デジタルプラットフォーム力を実現させているものは何か?

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December 10, 21

スライド概要

最近は、GAFA等プラットフォーム企業の好業績が話題になることが多い。そのため、猫も杓子もプラットフォーム企業を目指す風潮がある。ただ、プラットフォーム企業への転換には組織構造変革、従業員の意識変革が必須だとの達見が合わせて強調されることが多い。しかし、なかなか具体的には認識されていないような印象がある。そこで、Appleと幾つかのプラットフォーム企業の具体的比較によって、プラットフォーム企業の力を生み出しているものは何かを具体的にクローズアップすることを試みる。そうすることで、プラットフォーム企業への転換を目指す際の指針の提示を行う。

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定年まで35年間あるIT企業に勤めていました。その後、大学教員を5年。定年になって、非常勤講師を少々と、ある標準化機関の顧問。そこも定年になって数年前にB-frontier研究所を立ち上げました。この名前で、IT関係の英語論文(経営学的視点のもの)をダウンロードし、その紹介と自分で考えた内容を取り交ぜて情報公開しています。幾つかの学会で学会発表なども。昔、ITバブル崩壊の直前、ダイヤモンド社からIT革命本「デジタル融合市場」を出版したこともあります。こんな経験が今に続く情報発信の原点です。

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各ページのテキスト
1.

デジタルプラットフォーム力を 実現させているものは何か? B-frontier研究所 高橋 浩

2.

問題意識 • プラットフォーム企業の容赦ない成長が続いて いる。 • しかし、よく観察すると、プラットフォーム企業が どれも調子が良いわけではなさそうである。 • では、この相違は何に起因しているのだろう か? • また、特権的プラットフォーム企業は開発者や消 費者にどのような影響を与えているのだろう か? • これを明らかに出来ればDX化推進のビジネス環 境では有用な情報になると考えられる。 • そこで探索してみる。 2

3.

目次 1. はじめに 2. プラットフォーム力を評価する枠組み 3. 事例評価 1. 2. 3. 4. 5. ライドシェア PCゲーム ライブストリーミング Apple テスラ自動車 4. プラットフォームの排他的行為の評価 5. これからのプラットフォームビジネス 3

4.

1.はじめに テスラが時価総額1兆ドル超え • 他の1兆ドル超え企業はGoogle,Apple, Amazon,Microsoft,サウジアラムコ • 上場以来11年で達成。1兆ドルに達するス ピードはFacebookに次ぐ。 • 米ハーツからのEV10万台受注もあるが、 半導体危機も上手くしのいでいる。 – 半導体、バッテリーなどを自社生産の方向へ ① 独自エコシステムを構築しながら、 ② 垂直統合企業への構造シフトも - Appleに似ているのかも? 4

5.

改めて問われる内容 • 特定プラットフォーム企業が容赦ない成長を 持続しているのは何故だろうか? • 何がデジタルプラットフォーム市場で優位を 生み出す条件だろうか? – プラットフォームが消費者や売り手に対するゲー トキーパー役を果たすのは当然だが、 – 特定の支配的プラットフォームは消費者、売り手や ライバルプラットフォームへの対応能力を如何にして 生み出しているのだろうか? 5

6.

最近の事例の傾向 • プラットフォーム市場で各種プラットフォームの競 争力には相違があるように見うけられる。 • 消費者をコントロールする能力がある程度制限 されているプラットフォームがある – 例:ライドシェア、PCゲーム、ライブ ストリーミング • 一方で、依然として消費者のコントロールに成功 している企業がある。 – 例:AppleのAppStoreプラットフォーム この相違を明らかにしたい 6

7.

リサーチクエスチョン • 何故、Appleは消費者、売り手のコントロール に成功し続けているのだろうか? – AppleはAppStoreプラットフォームの力を行使して、 一部のアプリ開発者にとっては過剰と思われる AppStore利用で30%もの手数料を維持し続 けている(10年間以上)。 • これは消費者にどのような影響を与えている だろうか? • また、Appleとテスラに類似点はないだろう か? 7

8.

