デジタル環境下での新たな戦い方

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July 10, 22

スライド概要

GAFAM等の存在が巨大化し、彼等が主導したプラットフォーム&エコシステムの新パラダイムが全産業に影響を与える時代になった。しかし、この世界での、特に「エコシステム構築に向けたフレームワーク」については、これまで指針が提示されてこなかったように思う。既に失敗事例(例:GEのPredixなど)も発生しており、また、ますますDX化が叫ばれる昨今、多くの企業にとっては、このような指針のニーズは極めて高いと予想される。そこで、関連情報を探索した。その結果をまとめたので紹介する。

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定年まで35年間あるIT企業に勤めていました。その後、大学教員を5年。定年になって、非常勤講師を少々と、ある標準化機関の顧問。そこも定年になって数年前にB-frontier研究所を立ち上げました。この名前で、IT関係の英語論文(経営学的視点のもの)をダウンロードし、その紹介と自分で考えた内容を取り交ぜて情報公開しています。幾つかの学会で学会発表なども。昔、ITバブル崩壊の直前、ダイヤモンド社からIT革命本「デジタル融合市場」を出版したこともあります。こんな経験が今に続く情報発信の原点です。

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各ページのテキスト
1.

デジタル環境下での新たな戦い方 - エコシステム環境での開発を巡って - B-frontier研究所 高橋 浩

2.

問題認識 • GAFAMの時価総額は米国株式市場全体の 1/4に達した。 • 彼等が主導したプラットフォーム&エコシステム の新パラダイムは全産業に決定的影響を与え た。 • このような環境下でこれからDX化に取組む既 存企業、新興企業はどのような戦略で臨めば 良いだろうか? • しかし、このような視点からの戦略の議論はあ まり見かけない。 • そこで、探索してみる。 2

3.

目次 1.はじめに 2.取組みスコープの決定 3.取組みのフレームワーク 4.事例 5.今後の競争を巡って 3

4.

1.はじめに デジタル化によるビジネス環境の変化 • デジタルプラットフォームと補完者とのエコシ ステムによって市場で確固たる地位を得たグ ローバルリーダーが登場した。 – GAFAM等 • 彼等の力はさまざまな補完者と協力・協調す る能力によって達成されている。 • この延長で、商品やサービスをパッケージ化 する新たな手法が普及している。 1~3節は、主として、Michael G Jacobides et al., “How to Compete When Industries Digitize and Collide: An Ecosystem development framework”, Evolution Ltd. White Paper, July, 2021. を参考にして作成した。 Michael G Jacobides London School of 4 Economics教授(英)

5.

デジタル化によるビジネス環境の変化(続) • 接続性の向上とセンサーの改善はこれまで 以上に多くの製品とサービスのバンドル化を 可能にした。 • これにより、遥かに順応性が高い新たなビジ ネスモデルが急増した。 • 結果、セクター間の境界は解消し、競争の焦 点はセクター内での勝敗ではなく、構造そのも のを如何に再構成できるかに移行している。 5

6.

競争環境が一変 • プラットフォーム&エコシステムが企業の組 織化と競争の仕組みを変革させている。 • 根本的質問の例: – 他の人のエコシステムのパートナーになるべきだ ろうか? – それとも独自のエコシステムを構築すべきだろう か? – 幅広いデジタル接続サービスに焦点を当てるべ きだろうか? – それとも得意分野に絞り込むべきだろうか? 6

7.

プラットフォーム&エエコシステム世界での競争 • エコシステムはビッグテック企業(GAFAM等) の驚異的成長と密接に関係している新しい組 織化手法である。 • 推進力の例: – デジタル化でこれまでにない活動の再構成が可 能に • エコシステムによって可能になる安定したWebを介し た連携企業との協力・協調 – 以前は明確でなかった活動間の境界が消失し競 争分野が拡大 7

8.

プラットフォーム&エエコシステム世界での競争 - 基本用語の確認 • プラットフォーム – 複数のアクターが相互作用できるようにする技術 ベースのソリューション生成環境 • プラットフォームは「技術」で構成 • エコシステム – 接続された製品やサービスのグループあるいは それを共同で作成するプレイヤー群の両義があ る。 • エコシステムは「製品/サービス、人、組織」で構成 8

9.

エコシステム世界で正しく決断するために • マルチプロダクトエコシステムとマルチアク ターエコシステムを区別すべきである。 • いずれに重点を置くべきか? – マルチプロダクトエコシステムとは? • 複数の製品あるいはサービスに着目したエコシステム – マルチアクターエコシステムとは? • 複数の補完者あるいはパートナーに着目したエコシス テム 9

10.

