ゼロつくBM図解の解説

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January 14, 23

スライド概要

『ゼロからつくるビジネスモデル』東洋経済新報社、の付録で紹介したツールです。ビジネスモデルの分析や設計に役立ちます。CC BY 4.0なので、「井上達彦研究室のゼロつくBM図解」と引用の上ご自由にお使いください。

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複雑で模倣困難な「ビジネスモデル」をいかにして構築し、いかにして保つか、そしてその為の組織作り。これが私たちの研究テーマです。なかなか模倣できないビジネスモデルであっても、ゼロから創り上げられているとは限らない点です。むしろ、海外から移植されたり、異業種から移植されたりして築かれることが多いように思われます。言葉を変えれば、大なり小なり模倣によって築かれているということです。その移植や模倣のプロセスで、さまざまな試行錯誤を積み重ね、誰にも真似されないようなものに発展させるのです。模倣できないビジネスモデルが模倣によって築かれるという、模倣のパラドクスです。

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関連スライド

各ページのテキスト
1.

The Complete Guidebook for Business Model Design ゼロつく BM図解 模倣と組み合わせのための ツールボックス 早稲田大学商学部/商学研究科 井上達彦研究室 Waseda University Tatsuhiko Inoue lab. CC BY 4.0 解説と基本パターン

2.

ゼロつく BM 図解とは ビジネスモデル図解 井上達彦研究室 0.

3.

ビジネスモデルとは • どのように価値を創造し顧客に届け、 • 自らも収益として獲得するかを • 論理的に記述したもの 出典:オスターワルダー&ピニュール(著)、小山隆介(訳)『ビジネスモデルジェネレーション』翔泳社 システマティックレビューによれば、ビジネスモデルは「価値の創造」「価値の提供」「価値の獲 得」の3つの構成要素から定義される(Wirtz et al., 2016)。前者の2つは同一視されることも多い。 実務的にわかりやすくするため、「価値の創造」と「価値の獲得」の2つとして単純化する。 3

4.

学ぶ意義 1. ビジネスの仕組みがわかる 2. 分析・評価・設計できる 3. 試作によって必要な資源を集められる 4. 承継や売却が容易になる いずれの場合も図解化することが大切 画像:unsplash 4

5.

BM図解とは ビジネスモデルの基本パターンをもとに、自らパターン化するためのツール 事業系統図を基本パターンを照らし合わせて作成することも可能。 儲けの構造を視覚化することで、分析・発想・試作・検証が円滑になる。 5

6.

BM図解の特徴 BM図解は基本パターンをもとに、自らパターン化することを目的として考案されたツール。基本パター ンは学術研究に依拠して提示されている。 レゴブロックのようにモジュール化することで、モジュールごとに理解したり、モジュールごとに組み合 わせて設計できる。 表記ルールを定めることでミスコミュニケーションを防ぎ、比較・提案・評価を容易にする。分析対象を 広げてDB化することも可能 一般的な表記ルールをもとにすることで利用者の裾野を広げる一方で、そのルールに最小限の工夫を加え ることで表現できる範囲を拡大。 個々人のビジネスモデルの理解はもちろん、チーム/部門など集団/組織のコミュニケーションに役立て られる。

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レゴブロックのように

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ゼロつくBM図解は、主に3冊の書籍と 3本の論文をもとに構築された 書籍 ・ 基本の枠組:板橋悟『ピクト図解』ダイヤモンド社 ・ 戦略の打手:楠木建『ストーリーとしての競争戦略』東洋経済新報社 ・ 循環の論理:ピーター・M・センゲ『学習する組織』英治出版 学術論文 ・価値の創造:Amit & Zott (2001), Amit & Zott (2015) ・価値の獲得:Cusumano et al. (2019), Tidhar and Eisenhardt (2020), 川上 (2019) ・図解の整理:Tauscher and Abdelkafi (2017)

9.

