グローバルプラットフォームとエコシステムの新潮流

642 Views

December 14, 20

スライド概要

コロナ騒動を契機に、デジタル化進展が前倒しになっている。そして、GAFAやNetflixなど、デジタル化先行企業の強さが改めて話題になっている。ただ、ちょっと思ったのは、少し前、多国籍企業というのが話題になった。今話題のGAFA、Netflix、Uber、Airbnbなどは世界中に進出しており、まさに多国籍企業である。しかし、多国籍企業とは言わない。それは何故かと謂えば、デジタル化(あるいはプラットフォーム化)が「場所(国)への依存性」を克服する要素を持っているからだろう。そこで、今話題のトレンドをこのような視点から見直してみた。その結果を報告する。

profile-image

定年まで35年間あるIT企業に勤めていました。その後、大学教員を5年。定年になって、非常勤講師を少々と、ある標準化機関の顧問。そこも定年になって数年前にB-frontier研究所を立ち上げました。この名前で、IT関係の英語論文(経営学的視点のもの)をダウンロードし、その紹介と自分で考えた内容を取り交ぜて情報公開しています。幾つかの学会で学会発表なども。昔、ITバブル崩壊の直前、ダイヤモンド社からIT革命本「デジタル融合市場」を出版したこともあります。こんな経験が今に続く情報発信の原点です。

シェア

埋め込む »CMSなどでJSが使えない場合

関連スライド

各ページのテキスト
1.

グローバルプラットフォームと エコシステムの新潮流 B-frontier研究所 高橋 浩

2.

グローバルプラットフォームの登場 2

3.

問題意識 米国IT系プラットフォーマーが世界の時価 総額ランキングの上位を独占 彼らは多国籍企業でグローバルプラット フォムとエコシステムを登場させている 新たなスタイルのプラットフォーム企業 (Uber, Airbnb他)も登場 世界経済の性質と構造に根本的な変化 が発生しているのではないか? 特に「プラットフォーム化」の現象と価値創 造に関わる「エコシステム」の出現に着目! 3

4.

このような問題意識にアプローチするため 以下のプロセスで検討 目次 1. デジタル時代のプラットフォームとイン フラストラクチャ 問題は何か? 2. 国際ビジネス理論はどのように変質し ているか? 何が変質したか? 3. 検討に利用可能な最近の研究成果 今後に向けた考察 4

5.

デジタル時代のプラットフォームとインフラストラクチャ デジタルインフラストラクチャの例 • • • • • • • • • インターネット データセンター IEEE 802.11 USB、など スマートフォン タブレットなど GPS IoT 5G、など オープンスタンダード 民生用デバイス インフラを構成するデジタル 技術 5

6.

スマートフォン、インターネット、Uberなど を実現させているデジタル技術の役割 • アクセスが簡単なインフラストラクチャを提供 • 必要なコンピューティングとネットワークリソー スを提供(GPS機能なども含む) • 需要と供給の繋がりを容易化 • デジタルインフラストラクチャは、デジタル データの収集、格納を抜本的に容易化 • 多くのシステム&デバイスから簡単に利用可 能にする能力を提供 このようなインフラストラクチャは嘗て無かった。 6

7.

デジタル化による影響 • デジタル化はプラットフォームアーキテクチャの構 成要素を製品にとらわれないものにする。 – 例:Google Mapのようなデジタル補完品の用途 は極めて広い。 – しかも、それらの用途は事前には決定されない。 • 現存する企業の製品機能やサービスを自社 の一部としても提供可能にする。 • 企業が他企業を包み込むという現象も発生 する(例:AppleのiPhoneがカメラ産業を包含)。 7

8.

