サッカーのネタバレが観戦者の態度に及ぼす影響

198 Views

March 14, 17

スライド概要

EC43での発表資料です

profile-image

明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室

シェア

埋め込む »CMSなどでJSが使えない場合

関連スライド

各ページのテキスト
2.

スポーツ観戦 l勝つか負けるかわからないハラハラ感を楽しめる l仕事や学業などでリアルタイムで観られない場合は 録画視聴 ある問題が発⽣

3.

ネタバレ問題 ⽇本勝ったん だって ⼈づて ニュース ©やべっちF.C. SNS

4.

ネタバレ防止研究 lスポーツの勝敗にまつわるネタバレ防⽌⼿法の検討[中村 2013] ○Web上のスポーツのネタバレを隠す⼿法を検討 lスポーツジャンルに応ずるネタバレ特性分析と判定 ⼿法の提案 [⽩⿃ 2016] ○ネタバレの⽂章特徴を分析

5.

ネタバレ防止研究 lスポーツの勝敗にまつわるネタバレ防⽌⼿法の検討[中村 2013] ○Web上のスポーツのネタバレを隠す⼿法を検討 ネタバレは本当に問題なのか? lスポーツジャンルに応ずるネタバレ特性分析と判定 ⼿法の提案 [⽩⿃ 2016] ○ネタバレの⽂章特徴を分析 どのような影響を及ぼすのか?

6.

ネタバレ調査研究 lStory Spoilers Donʼt Spoil Stories [Leavitt 2011] ○⼩説のネタバレはコンテンツの⾯⽩さを落とさない lWhoʼs afraid of spoilers? [Rosenbaum 2016] ○⼩説を読み慣れていない⼈はネタバレされた⽅が,読み慣れ ている⼈はネタバレされない⽅が⾯⽩いと感じる

7.

ネタバレ調査研究 lStory Spoilers Donʼt Spoil Stories [Leavitt 2011] ○⼩説のネタバレはコンテンツの⾯⽩さを落とさない スポーツでは ○⼩説を読み慣れていない⼈はネタバレされた⽅が,読み慣れ 調査されていない ている⼈はネタバレされない⽅が⾯⽩いと感じる lWhoʼs afraid of spoilers? [Rosenbaum 2016]

8.

研究目的 ネタバレは試合観戦の⾯⽩さのどの部分 に対して影響するのかを調査すること ネタバレはどのような視聴者/試合 に対して影響するのかを調査すること

9.

調査イメージ lネタバレあり 岡崎が決めて勝つよ〜 lネタバレなし ・・・・・

10.

調査概要(過去の試合) l⽤意した試合: 「⽇本代表VSメキシコ代表」「チェルシーVSバルセロナ」 l協⼒者:観戦に興味のある19〜23歳の⽇本⼈⼤学⽣8⼈ lアンケート内容: プレーに興奮したか(興奮度) 試合の緊張感は感じたか(緊張感) 悔しい/嬉しいなど試合展開に⼀喜⼀憂したか(⼀喜⼀憂度合い)

11.

試合詳細(過去の試合) 試合名 ⼤会名 開催⽇ ⽇本代表VSメキシコ代表 FIFAコンフェデ レーションズ杯2013 2013/06/22 チェルシーVSバルセロナ UEFAチャンピオンズリーグ 2012/04/25 2011-12準決勝

12.

調査手順(過去の試合) ① 試合に関する事前情報と前半45分の内容を伝える

13.

調査手順(過去の試合) ① 試合に関する事前情報と前半45分の内容を伝える ② ネタバレ組には後半45分のネタバレをする ※今回はダイジェスト動画にあったシーンを⽂章でネタバレした

14.

調査手順(過去の試合) ① 試合に関する事前情報と前半45分の内容を伝える ② ネタバレ組には後半45分のネタバレをする ※今回はダイジェスト動画にあったシーンを⽂章でネタバレした ③ 後半45分を視聴させる

15.

調査手順(過去の試合) ① 試合に関する事前情報と前半45分の内容を伝える ② ネタバレ組には後半45分のネタバレをする ※今回はダイジェスト動画にあったシーンを⽂章でネタバレした ③ 後半45分を視聴させる ④ アンケート

16.