2.プラットフォーム力を評価する枠組み プラットフォーム力を評価する枠組み • プラットフォームは「ボトルネック」と「避けられ ない仲介者」の組合せ構造になっている。 • この構造においてプラットフォームにとって特 に重要な定性的属性「相対的交換可能性」に 注目する。 – プラットフォームは「交換可能性」が低い場合にプ ラットフォーマーにメリットがある。 ⇒プラットフォームを価値あるものにするのに不可 欠な排他的行為が可能になるから – 一方、あまりの排他的行為は売り手(アプリ開発 者など)や消費者の離反を招くリスクがある。 この構造を可視化したい 2,3,4節は主に、Michael G Jacobides, What Drives and Defines Digital Platform Power? A framework, with an illustration of App 8 dynamics in the Apple Ecosystem, Evolution white paper April 19, 2021.を参考に加筆、修正した。

9.

プラットフォーム力を可視化する5つの尺度 ① プラットフォームは多数の消費者に排他的にア クセスできるか? ② 消費者はプラットフォームを切り替えるのが難 しいか? ③ プラットフォームは売り手(アプリ開発者な ど)を簡単に代替できるか? ④ 消費者はネットワーク効果の恩恵を受けてい るか? ⑤ プラットフォームには確立されたネットワーク/エ コシステムのロックイン効果があるが、その参 入障壁は高くなっているか? 9

10.

5つの尺度の解説 ① 競争の激しい市場ではさまざまなチャネルを介 して消費者にアクセスする試みが行われるので、 特定プラットフォームが多数の消費者に排他的 にアクセスするのは難しくなる。 ② 消費者が複数プラットフォームを使用したり、短 時間でプラットフォームを簡単に切り替えること が難しいと、売り手(アプリ開発者など)も無理 にプラットフォームを切り替えると消費者へのア クセスを放棄せざるを得なくなる。 10

11.

5つの尺度の解説(続) ① 多くの売り手が同様の商品やサービスを提供し ③ ていて、消費者が売り手を簡単に切り替えるこ とができると、プラットフォームは特定の売り手 の離脱に影響を受けないため、売り手に圧力を かけて、競争を排除することができる。 ④ 売り手が消費者に提供する価値を最大化する ② ため、一つのプラットフォームだけでなく、複数 プラットフォームにサービスを提供していると、 最初のプラットフォームへのサービスを放棄す る(あるいは放棄させられる)と、酷く害を受ける ことがある。 (売り手はそのプラットフォーム上の消費者にアクセスできなくなるだけ でなく、他プラットフォーム上の消費者に提供する価値も低くなる(ネッ 11 トワーク効果の為))

12.

5つの尺度の解説(続) ⑤ プラットフォームが消費者へのアクセスを制御 ① できている場合は消費者規模が大きく強いネッ トワーク効果を保有していることが多い。そうす ると、売り手は消費者へのアクセスを巡ってプ ラットフォームによって他の売り手と競争させら れたり、独占価格を要求されたりすることになる。 12

13.

3.事例評価 1.ライドシェア・プラットフォーム • プラットフォームは乗客の支払いから一定のサービス料 を受け取る。運転手、乗客ともに複数プラットフォーム (Uberとlyftなど)に登録していることが多い。 (間接的ネットワーク効果) 更なる運転手 運転手 乗客 マルチホーム マルチホーム 更なる乗客 (間接的ネットワーク効果) 13

14.

ライドシェアのプラットフォーム力 • このような環境ではプラットフォーム力はかなり制約される。 ① 消費者への排他的アクセスを制御できない。 × ② プラットフォームの切り替えは簡単に行える。 × 乗客は運転手を簡単に切り替えられるが、運転 ③ 手はプラットフォームに一定程度拘束される。 △ 乗客は他プラットフォームの乗客(乗客群)から ④ の影響に悩まされることがない。 乗客と運転手のどちらも複数プラットフォームを利 用できるので、より多くの参加者をライドシェア市 ⑤ 場に引き込みはするが(系全体のネットワーク効 果はあり)、特定プラットフォームの参入障壁を 高くする訳ではない。 × × 14

15.