デジタルインフラストラクチャとは • 「複数の利害関係者がそれぞれのサービスや コンテンツのニーズを調整することを可能にす るコンピューティングとネットワーク資源」 • デジタルコンポーネントが物理製品に組み込 まれると、モジュールアーキテクチャが階層化さ れ、・・・Y. Yoo et al. 2010 • 製品の境界と組織構造が拡張される。 • 産業構造が独立型から相互競争型、重複構 造へと変質する。 – 例:iPad電子書籍とKindleの並立 8

9.

プラットフォームアーキテクチャとは • 「エコシステムが比較的安定したプラット フォームと変化が奨励される補完的モジュー ル集合にどのように分割されるかを記述する 概念的青写真、および両方を結び付ける設 計規則」 • デジタル化とモジュール化に基盤を置く。 9

10.

デジタル化+プラットフォームアーキテクチャ • デジタル化は場所への依存性を取り除く。 • 地理的制約から解放されることで、まったく新 しいビジネスモデルを可能にし、潜在市場を 大幅に拡大させる。 • 地理的および組織的境界を越えた専門知識 の分配を促進させる。 • 場所に依存しないことが物理経済を凌駕する 巨大デジタル経済を生み出す。 10

11.

デジタル化/プラットフォーム化の影響の概念図 デジタルプラットフォームの登場 デジタル化 ・デジタルデー タ収集/格納の 容易化 ・多くのシステ ム/デバイスで 利用可能に エコシステム デジタル補完品(各種アプリ)など プラットフォーム化 デジタルインフラストラクチャ (インターネット、スマホ、GPS,IoT他) 場所の依存性 の除去 ・新しいビジネ スモデル登場 ・まったく新し い市場へ ・潜在市場の 拡大 デジタルプラットフォーム アーキテクチャ 製品境界/組織構造の拡張 産業構造:独立型⇒相互競争型へ モジュール化 11

12.

新たな問題の発生 • このような環境で、・・“一体、誰が何をどのよ うに決断するのか?”(例は下記) 1. プラットフォーム所有者とアプリ開発者間の 決定権はどのように分配されるか? 2. どのような制御メカニズムがプラットフォーム 所有者によって設計/使用されるか? 3. どのようなインセンティブ構造が存在し得る か? 12

13.

プラットフォームガバナンスの開発 • 認識すべき課題は・・・ • イノベーションを制約することなくエコシステム 参加者の行動を適切に制御するガバナンス メカニズムをどのように確立するか? ① 組織は、イノベーションとプラットフォーム制御間 の微妙なバランスを管理するように設計されな ければならない。 ② 「安定していて、且つ同時に進化可能」が目標! 13

14.

新たなプラットフォームガバナンスの特徴 • 集中型ガバナンス構造とは根本的に異なる。 1. プラットフォーム所有者とアプリ開発者の意思 決定権の定義が必要である。 2. プラットフォーム所有者は、制御メカニズムによ り、アプリ開発者の行動に報いたり罰を課し、プ ラットフォームでベストプラクティスを確立する規 則を実施する必要がある。 • 制御メカニズムの例: ・ SDK,APIなどの境界資源、 ・ プラットフォームHW/OS他のアクセス権限、 ・ 各種メトリックス、ゲートキーピング、など 14

15.

その他の関係者に影響を与えるイン センティブ構造の特徴 • プラットフォーム所有者は戦略的な行動をとり、 エコシステム参加者に対して、 • 「エコシステムにおける純粋な価値創造から離れ、 プラットフォームの利益を高める行動に向けてゆ がめる」規則や規制を加える傾向がある。 – 背景:プラットフォーム所有者の優先事項は、プ ラットフォームの価値創造に貢献する生産者と消 費者の利益を確保しながら、 – その一方、自分の利益を保護し、競争上の地位 を確保することにある。 15

16.

制御のための可能な手段(例) • 取引手数料 • アクセス手数料 • アクセスの強化とキュレーション強化のため の手数料 • 一方に請求しながら他方に補助金を支払う 非対称型価格設定方式 • アプリ開発者のイノベーションをプラット フォームに組み入れてしまう規則 • 消費者が追加費用なしでこれらの機能を利 用できるサービス提供の規則 • プラットフォーム所有者が品質保証を目的と してアプリ開発者のアクセスを制限する規則 • など 価格 戦略 規則 規制 16

17.