ゼロつく3種のBM図解 1. 「取引の図解」:静態の簡略版 ✓事業系統図のパターン化 ✓矢印の違いで関係性の違いを表す ✓レゴブロックのように組み合わせやすい基本図形 ✓基本パターンと応用パターンを提供する 2. 「打手の図解」:アクションを含む ✓戦略的な打ち手を示す 3. 「循環の図解」:動態の詳細版 ✓好循環の論理を組み込む CC BYのツールとする 井上達彦研究室 or Waseda University Tatsuhiko Inoue lab. CC BY 4.0 Shutterstock購入画像

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学術と実践、BM図解の未開拓領域を埋める グローバルな未開拓領域 要素の配置 Tauscher and and Abdelkafi(2017)によると ・取引構造 ・因果関係 双方を描き出す図解は存 在しない。 取引の構造 因果の関係 「ゼロつくBM図解」は この空白を埋める。 詳しくは井上・近藤・坂井 (2023)を参照 出典:Tauscher and and Abdelkafi(2017), p.167を一部補足

11.

BM図解のツールボックス 表記ルール ビジネスモデル図解 井上達彦研究室 1.

12.

図解のツール①アクター(登場人物) 供給 業者 企業 顧客 供給業社 など 企業 (自社) 顧客 個人/法人 レゴブロックのように組み合わせて設計することを念頭に四角形で示す。 12

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図解のツール②リレーション(関係性) テキスト テキスト テキスト ¥ ¥ ¥ 交換関係 継続関係 補足説明が必要な関係 ・代金と引換 ・料金と引換 ・リカーリング ・定期的な課金 ・フックとなる製品サービス (ユーザーが定義可能) テキスト ¥ 利益貢献高い 利益への貢献度を示したい場合、 図中の矢印の大きさ/線の太さ によって違いをつける。 13

14.

図解のツール③ループ(因果循環) テ キ ス ト ( 打 ち 手 X ) ¥ 因 果 を 説 明 す る テ キ ス ト 好循環 打ち手 打ち手Xによって¥が増加 14

15.

図解のツール④詳細表記 企業A 注) 主要 事業 全体の利用者 データ 一部の 利用者 事業 まとめ 複数事業を切り分けて 表現する場合 ターゲット顧客 テキストで説明を 加える場合

16.

デコレーション例 知財フリーの素材を用いる(MSユーザー)

17.

例:メルカリ 仲介モデル/マッチングモデル(三者間市場) メルカリ ¥販売手数料 出品の場 (代金10%) 注1) ¥0 購買手数料 購入の場 注1) 出品が簡単。価格 は自分で決めるら れるので、オーク ションのように変 動しない。 出品 利用者 商品 ¥商品代金 購買 利用者

18.

例:GEのジェットエンジン事業 合算モデル(販売+サービス+メンテナンス) ジェット エンジン ¥ 注1) メインテナンス GE ¥ コンサルティング サービス ¥ 注1) 航空機 メーカー エンジン本体そのもの より、アフターサービ スやコンサルサービス で利益を伸ばしている。

19.

例:GEのジェットエンジン事業 合算モデル(販売+サービス+メンテナンス) GE 注1) 製造 ジェット エンジン ¥ 注1) 3つの事業はそれぞれ 性質が異なるので、社 内には3つの異なる部 門が収益責任を負う。 メインテナンス メインテ ナンス ¥ コンサルティング サービス コンサル ¥ 航空機 メーカー

20.

BM図解の基本 パターン ビジネスモデル図解 井上達彦研究室 2.

21.

ビジネスモデル図解 井上達彦研究室 価値の創造と獲得 基本2軸

22.

ビジネスモデルとは(再掲) • どのように価値を創造し顧客に届け、 • 自らも収益として獲得するかを • 論理的に記述したもの 出典:オスターワルダー&ピニュール(著)、小山隆介(訳)『ビジネスモデルジェネレーション』翔泳社 最近の研究では、ビジネスモデルの構成要素は「価値の創造」「価値の提供」「価値の獲得」の3つ だとされる(Wirtz et al., 2016)が、前者の2つを集約して議論されることも多い。実務的にわかりや すくするため、「価値の創造」と「価値の獲得」の2つとして単純化するというスタンスをとる。 22

23.

