スプリントプランニングを休んだ日、チームはもう動けるようになっていた—SM1年目、偶然から始めた移譲の実践と越境

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June 20, 26

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スクラムフェス金沢2026の登壇資料です
https://confengine.com/conferences/scrum-fest-kanazawa-2026/proposal/49932/sm1

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井手 拓夢(Takumu Ide) スクラムマスター / 神奈川

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1.

スクラムフェス金沢 2026 スプリントプランニングを休んだ日、 チームはもう動けるようになっていた — スクラムマスター1年目、偶然から始めた移譲の実践と越境 井手 拓夢

2.

自分の権限を誰かに渡すのって怖くないですか? 02

3.

怖いのは、うまくいくかわからないから 02

4.

けれど、その権限を受け取る準備を チームができているとわかったら? 02

5.

きっかけを与えてくれるのは 偶然な出来事からかもしれません 02

6.

今日話 すこと 偶然な出来事をきっかけに、 スクラムマスターの持つ権限を 完全に移譲した実践のご紹介 そして移譲した先に見えた景色について 03

7.

Learning Outcome • スクラムマスターが • 次のスプリントから、徐々にチームに権限を渡し始めるこ とができる • 権限を手放した先に、次にどこに踏み出すかを具体的に考 え始められる 05

8.

自己紹介 井手 拓夢 / イデー 2023年 株式会社リコーに新卒入社 ソフトウェアエンジニア スクラムマスター ←今日はこの時の話 セールス兼スクラムマスター 06

9.

BtoB向けSaaSプロダクト 07

10.

当時の組織内の役割と配置 プロダクト開発領域 • • • • • • スクラムチーム 2チーム体制 エンジニア プロダクトオーナー スクラムマスター デザイナー ビジネス領域 • デジタルマーケティング • カスタマーサクセス • など 07

11.

ファシリテーションへの問題意識 自分がファシリテーションをして物事を進めることへの違和感

12.

スクラムマスター6カ月目のファシリの形 当時の私のスタイル • 開発者がメインで話すようにする • 開発のことに口を出さない • なるべく話さない 「開発者主体」を意識していた 09

13.

でも、残った違和感 このやり方だと結局、 「自分がいないとチームが動けないのでは?」 物事を進める責任が、ぜんぶ自分に乗っかっていた。 10

14.

キーになる2人のメンバー この物語を動かしてくれた存在

15.

チームの自律へのキーマンとなる存在 ME MB ER 01 リードエンジニア • 周りがよく見えている • 頼りになる存在 スプリントの中でも自律的に動いて、 コミュニケーションを図ったり、 周囲のサポートにも貢献している チームの今後について話すような関係性 13

16.

チームの自律へのキーマンとなる存在 ME MB ER 02 若手エンジニア 自身の成長に課題を感じながらも、 それを克服しようと発言したり、 ファシリを巻き取ろうと挑戦している • 入社2年目 • 自身の成長について悩んでいた 気にかけており、相談に乗ったりする 関係性 14

17.

若手エンジニアと話していたこと あ な たの 考 え る 「 す ご い人 」 っ て、 ど ん な 人 ? 自分から物事を巻き取って動かし、 チームを引っ張っていく人 リードエンジニアは、まさにそれを体現していた。 15

18.

個人の自律的な成長にアプローチをしていた リードエンジニア 若手エンジニア スクラムマスター お手本の背中を見て、成長できるように支援 16

19.

それでも、決断できずにいた 「ファシリをしない」「権限を完全に渡す」── そこまでは、思い切れていなかった 17

20.

スプリントプランニングを休んだ日 決断できずにいた自分を、偶然が動かした

21.

そんなある日 • 「Agile Japan」というカンファレンスに参加 • 2日間、仕事や会議に出ずにイベントへ • そのタイミングで、ちょうどスプリントプランニングがあった 「すみませんが、お願いします。休みます」 ── プランニングを欠席した。 19

22.

正直な気持 ち 「大丈夫かな……」 自分がファシリしなくても 本当にうまくいっているのか ぶっちゃけ不安だった。 20

23.

あとで 録画を見た ら むしろ、とても良い感じにできていた 21

24.