国際ビジネス理論はどのように変質しているか? 国際ビジネス環境 • 従来の国際ビジネス論での考慮事項は・・ ① 商品やサービスの具体的な流れに加えて、 ② オープンリソースへのアクセスの制限 ③ 国境を越えて収益化される取引 ④ 物理的な障壁に満ちた環境で如何に競争す るかに関わる大規模な組織 など 17

18.

従来の想定事項は • どの地域・場所を選択するか? • 最初の参入をどのように行うか? • 各種の知識や指令を如何に伝達するか? • これらを機能させる組織構造や設計をどうす るか? などであった。 多国籍企業にとっての重要な課題 18

19.

しかし・・・ 国際ビジネス環境は変わりつつある • デジタル技術と新しいビジネスモデル出現が従 来の国際ビジネスの性質や構造を変質させ始め ている(例は下記)。 1. デジタルインフラストラクチャの重要性の高まり 2. テクノロジーを含む主要なオープンリソースの 可用性の向上 3. 知識や専門情報への即時の世界的アクセス 4. 無料のコンテンツやサービスの交換の増加 5. 経済活動や技術開発における中小企業の役割 の増大 など 19

20.

AppleのiOSの事例 • iOSプラットフォーム価値を補完する独自製品 開発のため、何百千もの企業に一連のビル ディングブロックが提供された。 • 焦点となる価値提案のためエコシステムが調 整された。 • プラットフォーム上での共同専門化/補完から 様々な相互依存関係を示すアクター群が発 生した。 – 相互依存関係は各役割内で標準化されている。 – 様々なタイプのスキル、能力、戦略が醸成されて いる。 20

21.

国際ビジネス環境におけるビジネスモデルの変化 新しいグローバルビ ジネス環境の登場 グローバル競争におけ るビジネスモデルの変質 グローバルビジネスモデ ルのイノベーション ・グローバルコネク ティビティの拡大 ・技術の激変 ・新興国・発展途上国 の市場改革 ・貿易、資本、技術、 サービス、情報、デー タ、人の流れの加速 ・グローバルオープン リソースへのアクセス の増加 ・グローバル顧客への価 値創造と獲得は、以下を 考慮する必要がある。 ・対象となる海外市 場と顧客 ・グローバルオペ レーションからの収 益創出モデル ・グローバルバ リューチェーン ・リソースと機能の ポートフォリオ ・クロスナショナルプ ロセス構成 ① グローバルなパートナー シップとネットワークを活 用する。 ② 細分化され分散された 事業を統括する。 ③ 重要な新興市場での成 長を促す。 ④ グローバルビジネスエコ システムと共進化を図る。 ⑤ グローバルオープンリ ソースとネットワークリ ソースを創造的に活用 する。 ⑥ 企業固有の利点と各国 固有の利点を統合する。 21

22.

新たな取組みの検討 • 所有権と関連リソース展開のためのガバナンス 選択の再定義 • エコシステムレベルで場所を重視しないガバナン スの選択 • 国境を越えたパートナー間の新たな接続性の具 体化(知識の調達、転送、変換、展開、など)とエ コシステムで行使する集合的力の再定義 • より流動的で柔軟な形式のリソースの再結合と 展開を具体化するモジュール性との緩い結びつ き それらの基盤としてのプラットフォーム化の検討(次頁以降) 22

23.

2種類のプラットフォームが存在 • 製品開発の視点(①イノベーションの場としてのプ ラットフォーム) – 「プラットフォームを、モジュールアーキテクチャ上 に配置されたコンポーネント、テクノロジー、およ びその他の資産の共有セットとして概念化」 • 産業経済学の視点(②マルチサイド市場としての プラットフォーム) – 「プラットフォームを、2つ以上のエンティティの セットを接続し、それらの間の相互作用とトラン ザクションを仲介するのに役立つ一連のルールと アーキテクチャとして概念化」 23

24.