価値創造と獲得の2軸 (1) 価値創造の源泉 (2) 価値獲得の方法 ・コンテンツの力(独自性) ・価値連鎖 ・引き合わせる力(効率性) ・リカーリング ・組み合わせの力(補完性) ・三者間市場 ・つなぎとめる力(ロックイン) <ポイント> 1. ビジネスモデルの定義(価値創造と獲得の構造)から分類する。 2. 取引構造に注目するが収益モデルのみにフォーカスを当てない。 3. ビジネスモデルとしての価値創造や価値獲得に注目する。 Shutterstock購入画像

24.

ビジネスモデル図解 井上達彦研究室 基本9分類

25.

★基本9分類(実務家向けの表現) ⑴ 価値の創造 ⑵ 価 値 の 獲 得 単体の力 引き合わせの力 組み合わせの力 コンテンツの独自性を活用 情報の非対称性を活用 補完性を活用 価値連鎖 ①製造販売 ②小売 ③合算 リカリング ④継続 ⑤フリーミアム ⑥設置ベース 三者間市場 (リースやライセンス含む) ⑦広告 (媒体の単体の力) ⑧マッチング (保守や消耗品含む) ⑨補完財 プラットフォーム 作成:井上達彦研究室 (Amit&Zott, 2001とTidhar&Eisenhard, 2020などに依拠)

26.

井上達彦 研究室 単体の力 引き合わせの力 組み合わせの力 製造販売モデル 流通小売モデル 合算モデル 継続モデル フリーミアムモデル 設置ベースモデル マッチングモデル 補完財プラットフォームモデル 価 値 連 鎖 リ カ ー リ ン グ 広告モデル 三 者 間 市 場 作成:井上達彦研究室(Amit&Zott, 2001とTidhar&Eisenhard, 2020などに依拠)

27.

ビジネスモデル図解 井上達彦研究室 ①製造販売モデル

28.

価値連鎖 ①製造販売 製品やサービスを開発・製造し、ユーザーに提供して対価を受け取るビジネスモデル。 例)アパレル、家電、自動車など製造業全般、ならびに外食などのサービス業。 ◆ 製品やサービスそのものの魅力で勝負するビジネスモ デル。製品・サービスに魅力があることが前提。 ◆ 大量生産でコストを下げたり、独自技術で差別化 するなど、ライバル他社のものと比べて、価格面や機 能面で優れていることが望ましい。 ◆ 収益を伸ばすことで、再投資が進み好循環が生ま れる。 ◆ ノウハウを活用しつつ類似製品を開発したり、他のビ ジネスモデルを組み合わせて収益性を高める。 作成:井上達彦研究室 28

29.

「取引の図解」 製造販売モデル:取引図 製品 サービス 製造 企業 顧客 ¥

30.

「打手の図解」 製造販売モデル:取引図+打ち手 製造 企業 付 加 価 値 向 上 の 工 夫 製品 サービス 顧客 ¥

31.

「循環の図解」 製造販売モデル:取引図+打ち手+好循環 製造 企業 付 加 価 値 向 上 の 工 夫 製品 サービス さらなる製品 サービスの開発 顧客 ¥ 売 上 増

32.

ビジネスモデル図解 井上達彦研究室 ②流通小売モデル

33.

価値連鎖 ②流通小売モデル 商品を作らず「仕入れて売る」というビジネスモデル。異なる市場での価値の差を収益に結びつける。 例)書店、百貨店、コンビニなど。 ◆ 生産者と消費者を引き合わせるビジネスモデ ル。異なる市場での価値の差を収益に結びつ ける。情報の非対称性が鍵。 ◆ 基本的に、商品そのもので違いを生み出すこ とはできない。大量に購買するなどして仕入 れ値を下げる一方で、付加価値をつけるなど して価格を上げる必要がある。 ◆ 売買差益と資本効率を高めることができれば、 再投資を通じて好循環が生まれる。 作成:井上達彦研究室 33

34.