「日本代表VSメキシコ代表」 ネタバレ組 ⾮ネタバレ組 2 1 0 -1 -2 A B 興奮度 C D 緊張感 E F G ⼀喜⼀憂度合い H

17.

「日本代表VSメキシコ代表」 ネタバレ組 ⾮ネタバレ組 2 1 0 -1 緊張感・⼀喜⼀憂度合いに⼤きく影響 -2 A B 興奮度 C D 緊張感 E F G ⼀喜⼀憂度合い H

18.

「チェルシーVSバルセロナ」 ネタバレ組 2 ⾮ネタバレ組 1 0 -1 -2 E F 興奮度 G H 緊張感 A B C ⼀喜⼀憂度合い D

19.

「チェルシーVSバルセロナ」 ネタバレ組 2 ⾮ネタバレ組 1 0 変化なし -1 -2 E F 興奮度 G H 緊張感 A B C ⼀喜⼀憂度合い D

20.

組ごと平均 2 ネタバレ組 ネタバレ組 ⾮ネタバレ組 ⾮ネタバレ組 1 0 -1 -2 ⽇本代表VSメキシコ代表 興奮度 チェルシーVSバルセロナ 緊張感 ⼀喜⼀憂度合い

21.

組ごと平均 2 1 ネタバレ組 ネタバレ組 ⾮ネタバレ組 ⾮ネタバレ組 * 0 -1 -2 緊張感に5%有意差 ⽇本代表VSメキシコ代表 興奮度 チェルシーVSバルセロナ 緊張感 ⼀喜⼀憂度合い

22.

考察(過去の試合) l興奮度に有意差はなかった Ø⽂章によるネタバレをしてもプレー⾃体の⾯⽩さは損なわれない l⼀喜⼀憂度合いに有意差はなかった Ø⼈や場⾯によって感じ⽅が異なる(チャンスでは⼀喜⼀憂しない がピンチでは⼀喜⼀憂したという⼈も) l「チェルシーVSバルセロナ」では影響がほとんどなかった Ø海外の試合であるため結果への執着がない

23.

問題点 l過去に開催された試合であるため結果に執着しづらい l協⼒者どうしでコミュニケーションしてしまい 「⼀体感」という⾯⽩さが⽣じる lコミュニケーション中にネタバレ情報が伝わる

24.

調査概要(リアルタイムの試合) l調査した試合: 「⽇本代表VSオマーン代表」「⽇本代表VSサウジアラビア代表」 l協⼒者: 観戦に興味のある19〜23歳の⽇本⼈⼤学⽣ 8⼈ or 6⼈ lアンケート内容: プレーに興奮したか(興奮度) 試合の緊張感は感じたか(緊張感) 悔しい/嬉しいなど試合展開に⼀喜⼀憂したか(⼀喜⼀憂度合い)

25.

試合詳細 試合名 ⼤会名 開催⽇ ⽇本代表VSオマーン代表 国際親善試合 2016/11/11 ⽇本代表VSサウジアラビア代表 FIFAワールドカップ2018 アジア最終予選 2016/11/15

26.

調査手順(リアルタイムの試合) ① 協⼒者のスマートフォン(インターネット接続機器) を没収

27.

調査手順(リアルタイムの試合) ① 協⼒者のスマートフォン(インターネット接続機器) を没収 ② 2時間(実際の試合放送の間)部屋で待機

28.

調査手順(リアルタイムの試合) ① 協⼒者のスマートフォン(インターネット接続機器) を没収 ② 2時間(実際の試合放送の間)部屋で待機 ③ ネタバレ組には試合のネタバレをする ※今回は結果表に記載されるような情報をネタバレした

29.

調査手順(リアルタイムの試合) ① 協⼒者のスマートフォン(インターネット接続機器) を没収 ② 2時間(実際の試合放送の間)部屋で待機 ③ ネタバレ組には試合のネタバレをする ※今回は結果表に記載されるような情報をネタバレした ④ 試合(前後半)を視聴させる

30.

調査手順(リアルタイムの試合) ① 協⼒者のスマートフォン(インターネット接続機器) を没収 ② 2時間(実際の試合放送の間)部屋で待機 ③ ネタバレ組には試合のネタバレをする ※今回は結果表に記載されるような情報をネタバレした ④ 試合(前後半)を視聴させる ⑤ アンケート

31.

