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October 30, 26
スライド概要
AIエージェント利用が拡大している。CodexやClaudeが登場した。同時に、これらはソフトウェアエンジニアリング分野で最も有効なため、開発会社のOpenAI社、Anthropic社内で活発に業務に活用されている。これらはAIエージェント活用の先行指標であり、一般企業の今後を予見させる。そこで、主に2企業研究員の公開情報などから、AIエージェント利用の時間的変化、生産性向上、活用領域、雇用環境の変化、行動様式の変化などの情報を入手し、それを踏まえて、AIエージェントが普及した世界について考える。
定年まで35年間あるIT企業に勤めていました。その後、大学教員を5年。定年になって、非常勤講師を少々と、ある標準化機関の顧問。そこも定年になって数年前にB-frontier研究所を立ち上げました。この名前で、IT関係の英語論文(経営学的視点のもの)をダウンロードし、その紹介と自分で考えた内容を取り交ぜて情報公開しています。幾つかの学会で学会発表なども。昔、ITバブル崩壊の直前、ダイヤモンド社からIT革命本「デジタル融合市場」を出版したこともあります。こんな経験が今に続く情報発信の原点です。
AIエージェント利用の拡大がサービスに与える影響の分析 高橋 1 浩1* B-frontier研究所 * Corresponding Author: Tel: 042-541-9188, E-mail: fwbc2779@nifty. com 要旨 AIエージェント利用が拡大している。CodexやClaudeが登場した。同時に、これらはソフトウェアエンジニア リング分野で最も有効なため、開発会社のOpenAI社、Anthropic社内で活発に業務に活用されている。これらは AIエージェント活用の先行指標であり、一般企業の今後を予見させる。そこで、主に2企業研究員の公開情報な どから、AIエージェント利用の時間的変化、生産性向上、活用領域、雇用環境の変化、行動様式の変化などの 情報を入手し、それを踏まえて、AIエージェントが普及した世界について考える。 キーワード AIエージェント, サービス, サービスモデル, マネージメント思考 1 はじめに ら、開発会社のOpenAI社、Anthropic社内で活発な活 用が進んでおり、著しい生産性向上が達成されてい る。これらはAIエージェント活用の先行指標と考えら れ、今後一般企業への普及拡大が予想される。 AIエージェントの利用が拡大している。最近の先端 モデルは、AIモデルが次のAIモデルを生成する技術 革新が進展しており、新モデル登場が短縮化してい る 。 そ の 結 果 、 AI エ ー ジ ェ ン ト ベ ー ス の Codex や Claudeのような製品が登場し、短期間でバージョンア ップしている。それと同時に、これらの製品はソフト ウェアエンジニアリング分野で特に有効であることか 但し、その状況を検討しようとしても、リアルの利 用データは製品開発企業にのみ蓄積されており、最近 の変化はあまりにも急激なため、一般研究者がそれら のデータへアクセスして分析した論文公開は間に合っ 1
ていない。 幸い、OpenAI社、Anthropic社の研究員が自社HPな どで、リアルデータに基づく研究論文や従業員の作業 形態変化を報告している。そこで、これらの情報源か ら、AIエージェントの下記情報を入手する。 ・利用拡大の時間的変化の状況(2節) ・利用拡大による生産性向上の状況(3節) ・利用が進んでいる領域の特定(4節) ・利用普及に伴う雇用環境の変化(5節) ・利用普及によって発生する行動様式の変化(6節) これらの情報を元に、社会がサービス面でどのよう に変化するかを考察する。 2 AIエージェント利用拡大の時間的変化 2025年4月OpenAIはAIエージェント型コーディン グ・業務プラットフォームCodexをリリースした。こ れ以降、OpenAIはCodex導入、利用に関するデータを 蓄積してきた。このデータを元にした論文がOpenAI 研究者から公開された(Johnston 2026 : 調査対象期間 は2025年8月~2026年6月)。分析はOpenAI従業員、 組織ユーザー、個人ユーザーの3ユーザー層に対して 行われた。 