「取引の図解」 流通小売モデル:取引図 製品 サービス 仕入先 ¥ 小売 企業 製品 サービス 顧客 ¥

35.

「打手の図解」 流通小売モデル:取引図+打ち手 製品 サービス 仕入先 ¥ 仕 入 値 を 下 げ る 工 夫 小売 企業 付 加 価 値 向 上 の 工 夫 製品 サービス 顧客 ¥

36.

「循環の図解」 流通小売モデル:取引図+打ち手+好循環 コ ス ト 減 製品 サービス 仕入先 ¥ 仕 入 値 を 下 げ る 工 夫 小売 企業 付 加 価 値 向 上 の 工 夫 製品 サービス 顧客 ¥ 売 上 増

37.

ビジネスモデル図解 井上達彦研究室 ③合算モデル

38.

価値連鎖 ③合算モデル 「まとめ買い」と「ついで買い」のビジネスモデル。引きつけるフック商品とそれを補完する商品と の組み合わせが大切。例)システム製品、居酒屋、100円ショップなど多様。 ◆ 複数の製品やサービスの間に補完性をもたせて、まと め買いやついで買いを促すモデル。 ◆ システム製品など、組み合わせて利用価値を高めても らうこともあれば、「損して得取れ」の精神で、損す るポイントと儲けるポイントを合算して利益を出す場 合もある。 ◆ 売りやすいものと売りにくいものの組合せるのが基本 なので、事前にどの商品がフックで、どの商品が収益 に結びつくのかを意図しておく必要がある。組み合わ せで価値が生まれるような設計ができれば好循環をも たらされる。 作成:井上達彦研究室 38

39.

「取引の図解」 合算モデル:取引図 フック製品 サービス ¥0 補完製品A サービス 企業 顧客 ¥ 補完製品B サービス ¥

40.

「打手の図解」 合算モデル:取引図+打ち手 補 完 さ せ る 設 計 企業 利 益 率 を 上 げ る 工 夫 フック製品 サービス ¥0 補完製品A サービス 顧客 ¥ 補完製品B サービス ¥

41.

「循環の図解」 合算モデル:取引図+打ち手+好循環 補 完 さ せ る 設 計 企業 利 益 増 利 益 率 を 上 げ る 工 夫 フック製品 サービス ¥0 補完製品A サービス 顧客 ¥ 補完製品B サービス ¥ 売 上 増

42.

ビジネスモデル図解 井上達彦研究室 ④継続モデル

43.

リカリング ⑤継続モデル 製品やサービスを定期的に使い続けてもらい、売り上げを確実にあげていくモデル。前払い、定額制、 従量課金などの方法がある。例)賃貸、携帯電話利用、ネットの定額配信サービスなど ◆ 製品やサービスを継続的に提供する代わりに、 一定の頻度で一定の金額を課金するモデル。 ◆ 顧客離れが起きない限り継続的に安定収入が見 込める点が注目されているが、そもそも提供す る製品・サービスに十分な魅力がなければ継続 的に利用してもらえない。 ◆ 毎月決まった時期に一定の金額が見込めるので、 事業を回していくのに必要な利益を超えた部分 は、計画的に投資に充てることができる。 作成:井上達彦研究室 43

44.

「取引の図解」 継続モデル:取引図 製品 サービス 企業 顧客 ¥

45.

「打手の図解」 継続モデル:取引図+打ち手 企業 継 続 に 意 味 を も た ら す 製品 サービス 顧客 ¥

46.

「循環の図解」 継続モデル:取引図+打ち手+好循環 企業 継 続 に 意 味 を も た ら す 製品 サービス 顧客 ¥ 計画的な 投資可能性 売 上 増 ・ 安 定 化

47.

