ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第5講:ライプニッツ&スピノザ

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April 25, 24

スライド概要

ライプニッツは、えらい学者だったが充満の原理が大好きだった。そしてそこから、充分理由の原理というのを導出して使っていた。あらゆるものには理由がある。その理由をさかのぼると、各種モノの本質にたどりつく。そしてその本質は、神の世界のイデアだ。だからこれは、イデアの異世界性とこの世性をつなげる理論だった。
 理由が必要なのは、彼が偶然をこの世で認めたくなかったから。偶然があれば、宇宙は無根拠になり、バラバラになると彼は恐れていた。そして充満の原理により、あらゆる本質は存在したがり、神はそれを存在させたがる。
 しかしあらゆることに理由があるならすべては必然。つまり神の意志の介入する余地はない。スピノザはこの議論で、無神論だと言われて迫害された。ライプニッツは、自分の議論はそれとはちがう、実現されない可能性もある(共存可能性)し、また神様は別の世界を考えることもできて、ただ最善のものを選ぼうとするので、この世界を確実に選んでしまうのだ、だから神の意志はある、と屁理屈をこねた。

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各ページのテキスト
1.

『存在の大いなる連鎖』 第5講: ライプニッツとスピノザにお ける充満と充分理由 アーサー・O・ラヴジョイ をもとに 山形浩生が作成 クリエイティブコモンズ:表示 4.0 国際 https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja 1

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第5講 Executive Summary • ライプニッツは充満の原理が大好きだった。そして、その充満の原 理&存在の連鎖から、宇宙のすべてのモノ/事象には、神様に根源を 持つ理由があるのだ、という「充満理由の原理」を引き出した。 • ライプニッツは、すべてに理由がある=偶然で起こることはない、 という理屈を展開した。 • 神様は善なので「理由がある=それが最善」ということ • 善性は、万物の本質に内在している • ∴最善のものしか選べない→選べるものは決まっている=決定論 • これはスピノザの決定論的宇宙の哲学とまったく同じ。ライプニッ ツは屁理屈をこねて、スピノザとはちがうと強弁したけど…… クリエイティブコモンズ:表示 4.0 国際 https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja 2

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ライプニッツは「存在の連鎖」 =充満の原理が大好きだった • モナド論も、いろんなモナドが存在の連鎖の中で 序列を作って並んでいるというもの。 • 充満の原理から、彼が編みだしたのが 充分理由の原理 • あらゆるものには理由がある、偶然などない、そ してその理由をさかのぼるとそのモノの本質=イ デアに到達する、という考え。 クリエイティブコモンズ:表示 4.0 国際 https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja 3

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充分理由の原理とは? • 充分理由は、すべてには理由があるという原理。 • 理由がなければなんでも恣意的な偶然になってしまう。それは 許せない • 理由はどんどん遡れる。でもその最後の根拠は、そのモノが持 つ「本質」=イデア • そのイデアは、神は善、その選択は最善という考え方がすべて の基準。 • ライプニッツは、純粋イデアの世界というのを信じていた。充 分理由の原理は、その世界をこの世とつなげる手段でもある クリエイティブコモンズ:表示 4.0 国際 https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja 4

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充分理由は常に成立しなくてはならない • 本質は無時間的なもの。常時ある。 • だからそれに基づく万物の理由も、常時成立していないとダメ。 「そのうち成立しますから」では通らない。 • 三角形の内角の和は「いずれ180度になります」ではダメでしょ? • そして神は、可能なものをすべて実現させるのが本質(←充満の原 理) クリエイティブコモンズ:表示 4.0 国際 https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja 5

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でもこの考え方では変化の余地がない • あらゆる時点であらゆる可能性が実現していな いとダメって…… • 現実は明らかにそうなっていない。常に変化す る。 • 普通は「いや、あらゆる生物種があるってこと でいいんだよね」と逃げた。 • でもスピノザは「いや、全個体がいまここに存 在するはず」と言い張った。 クリエイティブコモンズ:表示 4.0 国際 https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja 6

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すべてが存在し、理由があり必然なら、 神の役割がなくなってしまう…… • スピノザ的には神様は、何やら本質に内在された性質を機械的に実現するだけ • そしてモノの本質には「存在したがる」「実在性を持ちたがる」というのも含まれ る • ……すると神様は、「本質」に言われるがままに仕事をこなすだけ。いらないじゃ ん! • だからスピノザは無神論として糾弾された。 • また、多くの人は「いや実際の世界はそんなんじゃない」と批判した。 クリエイティブコモンズ:表示 4.0 国際 https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja 7

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スピノザとちがう! ライプニッツの屁理屈 • ライプニッツの「充分理由」は、実はスピノザと同じ。 • 屁理屈その1:必然ではないが確実??! • 神は本質に強制されてなんかいない! イデアの世界では、別の世界を「考える」こ とはできるんだ!ただ最善の世界を実現しようと頑張るので、こうなる。必然じゃ ない! この世界になるのは確実なだけ! • 屁理屈その2:共存可能性??! • 可能性すべてが実現するなんていうスピノザはダメ! 物理に相容れないモノがある だろ。だから実現可能な本質のセットがあって、それから外れるものは実現できな い! だからすべてが実現したりしないよ! • むしろスピノザよりすごいかも。スピノザでは、可能性を存在させるのは 神の本質の働き。ライプニッツでは、モノの本質で勝手に存在が起こる! クリエイティブコモンズ:表示 4.0 国際 https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja 8

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ちなみに、なんでも理由があるというの も…… • ビュリダンのロバを考えよう。同じモノが左右に あって、その効用がまったく同じでも、理由がな ければ選べないなら身動き取れないよね。 • (まあ、そこまで完全に同じ、というのが非現実的 な想定かもしれないけど) クリエイティブコモンズ:表示 4.0 国際 https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja 9

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充満の原理があるから真空はない! • 充満の原理から、すべては何かで満たされねばならない。 • よって、真空は存在しえない。 • あったらそれは、存在の連鎖が切れていることになってしまう …… • (充満の原理で、大事なのは個体数なのか種の多様性なのかとか、 ワニの話とかは、おもしろくなくはないが、細かいところ) クリエイティブコモンズ:表示 4.0 国際 https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja 10

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• 充満の思想/存在の連鎖の思想自体の変 化というより、それがライプニッツにお いてどう展開したか、という話。 (訳していて の感想) • ライプニッツやスピノザの思想について のまとめはない (残念) • あと、ライプニッツの説明がいろいろ苦 しいのはわかったんだが、ライプニッツ 的には本当にそれでよかったの? 彼が 自分の議論に納得できたはずはない、と ラヴジョイは言うが、それでどうなった のかは書かれていないのも残念 (まあそ こで行き詰まったってことだろうが) クリエイティブコモンズ:表示 4.0 国際 https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja 11