前回のセッションによるものであることを示す報告 • 「自分の否定的な考えが自分の将来に影響を及ぼすかどう かわからないということに,この前のセッションで気づき ました」 • 「何もしないでいるとうつ病が悪化するということに,先 週気づきました。何かしなければいけませんね」 定量・定性的な側面を 研究に組み込む動き • 研究者「このタイプの研究は時間と労力がかかる!!」

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国内でも 定量・定性的な側面を研究に組み込む動きは国内でも始まりつつある

15.

CBTにおける変化のメカニズムの探索における課題と提案 Huibers et al(2021) • CBT はブラックボックスが多い。その治療手順(例:認知的変化を目的とした介入)と, それに伴う変化プロセス(例:認知的変化自体)が区別されることはほとんどない • 治療手順を個人内の治療プロセス(例:ネガティブな思考の減少)と区別すべきである • 変数が何が,誰に,どのような関係的文脈で効果があるのかを検証しなければならない • ランダム化試験の文脈内で実施されている。提案されたメカニズム(介入とは対照的に) を直接操作する,より多くの実験的研究が必要 • 逆因果関係を排除するためにプロセス研究の必要性

16.

認知行動療法におけるプロセス研究の潮流をまとめると… • メカニズム研究と重なる • いくつかのタイプがある 1. 予後予測因子,治療効果の調整要因または媒介要因として機能しうる患者の特徴を 同定することを目的とした研究 2. 心理療法における一般的な関係の過程に焦点を当てた研究(例:共感,温かさ,治療 の目標や課題についての合意として評価されるカウンセリングの基礎的スキル,治療 同盟) 3. 協働的経験主義,ソクラテス的対話,ホームワークのファシリテーションなど, CBTの特定の側面を検討することを目的とした研究 • 患者の特性の指標化やセラピストの能力の評価など方法論的な課題を含んでおり, 克服が試されている

17.

(余談?)心理療法の「ドードー鳥評決」 • 心理療法の効果検証やプロセス研究は70年以上の歴史がある 例えば・・・潜在的な共通要因の存在の検証 • Rosenzweig(1936)Some implicit common factors in diverse methods of psychotherapy: “At last the Dodo said, ‘Everybody has won and all must have prizes.’” • Luborsky et al.,(1975)Is it true that “Everyone has won and all must have prizes” ? →「ドードー鳥評決」… ほんとに共通要因があるのか?? • 心理療法におけるメカニズムに関する明確で強固な研究発見の数が少ない(Hardy & Llewelyn, 2015) 「何が効果があるのか?」に重きがおかれてきた (科学的な)プロセスの記述は比較的少ない

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ちょっとミクロな視点から探索していきたい Total Conviction(腑に落ちる理解) • 行動・感情の変容が期待される情報が個体に入力されたときに, 個体の体験に基づいて行動・感情の変容を促す認知的操作 :experience-based cognitive manipulation (Shigematsu et al., 2022) 仮 説 ソクラテス式質問 セラピスト 腑に落ちる理解 クライエント 時間経過 認知行動的変化 うつの低下

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結び • 刺激ー反応を分析するCBTはそもそもプロセス研究に乗りやすい(はず) • 「時間軸」「ダイナミクス」をどのように検証するかが課題 • 技術の発展によって,研究手法やリサーチクエスチョンも変化しつつある • 研究手法の多様性も訴えられている

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紹介した文献 • Beierl, E. T., Murray, H., Wiedemann, M., Warnock-Parkes, E., Wild, J., Stott, R., Grey, N., Clark, D. M., & Ehlers, A. (2021). The relationship between working alliance and symptom improvement in cognitive therapy for posttraumatic stress disorder. Frontiers in Psychiatry, 12, Article 602648. • Cernasov, P. M., Kinard, J. L., Walsh, E., Kelley, L., Phillips, R., Pisoni, A., Arnold, M., Lowery, S. C., Ammirato, M., Nagy, G. A., Oliver, J. A., Haworth, K., Daughters, S. B., Dichter, G. S., & Smoski, M. (2023). Parsing within & between-person dynamics of therapy homework completion and clinical symptoms in two cognitive behavioral treatments for adults with anhedonia. Behaviour research and therapy, 166, 104322. https://doi.org/10.1016/j.brat.2023.104322 • Ellerbroek, H., Hanssen, I., Lathouwers, K., Cillessen, L., Dekkers, S., Veldman, S. E., van den Heuvel, S. A. S., Speckens, A. E. M., & Schellekens, A. F. A. (2023). Mindfulness-based cognitive therapy for chronic noncancer pain and prescription opioid use disorder: A qualitative pilot study of its feasibility and the perceived process of change. Brain and behavior, 13(7), e3005. https://doi.org/10.1002/brb3.3005 • Huibers MJH, Lorenzo-Luaces L, Cuijpers P and Kazantzis N (2021) On the Road to Personalized Psychotherapy: A Research Agenda Based on Cognitive Behavior Therapy for Depression. Front. Psychiatry 11:607508. • Krause M. (2023). Lessons from ten years of psychotherapy process research. Psychotherapy research : journal of the Society for Psychotherapy Research, 1–15. Advance online publication. • Krause, M., & Altimir, C. (2016). Introduction: Current developments in psychotherapy process research. Estudios de Psicología, 37(2-3), 201– 225. • Lemmens LHJM, DeRubeis RJ, Tang TZ, Schulte-Strathaus JCC and Huibers MJH (2021) Therapy Processes Associated With Sudden Gains in Cognitive Therapy for Depression: Exploring Therapeutic Changes in the Sessions Surrounding the Gains. Front. Psychiatry 12:576432. • Lutsch, A. G., Baumeister, H., Paganini, S., Sander, L. B., Terhorst, Y., & Domhardt, M. (2023). Mechanisms of change in digital cognitive behavioral therapy for depression in patients with chronic back pain: A mediation analysis of a multicenter randomized clinical trial. Behaviour research and therapy, 168, 104369. https://doi.org/10.1016/j.brat.2023.104369 • Shigematsu J and Kobayashi R (2022) Relationship between emotion regulation strategies and total conviction in promoting behavior change. Front. Psychol. 13:941404. • Strunk DR, Lorenzo-Luaces L, Huibers MJH and Kazantzis N (2021) Editorial: Contemporary Issues in Defining the Mechanisms of Cognitive Behavior Therapy. Front. Psychiatry 12:755136. • 横山 仁史, 髙垣 耕企, 神原 広平, 神人 蘭, 岡本 泰昌(2021)動的トピックモデルを用いた心理療法における会話プロセスの量的推定 47.3 認知行動療法研究,