ビジネスモデル図解 井上達彦研究室 ⑤フリーミアム

48.

リカリング ⑤フリーミアムモデル フリー+プレミアムのビジネスモデル。まず無料で試してもらい、本当に必要としてくれる人には、 機能拡張された有料版に移行してもらう。例)ZOOMやドロップボックスなど。 ◆ まず無料で試してもらい、本当に必要としてくれる 人には、機能拡張された有料版を提供する。 ◆ 利用者としては、本当に必要であるかどうかを実際 に確かめてから購入の意思決定ができる。無料で試 してもらうことによって、その製品・サービスがそ れを求める利用者と引き合わされる。 ◆ フリーの範囲が小さすぎると利用者を惹きつけられ ないし、大きすぎると有料版に移行してくれない。 どこまでをフリーにして、どこからを有料にするの かが鍵となる。 作成:井上達彦研究室 48

49.

「取引の図解」 フリーミアムモデル:取引図 製品 サービス フリー利用者 ¥0 企業 プレミアム製品 サービス プレミアム 利用者 ¥有料

50.

「打手の図解」 フリーミアムモデル:取引図+打ち手 フ リ ー の 範 囲 の 設 定 製品 サービス フリー利用者 ¥0 企業 有 償 の 範 囲 の 設 定 プレミアム製品 サービス プレミアム 利用者 ¥有料

51.

「循環の図解」 フリーミアムモデル:取引図+打ち手+好循環 フリー利用者の拡大 フ リ ー の 範 囲 の 設 定 製品 サービス フリー利用者 ¥0 企業 有 償 の 範 囲 の 設 定 プレミアム製品 サービス プレミアム 利用者 ¥有料 有料利用者の拡大

52.

ビジネスモデル図解 井上達彦研究室 ⑥設置ベースモデル

53.

リカリング ⑥設置ベースモデル 基盤となる製品の価格を抑えて設置を進め、消耗品やメンテナンスで利益を上げていくモデル。 例)インクジェットプリンタ、安全剃刀、ネスプレッソなど。 ◆ 中核となる製品・サービスの購入価格を引き 下げて利用者数を増やし、その消耗品やメイ ンテナンスサービスを購入してもらうことで 収益を伸ばすモデル。 ◆ 継続的な収益が見込めるのが大きなメリット だが、客離れを起こさないよう細やかな対応 が求められる。 ◆ 消耗品や保守サービスを自社で担えるような 設計をすることで、販売後に収益を伸ばし好 循環を引き起こすことができる。 作成:井上達彦研究室 53

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「取引の図解」 設置ベースモデル:取引図 フック製品 ¥0 保守 サービス 企業 顧客 ¥ 消耗品 ¥

55.

「打手の図解」 設置ベースモデル:取引図+打ち手 補 完 さ せ る 設 計 企業 利 益 率 を 上 げ る 工 夫 フック製品 サービス ¥0 保守 サービス 顧客 ¥ 消耗品 ¥

56.

「循環の図解」 設置ベースモデル:取引図+打ち手+好循環 補 完 さ せ る 設 計 企業 利 益 増 利 益 率 を 上 げ る 工 夫 フック製品 サービス ¥0 保守 サービス 顧客 ¥ 消耗品 ¥ 売 上 増

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ビジネスモデル図解 井上達彦研究室 ⑦広告モデル

58.

三者間市場 ⑦広告モデル 商品そのものの価格を抑えたり、無料にしたりして、商品を媒体として、広告を掲載することで広告 料を得るモデル。例)民法テレビ局、グーグル、フリーペーパーなど。 ◆ 自社の製品やサービスを無料もしくはわ ずかな対価で提供することで利用者を増 やし、その利用者に対して広告すること で収入を得るモデル。 ◆ 広告モデルは、スポンサーとなる広告主 に対しても広告媒体を提供し、その対価 をもらう。集客がうまくいけば収入は増 えるので、媒体となる製品やサービスが 魅力的でなければ成り立たない。 ◆ 利用者が増えれば良質のスポンサーも惹 きつけられるので好循環が作動する。 作成:井上達彦研究室 58

59.