2.PCゲーム・プラットフォーム • プラットフォームはゲーム販売とゲーム内購入から一定割合の収益 を受け取る。トップゲーム開発者は(契約によって)特定プラット フォームとリンクすることがある。 一部で独 占契約 Steam*1 Epic Game Store マルチホーム ゲーム開発者 顧客 Good Old Games Origin *1:Steamは市場シェア50~70%で市場リーダー(2019年の月間アクティブユーザー 数9,500万人超え)(Apple,Microsoftはユーザー数、ゲーム数ともに限定的)15

16.

PCゲームのプラットフォーム力 • PCゲームのプラットフォーム力は限定的である。 消費者への排他的アクセスを制御できるプラット フォームはない。 ② プラットフォームの切り替えは簡単に行える。 ① 多くは置き換えが容易だが、高度に差別化された ③ ゲームは簡単には置き換えができないことがある (独占契約などにより)。 殆どのゲームはプラットフォーム上のプレイヤーの ④ 臨界量に達すると、それ以上の追加による利益は あまりない。 既存のトッププラットフォーム(Steam)は潜在 的ライバルへの参入障壁を高めてはいるが、Epic ⑤ の追撃も著しい。参入障壁は限定的。但し、系 全体のネットワーク効果はあり。 × × △ × △ 16

17.

3.ライブストリーミング・プラットフォーム • プラットフォームはストリーマーへの寄付とストリーマーのサブスク リプションからの収益の一部を受け取る。トップストリーマーは (契約によって)特定プラットフォームとリンクすることがある。 一部で独 占契約 Twitch*1 Youtube マルチホーム ストリーマー 顧客 Facebook Gaming Mixer*2 *1:Twitchが老舗(月間アクティブユーザー数3,750万人超え、ストリーマー200万人) 17 *2:MixerはMicrosoftに買収された。

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ライブストリーミングのプラットフォーム力 • ライブストリーミングのプラットフォーム力は限定的である。 消費者への排他的アクセスを制御できるプラット フォームはない。 ② プラットフォームの切り替えは簡単に行える。 ① 多くは置き換えが容易だが、トップストリーマーは ③ 簡単には置き換えができないことがある(利権は トップストリーマーの方が大きいことが多い)。 ④ ライブストリーミングではネットワーク効果は弱い。 新規プラットフォームはトップストリーマーに特別な 機能や報酬を用意して競争している。しかし、既 ⑤ 存トッププラットフォームのTwitchも追加策を継 続し手数料下げなどで対抗している。参入障壁は 限定的。但し、系全体のネットワーク効果はあり。 × × △ × △ 18

19.

4.AppleのAppStoreプラットフォーム • AppStoreは強力なプラットフォーム力を保有している。 AppStoreプラットフォームは次の理由で消費者 への排他的アクセスを制御できる。 1. 売り手が消費者にリーチする唯一の方法が AppStore経由であり他の代替手段はない。 ① 2. Appleはこのような環境をiPhone, iOS, AppStoreの全体構造で実現している。 3. 売り手はWebアプリを介して消費者にアクセ スできると示唆されることがあるが、利用環境 (モバイル中心)の制約、性能低下などで現 実的な代替策にはならない。 〇 19

20.

iPhoneユーザーは次の理由でiOSにロックインさ れており、androidへの切り替えはかなり難しい。 1. iPhoneの価格はかなり高いため、通常、切り 替えはアップグレードの期限まで待つ。 2. 殆どの消費者は既に多くのアプリを所有/使 用しており、OS間でのデータやアカウントの転 送にはかなりの時間がかかる。転送が不可能 ② 〇 なこともある。 3. AppleはiPhone周辺にHWエコシステムを 形成しており、切り替えに時間/コストがかかる 上、場合によってはサービスレベルが低下する。 4. Appleは消費者をロックインする消費者プロ グラムを導入している(例:毎月支払いほ か)。 ⇒次頁図参照 20

21.

