JABCT48_実験研究の魅力と意義_イントロ+話題提供

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July 12, 23

スライド概要

日本認知・行動療法学会第48回大会in宮崎(2022年)で行った発表の資料です。

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各ページのテキスト
1.

日本認知・行動療法第48回大会 自主企画シンポジウム9 2022/10/2(Sun) 11:30~13:00 実験研究の魅力と意義 -認知臨床心理学をもっとCBTに活かしたい- 企画・司会・話題提供: 甲田 宗良 (徳島大学) 企画・司会・話題提供: 重松 潤 話題提供: 富田 望 (富山大学) (早稲田大学) 話題提供: 佐藤 秀樹 (福島県立医科大学) 指定討論: 松本 昇 (信州大学)

2.

シンポジウムの企画趣旨と目的 認知臨床心理学 ◼ 認知心理学的観点から精神疾患のメカニズム に迫る分野 ◼ 主に実験手法がベース 認知臨床心理学は, 認知行動療法の発展に多大な貢献を果たしてきた

3.

CBTと 実験精神病理学

4.

CBTと 実験精神病理学 • 認知行動療法は臨床家がクライアントの症状を軽減するために目標とする 主要なメカニズムを特定する実験から生まれた • オープンで透明性のある実践,多様なサンプルの優先順位付け, 特定のCBT技法の効果の検証などが実験精神病理学研究の分野でも必要 • 歴史的に研究されてこなかった,あるいは 維持メカニズムが十分に理解されておらず,治療効果を妨げている

5.

CBTと 実験精神病理学 • 臨床心理学における基礎研究の重要な目的は, 精神病理学に関与する重要なメカニズムの理解を深めることに基づいて, 臨床実践を改善すること • 基礎研究と介入法の開発との間に非常に強い関連性を示した治療法は23%に 過ぎず,さらに強い関連性を示したのは20%にとどまる

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現状どうなのか? 行動療法研究(1巻~43巻),認知行動療法研究(44巻~48巻):全48巻, 計1035報を分類 • • • • • • • 調査 = 調査研究 介入 = プログラム等を複数人に行い,統計解析をしている研究 実験室実験 = 実験室および特定の統制された環境で変数の操作もしくは 観察を行っている研究 事例 = 単一もしくは少数事例 メタ分析 展望 = 総説やレビュー その他=巻頭言,コメント論文,シンポジウム報告等 〇研究Ⅰ・Ⅱで調査,実験とまたがっているものは実験に換算 〇総説と事例報告を行っている者は事例報告に換算 〇シンポジウム報告とそれに関連した論文と明示してあるものは「その他」に分類

7.

現状どうなのか? 行動療法研究(1巻~43巻),認知行動療法研究(44巻~48巻):全48巻, 計1035報を分類 行動療法コロキウム報告 掲載開始

8.

現状どうなのか? 行動療法研究(1巻~43巻),認知行動療法研究(44巻~48巻):全48巻, 計1035報を分類 現在と掲載形式が 異なる

9.

現状どうなのか? 行動療法研究(1巻~43巻),認知行動療法研究(44巻~48巻):全48巻, 計1035報を分類 • 2回ほど実験室実験の 波があった 現在と掲載形式 が異なる 2巻分 要因 • 統計手法の発展による 調査法および介入研究 (縦断データ)の台頭 • 「プログラム」の啓蒙

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シンポジウムの企画趣旨と目的 • 近年,CBTを発展させるに至る認知臨床心理学的な実験研究 が盛んに行われているとは言い難い。 • もちろん,昨今様々な研究手法が飛躍的に進歩しており, 実験研究だけが選択肢ではない。 • しかし,実験研究を選択するプライオリティが高いこともある。  認知臨床心理学的な実験研究を行う魅力と意義(と課題)を 議論する

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話題提供者 (敬称略) 重松 潤 富田 望 富山大学 早稲田大学 感情制御方略と 情報処理スタイル 社交不安症と自己注目 佐藤秀樹 甲田宗良 福島県立医科大学 抑うつと反すう 徳島大学 エピソード的未来思考と 食関連行動 なぜ実験研究を行ったのか,その具体的な研究成果とともに話題提供を行う

12.