「取引の図解」 広告モデル:取引図 企業 ¥ 広告料 ¥0 広告枠 サービス or安価 製品 サービス 情報 コンテンツ 利用者 購入者 スポンサー ¥

60.

「打手の図解」 広告モデル:取引図+打ち手 企業 サービスの 質の向上 ¥ 媒体価値の向上 ¥0 広告枠 サービス 情報 サービス or安価 製品 サービス スポンサー 購入者 ¥ 利用者

61.

「循環の図解」 広告モデル:取引図+打ち手+好循環 企業 サービスの 質の向上 媒体価値の向上 利用者とスポンサーの増大で 媒体価値とサービスの質が高まる ス ポ ン サ ー 増 ¥ ¥0 広告枠 サービス 情報 サービス or安価 製品 サービス スポンサー 購入者 ¥ 利用者 利 用 者 増

62.

ビジネスモデル図解 井上達彦研究室 ⑧マッチング

63.

三者間市場 ⑧マッチングモデル 製品・サービスの提供者とそれを求める利用者とを仲介するビジネスモデル。 例)人材募集サイト、ホテル予約サイトなど。 ◆ 製品・サービスの提供者と利用者とを引 き合わせることで収益を上げるモデル。 片方もしくは両方に課金することで収入 を確保可能できる。 ◆ 基本的に、在庫を持つ必要がないので、 うまく回り出したら低いリスクで成長が 見込める。ただし、多くの提供者と多く の利用者に参加してもらわなければ成り 立たない。 ◆ 需要サイドと供給サイドの利用者をいか に増やすかががカギとなる。 作成:井上達彦研究室 63

64.

「取引の図解」 マッチングモデル:取引図 仲介企業/プラットフォーム ¥ 仲介手数料 ¥ 機会・情報 サービス 供給サイド 利用者 仲介手数料 製品・サービス ¥利用料 機会・情報 サービス 需要サイド 利用者

65.

「打手の図解」 マッチングモデル:取引図+打ち手 仲介企業/プラットフォーム 供給サイド 利用促進 ¥ 仲介手数料 需要サイド 利用促進 ¥ 機会・情報 サービス 供給サイド 利用者 仲介手数料 製品・サービス ¥利用料 機会・情報 サービス 需要サイド 利用者

66.

「循環の図解」 マッチングモデル:取引図+打ち手+好循環 仲介企業/プラットフォーム 供給サイド 利用促進 供 給 サ イ ド の 利 用 者 増 需要サイド 利用促進 利用者が増えることで、 プラットフォームの価値が高まる ¥ 仲介手数料 ¥ 機会・情報 サービス 供給サイド 利用者(数) 仲介手数料 製品・サービス ¥利用料 機会・情報 サービス 需要サイド 利用者(数) 需 要 サ イ ド の 利 用 者 増

67.

ビジネスモデル図解 井上達彦研究室 ⑨補完財プラット フォーム

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三者間市場 ⑨補完財プラットフォームモデル 自社製品を補完する製品をサードパーティに提供してもらうことで価値を高めるモデル 例)Apple iPhoneのアプリのプラットフォーム、パソコンのOSなど。 ◆ 自社製品を補完する製品をサード パーティに提供してもらうことで 価値を高めるモデル。 ◆ ベース製品と補完製品をうまく切 り分け、役割分担を進める。 ◆ インフラを整備することによって、 より多くの補完的生産者に参加し てもらえれば、組合せの価値が高 まり、利用者も増えるす。 ◆ 補完製品と組み合わせる設計を工 夫し、インフラを整えることで好 循環が回る。 作成:井上達彦研究室 68

69.

