ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第6講:18世紀の人間の立ち位置

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March 17, 24

スライド概要

18世紀に、存在の大いなる連鎖という発想はえらく人気を博した。でもそのために、人間の立ち位置についての考え方はかなり変わった。人間って、神様寸前と思っていたら、やっぱ天使も無限の階層あるはずだよね、人間なんて獣に毛が生えただけの卑しい存在だよね、という話が主流になった。
そしてそこから、努力しても無駄どころか、努力はその本来の位階を逸脱しようとする行為でダメ、そして天性に階級があるなら社会にだって階級があって当然だよね、という社会格差正当化が生まれた。

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各ページのテキスト
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『存在の大いなる連鎖』 第6講: 18世紀思想における存在の連鎖 および人間の居場所と自然における 役割 アーサー・O・ラヴジョイ をもとに 山形浩生が作成 クリエイティブコモンズ:表示 4.0 国際 https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja 1

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あらすじ:18世紀には充満の原理が流行 り、人間の立ち位置が見直された • ジョン・ロックとライプニッツが存在の連鎖を大いに広め、 各種通俗ライターもそれを広めた。 • 「宇宙は上から下まで充満していて、神からバイ菌まであらゆる段階がある。人間はその中間なの だ!」 • この発想は人間の立ち位置について当時の思想に影響した。 1. 2. 3. 4. 万物は人間のためではなく、それ自体のために存在する 位階の中で人間は、中間ではなく底辺近くになった 人間の高い地位は失われ、サルに毛が生えた存在にすぎなくなった 肉体と精神を両方持つ気高い存在のはずが、最低の精神しかない存 在になった クリエイティブコモンズ:表示 4.0 国際 https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja 2

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存在の連鎖/位階こそが神の設計! • なら、各種の生物は、その位階を埋めるべき独自の存在として あるんだね。人間のために世界がある分けじゃないね! • 人間は、天使と動物をつなぐ中間だと思ってたけど、どっちか といえば動物に近いので、底辺近い存在だね。 • 存在の連鎖は細かいちがいの積み重ね! ならば人間とその下の サルの差も、ないも同然だよね。サルに毛が生えただけ! • 肉体と霊/知性を兼ね備えてるのが自慢だったけど、つまりは 最低の知性しかないってことだよね クリエイティブコモンズ:表示 4.0 国際 https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja 3

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それは倫理的、政治的な思想にも影響 1. 分をわきまえろ、善くなろうとするな! 2. 敗北主義:社会も宗教も現状維持が関の山 3. 社会的格差の正当化 • 実際の社会でこうした考え方が主流になったというより、そういう ことを充満の原理を根拠に言う論者がいた、というくらい • 人間は改善を通じて至高の神に近づくという、異世界的な発想が明 確に否定されることもあった • (この章はめずらしく、節を区切ってくれるのでわかりやすい) クリエイティブコモンズ:表示 4.0 国際 https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja 4

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存在の連鎖/位階が大事なら…… • 人間は与えられた位階を守るのが大事だよね。そこから上に昇 ろうとか思い上がってはいけないよ。勉強とかも無駄。 • 人間なんてどうせ低劣で、それ以上のところには行けない運命 なんだよ。それが人間の天性で、それには逆らえないよ。だか ら統治も宗教も改善しない。社会改良なんか無駄。 • 位階があるのが本来のあり方。なら社会だって、格差が当然あ るべきだよね。いまの格差と階級を維持しよう! クリエイティブコモンズ:表示 4.0 国際 https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja 5

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• この章は、内容的にはまとめの話だけで、それをいろんな論者の文を引用する ことで裏付けているだけ。 訳者感想: つなぎっぽ い感じ。 • ラヴジョイが、社会格差の正当化に非常に嫌悪感を抱いていたことがわかるの はおもしろい。 • カントがいっしょうけんめい、木星人や土星人のあるべき姿を論理的に導き出 そうとしているところは笑える。が、ラヴジョイ先生がちゃんと戒めてます。 「こうした、キテレツながらも楽しい考察にケチをつけるのは、 野暮というものでしょうね。」 • ……はい、野暮でした! クリエイティブコモンズ:表示 4.0 国際 https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja 6