調査は、直近28日間にChatGPTまたはCodexのいず れかを使用しているユーザーのうち、少なくとも1回 はCodexを利用したユーザーのCodex利用比率を測定 している(図1にユーザー層別の比率を示す)。 2026年 に入ってからの半年で、OpenAI従業員はCodex利用を 急増させていたことが分かる。 これを更に出力トークン数で見ると、OpenAI従業 員は、2026年6月時点で、Codex、ChatGPT合わせた全 出力トークン数のうち、Codexによるものが99.8%を 占め、事実上、AI利用における主要インターフェース はCodexがChatGPTに代わった(図2参照)。組織ユー ザーでも同割合は63.3%とCodexで生成される出力ト ークンの割合は増加していた。 次に、職種別の傾向を見ると、OpenAI従業員がAI 利用の半分以上をCodexに切り替えた2026年1月の時 点では、法務や採用といった職種での利用は皆無であ った。しかし、利用は徐々に増加し、4月初旬では出 力トークン全体の約20%に達し、その後1ヶ月間で 75%へと急増した(図3参照)。そして、 研究、計 画、コミュニケーション、データ分析、製品開発、採 用、営業、その他のエンジニアリング以外の業務にま で活用の幅を広げていた。 組織ユーザーの場合でも、特に技術系職種での進展 は顕著であった。エンジニア一人当たりのCodexによ るトークン生成割合は平均27%に達した。これは年初 と比較して5倍の数値に当たる(図4参照)。 3 AIエージェント利用による生産性向上 次にAnthropicのClaudeの例を述べる。2025年2月 にClaude Codeがプレビューとして公開された時、新 モデルのコードベースにマージされたClaude生成の コードの割合は数%に過ぎなかった。しかし、 Anthropic CEOのDario Amodei 氏によると、「2026 年夏ごろからAI自身が次のAIモデルを作り上げる能 力は格段に向上してきた」(Amodai 2026)。そして、 Anthropic従業員はAIがなければそもそも行われなか ったであ ろう業 務に Claude を使うことを 行いだ し た。例えば、Claudeを「最も複雑で自由度の高いタ スク」へも使用し出し成功率を日々向上させていた。 Claudeの成功率は2026年5月には76%に達し、6カ月 で50ポイントも上昇した(Favaro 2026: 図5参照)。 「複雑で自由度の高いタスク」とは、明確な仕様がな く、エンジニア自身もどのような答えが正解なのか確 信が持てないようなオープンエンドなタスクを指す。 この結果、Anthropic社内では、「先端AIを最大限 使い倒すパフォーマンスエンジニアの能力向上は目を 見張るものがあり、私たちが求めていた人材像を一夜 にして変えてしまった」との認識が広まった。2026 年3月、AIエージェントの作業時間の合計は初めて人 間の作業時間を上回った。そして、8月までにAIエー
エージェントがレストランの予約や コードの微調整など、人間のための 小規模で範囲が明確なタスクに見ら れた。4) 高い自律性スコアは、AIエ ージェントが機械学習モデルをデー タサイエンスのコンテストに提出し たり、カスタマーサービスリクエス トをトリアージしたりしているのに 見られた。 公開APIからのツール呼び出しの 約50%はソフトウェアエンジニアリ ング関係で、それ以外では、ビジネ スインテリジェンス、カスタマーサ ービス、営業、財務、eコマースな どが見られた(図8参照)。 5 AIエージェント利用の普及に伴う ジェントは人間の担当者の6倍働くようになった(研究 部門に限れば19倍) (Wilmers 2026: 図6参照)。 各職能に対しても、生産性向上に着目し、測定 可能な機能データを2025年12月を起点に時間経 過とともにプロットした結果を図7に示す。全体 的に急上昇している。個別には、エンジニア1人 あたりのコードコミット数が最も増加して、6 か 月前に比べて 5.1倍、データ サイエンティストで は3.1倍になった。この傾向は非技術系にも波及 しており、弁護士はより多くの契約を処理し (3.1倍)、営業担当者は1.7倍の取引を成立させ た。 4 AIエージェント利用が進んでいる領域 AIエージェントはどのような領域で活用されて いるのであろうか?Claudeが公開しているAPIを 利用して各ユーザーがツールを呼び出したデータ に基づく報告がある(McCain 2026)。