2つのエコシステム • マルチプロダクトエコシステム、マルチアク ターエコシステムという2つの異なる種類のエ コシステムが存在する。 – マルチプロダクトエコシステム: • 顧客にソリューションを提供する新形式の統合または バンドルされた製品やサービス – マルチアクターエコシステム • 公開市場、サプライチェーン、あるいは垂直統合生産 の代替手段となる異なる組織形態 • 但し、既存ビッグテック企業はこれらアプローチ の両方を同時に使用している。 ⇒次頁に例を示す。 10

11.

Googleの例 マルチ アクター エコシス テム Google chat 統合 Google chrome Google lens サプライ チェーン Google maps Google fit Google photos Google earth Google messages Google play pass WASE スマホ内のカメラ 検索 音楽 ビデオ ブラウ カメラ/ SNS/ /映画 ザ 絵 メッセー ジング 健康 地図/ ロケー ション ゲー ム 既存ビッグテック企業はこれらの両アプローチを同 時に使用している。 11

12.

2.取組みスコープの決定 どこで、どのようにプレーすべきか? • そこで、既存企業あるいは新興企業は既に変質 してしまったデジタル環境下で、従来とは異なる 視点から新たな取組みを検討する必要がある。 • しかし、彼等は後発のハンディキャップを負っている。 – GAFAMとまともに対抗できる基礎条件を備えた企業は殆 どない。 エコシステム構築のフレームワークが必要 • 新たな取組みの切り口例: 1. 2つのエコシステムに基づく取組み 2. 「アウトサイド‐イン」と「インサイド‐アウト」による補完 12

13.

2つのエコシステムの視点の違い • 2つのエコシステムは推進要因と論理が異な る。 – マルチプロダクトエコシステムが関与する問題: • どこでプレイすべきか? – マルチアクターエコシステムが関与する問題: • • • • 企業の境界線をどこに描くか? 企業自体のために何をすべきか? パートナーとどこで連携するか? この取り決めをどのように設定するか? 13

14.

2つのエコシステムの視点の違い(続) マルチプロダクトエコシステム マルチアクターエコシステム • 消費者にとってのメ リット重視 • 全体的な価値提案の 望ましさ重視 • より狭い(より広い) 範囲で顧客を閉じ込 める可能性を追求 • これらを踏まえて現競 争環境や他エコシテ ムとの関係性を探る • 企業の境界線をどこ におくべきかを重視 • 企業自体のために何 をすべきかを重視 • パートナーとどこでどの ように連携するかの可 能性を追求 • これらの取組みをど のように設定すべき かを探る 「どこでプレイすべきか?」 「どのようにプレイすべきか?」 14

15.

企業がしなければならない最初の大 きな選択:何処でプレーするか! • 2つのエコシステムの視点で検討が必要 – マルチプロダクトエコシステム – マルチアクターエコシステム • 補完する考え方: – 「アウトサイド ‐ イン」 • 顧客体験のあらゆる側面を管理することを目指す場合、外部 を取込む – 例:「SuperApps」ビジョン • 但し、広い方が必ず良いとは限らない。 – 「インサイド ‐ アウト」 • 自社の資産が他の誰かのエコシステムにサービス提供するの に何ができるかを明確にする。 15

16.

4つの「アウトサイド‐イン」戦略 1. エコシステムの先駆者に成る。 • 例:AppleのAppStore、など 2. 競争の再構築を目指す。 • 例:Match.com、Zoopla、など 3. アンバンドリングを行う。 • 既存の特定領域のスペースで小領域を切り分ける。 4. オファーの範囲を拡大する。 • 例:Grabは金融サービスやその他の輸送関連機能へ も拡張 (4節で述べる) • 競争するための最善の方法を見い出す。 16

17.

「アウトサイド‐イン」戦略でスコープと競争を再考 戦略アプローチ 以前の状態 以後の状態 事例 エコシステムの 1 先駆者に成る 競争の再構 2 築を目指す アンバンドリン 3 グを行う オファーの範 4 囲を拡大する + 「インサイド‐アウト」戦略でスコープの妥当性をチェック 17

18.

エコシステムがエゴシステムにならないために • 多くの場合、企業は自分達に何ができるかに焦 点を合わせ過ぎる。 – 自己中心的 – それは過去の成功に根差す場合が多い。 – そのため、克服がかなり困難になることがある。 • マルチプロダクトエコシステムをサポートするため にマルチアクターエコシステムを利用する。 18

19.