指定討論者 (敬称略) 松本 昇 信州大学 国内外で精力的に認知臨床心理学的研究を 展開している松本氏に指定討論をいただく。 ※今回はオンラインでのご参加となります。

13.

日本認知・行動療法第48回大会 自主企画シンポジウム9 「実験研究の魅力と意義-認知臨床心理学をもっとCBTに活かしたい-」 話題提供 感情心理学の視座から実験研究を考える -感情制御方略と情報処理スタイル- 開示すべきCOIはありません 富山大学学術研究部人文科学系 重松 潤

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感情制御(Emotion regulation) 自身の感情の強度や持続時間を増大,低減させる過程(Gross, 2013, 2015) 恐怖 situation attention appraisal response

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代表的な感情制御方略 (Gross, 2013) 認知的再評価 (cognitive reappraisal) 状況や思考について別の観点から捉え直す(解釈しなおす)方略 • 失敗があったからこそ,もっと自分は成長できる 気晴らし (distraction) 注意をネガティブな感情や思考からネガティブでない対象に移行する方略 • 嫌な気分になったので,運動をする 抑制(suppression) 行動面で情動を誘発する出来事について反応する方法を変化させる方略 • 友人への怒りを表情に出さないようにした

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特に認知的再評価の精神健康へのポジティブな影響が知られているが… ✓30~50%の人が認知的再評価によってネガティブ感情が増加 ✓認知的再評価を試みた人の半数近くが上手くできたか自信はない ✓強い感情喚起刺激に対しては難しい(逆に抑うつが増加することも) ✓ 状況によっては再評価は認知資源を気晴らし以上に消費 • 認知的再評価は誰でも容易に行える方略というわけではない • 影響する要因を同定することは,臨床的にも意味がありそう • メカニズムの解明が必要 Troy et al., 2013; Troy et al., 2010;Ford et al., 2017;Sheppes, 2014; Sheppes & Meiran, 2008; Sheppes & Meiran, 2007などを参照

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感情制御のメカニズムのヒント-腑に落ちる理解- 腑に落ちる理解 Total Conviction • 行動・感情の変容が期待される情報が個体に入力されたときに, 個体の体験に基づいて行動・感情の変容を促す認知的操作 :experience-based cognitive manipulation (Shigematsu et al., 2022) • 「わかるけど,なんだかなあ」 ← × • 「なるほど!!」 ← 〇 • 顕在的な行動のみならず私的出来事(認知事象)への影響も。 • 「理屈はわかるんだけど,なんだか納得できない」という状態 ⇒問題に対する持続した反復性思考が生起していると考えられる • Total Convictionは,疑問をもたないor解消されている状態の理解 • 行動変容に影響する情報処理スタイル(伊藤,2009;重松,2020)

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Shigematsu・Kobayashi(2022) 感情制御方略と腑に落ちる理解の関連 冷水への入水時間の変化を算出 コ ー ル ド プ一 レ回 ッ目 サ ー 課 題 冷 有た 効い 水 性に を手 教を 示浸 す コ ー ル ド プ二 レ回 ッ目 サ ー 課 題 デ ブ リ ー フ ィ ン グ 腑に落ちる理解をしているほど入水時間が延長 腑 に の落 測ち 定る 理 解

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Shigematsu・Kobayashi(2022) 感情制御方略と腑に落ちる理解の関連 抑制的な方略を取りやすい個人は, 苦痛に対する意味づけがしづらかった可能性

21.

Shigematsu・Kobayashi(2022) 感情制御方略と腑に落ちる理解の関連 腑に落ちる理解を伴った認知的再評価(認知変容)×表出抑制(反応調節) →行動変容

22.

感情制御方略がうまく機能するには・・・ • 認知的再評価が機能するには「腑に落ちる理解」が重要 • 実験場面でいざ認知的再評価をしようとしても, 情報へ腑に落ちることは難しい • 抑制的な方略のみでは行動変容は難しい • 感情制御の各段階での方略の成功が行動変容に重要

23.