消費者はiPhoneから離れてandroidに切り替えよう とすると重大な摩擦に直面する シングルホーム Androidユーザー 消費者が、AppStoreの手 数の負担増に応じてデバイス を切り替える可能性は低い マルチホーム アプリ開発者 シングルホーム iPhoneユーザー 21

22.

次の理由でiPhoneはこの条件に合致しない。 1. 消費者は1つのOS(iOSまたはandroid) しか利用しない傾向がある。 ③ 2. 従って、AppStoreで特定アプリを提供して いる売り手は同じ消費者にGoogle Playで 同じアプリを提供することができない。 ー ネットワーク効果の影響を受けている。 1. AppStoreを介して、登録アプリ群とユーザー 群間には強力なネットワーク効果がある。 2. そこで、消費者に提供する価値を最大化する ため、売り手は様々なプラットフォームでサービ ④ スを提供することがある。 3. この状態で、もし、一方のプラットフォーム (AppStore)から追い出されるとiPhone 全ユーザーを失うので、プラットフォームから退 出することができない。 ⇒次頁図参照 〇 22

23.

両プラットフォームでのアプリ開発者は、もし一方のプラッ トフォームから追い出されると、滞在を交渉できなくなる 一方のプラットフォームを追い出 された開発者は、そのプラット フォーム上の全ユーザーを失い、 他クロスプラットフォーム開発者 との競争力が低下する シングルホーム Androidユーザー アプリ開発者 シングルホーム iPhoneユーザー 23

24.

AppStoreプラットフォームは次の理由で高い参 入障壁を維持している。 1. Appleは既に売り手の臨界量を確立している。 2. このクリティカルマスの売り手群が多くの消費 者を引き付けている。 3. そして、これに起因するネットワーク効果が AppStoreの周辺に競争上の障壁を形成し ⑤ 〇 ている(約9億台のiPhoneとAppStore上 の約185万本のアプリ群により)。 4. そのため、仮に競合他社が充分な量のアプリ を引き寄せたとしても、AppleがiOSデバイス でのAppStore代替物を許可していないので、 競合他社はAppStoreユーザーへのアクセス ができず、Appleと真の意味で競争できない (androidは広告モデルで共存しているのみ)。 24

25.

プラットフォーム力比較(中間まとめ) 1. 特権的プラットフォームになるには当該プラット フォームが顧客にシングルホームを強要させられる (あるいは顧客が甘受する)サービス環境を提 供できるかどうかが分岐点になる。 2. このためには当該プラットフォームは当プラット フォームだけを仲介とした売り手と顧客間のネット ワーク効果を発揮できる臨界量を達成しておく必 要がある。 3. こうなってしまえば、新たに加わる売り手も顧客も 継続的に制御が可能になる。 4. 現実的には、このような環境の実現には新市場 に向けた先進的取組みの是非がポイントになる。 25

26.

5.テスラのプラットフォーム • テスラは“動くスマホ”への先駆的取組みで先行していると考えられる。 *1 テスラ関係 補完品群 未 来 の 各 種 補 完 品 テスラ自動車 CASE時代の新た な自動車群(今後) 顧客 未 来 の 顧 客 群 *1: ファンクラブのコミュニケーションツール、スマホでの自動車所在/属性 確認機能、バッテリー関係エコシステム群、車の機能アップデート(ダ ウンロード)サービスなど、各種(現在は自社開発製品が中心) 26

27.