反面教師の例:GEのPredix • 2016年、GEはPredixで年間80億ドルの収益 が上げられると予想した。 • しかし、2018年までに初期の期待は消えた。 • 想定外の事績例: – GEブランドと多額の投資で補完者がPredixプラットフォー ムに群がるとの期待があった。 – GEアプローチの焦点が不明確であった(全ての分野へア プローチ) – 補完者の動機付け/エンゲージメントが管理されていな かった。 – 自社のクラウドサービスに重点を置いていたが、既に AWSなどメジャーなクラウドサービスが存在していた。 – エコシステムガバナンスが不充分であった。 – 製品中心でありサービスへの考慮が充分でなかった。 19

20.

3.取組みのフレームワーク フレームワークの必要性 • GEの例はGEに固有のものではない。 • 既存企業の慣性力は彼等のプライド・強さ、到達 範囲の成功度の高いほど障害になる。 • そこで、これらを克服するフレームワーク開発の ニーズは強い。 • 基盤的立脚点は・・ – 2つのエコシステムの区別によって • 特にマルチアクターエコシステムでの必要要件 – 何をしないか? – 誰に奉仕しないか? – 「アウトサイド ‐ イン」と「インサイド‐アウト」の分析 20

21.

フレームワークの概要 • ステップ1:マルチプロダクトエコシステムの範 囲に焦点を当てる。 – 「アウトサイド ‐ イン」と「インサイド‐アウト」によっ A1 A2 てエコシステムの広さまたは狭さを決定 • 「代表的顧客」のアイディアを捨て、最も差し迫ったニー ズを持つ顧客グループに焦点を当てる。 • ステップ2:マルチアクターエコシステムの問 B1 ~ B5 題を深堀する。 – 想定される質問の例 ⇒ 次頁に示す。 21

22.

マルチアクターエコシステムに関する質問例 • 企業はどのような役割を果たさなければならな いか?オーケストレーターである必要がある か?パートナーである方が良いか? B2 • 顧客への価値提案は何か?企業はエコシステ ムにどのような価値をもたらすか? B3 • どのパートナーを引き付けたいか?どうすれば それを行うことができるか? B4 • どのようにエンゲージメントのルールを設定する か?オーケストレーターとどのように連携する か? B5 • どのようなメリットを享受できるか?KPIを選択し それを測定するにはどうすればよいか? ⇒ 全体フレームワークを次頁に示す。 B1 22

23.

エコシステム構築のためのフレームワーク どこでプレイするか? どのようにプレイするか? A1 「アウトサイド ‐イン」の評価 A2 「インサイド‐ア ウト」の評価 ・顧客ニーズ ・エコシステム景観 ・しっかりした構造 ・最終解析 B1 企業の役割 オーケストレーター/パート ナー/補完者の何れか? B2 価値提案 ・顧客とパートナー間の摩擦 ・企業の提案とその独自性 はい エコシステム は必要か? B5 目的&KPI エコシステム実行 毎に繰り返される ・ビジネスのケア ・KPI設定と追跡 B4 ガバナンス B3 パートナリング 企業パートナーと能力ギャッ プを如何に埋めるか? ・機能させる方法と信頼を築く方法 23

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B1:企業はどのような役割を果たさね ばならないか? B1 • 多くの企業は独自エコシステムを所有し管理すべき と考えがちだが・・・ • 多くの企業にとって遥かに賢明なのは、パート ナーとして他エコシステムに関与、あるいは補完者 として慎重に開始すること • 多くの企業がビッグテック企業に似ることを望ん だとしても、基礎条件を満たしている企業は殆ど 無い。 • まず、現実的な感覚から開始する。 • 最初はマルチプロダクトエコシステムの観点から 検討する。 24

25.

~ B2~B4:マルチアクターエコシステムの 構築と管理 B2 B4 • 顧客と他のエコシステム参加者の両方への 価値提案を目指す。 B2 • 次に、パートナーとの関係を深く掘り下げる。 必要なスキル、リソース、機能を定め、パート ナーとの連携のインセンティブを高める。 B3 • 更に、利害関係者からの信頼と賛同を得られ るルール、管理手法、プロセスに貢献する。 B4 25

26.