感情制御方略がうまく機能するには・・・ • 認知的再評価が機能するには「腑に落ちる理解」が重要 臨床でもリハーサルが必要 • 実験場面でいざ認知的再評価をしようとしても, 例:認知再構成 情報へ腑に落ちることは難しい 対案:マインドフルネス 般化の難しさ • 抑制的な方略のみでは行動変容は難しい スキルの組み合わせ • 感情制御の各段階での方略の成功が行動変容に重要

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ヒントはちりばめられている • 臨床的な現象と対応させることができるのか検証が必要 • そのまま説明を臨床的な現象に当てはめるのは注意が必要 • 臨床的にありそうな基礎的知見はあふれている (例:「洞察問題解決」「認知バイアス」「記憶」などなど) • ただし,本当に当てはまるのか,検証を行わないと本来説明には使えない (はず) • 「現象のメカニズムがどのように示唆されてきたのか」の 「どのように」の部分を援用する • 本来,心理屋が得意な部分(だと思う)

25.

(寄り道)拡張版プロセスモデル Ford et al.,2019 識別 選択 実行 V 感情の評価 V 使用し得る 方略の評価 V 使用し得る 手段の評価 P 感情の 知覚 A 制御目標の 活性化 A 方略使用 目標の活性化 W 制御目標 V P P 使用し得る 方略の知覚 P 使用し得る 手段の知覚 A 方略使用 手段の活性化 W 方略使用の 目標 A W 感情生起 モニタリング おそらく実証研究が今後追加されていく そこに臨床的観点を同時に追加していくことで,モデルが臨床的現象から離れるのを防ぐ

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(寄り道)シロクマ実験 Wegner et al.,1987 • 参加者は5分間,思い浮かんだことを言語化してテープレコーダーに吹き込む • 抑制段階で『シロクマ』が思い浮かんだり,『シロクマ』と言ってしまったりしたら,ベルを鳴らす 練習 初期抑制条件 初期表出条件 「シロクマ考えないで」 (抑制) 「シロクマのことを 考えて」 (表出) 「シロクマのことを 考えて」 (表出) 「シロクマ考えないで」 (抑制) 気晴らし条件 「シロクマ考えないで」 「もし思い浮かんだら 赤いフォルクスワーゲ ンのことを考えて」 (気晴らし) 「シロクマのことを 考えて」 (表出) 抑制段階のシロクマ想起 • 平均6.15回/5分 • 初期抑制条件>初期表出条件 • 気晴らし条件と初期抑制条件に 有意差なし 表出段階のシロクマ思考時間 • 初期抑制条件>初期表出条件 ≒気晴らし条件 • 初期抑制条件のリバウンド効果と, 気晴らし条件によるリバウンド効 果の低減 よく知られた現象 しかし,その手続きを知らないと誤解を招く

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基礎と臨床 • それぞれの分野で(例:学習・認知・臨床),想定している現象が 異なることがある(同じように見えても) • 「あえて」シンプルなパラダイムで精神病理学的な事象を検討することに 意味がある(と思う) • そのため基礎→臨床とはすぐにはならない • アナログ研究としてそれぞれの知見(方法論)を活用する • 一つの視点として認知・感情心理学の知見を利用することを提案

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実験研究について考えてみた 魅力 • 操作を体験できる • 操作に必要な統制要因等の見極めをするトレーニングになる(もちろん倫理観をもって) 意義 • 認知行動療法には「予測と制御(影響)」の考え方がある • これはそのまま心理学の学問的な理念と通ずる ⇒ 心理学実験が活かされる 課題 • 実験のノウハウは口承的な部分がある点は否めない • 実験にしろなんにしろ「経験がない」から踏み出せない ← 一歩目をいつ経験するか ← 再現性のある記述の必要性

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結び • 認知行動療法と実験研究は親和性が高い(はず) • 実験研究,確かに大変 • • • • • 「参加者集めなくちゃ…」 「手続きあってるのかな…」 「予備実験,全然思った感じじゃない…」 「時間が…」 「手,冷た…」 • なにより現象を自らの目で見て確かめられるのは, 代えがたい体験 • もちろん,リサーチクエスチョンに対して 妥当な手法を用いることが優先される

30.

ご清聴ありがとうございました 本発表にあたってご協力・ご助言を賜りました 小林亮太先生(福岡県立大学), 坪見博之先生(富山大学)・佐藤徳先生(富山大学) および富山大学の藤森早紀さん,林藤美月さん,河合晃平さんに 心より御礼申し上げます。