2種類のプラットフォームによる国際ビジネスの分類 分類 説明 • ①イノベー ションの場と してのプラッ トフォーム • • • • • ②マルチサイ ド市場として のプラット フォーム • • • 実例 プラットフォームは、テクノロジー、コンポーネント、ツール、サービ スの集合で構成され、多くの場合、モジュラーアーキテクチャで、 補完的製品とサービス開発の基盤を形成する。 プラットフォーム(コアコンポーネント)と補完的製品(周辺コン ポーネント)は、ユーザー/顧客にとっての価値提案を形成する。 プラットフォームベースのエコシステムは、プラットフォームリー ダーと補完的製品およびサービスを開発するエンティティ(顧 客を含む)で構成される。 プラットフォームベースのエコシステムのガバナンスはプラット フォームリーダーの責任であるが、他エコシステムメンバーと共 有される場合がある。 プラットフォームリーダーは、エコシステムメンバーに1つ以上の 価値の獲得メカニズムを提供する。 •Apple (iOS); Google (Android) •Ford (SYNC); GE (Predix); JohnDeere(JDLink) •Microsoft(Xbox); Sony (Playstation) プラットフォームは、マルチサイド市場におけるさまざまなユー ザーグループの規制された参加(相互作用および/またはトラ ンザクション)を可能にするテクノロジーアーキテクチャとルール で構成される。 プラットフォームリーダーは、すべての参加者で構成されるネット ワークを作成/編成し、参加者が相互作用や価値交換するた めのツールを設計/実装し、データを使用して各相互作用のさ まざまな「サイド」間で最適な一致を作成する。 エコシステムは、プラットフォームリーダー、ユーザーグループ (「サイド」)、および価値を創造して提供するその他のサービ スパートナーで構成される。 ネットワーク効果(「同じサイド」および「クロスサイド」のネット ワーク効果)の影響を非常に受けやすいプラットフォーム •Uber, Airbnb •Ebay, Alibaba, Amazon •YouTube, Twitter, Facebook •Kickstarter, Indiegogo •LinkedIn, Match.com, Monster.com 24

25.

2種類のプラットフォームによる国際ビジネスの分類(続) 分類 対象分野 キー概念と構成 • ①イノベーション の場としてのプ ラットフォーム ②マルチサイド 市場としてのプ ラットフォーム 対象分野: 製品開発; 技術管理; 工学的設計; 組織科学、など • 対象分野: 経済学; 産業組織; 戦略; オペレーション; マーケティング、など • • • • プラットフォームアーキテクチャ:モジュール 性; デザインインターフェースの開放性; コ アおよび周辺コンポーネント;等 エコシステムの調整:決定権の分配;参加の アーキテクチャ; 共有された世界観と共有さ れた集団的アイデンティティ;イノベーション レバレッジ; IPおよびIP権利管理の共有;補 完者への(金銭的)報酬/価値の分配; 等 役割と戦略:プラットフォームのリーダーと補 完者;プラットフォームリーダー戦略(例:テ クノロジーリーダーシップ、イノベーションの 一貫性); 補完戦略(例:マルチホーミング); 等 マルチサイド(ユーザーグループ)の規制され た参加:相互作用/トランザクションルール; サイド間のマッチング; 等 マルチサイド市場の経済学:同じ側(直接)お よびクロスサイド(間接)のネットワーク効 果;価格戦略と収益分配; 等 プラットフォームエンベロプメント 25

26.

グローバルプラットフォーム&エコシステムの偉力 • 国境を越えて一貫した価値を提供することで、 関連するネットワーク効果を活用するだけで なく、 • 隣接する市場に拡大することで国際企業が 海外での足跡を急速に拡大させることを可能 にしている。 • そのことが確立された多国籍企業や新たなベ ンチャー企業の国際ビジネスにかなりの影響 を与えている。 26

27.