B5:戦略的意図を測定可能な目標に 変換し組織を変更 B5 • エコシステムへの寄与を評価する手段を構築 し、追跡する属性を特定する。 • 組織が行わなければならない変換事項を明 確にする。 • これらの変換に対処するために組織の再設 計をどこまで進めるべきかを検討する。 • これらを適切に反復できるような質問と回答 の柔軟なサイクルを維持する。 26

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エコシステム構築のフレームワークと 接点があることを示唆する事例 中国の大手家電企業Haier 米国の健康保険システム ロシアの複合サービス提供銀行 Sberbank Nespresso 中国最大のSNS WeChat 米国の出会い系サ イトMatch.com GEのPredix Kaiser Permanente 英国の人気不動産情報サイト Zoopla 都市向け渋滞緩和用モビリ ティ・リワード・プラットフォーム Velocia 米国のスマホベースのヘル スケアサービスプロバイダー babylon スペインの電話会社 Masmovilグループ 27

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4.事例 Grabの例 • 「オファーの範囲を拡充」(「アウトサイド‐イン」 の4.戦略)したGrabの例を分析する。 新しいプレイヤーが現状に挑戦し、確立し たアクターの支配を脅かした例 • 小規模で不採算な企業であっても急速な成 長により以前よりも強力になりうる。 4節は、主として、Nina Teng, Michael G. Jacobides, “Coopetition in Digital Platform Ecosystems: Revisiting Incumbent and Innovative Entrant Dynamics”, London Business School, Working Paper, 2020. を参考にして作成した。 Nina Teng London Business School (英) 28

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Grabの歴史 – 2011年設立。2012年6月正式サービス開始 – 2013~2014年の初期段階では自動車OEMからの財政 支援、地元タクシー会社とのパートナーシップを求め ていたが、小タクシー会社との連携が実現したのみ – 2014年、Uberが東南アジアに正式参入の後、Uber流 サービス(自家用車による配車サービス)も取込み – その後、市場へのUber参入にも関わらず、グローバル 自動車OEM(トヨタ、現代など)から20億ドルの金融資 金を受領 – 2018年、Uberと合併しUberを吸収 – 現在、東南アジア最大のデジタルライドシェアリングプ ラットフォーム企業に成長 • 2019年時点で、8ケ国336都市で運用。企業価値評価140億 米ドル。ドライバーは900万人を超えている。 • 加えて、金融を含むあらゆるサービスを包含したSuperApps 29 構想を手掛けている。

30.

新しいモビリティサービス業界の動向 • 技術変化が既存企業(自動車会社、タクシー 会社)の業態を破壊するとされている代表的 分野 – CASE – MaaS – シェアリングエコノミー • その一つがUberに代表されるデジタルライド ヘイリングプラットフォーム • 以降は、競合する既存企業と参入企業が相 互利益のために如何に共同競争をしているか に焦点を当てる。 30

31.

既存企業と参入企業の関係の変化 • 参入企業(焦点企業): – Uberを模擬した東南アジアの参入企業Grab • 既存企業: – 東南アジアを対象領域としたグローバル自動車 OEM企業(トヨタ、ヒュンダイ、ダイムラーなど)と 現地タクシー企業 ⇒ キーとなる既存企業とGrab他の参入企業と の関係性の変化を次頁に示す。 31

32.

東南アジアのデジタルライドヘイリングプラットフォームエコシス テムにおける参入企業と主要既存企業との関係性の変化 Grab参入 2012 2013 Uber参入 Gojek参入 2014 2015 GrabがUber獲得 BlueBi rdはイ ンドネシ アで Gojek と提携 優勢なタクシー事業 者(例:Comfort DelGro&Blue Bird)はGrabとの 提携を拒否。 一方、 マイナーなタクシー事 業者は、地域全体で Grabと提携した。 トヨタはGrabのシ リーズBラウンドへ の10万ドルの投 資を拒否した 2017 2016 トヨタとヒュンダイは ライドヘイリングドラ イバーのために Uberに車を供給す ることについて話し 合った 態度が大きく変化 2018 2019 ComfortDel GroはUberと 提携。 SMRT とマイナーなタ クシー事業者 はGrabと提携 して新しい Grab向けだけ のサービスを提 供 トヨタは10億ドルを ヒュンダイは 投資しGrabのシ Grabのシリーズ リーズGラウンドに Gラウンドに2億 参加した 7500万ドルを投 資した 32

33.

プラットフォームエコシステムの進化 • 3つの主要なフェーズで展開されていた。 フェーズ1(2011-2014年): – 既存企業はライドヘイリングサービス市場が狭い あるいは収益性が低いと判断し、主要な活動を 行わなかった。 – Grabは地元大手タクシー企業との提携を拒否さ れ、小規模タクシー企業とのみ連携してサービス を開始した。 フェーズ2(2015-2017年): – 既存企業と参入企業を接続する新しい試みが行 われた。 • プラットフォーム間競争、市場シェア獲得競争、VCから のサポート合戦 33

34.