研究では、公開 API からツールを呼び出しているサンプルに対して相 対的なリスクと自律性を1から10のスケールで分類し た。 リスクスコア1は、何かがうまくいかなくても結果 が生じないア クションを 反映し、リス クスコア 10 は、重大な損害を引き起こす可能性がある場合、ま た、自律性スコア1は、AIエージェントが人間 の指示に従っているように見える場合を反映 し、自律性スコア10は、AIエージェントが独 立して動作していることを意味する場合とし た。これを公開APIからの998,481件のランダ ムなツール呼び出しサンプルに対して行った (McCain 2026)。 この作業からの代表的結果は、1) 公開 API 経由で行われるアクションの大部分は低リス クだが、リスクと自律性の最前線でいくつか の新しい用途が見られた。2) 最もリスクの高 いクラスターは、機密性の高いセキュリティ 関連のアクション、金融取引、医療情報など に関わっていた。3) 低い自律性スコアは、AI 雇用環境の変化 Anthropicにおいては, 4月までに、エンジニアリング および研究チームは、ジュニアレベル技術職の採用を 縮小していた。雇用構成の変化は顕著で、技術部門に おけるジュニアレベル従業員の割合は、2025年初頭の 21%から14%に低下した(Wilmers 2026: 図9参照)。 また、ジュニアレベル技術職の採用率はさらに急速に
低下しており、同じく27%から9%にまで落ち込んで いた(図9参照)。これらの変化は既に人員配置の変 更も伴っており、2026年には、少なくとも1年間勤務 している従業員が異動する可能性は2025年より50%も 高くなっていた。 6 AIエージェント普及によって発生する行動様式の 変化 AI活用は、雇用や生産性に変化をもたらすだけでな く、業務プロセスにも継続的変化をもたらし、従業員 の意識も変えていた。例えば、8月の時点で、 Anthropic従業員は、 2030年までにAIが自分の仕事の 75%を担えるようになるとアンケートで回答した。こ れは他アメリカ人の28%と比較して非常に高い割合で ある。このような意識を持つAnthropic従業員は、新し いモデルが利用可能になると直ちに、それを使用して より難しい問題に取り組むようになった。 但し、このような処理速度の加速により、人間の注 意力がボトルネックになった。そのため、従業員はこ の問題を緩和するため可視化ツールの構築やエージェ ントパイプラインの監視強化といった「メタワーク」 に自然に取り組むようになった。雇用環境の変化は、 採用担当者の採用時の優先順位をも変化させた。彼ら は技術分野の専門知識や実装能力よりも、 新たな環境に適応できる自律性や判断力を 重視するようになった。 は、それを補完するものであった。しかし、人間がエ ージェントの群れの中で働くことが増えると、人間の 仕事をエージェントにも見えるようにする環境への移 行圧力がかかった。例えば、対面での会議で何かが決 定されても、メモや報告が残されていないと、エージ ェントは目標や前提を更新するためのコンテキストを 見逃すことになる。そこで、徹底的にオープンなAI統 合が重要になる。「ほとんどの組織はこのようには運 営されていない」。そのため、これを実施することは 大きな負担であったが、大きな変化になった。 基本的にAIにコンテキストを伝えるには、人間の仕 事と決定を全て可視化する必要がある。このような職 場での仕事内容の変化は、採用担当者が採用決定で優 先するスキルの変化にもつながった。面接官の最も明 確な変化は、採用候補者が AI ツールを創造的、効果 的に使用してきたかと、その資質があるかを確認する ことになった。 こうした組織構造や業務内容の変化は、従業員数、 採用、求人におけるジュニアレベル技術職の割合の減 少と並行して現れた。その結果、採用について言え ば、採用担当者は応募者の自律性や判断力をより重視 するようになる一方、各部署の意識改革と組織変革が 総合的に必要になった。 このような問題を解決するために、具体 的に採用担当者は、問題発生と対策を管理 するための統合ダッシュボードを構築した り、ある弁護士は、「法律アドバイスの対 応策として、クライアントのエージェント が発見できるフレームワーク」を構築した りした。この種のメタワークが、2025年秋 の10%から、2026年春には22%と急激に増 加した(Wilmers 2026: 図10参照)。 