実験風景

32.

「日本代表VSオマーン代表」 ネタバレ組 2 ⾮ネタバレ組 1 0 -1 -2 I J 興奮度 K L 緊張感 M N O ⼀喜⼀憂度合い P

33.

「日本代表VSオマーン代表」 ネタバレ組 2 ⾮ネタバレ組 1 0 緊張感・⼀喜⼀憂度合いに⼤きく影響 -1 -2 I J 興奮度 K L 緊張感 M N O ⼀喜⼀憂度合い P

34.

「日本代表VSオマーン代表」 2 1 ネタバレ組 協⼒者Iは影響が⼩さい ⾮ネタバレ組 0 -1 -2 I J 興奮度 K L 緊張感 M N O ⼀喜⼀憂度合い P

35.

「日本代表VSサウジアラビア代表」 ネタバレ組 2 ⾮ネタバレ組 1 0 -1 -2 Q R 興奮度 S 緊張感 T U ⼀喜⼀憂度合い V

36.

「日本代表VSサウジアラビア代表」 ネタバレ組 2 ⾮ネタバレ組 1 0 ほとんど変化なし -1 -2 Q R 興奮度 S 緊張感 T U ⼀喜⼀憂度合い V

37.

「日本代表VSサウジアラビア代表」 ネタバレ組 2 ⾮ネタバレ組 1 0 -1 協⼒者Q, Sは特に影響が⼩さい -2 Q R 興奮度 S 緊張感 T U ⼀喜⼀憂度合い V

38.

組ごと平均 2 ネタバレ組 ⾮ネタバレ組 ネタバレ組 ⾮ネタバレ組 1 0 -1 -2 ⽇本代表VSオマーン代表 興奮度 ⽇本代表VSサウジアラビア代表 緊張感 ⼀喜⼀憂度合い

39.

組ごと平均 2 1 ネタバレ組 ⾮ネタバレ組 ネタバレ組 ⾮ネタバレ組 * * 0 -1 -2 緊張感・⼀喜⼀憂度合いに5%有意差 ⽇本代表VSオマーン代表 興奮度 ⽇本代表VSサウジアラビア代表 緊張感 ⼀喜⼀憂度合い

40.

考察(評価項目) l4試合とも興奮度に有意差はなかった Ø⽂章によるネタバレをしてもプレー⾃体の⾯⽩さは損なわれない l緊張感に対して最も影響が⼤きかった Øネタバレは特に試合の⾏⽅へのハラハラを奪う l⼀喜⼀憂度合いにも影響はあった Ø試合や場⾯の種類によってはプレーの⾏⽅を事前に悟ってしまう

41.

考察(視聴者/試合) l協⼒者I,Q,Sは他の協⼒者よりも影響が⼩さかった Øこの3⼈は守備陣形のような戦術に注⽬して客観的に観戦 Ø⾃⼰投影度合いが低いとネタバレの影響が⼩さい傾向にある l「⽇本代表VSメキシコ代表」,「⽇本代表VSオマーン代表」では 影響が⼤きかった Ø落ち着いた試合ではネタバレの影響が⼤きい Ø試合を視聴してもらいたい側は特にネタバレに注意する必要がある

42.

今後の実験予定 l視聴者の特性(⾃⼰投影度合い)や試合の特性による ネタバレの影響の体系化 lネタバレに値するシーンの決定

43.

知見の応用先 〇〇な試合だから ⾮表⽰だな 〇〇な視聴者だから 表⽰しよっ 防⽌システム への応⽤ ネタバレしないダイジェスト

44.

本来のダイジェスト

45.

ネタバレしないダイジェスト(ゴールなし)

46.

ネタバレしないダイジェスト(寸止め)

47.

まとめ lサッカーのネタバレが視聴者の観戦態度に及ぼす影響を調査した ○緊張感や⼀喜⼀憂度合いに影響した ○緊張感を重視する視聴者,ピンチやチャンスの少ない落ち着いた試合 ではより厳しくネタバレを遮断する必要がある [今後の展開] l視聴者の特性(⾃⼰投影度合い)や試合の特性によるネタバレの 影響の体系化 l防⽌システムやダイジェストへの応⽤