テスラのプラットフォーム力 • Appleに類似のプラットフォーム力を実現できる可能性がある。 ① ② ③ ④ 一定の臨界量を先行して達成できれば、消費者 △ への排他的アクセスを制御できる可能性がある。 現状では不明だが、新規顧客がテスラから乗り換 △? えるプラットフォームは登場していない。 シングルホームを確立できるかどうかは未知数 ー テスラ圏の小規模なネットワーク効果は発生しつ △ つあると考えられる。 現在、ブランド効果によるロックイン効果はありそ うである。但し、ベンツなどの高級EVカー自体は ⑤ 登場しているので、真に「車は動くスマホ」スタイル △? の車がどのようなペースで登場してくるかに依存す るかと思われる。 27

28.

4.プラットフォームの排他的行為の評価 Appleの排他的行為 • AppleはiPhone,iOS,AppStoreで構成される特 権的プラットフォームを維持している。 • 特にAppStoreでのアプリ販売に30%の手数料 を請求しているのが目立つ。 – AppStoreは立上げから10年以上経過しており、 – AppStoreの機能はダウンロードと支払いに限定さ れている。 – これは(市場で予想されるレートに比して過剰な) 排他的行為と考えられる。 これがアプリ開発者、消費者に与える影響を次頁 以降で述べる。 28

29.

開発者への影響 • 全般的問題点 – 開発者はAppStoreの30%の手数料を全て消費者 に転嫁できないが、少なくとも消費者向け価格は 上昇し、アプリとアプリ内購入は減少する。 – 結果、マージンの減少はイノベーション、研究開 発などへの投資を減少させ、イノベーションを阻 害する。 – また、Appleが購入の顔と消費者購入情報の収 集を全て直接的に仲介するので、開発者と顧客 の関係は弱まり、顧客ニーズのタイミング良い吸 い上げとサービス提供を阻害する懸念がある。 – その結果、開発者が提供するサービス範囲は縮 小する懸念がある。 29

30.

開発者への影響(続) • 市場で進歩した仕組みの吸収の抑止 – 決済プロバイダー間の激しい競争により、デジタ ル市場での取引手数料は取引額の1~5%に引き 下げられている。また、少額の固定料金が課せら れるケースも増えている。 – しかし、AppStore内では各決済プロバイダーの サービスをアプリが使用することは禁止されてい る。また、開発者が独自支払いシステムを作成す ることも禁止されている。 – 結果、開発者は支払いにまつわる「払い戻し、部 分的支払い、割引、試用期間の延長、・・・」など 消費者の基本的サービス要求に関与できなく なっている。 30

31.

開発者への影響(続) • Apple戦略と個別アプリ開発者との関係 – AppleがAppStoreをiOSにリンクさせていることは 技術的必要性ではなく、戦略的かつ一方的選択 と言える。 – 結果、アプリ配布と支払い処理の競争が押さえら れている。これが、AppleがAppStore手数料30% を請求し続けられる背景にある。 – これによって、開発者は低価格、高品質のアプリ を提供できなくなる懸念がある。 – この影響はアプリの種別によっても異なる。特に 大規模アプリ(例:出会い系アプリなど)での影響 が大きいかもしれない。 31

32.

開発者への影響(続) • Appleと開発者の競争あるいは利益相反 – Appleは消費者データへの特権的アクセス権を保 有していることで、ユーザーが特定アプリに費や す時間の監視なども可能になる。 – この追加情報を、Appleは既に競合しているサー ビス(例;音楽(Spotifyと競合)、ニュース、天気、 など)で、競合するサービスベンダーへの対抗や 優位性維持に役立たせることができる。 – しかし、このような情報は通常のアプリ開発者で も不足している情報で、何とか得たい情報である。 – 各開発者は、今はまだ競合していないとしても、 将来競合するサービスをAppleが試みる場合、彼 等に有利な情報を一方的に取得されてしまうの ではないかとの懸念が発生しうる。 32

33.