世界の高時価総額企業を生み出す原動力 • これらの能力が米国IT系プラットフォーム企 業等の時価総額急上昇に深く関係していると 推定される。 • 今後も、この傾向はデジタル化の進展ととも に、拡大することが予想される。 • この原動力の正体をより明確にすることが喫 緊の課題であり、精力的研究が求められる。 27

28.

国際ビジネス変質の推定仮説 • グローバルプラットフォーム&エコシステムは・・ ① 国際化または国際展開の新しい方法を提供する。 • 所有権やガバナンス選択の再定義で、「場所依存性 の除去」など国際化の新しい方法を促進させることで ② 知識と関係性構築や活用の新しい方法を提供す る。 • デジタル化で顧客を含む多様な国際的パートナー間 の新しい形の接続性促進によって ③ グローバルな顧客に価値を創造し提供する新し い方法を提供する。 • エコシステム調整など価値創造と提供のためのより柔 軟で流動的な組織形態の具体化によって 28

29.

グローバルプラットフォーム&エコシステムは • 明確に定義されたインターフェイスと設計/開発 の冗長性を最小限に抑えるサービス提供で、イ ノベーションのコストと時間を削減させられる。 • 様々な国の顧客への共有アクセスと相互作用/ トランザクション管理の明確なプロセスを提供で きる。 • これらの関係性が再展開され、余剰価値を生み 出す重要な共有リソースとなる。 • 多国籍企業は、共有プラットフォームリソースに 焦点を当てることで国際的拡大の新たな方法を 得る。 • 他の仲介業者への依存度を減らし、顧客と知識 を共同で作成する方法を得る。 29

30.

検討に利用可能な最近の研究成果 • 上述の価値創造のコアとなるプラットフォー マーとアプリ開発者(エコシステム参加者の 代表例)の利権をバランスさせるプラット フォーム制御手段の例は下記 ✓ アプリ開発者のイノベーションをプラットフォーム に組み入れてしまう規則 ✓ プラットフォーム所有者が品質保証などを目的と してアプリ開発者のアクセスを制限する規則 • これらを中心に最近の研究成果を2点論述 (次頁以降) 30

31.

〇 【研究成果1】特に重要な・・・ プラットフォーマーとアプリ開発者間の関係性 (1)最高の成長率を達成するにはどの程度 オープンにすべきか? プラットフォームをクローズにすると、プラットフォーマーが課金する能力 は高まるが、プラットフォームをオープンにすると、アプリ開発者がアプリ を構築する能力は高まる。 (2)アプリ開発者を奨励するには、彼らの知 的財産権はどの程度の期間継続させるべき か? 特定アプリ開発者が知的財産権を保持する期間が長いと、彼らとプラッ トフォーマーが獲得する利益は増すが、期間が短いほど、他アプリ開発 者も利用できる公共財になり、全体的イノベーションが活性化される可 能性が増す。 31

32.

(1)関連:オープン標準との関係性 • プラットフォーマーは、オープン標準などの代替 手段よりもより多くの価値を提供する場合にの みアプリ開発者を引き付けることができる。 • それが出来ないと、アプリ開発者はロイヤル ティを支払ったり知的財産を放棄したりする 必要がないため、プラットフォームよりもオー プン標準を好む可能性がある。 32

33.

(2)関連:プラットフォーマーの選択肢 • プラットフォーマーは知的財産を譲渡あるい は一定期間許容することを選択できる。 – これはアプリ開発者のイノベーションに役立つが、 その見返りとしてアプリ開発者から得られる価値 を決定する必要がある。 • プラットフォーマーはアプリ開発者の知的財 産を吸収することを選択できる。 – これは、エコシステム全体にアイデアを広めるこ とになるが、それを作成した開発者の価値は低 下する。 33

34.