但し、人間同士のコミュニケーションの 基本構造や密度は、ほとんど変わらなかった。エージ ェントは人間同士のやり取りを代替すると言うより 7 まとめ・新たなサービス論に向けて 2026 年 に 入 っ て か ら の 半 年 間 で OpenAI、Anthropic社員のAIエージェン ト利用増加は顕著であり、完全にAIエ ージェントは業務に定着した。一方、 組織ユーザーもこの傾向に追随してい る(表1 参照)。この変化を踏まえる と、人間(従業員、ユーザー)はサー ビス主体であるAIエージェント群の管 理者としての役目を担う方向に役割シ フトが必要である。その際、「リスク と自律性のバランス確保」という管理 上の課題が極めて大きい。 AIエージェントは自律性こそが効率性 の源泉であるが、一歩間違えれば安全性 を損なうリスクがある。これを回避する ためには、従来は創造者であった人間が
管理者(あるいは監視者)に役目を変更しなければな らない。しかし、監視を主とする業務は、往々にして マンネリ化し、能力が退化したり(Ganuthula 2026)、技 術や環境の変化に追随できなくなることがある。それ を避けるためには、人間が引き続き業務の本質を把握 し、全体としてAIエージェント群の最適運用に配慮で きるようなメタワークを実施し、業務に関する感が鈍 らないように努力する必要がある。 このような認識を元に新たなサービス論を構想する と、従来主流だったGDLからSDLへと言った基本認識 変更や、特定の切り口についてのデザイン思考の取組 みだけでなく、全体を大きく構想しうる構想力、新環 境に適合させた新マネージメント思考のような取組み が重要になる。 この中には、1) 先端AIの暴走を察知する小さな気 づきから、2) パフォーマンスエンジニアの育成環境の 整備や 3) あまりにも格差が生じ得る生産性なども踏 まえた新たな評価、4) その他多くの従業員の合意が取 れる組織改革など、今までとはかなり異なった課題が 登場する。 これらの課題を一歩一歩乗り越えた先にAI時代の新 たなサービ像をイメージアップすることが可能になる と考える。 8 参考文献 Amodei, Dario, “We Must Pace the Frontier”, Dario Amodei blog, September 2026. https://darioamodei.com/post/we-must-pace-the-frontier Favaro, Marina et al. “When AI builds itself: Our progress toward recursive self-improvement, and its implications”, September 2026. https://www.anthropic.com/inst.../recursive-self-improvement Ganuthula, Venkat Ram Reddy et al. “The Paradox of Augmentation: A Theoretical Model of AI-Induced Skill Atrophy”, Wiley online library,2026. https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1155/hbe2/8303770 Johnston, Drew et al. , “The Shift to Agentic AI: Evidence from Codex”, arXiv:2606.26959 2026. https://arxiv.org/abs/2606.26959 McCain, Miles et al., “Measuring AI agent autonomy in practice”, Anthropic.com Feb 18, 2026. https://www.anthropic.com/research/measuring-agent-autonomy Wilmers, Nathan et al. , “How employment is changing at Anthropic”, The Anthropic Institute. October 16, 2026. https://www.anthropic.com/research/employment-at-anthropic