「取引の図解」 補完財プラットフォーム:取引図 プラットフォーム企業 ¥手数料 補完財 取引の場 ¥代金 ベース 製品 補完財 顧客 補完財の提供者 ¥代金 \0 補完財 取引の場

70.

「打手の図解」 補完財プラットフォーム:取引図+打ち手 プラットフォーム企業 補完財提供の インフラ整備 ¥手数料 インフラ 整備 製品設計 補完財 取引の場 ¥代金 ベース 製品 補完財 顧客 補完財の提供者 ¥代金 \0 補完財 取引の場

71.

「循環の図解」 補完財プラットフォーム:取引図+打ち手+好循環 プラットフォーム企業 補完財提供の インフラ整備 供 給 サ イ ド の 利 用 者 増 インフラ 整備 製品設計 利用者が増えることで、 プラットフォームの価値が高まる ¥手数料 補完財 取引の場 ¥代金 ベース 製品 補完財 顧客 補完財の提供者 ¥代金 \0 補完財 取引の場 需 要 サ イ ド の 利 用 者 増

72.

基本11分類 ビジネスモデル図解 井上達彦研究室 3.

73.

★基本11分類(実務家向けの表現) 単体の力 引合せの力 組合せの力 コンテンツ独自性を活用 情報の非対称性を活用 補完性を活用 ロックインを活用 価値連鎖 ①製造販売 ②流通小売 ③合算 ⑩ライセンス リカリング ④継続 ⑤フリーミアム ⑥設置ベース ⑪リース 三者間市場 ⑦広告 ⑧マッチング (消耗品含む) 拘束する力 ⑨補完財プラットフォーム 作成:井上達彦研究室 (分類軸はAmit&Zott [2001]、Tidhar&Eisenhardt [2020]などに依拠)

74.

コンテンツの力 販売モデル 引合せの力 流通小売モデル 組合せの力 合算モデル 拘束する力 ライセンスモデル 価 値 連 鎖 リ カ リ ン グ 三 者 間 市 場 継続モデル 広告モデル フリーミアムモデル マッチングモデル 設置ベースモデル リースモデル 補完財プラットフォームモデル 作成:井上達彦研究室(分類軸はAmit&Zott [2001]、Tidhar&Eisenhardt [2020]などに依拠)

75.

ビジネスモデル図解 井上達彦研究室 ⑩ライセンス

76.

価値連鎖系 ⑩ライセンスモデル 自社の事業で培った知財やノウハウをライセンスかして再利用するビジネスモデル 例)漫画のキャラをアニメや映画やグッズに展開すること。技術やノウハウのライセンスもある。 ◆ 自社の事業で培った知財やノウハウをライ センスかして再利用するビジネスモデル。 ◆ 漫画やアニメキャラが典型だが、技術やビ ジネスのノウハウもその対象となる。 ◆ ライセンス化に追加の開発コストはかから ないので、収入がそのまま利益になる。 ◆ 他社が使いたいと思う知財やノウハウを開 発できるかどうかがポイント。 作成:井上達彦研究室 76

77.

「打手の図解」 ライセンスモデル:取引図 製品 サービス Aの 顧客 ¥ 企業A ライセンス 企業 B ¥ 製品 サービス ¥ Bの 顧客

78.

「打手の図解」 ライセンスモデル:取引図+打ち手 企業A 優 れ た 知 財 の 開 発 製品 サービス ¥ ライセンス 企業 B ¥ Aの 顧客 製品 サービス ¥ Bの 顧客

79.

「循環の図解」 ライセンスモデル:取引図+打ち手+好循環 知財の更新 企業A 優 れ た 知 財 の 開 発 製品 サービス ¥ 売 上 増 ライセンス 企業 B ¥ Aの 顧客 製品 サービス ¥ Bの 顧客

80.

ビジネスモデル図解 井上達彦研究室 ⑪リース

81.