プラットフォームエコシステムの進化(続) – 2016年以降、既存大手自動車OEM企業が新動向に 敏感になり態度変更を行った。 • トヨタ、ヒュンダイは参入企業とのコラボレーションをUberな どと開始 フェーズ3(2017-2020年): – 既存企業の参入企業と関わりを持つことへのプレッ シャが具体的に進捗した。 • 2017年からトヨタ、ヒュンダイ等はGrab他のサポートを開始 した。 • しかし、参入企業は比較的無関心でその後も従属的にはな らなかった。 – 2018年にGrabはUberを買収 – Grabは金融を含むさまざまな分野に投資を開始した。 ⇒ 全体経緯を次頁に示す。 34

35.

新しいデジタルプラットフォーム出現で共同競争がどのように展開したかのプロセスモデル プラットフォームエコシステムの変革 フェーズ1: エコシステム実験期 (2011-2014) 既存企業のイノベー ション探索 既存企業(長方形で表示) 参入企業の 現金化の機 会の探索 参入企業 (円で表示) フェーズ2: エコシステム統合期 (2015-2017) フェーズ3: エコシステム再調整期 (2017-2020) デジタルプラットフォー ムに関与すべきという 既存企業への圧力 上につ ながる 支持 上につ ながる 参入企業の成長: ・プラットフォーム間競争 ・勝者総取りの結果 ・外部VCのサポート ・デジタルプラットフォーム に向けた既存企業の将来 のビジョン ・経営・組織構造の既存企 業・参入企業の変化 ・焦点領域の将来への参入 企業の無関心 35

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エコシステムフレームワークの立場から見て • Uberから3年遅れでGrabが設立された段階では、 地元小タクシー企業との連携が成立した小規模 企業に過ぎなかった。 • しかし、2014年Uberが東南アジアにも進出する と既存自動車OEM企業、大手タクシー企業にも 新たな変化が発生した。 • この時期からGrabは既存企業、VC他とのマルチ アクターエコシステム展開を巧みにこなしてきた。 • 特に、既存自動車OEM企業からの大規模投資 を受領しながら、比較的自由裁量権を維持し、 金融などを含む多角化の独自展開を行った。 • 現在、まだ赤字は続いているが、Uberに比し、黒 字化への見通しは早いだろうとの評価がある。 36

37.

5.今後の競争を巡って 事例からの示唆 • デジタル化で既存企業(Grabの例ではトヨタな ど)へもデジタルプラットフォーム企業 (Uber,Grabなど)との付き合い方でかなりのプ レッシャーがかかっていた。 • 結果、既存企業が参入企業をサポートするよ うな、従来とは異なったエコシステム形成や共同 競争が出現することがあった。 • このことは、既存企業、参入企業の双方に とって、“エコシステム構築のためのフレーム ワーク”による新たな環境に向けた検討が有 効であることを示唆する。 37

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モビリティサービス業界は特殊か? • 自動車業界は100年に一度と言われる変革 に晒されている。 • しかし、典型的物理産業であった自動車業界 にしてこのような変化に遭遇しているのであ れば、あらゆる産業がデジタル化による変革 に飲み込まれるのは自明であるように見える。 • そうなら、“エコシステム構築のためのフレー ムワーク”の適応範囲はかなり広く、多様な 産業分野に有効であることが示唆される。 38

39.

新たに見られる選択の論理の傾向 • デジタルプラットフォームの論理は、まず消費 者メリット重視、あるいは全体的価値提案重 視(マルチプロダクトエコシステムの論理)が あって、これをサポートする手段としてマルチ アクターエコシステムがあると考えられる。 – Grabがトヨタなどから巨額の金融投資を受けなが ら、これに従属せず金融サービス追加の資金な どに活用できたのも、このような背景がありそう • これは、より一層最大ユーザーベース重視の プラットフォーム論理がより強化される方向性 と考えられる。 39

40.

デジタル環境下での新たな戦い方(まとめ) 1. “何処でプレーするか”から出発する。 2. その際、エコシステムの2つの要素 - 製品ベースと組 織ベース ‐ を区別して考える。 3. そして、自分の役割と能力を「アウトサイド‐イン」と「イ ンサイド‐アウト」で適切に把握する。 4. 次に、エコシステムの世界に本格的に乗り出して行く 場合、“マルチプロダクトエコシステムをサポートする ためにマルチアクターエコシステム”を利用する。 5. マルチアクターエコシステムは既存企業、競争相手、 他エコシステムの状況に応じて絶えず変化しているの で、環境の変化に柔軟に適応してゆく。 6. このような取組みの中に従来はとても考えられなかっ たような新たな成長の機会を見出せる場合がある。 40