因果推論(2022/05/15)

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May 15, 22

スライド概要

因果推論の考え方,Bradford Hillの基準について説明します.

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東京在住の総合診療医です.根拠に基づいた医療(EBM)の方法論を専門にしています. EBMer/EBM educator & Family Physician at Community Teaching Hospital in Tokyo. Podcast 「EBM stories: A podcast by enango 」https://anchor.fm/enango 「にゃんごう&いがさんの EBMerな夜」https://anchor.fm/ebmersnight

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各ページのテキスト
1.

EBMミニレクチャーシリーズ 因果推論 南郷 栄秀

2.

関連性と因果関係 関連性 • 臨床研究の結果明らかにされる曝露 とアウトカムの間にある関係性 • 交絡因⼦の影響により⾒かけの関連 性がありうる • 曝露とアウトカムが原因と結果の 関係になっていること 因果関係 • 臨床研究の結果から直接明らかには できない • 本当に知りたいのはこちら 関連性と因果関係は異なることに注意

3.

Bradford Hill 1897-1991 英国の統計学者

4.

Bradford Hillの基準 • ⼀貫性Consistency • 強固性Strength of association • 特異性Specificity • 時間的関係Temporality • 整 合 性 , ⽣ 物 学 的 説 得 性 , 類 似 性 Coherence, Biological plausibility and Analogy • ⽤量反応関係Dose‐response relationship • 実験的根拠Experiment 元は9項⽬,すべてを満たす必要はない

5.

⼀貫性Consistency • 対象者,場所,時を変えても,⼀貫性を 持って,曝露因⼦とOutcomeの間に関連性 が認められれば,因果関係がある可能性 が⾼い • 複数の研究で似たような結果が出ていれ ば,⼀貫性が存在する • GRADE approachでは,Grade downの1要因 になっている

6.

強固性Strength of association • 曝露因⼦のある群のOutcome発⽣率が,曝露 因⼦を持たない群のOutcome発⽣率よりも ⾼いほど,因果関係が存在する可能性が⾼い • つ ま り , OR が ⾼ い ほ ど , 因 果 関 係 が あ る 可能性が⾼い • ⼀般的には,OR>3ならバイアスによる影響 は少なくなると考えられるが,明確な基準は ない • Grade approachでは,Grade upの1要因になっ ている

7.

特異性Specificity • 曝露因⼦とOutcomeの間に1︓1の対応関係 があるということ • 理想的には1︓1の対応となるべきだが, 慢性疾患を始めとする多くの疾患では, 複数の原因で起こるため,特異性がなく ても因果関係を否定できない • Hillの時代は感染症が多かったため,病原 体と疾患との関連が注⽬されていた

8.

時間的関係Temporality • 曝露因⼦は常にOutcomeの発⽣に先⾏する • これは,因果関係を証明するためには 必須である • 横断研究では,どちらが先に存在して いるか分からないため,因果関係を証明 しにくい • RCTやコホート研究では,研究開始時に Outcomeが発⽣していないことを確認して いるので,時間的関係は保証される

9.

整合性,⽣物学的説得性,類似性 Coherence, Biological plausibility and Analogy • コホート研究や症例対照研究で証明され た関連性が,疾患の⾃然史や⽣物学に おいて真実として考えられている事柄, 病態⽣理などと⽭盾しなければ,因果 関係が存在する可能性が⾼い • Hillが最初に因果推論の9項⽬を提唱したと きにはこの3つは区別されていたが,現在 ではほぼ同義で⽤いられている • Grade approachでは,Grade downの⾮直接 性として検討している

10.

⽤量反応関係 Dose‐response relationship • 喫煙量やなどといった曝露因⼦が量的なもの である場合,その量とOutcomeの発⽣頻度 との間に⽤量・反応関係があれば(曝露因⼦ の量が増えればOutcomeの発⽣率も増える), 因果関係は⽀持される • 交絡因⼦とOutcomeの発⽣率の間に⽤量反応 関係がみられる場合もあるため,⽤量反応 関係があるだけでは,因果関係があるとは いえない • Grade approachでは,Grade upの1要因になっ ている

11.

実験的根拠Experiment • 曝露因⼦とOutcomeとの関連性を,動物 実験でシミュレーションできる場合は, 因果関係が⽀持される • また,臨床研究などの介⼊研究も証明⼒ が⾼い

12.

まとめ • 関連性と因果関係は異なる • 因果関係の推定,すなわち因果推論は Bradford Hill の基準を考慮する • すべてを満たす必要はないが,項⽬が 多いほど因果関係が成⽴する可能性が ⾼い

13.

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14.

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