顧客への影響 • Appleがアプリ開発者に請求する手数料の一部 または全部が消費者に転嫁され消費者がアプリ 購入時の価格は高くなる。 • 支払い/決済に関わるサービスはサブスクリプ ションなども含め、消費者へのサービスの大きな 部分を占めつつある。Appleが開発者に個別決 済サービスの利用を許さず、包括的サービスの みを提供することは、消費者の基本的ニーズ吸 い上げや問題解決を妨げるリスクがある。 • 全般的には、消費者に価値ある追加サービスを 適切なタイミングで提供することを妨げる懸念が ある。 33

34.

Appleの排他的行為の評価 • Appleは特権的立場を利用して競争を制限し、顧 客の幸福感を低下させる戦略を取っている面が ある。 • 即ち、閉じたエコシステムを運用して顧客体験を 制御している。 • Appleの成功は設計者やソフト技術者の創意工 夫によるエコシステム管理に依存してきた。 • しかし、今後、「iOSアプリで独自支払いシステム 使用を義務付ける」ような排他的行為の正当性 は難しくなってくるかもしれない。 • 但し、効果的な規制を誰が見つけどのように解 決・修正させて行くかの道筋は見えていない。 34

35.

5.これからのプラットフォームビジネス プラットフォーム力の今後の方向性 • プラットフォームに由来する力は成功すると従来にな い特権的力を持つ場合があり、適正な規制を行わな いと大きな代償を伴うリスクがある。 • Appleの市場支配力はAppStoreアプリの規模と多様性 からAppleの制限的行動への注意をそらしている可能 性がある。 • 他の例ではプラットフォーム間競争によるメリット(価 格低下やイノベーション最大化など)も生じている。 • やはり、排他的行為と自己優先を一定程度に制限す ることは必要だ。 • その際、データが今後のデジタル市場の重要な資産 なので、プラットフォーマーはこれを独占せず、開発者、 顧客およびその他の行動者にアクセス保証するような ルールの定義などから修正してゆく必要がある。 35

36.

成功裏にプラットフォームを維持するには • プラットフォーム立上げにはまず「にわとりと卵問題」 克服から開始しなければならない。 • 初期段階では、サービス提供者と利用者を仲介する プラットフォームの存在とメリットを広く認識してもらう ためオープン性が重要になる。 • しかし、仲介しただけで充分な利益を獲得できるのは 稀なので、一定の臨界量を超えた段階でクローズ化 (でマネタイズできる)手段をどのように準備しておくか が大きな課題になる。 • AppleはMac OS以来の基盤技術とiPodからiPhoneへ の適切なサービス展開でそれを達成した。 • プラットフォームビジネスを成功裏に展開するには、 各々、異なる経緯を経ながらも何らかの特異な技術 基盤に依拠しながら、長期間のエコシステムの複雑で 36 高度な管理が重要になる。

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長期的プランが必要 準備期 Apple の例 一般的 な例 • • • 成熟期 勃興期 MacベースのiOS iTuneと音楽コンテン ツをベースとした iPod投入 • 長期的に差別化 項目としうる基盤 技術の準備 • • • • iPod拡大版として のiPone投入 iTuneをAppStoreに レベルアップ コンテンツ種別を拡大 • 消費者と時代に フィットする仲介型 サービスの訴求 仲介取引の臨界 量を速やかにクリア • 幾つかの課題が 出ている。 ✓ 大型アプリ開発者との 関係性 ✓ 決済サービスのあり方 ✓ 消費者保護のあり方 • 新たな顧客との 対話のレベルアップ 新たな課題への 対応 37

38.

おわりに • 特権的プラットフォームはめったに登場しない。 • そして、その成功には偶然と長期間のエコシ ステム管理の創意工夫が欠かせない。 • 何れの場合にも、新規市場に向けた先行的 取組み以外にこのようなチャンスをものにす ることは起こり得ない。 • 結局、デジタル社会に向けた圧倒的に斬新な イノベーションへの挑戦からしか、このチャン スをものにする機会は登場しないと言えるの ではないだろうか? 38