リカーリング系 ⑪リースモデル 設備や耐久消費財を長期間賃貸するというビジネスモデル。途中解約できないので、リース会社は収 益を確定できる。例)複写機や法人向け社用車のリース、ビル建物の不動産など 。 ◆ 設備や機器を長期間賃貸するビジネスモデル。 契約によって将来の支払いを拘束できる。 ◆ 利用者は初期コストを抑えられるので、資金 を他に回せる。最新の設備や機器を利用でき るというメリットもある。 ◆ リース料には調達原価と利息が含まれている。 返却された備品や機器は中古品として販売で きる。 ◆ 保守・修繕は利用者の負担となる。リース会 社はメインテナンスのサービスを追加提供す るなどして収益を伸ばせる。 作成:井上達彦研究室 81

82.

「取引の図解」 リースモデル:取引図 メーカー 供給先 メンテ 会社 製品 製品 サービス ¥ サービス ¥ リース 顧客 ¥ リース 会社 リース料 中古品 ¥ 中古品 顧客

83.

「打手の図解」 リースモデル:取引図+打ち手 メーカー 供給先 メンテ 会社 製品 ¥ サービス ¥ 調 達 費 を 下 げ る 工 夫 リース 会社 サ ー ビ ス の 充 実 製品 サービス リース 顧客 ¥ リース料 中古品 ¥ 中古品 顧客

84.

「循環の図解」 リースモデル:取引図+打ち手+好循環 メーカー 供給先 コ ス ト 減 メンテ 会社 製品 ¥ サービス ¥ 調 達 費 を 下 げ る 工 夫 リース 会社 サ ー ビ ス の 充 実 製品 サービス リース 顧客 ¥ リース料 中古品 ¥ 中古品 顧客 売 上 増

85.

主要参考文献リスト Amit, R., & Zott, C. (2001). Value creation in E-business. Strategic Management Journal, 22(6-7), 493–520. Amit, R., & Zott, C. (2015). Crafting business a rchitecture: The antecedents of busine ss model design. Strategic Entrepreneurship Journal, 9(4), 331-350. Cusumano, M. A., Yoffie, D. B., and Gawer, A. (2019). The Business of Platforms : Strategy in the Age of Digital Competition , Innovation, and Power. Harper Business. Senge, P. M. (2006). The fifth discipline: The art and practice of the learning organization. Random House. (枝廣淳子, 小田理一郎, & 中小路佳代子 (訳)(2011).『学習する組織 ― システム思考で未来を創造する』 英治出版.) Täuscher, K., & Abdelkafi, N. (2017). Visual tools for business model innovation: Recommendations from a cognitive perspective. Creativity and Innovation Management, 26(2), 160-174. Tidhar, R., & Eisenhardt, K. M. (2020). Get rich or die trying… finding revenue model fit using machine learning and multiple cases. Strategic Management Journal, 41(7), 1245-1273. Wirtz, B. W., Pistoia, A., Ullrich, S., & Göttel, V. (2016). Business models: Origin, development and future research perspectives. Long range planning, 49(1), 36-54. 板橋悟 (2010). 『ビジネスモデルを見える化するピクト図解』ダイヤモンド社. 川上 昌直. (2019). 『「つながり」の創りかた: サブスクリプションの設計図』 東洋経済新報社. 川上 昌直. (2021). 『収益多様化の戦略: 既存事業を変えるマネタイズの新しいロジック』 東洋経済新報社. 楠木建. (2010). 『ストーリーとしての競争戦略: 優れた戦略の条件』 東洋経済新報社.

86.

関連教材 「井上達彦研究室」では、書籍への理解を深めるための デジタルコンテンツを用意しています。YouTubeでも 「井上達彦研究室」と検索してください。本書で解説し た内容に加え、さまざまな分析例が紹介されています。 このQRコードからもアクセス可能なのでご活用くださ い。 井上達彦研究室YouTube https://www.youtube.com/channel/UCU9OmZwev4LUa68pxygOG5A/videos 内田和成チャネル対談 https://www.youtube.com/watch?v=iAJaENJ_0bk