(2)に関連する情報 • SAP:一定期間終了まで特定アプリ開発者のイノ ベーションをコピーしないよう他開発者に警告する 18〜24ヶ月の「空白」明示ロードマップを発行し ている。 – 期間終了後は、どの開発者のイノベーションもSAPコ アに吸収される可能性がある。 • Apple:開発者のイノベーションを適切なものにし、 それらをエコシステムで再利用する権利を留保 している。 • Cisco: 複数の開発者製品に登場している機能を コアネットワークOSにバンドルし、 APIでエコシス テムパートナーがアクセスできるようにしている。 34

35.

プラットフォーム制御方式はプラット フォーム型によって適性が分かれる ①イノベーションの場としてのプラットフォーム • 何らかの名目(品質保証など)で一定のクローズ 化を行う規則の制定 • アプリ開発者の知的財産を一定条件(一定許容 期間後など)によって組み入れる規則の制定、 など ②マルチサイド市場としてのプラットフォーム • 一方サイドに請求しながら、他方サイドに補助金 を出す非対称型価格設定の導入 • 需要と供給を適切に誘導する価格設定の導入 (例:Uberの動的価格設定)、など 35

36.

示唆される一般ルール • 一般には、開発者にオープン性を強制すること で、プラットフォームは、全ての人に利益をもたら すスピルオーバー効果を誘発できる。 • 従って、プラットフォームをオープンにすること、 即ち、知的財産を他者に提供することは、一般 には有益であるが、 • 最適オープン性は、開発者の付加価値とリソー スの再利用によって向上するものの、技術的リ スクによって低下することも考慮する必要がある。 • この意味で、経営者の関心は、個々の企業の利 益を最大化することから、エコシステム全体の利 益最大化へとシフトしている。 36

37.

〇 【研究成果2】また、加えて重要な・・・ エコシステムの機能の仕方 • 特に価値創造のための「より柔軟で流動的な 組織形態の具体化」に関係する。 • 具体的には、「垂直的な命令なしに調整される 一組の異なっているが相互に依存している組 織を許容するモジュール化」が適切なエコシス テムを出現させる。 37

38.

エコシステム出現条件の充足化 • 全体の基盤を成すモジュール性 • それらを興味深くする相互作用の活性化 • 特に異なるタイプの補完性の共存 – 異なるタイプの補完性の例:スーパーモジュラー、 ユニークまたは一般、一方向または双方向、な ど・・・M. Jacobides et al. 2018 • 多様な補完性の登場とエコシステム内および エコシステム間のダイナミズムの発生 38

39.

エコシステムによる価値創造と価値獲得 • エコシステムの新領域 は、「契約上の取り決 めに拘束される必要は ないが、それでもかなり の相互依存性を持つ、 補完的なイノベーション、 製品、またはサービスの 提供」 ⇒右図 • エコシステムは、新た な「企業間調整問題に 対する明確なソリュー ション」になる。 39

40.

以上を踏まえた・・・ 新たな国際ビジネス設計プロセスの例 根本的目的/対象分野の設定 基本的準備 価値創造手法の明確化 プラットフォーム型の選択 プラットフォーム制御方式の選択 プラットフォーム化 「場所の依存性除去」の設計 最適化を目指したエコシステムの調整 価値獲得手段の明確化 エコシステム調整

41.

既存高時価総額企業の概略評価 時価総額 プラットフォーム例 プラットフォームタイプ Apple 13,543億ドル iOS(HWと一体で大半) ①:イノベーション型 Microsoft 12,948億ドル Xbox(一部) ①:イノベーション型 Amazon 10,000億ドル e-business(主要部) ②:マルチサイド型 Google 9,887億ドル Android(他社HWと一 体で主要部) ①:イノベーション型 Facebook 5,755億ドル Facebook(大半) ②:マルチサイド型 シェアリングエ コノミー Uber(大半) Airbnb(大半) Kickstarter(大半) Indiegogo(大半) ②:マルチサイド型 ハード機器 メーカーのプ ラットフォーム Ford(Sync):エンターテインメ ントシステム GE(Predix):IoTシステム John Deere(JDLink):農 業モバイルアプリ ①:イノベーション型 41

42.