何が起きていたか ファシリをしていたのは、リードエンジニアだった。 • 開発者の一員として、メンバーと同じ目線で話していた • 「ここはこうじゃないですか」と問いかけ、推進していた • スムーズなやり取りが行われていた 自身も意見を出し、推進しているジェネレーターのような形 22

25.

今まで自分がしてきたプランニングより、 ずっと 納得感のあるものだった 「これがもしかしたら、チームのあるべき姿 ── 自走への道なのかもしれない」 23

26.

デイリースクラムを見ても同じだった • チームはもう動けるようになっている • スクラムイベントに限った話ではないのでは? • 「むしろ自分がやらない方が、うまくいきそうじゃないか」 ここで、「ファシリテーション含めて全て開発チームに移譲する」 と考え出した。 24

27.

ただし、いきなり放棄はしない いきなり「お願いします」と放り出すのは、見え方としても自分としても良くない。 なんで急に? 誤解されかねない 丁寧に 突然「やりません」では、チーム 「投げ出した」と まずはリードエンジニアと話すこ を驚かせてしまう。 受け取られかねない。 とから始めた。 25

28.

リードエンジニアへの権限移譲 「移譲したその先」を、1on1で共通認識を持つ

29.

1on1で伝える 「この間はありがとうございます。 実際に見たら、雰囲気も中身の深さも、すごく参考になりました」 「ファシリが上手なことに加えて ── 開発者同士で議論ができる形が今のチームに合っていると思う」 スクラムマスターという第三者視点のやり方は、今のチームには少し合わないかもしれない。 27

30.

1on1で伝える 「開発者自身で議論する形のほうが、 今後のチームの自走・成長につながると思う。 だから、まずはあなたから ファシリテーションを担ってほしい」 29

31.

リードエンジニアからの問い 「それは、スクラムマスターとして 「他のメンバーもやる方が経験の場 のあなた自身のファシリを伸ばす機 として良いのでは? 私のみがやるの 会を奪っていませんか?」 は、どうなんでしょう?」 30

32.

当時の私の考え 「今いちばん大事なのは、事業を成長させること。 そのためにまずは現状最も優れた形で進めたい。」 「それだけではなく、チームが上手になるためには お手本を見せることが結果的に近道になると考えている」 31

33.

お願いしたこと • まず、一番上手なあなたが背中を見せる形でやってほしい • やり方・手順・考え方をみんなに伝えて、移譲していってほしい • そこは自分も手伝いたい 「── 分かりました」 32

34.

移譲の始動と、習慣への広がり チームの「当たり前」になっていくように

35.

「3段階」でデイリースクラムから姿を消した 1 いない日をつくる 2 › いても、黙る 3 › いても、いなくても リードエンジニアがいない日に、 参加しても発言しない。 自分がいても、自然と開発者が進 あえて自分も休む。 自主的にファシリを巻き取る場を 行する流れができてくる。 するとだれかやる 作る 大変だったのは、長い沈黙をこらえること。 そこを耐えたら、チームが動き出す余白が生まれた。 34

36.

ここから、どんどん良くなった LEAD JUNIOR リードエンジニアの動き 若手エンジニアの動き みんなができるように 準備の仕方からレクチャーし、 ノウハウを共有してくれた リードエンジニアがいないとき 「私やります」と 自分から声を上げるようになる 35

37.

いちばん良 かったこと キーマンたちの自律的な動きから、習慣ができていった 「自分からやる」が、特別なことではなくなった。 36

38.

1〜2ヶ月後、リードエンジニアからの提案「輪番でやりましょう」 スプリントリード 進行・レビューのデモなどの進行を、1スプリントでリードする担当者 37

39.

こ こで 、自 分か らも 伝え た 大事 なこ と あくまで「リード」である 実際に進行するのはその人かもしれないが責任は開発者全員にある そのため、他の方はサポートするのが役割である 38

40.

移譲した先に見えた景色 手放したからこそ、見えるようになったもの

41.

手放して見えた、3つの景色 01 02 03 チームを俯瞰できた 余裕ができた 周辺の領域 第三者視点で観察できるように。 1on1ができるように。 チーム内に留まらなかった。 40

42.

