研究デザイン(2022/05/15)

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May 15, 22

スライド概要

研究デザイン(2022/10/1)からのアップデートです.
ランダム化比較試験,コホート研究,症例対照研究,横断研究の説明を中心に基本的な研究デザインを整理します.

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東京在住の総合診療医です.根拠に基づいた医療(EBM)の方法論を専門にしています. EBMer/EBM educator & Family Physician at Community Teaching Hospital in Tokyo. Podcast 「EBM stories: A podcast by enango 」https://anchor.fm/enango 「にゃんごう&いがさんの EBMerな夜」https://anchor.fm/ebmersnight

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各ページのテキスト
1.

EBMミニレクチャーシリーズ 研究デザイン

2.

研究デザイン • 臨床研究には,様々な方法がある • どのような疑問か(=どのようなPICOか) によって,その疑問を解決するために行 われる臨床研究として,最適な方法は異 なる • 疑問を解決する際には,研究デザインの 理解が必要

3.

研究デザインの種類 準ランダム化比較試験 症例報告 症例集積研究 介入前後比較試験 コホート研究(CS) 横断研究 症例対照研究(CCS) ランダム化比較試験(RCT)

4.

研究デザインの3分類 ジ ①時間軸 縦断研究 Longitudinal study 横断研究 Cross-sectional study ム ②時間軸の向き 前向き Prospective 後ろ向き Retrospective カ ③研究者の関与 観察研究 Observation study 介入研究 Intervention study

5.

分類①:時間軸(ジ) • 縦断研究 – 現在を起点に,時間軸に沿って前向き,または後 ろ向きに経過を追ってその結果や因子について 測定する研究 – 観察研究と介入研究の両方 • 横断研究 – 時間軸を横断して,ある1時点でのみ観察,測定 する研究 – 観察研究のみ

6.

分類②:時間軸の向き(ム) • 縦断研究のみ • 前向きprospective – 現在を起点に,時間軸に沿って将来に向かって に経過を追ってその結果について測定する • 後ろ向きretrospective – 現在を起点に,時間軸に沿って過去に遡って 経過を手繰ってその因子について測定する • 違 い は , 研 究 開 始 時 点 で 既 に outcome の 発症の有無が明らかになっているか否か

7.

分類③:研究者の関与(カ) • 観察研究 – 研究者が対象者に介入を加えず,経過を追って 起こっていることを観察,記述する研究 • 介入研究 – 研究者が対象者に介入を加え,経過を追って その介入による結果を測定する研究

8.

分類③:研究者の関与(カ) • 観察研究 • 介入研究 – コホート研究 – ランダム化比較試験 • 前向きコホート研究 – 準ランダム化比較試験 • 後ろ向きコホート研究 – 介入前後比較試験 (One arm trial) – 症例対照研究 • コホート内症例対照研究 – 症例集積研究 – 症例報告

9.

過去 現在 (後ろ向き) 後ろ向きコホート研究 未来 (前向き) ランダム化比較試験 コホート研究 症例対照研究 コホート内症例対照研究 横断研究

10.

ランダム化比較試験 治療群 + イベント あり - イベント なし + イベント あり - イベント なし ランダム割り付け 対照群 (現在) 前向き! (未来)

11.

コホート研究(前向き) 対象患者 + 危険因子 あり - + 危険因子 なし - (現在) 前向き! (未来)

12.

後ろ向きコホート研究 対照患者 + 危険因子 あり - + 危険因子 なし - (過去) 後ろ向き! (現在)

13.

コホート研究の結果 曝露あり 曝露なし 計 アウトカム 発生 a c a+c アウトカム 計 発生せず b a+b d c+d b+d a+b+c+d 発症率 曝露群 a/(a+b) 非曝露群 c/(c+d) リスク比(risk ratio: RR) a/(a+b) c/(c+d)

14.

症例対照研究 曝露因子 あり + 象 × 症例 曝露因子 なし - 曝露因子 あり + 対照 曝露因子 なし (過去) - 後ろ向き! (現在)

15.

症例対照研究の結果 症例 対照 計 曝露あり a b a+b 曝露なし c d c+d 計 a+c b+d a+b+c+d 症例/対照の中の曝露ありのオッズ 症例群 a/c 対照群 b/d オッズ比(odds ratio: OR) a/c b/d = ad bc

16.

後ろ向きコホート研究と症例対照研究 • 後ろ向きコホート研究 – 既に存在するコホートを利用する – 集団全体に対する病気を持つ人の割合が求まる →発症率が求まる • 症例対照研究 – 新たにデータを集める – 症例を集めて,それに対して対照を選ぶ – 症例と対照の割合は研究者が決められる →発症率を求めることができない

17.

後ろ向きコホート研究と症例対照研究 疾患あり 疾患あり 疾患なし 疾患なし 全員を解析する 一部の人だけ解析する 後ろ向きコホート研究 症例対照研究

18.

リスク比とオッズ比 曝露あり 曝露なし 計 アウトカム 発生 a c a+c アウトカム 計 発生せず b a+b d c+d b+d a+b+c+d リスク比(risk ratio: RR) a/(a+b) a(c+d) = c/(c+d) (a+b)c もし稀な疾患ならば,a≪b,c≪dなので, ad a+b≒b,c+d≒dと考えられ,リスク比は bc

19.

リスク比とオッズ比 • 稀な疾患のコホート研究のリスク比(RR) a/(a+b) ad RR= → c/(c+d) bc • 症例対照研究のオッズ比(OR) ad OR= bc 稀な疾患では,リスク比とオッズ比は近似可能

20.

3種類のバイアス • 選択バイアス – 患者の選び方に偏りを生じる • 情報バイアス – 曝露因子やアウトカムの測定を行うときに,情報が あることで測定結果に手心が入る • 交絡因子 – 曝露因子とアウトカムの両方に関連がある別の因 子の介在で,幻の関連性が生まれる

21.

バイアスに対する対処法 研究方法 選択バイアス 情報バイアス RCT コホート研究 症例対照研究 ◎ △ ランダム抽出 マッチングなど ○ ○ ○ マスキング マスキング マスキング △ △ 多変量解析 多変量解析 △ ◎ 交絡因子 ランダム割 付け

22.

疑問のカテゴリーと研究デザイン カテゴリー 効果を検証するために PubMed検索の際の検索語 最も適した研究デザイン 治療・予防 ランダム化比較試験 RCT(フィルター) コホート研究 病因・予後 (ランダム化比較試験) Cohort studies[MeSH] risk factors 診断 横断研究 Sensitivity and Specificity[MeSH] (ランダム化比較試験) ランダム化比較試験 RCT,CS,CCS,risk factors 害・副作用 コホート研究,症例対照 / adverse effects(subheading) 研究 RCT: Randomized controlled trial,CS:Cohort study,CCS:Case-controlled study

23.

研究デザインマップ 治療・予防 ランダム化比較試験 前向き コホート研究 病因・予後 後ろ向き 研究の方向 過去のコホート 後ろ向きコホート研究 新規の調査 症例対照研究 病因・害 縦断研究 一時点 横断研究 診断

24.

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25.

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