まとめに代えて(1):基本認識 • デジタル化が国境を超えた「場所への依存性 除去」を実現させている。 • デジタル化は現存企業の製品やサービスを 自社ビジネスに取込む柔軟性も保有している。 • 結果、既存ビジネスに拘っていると思わぬと ころから切り崩される可能性がある。 • それは大企業に限らない。デジタル化は中小 企業も最初からグローバル進出し易くする。 • このような変化の駆動力を強く意識した取組 みが求められる時代になった。 42

43.

まとめに代えて(2):取組み手段 • 新たな取組みに挑戦する際ポイントとなるの はプラットフォーム化とエコシステムである。 • プラットフォーム化には対象分野に応じた適 切な手段がある。 • 価値創造に適したプラットフォーム制御方式 もある。 • 安定したプラットフォーム維持と価値創造の バランスにはエコシステム調整が重要な役割 を担う。 • 経営はエコシステム全体の価値最大化に視 点シフトの必要な時代になった。 43

44.

まとめに代えて(3):今後の潮流 1. 事業内容、企業規模によらず、最初からグロー バルに考える必要がある。 2. プラットフォーム化とエコシステムの醸成をセッ トで考える必要がある。 3. プラットフォームガバナンスとエコシステム調整 を戦略的に考える必要がある。 4. プラットフォームの立場、各エコシステム構成員 の立場を総合的に考える必要がある。 5. 全体構造はダイナミックに変動して行くので、全 体の動きを予想した対応が必要になる。 6. これらの対応に資する適切なデータ収集を行う 必要がある。 44

45.

自動運転車の今後 Uberは自動運転開発子会社ATGを同業の米オーロラ・イノベーションに売 却。Uberは約1200人の従業員らを譲渡。オーロラに4億㌦(約420億円)を 出資し技術開発で連携。オーロラの従業員数は3倍の約1800人に増大。 • プラットフォームは、①イノベーション型 • 自動運転車の利用形態が見えないため、プラッ トフォーム設立の道筋は未だ不透明 – Uberの動き(上述)もその収束に向けた一環 – プラットフォームリーダーの立候補の過程? – エコシステムの形成も未だ不透明 • EV車の登場は収斂化の一要素ではあるが、既 存の慣性力が大きいため(車種を含め)ビジネス の方向性が見えるまでにはまだ時間が必要? • 技術的進歩と新たなビジネス立上げの同期発生 条件は未知数 ⇒ プラットフォーム化/エコシステム調整に着手するタイミングはまだ先? 45

46.

主な参考文献 • Panos Constantinides, Ola Henfridsson, Geoffrey G. Parker, “Platforms and Infrastructures in the Digital Age”, INFORMATION SYSTEMS RESEARCH Vol. 29, No. 2, 381–400, 2018. (1章) • Satish Nambisan, Shaker A. Zahra, Yadong Luo, “Global Platforms and Ecosystems: Implications for International Business Theories”, Journal of International Business Studies, 50 (9), 1464-1486, 2019. (2章) • Geoffrey Parker,Marshall Van Alstyne, “Innovation, Openness, and Platform Control”, MANAGEMENT SCIENCE Vol. 64, No. 7, 3015–3032, 2018. (3章) • Michael G. Jacobides, Carmelo Cennamo, Annabelle Gawer, “Towards a theory of ecosystem”, Strategic Management Journal, 39, 2255–2276, 2018. (3章) 46

47.

関連Slideshare 画像をキッ クすると当 該slideshare にジャンプ 2章 47