①チームを俯瞰できるようになった • ファシリ中には気づかなかったチームの課題が見えてきた • 「この人がいなくなったら、こういう時に困りそうだな」 • 「デイリースクラムが進捗報告になってきてるぞ」 • 例:ファイブフィンガーによるスプリントゴールチェック 議論の中で迷っている場面があれば、きっかけを与える。 するとチームが気づいて改善をし始めていく。 41

43.

②余裕ができ、1on1ができるように • 今までできなかった、メンバー一人ひとりとの1on1ができるように • ふりかえりの形骸化に課題を持つメンバーがいた • 例:ふりかえり手法をいくつか紹介し、Lean Coffeeをメンバー自ら提案して実施 • チームとしても個人としても、改善活動が加速した 1on1で今まで見えていなかったメンバーの悩みが見える。 そこに壁を超えるきっかけを与える。 するとメンバー自身が気づいて改善をし始めていく。 42

44.

しかし 43

45.

正直に 言うと 全てを手放したことで、 スクラムマスターとして壁にぶつかった 時期があった 「スクラムマスターとしての価値を出せていないのではないか」 「自分は何もできていないな」 ── 落ち込んだ。 44

46.

でも、アジャ イルコー チに相談し たら 自分のチームが成長したことで、 今度は周辺チームが ボトルネックになっていると気づいた 45

47.

③周辺の領域への越境 余裕ができたことで、組織としての課題が見えてきた。 • ビジネス領域 ── 「いかに売上を立てるか」に課題があった • そこに、自分が入っていった • 動く中で「そこが組織全体のボトルネックだ」と分かってきた スクラムマスター道のレベル2「関係性」 47

48.

「私のチーム」から「関係性」へ 開発チームにだけ責任を感じる チームが持つあらゆるつながりや関係性を 強化すること SCRUMMASTER THE BOOK 優れたスクラムマスターになるための極意 ――メタスキル、学習、心理、リーダーシップ 46

49.

越境と、自分のキャリアの方向づけ チームを飛び出して、自分の問いに向き合う

50.

開発チームから飛び出して、ビジネス領域へ 越境して支援する動きが始まった 49

51.

そこで出てきた、キャリアの迷い もともと「いろいろやりたい」タイプ。けどスクラムマスターとしてもがんばりたい このままスクラムマスターとして支 それともビジネスにも関わっていく 援をしつづけていくのか? 方がいいのか? 50

52.

RSGT2026で、コーチングを受けた コ ー チズ ク リ ニ ッ クで ア ジ ャ イ ルコ ー チ に相 談 した 。 開発のみならず、ビジネスの分野にも興味がある。 でも、スクラムマスターとしても頑張りたい。 今、どっちに行くべきか悩んでいる 51

53.

対話の 中での、 大きな気づ き スクラムマスターは 開発だけではなく、あらゆる組織が支援対象である。 様々な役割を経験しているほうが ずっと支援しやすくなる。 52

54.

そこで、決 めた 偉大なスクラムマスターになるイメージを持ちながら いろんなことに飛び込んで、経験して学んでいく 53

55.

ビジネスへの越境 ビジネスから開発まで、一気通貫で動く

56.

開発チームのスクラムマスターをしながら 営業施策の責任者として、短期プロジェクトを実施 1 業務を設計 2 → 必要なことを整理 3 → 自分で実装 4 → 機能を導入 ビジネスから開発まで、一気通貫で動けた。 55

57.

そして、 開発チームを飛び出して、 ビジネスチームのセールス兼スクラムマスターへ 44 57

58.

まとめ

59.

正直な気持 ち 手放すことは、最初はやっぱり怖かった 「自分がいなくて大丈夫かな」。手放した先で「やることがなくなった」と思った時期もあった。 59

60.

けれど やることがなくなったからこそ、 見える景色がある 46 60

61.

権限を持ち続けるよりも 少し勇気を持って手放してみると、 その先に チームの自律的な成長と、自分の役割の広がりがある 61

62.

まずは小さく手放してみて、 何が見えるかを見つけていくところから 62

63.

スクラムマスターは、 悩みながらも、まだ見ぬ景色を求めて 旅をしていくのかもしれない

64.

Thank you!!