ADA(American Dental Association)のう蝕の修復治療の診療ガイドラインと、そのエビデンスとなったコクランレビューの作成方法を学び、診療ガイドライン作成の流れを理解しよう(質問2の中のステップワイズと選択的エクスカベーションの比較について)

250 Views

March 08, 24

スライド概要

Y先生のEBM講座リンク先一覧
https://note.com/mxe05064/n/n4b3ab8020899
内容を少なく読みやすくした:https://www.docswell.com/s/MXE05064/5RXD7G-2024-03-21-232923

ADA(American Dental Association)のう蝕の修復治療の診療ガイドライン(質問2の中のステップワイズエクスカベーションと選択的エクスカベーションの比較(eTable 12)について)
Dhar V, Pilcher L, Fontana M, González-Cabezas C, Keels MA, Mascarenhas AK, Nascimento M, Platt JA, Sabino GJ, Slayton R, Tinanoff N, Young DA, Zero DT, Pahlke S, Urquhart O, O'Brien KK, Carrasco-Labra A. Evidence-based clinical practice guideline on restorative treatments for caries lesions: A report from the American Dental Association. J Am Dent Assoc. 2023 Jul;154(7):551-566.e51.
https://jada.ada.org/article/S0002-8177(23)00258-1/fulltext?_gl=1*1ekn5lc*_ga*ODU0MTcxMTQwLjE3MDYxNjM2MDc.*_ga_X8X57NRJ4D*MTcwNjE2MzYwNy4xLjEuMTcwNjE2MzYwOS4wLjAuMA..#secsectitle0170

ADAのう蝕修復治療の診療ガイドラインのエビデンスのコクランレビュー(Comparison 10・Summary of findings 10のステップワイズエクスカベーションと選択的エクスカベーションの比較について)
Schwendicke F, Walsh T, Lamont T, Al-Yaseen W, Bjørndal L, Clarkson JE, Fontana M, Gomez Rossi J, Göstemeyer G, Levey C, Müller A, Ricketts D, Robertson M, Santamaria RM, Innes NP. Interventions for treating cavitated or dentine carious lesions. Cochrane Database Syst Rev. 2021 Jul 19;7(7):CD013039. doi: 10.1002/14651858.CD013039.pub2. PMID: 34280957; PMCID: PMC8406990.
https://www.cochranelibrary.com/cdsr/doi/10.1002/14651858.CD013039.pub2/full

用語:う蝕治療ガイドライン第2版:「暫間的間接歯髄覆罩(髄)法(通称IPC)であり、英語表記ではStepwise excavation(ステップワイズエクスカベーション)が一般的である。本稿では、Stepwise、段階的を混在して使用している。

気になる論文

う蝕学におけるエビデンスに基づく臨床実践ガイドラインの方法論的質
https://www.researchgate.net/publication/376989180_Methodological_quality_of_evidence-based_clinical_practice_guidelines_in_cariology

AGREE IIチェックリストに従ったう蝕予防のための臨床実践ガイドラインの系統的レビュー
https://www.researchgate.net/publication/371956769_A_Systematic_Review_of_Clinical_Practice_Guidelines_for_Caries_Prevention_Following_the_AGREE_II_Checklist

シェア

またはPlayer版

埋め込む »CMSなどでJSが使えない場合

関連スライド

各ページのテキスト
1.

ADA(American Dental Association)のう蝕の修復治療の 診療ガイドラインと、そのエビデンスとなったコクランレビューの作成方法 を学び、診療ガイドライン作成の流れを理解しよう(質問2の中のス テップワイズと選択的エクスカベーションの比較について) ADA(American Dental Association)のう蝕の修復治療の診療ガイドライン(質問2の中のステップワイズエクスカベーションと選択的エクスカ ベーションの比較(eTable 12)について) Dhar V, Pilcher L, Fontana M, González-Cabezas C, Keels MA, Mascarenhas AK, Nascimento M, Platt JA, Sabino GJ, Slayton R, Tinanoff N, Young DA, Zero DT, Pahlke S, Urquhart O, O'Brien KK, Carrasco-Labra A. Evidence-based clinical practice guideline on restorative treatments for caries lesions: A report from the American Dental Association. J Am Dent Assoc. 2023 Jul;154(7):551-566.e51. https://jada.ada.org/article/S0002-8177(23)002581/fulltext?_gl=1*1ekn5lc*_ga*ODU0MTcxMTQwLjE3MDYxNjM2MDc.*_ga_X8X57NRJ4D*MTcwNjE2MzYwNy4xLjEuMTcwNjE2MzYwOS4wLjAuM A..#secsectitle0170 ADAのう蝕修復治療の診療ガイドラインのエビデンスのコクランレビュー(Comparison 10・Summary of findings 10のステップワイズエクスカベー ションと選択的エクスカベーションの比較について) SchwendickeF, Walsh T, Lamont T, Al-Yaseen W, Bjørndal L, Clarkson JE, Fontana M, Gomez Rossi J, Göstemeyer G, Levey C, Müller A, Ricketts D, Robertson M, Santamaria RM, Innes NP. Interventions for treating cavitated or dentine carious lesions. Cochrane Database SystRev. 2021 Jul 19;7(7):CD013039. doi: 10.1002/14651858.CD013039.pub2. PMID: 34280957; PMCID: PMC8406990. https://www.cochranelibrary.com/cdsr/doi/10.1002/14651858.CD013039.pub2/full 用語:う蝕治療ガイドライン第2版:「暫間的間接歯髄覆罩(髄)法(通称IPC)であり、英語表記ではStepwise excavation(ステップワイズエクスカ ベーション)が一般的である。本稿では、Stepwise、段階的を混在して使用している。 赤字・背景ピンクは、著者が解説のため追加した部分です。

2.

大会 利益相反(COI)開示 筆頭発表者名: 湯浅 秀道 2024年5月19日 本演題に関して、発表者の開示すべき 営利的利益相反状態はありません。 ただし、歯科医師のため、 顎関節専門医に対するアカデミックな利益相反 があります。

4.

はじめに う蝕管理の中でsurgicalとしての修復歯科が必要な場合があります。歯を 修復する際の決定は複雑であり、予後、リスク、活動性、そして臨床的あ るいは放射線学的な、う蝕による空洞の状況など、いくつかの要因のバラ ンスに基づいています。様々なう蝕組織除去(carious tissue removal (CTRの略語))アプローチや直接的な修復材料があります。 今回は、永久歯に対する、Stepwise Caries Removalという、最初にう蝕 組織が柔らかい象牙質に達するまで除去し、その後一時的な修復を行ない ます。数ヶ月後、修復と、う蝕組織は固い象牙質に達するまで除去し、そ の後永久的な修復を行なうという2ステップのう蝕除去です。これによっ て、最初からう蝕をすべて除去するより、少ない量の除去で治療が可能に なる可能性があります。また、対照は、選択的う蝕除去となります。 また、う蝕の進行度は、中等度のう蝕病変(International Caries Detection and Assessment System コード 3 および 4)、進行性う蝕病 変(コード 5 および 6)という、しっかりと空洞になって象牙質という中 の組織まで進行しているう蝕を対象とします。

5.

ガイドラインのスコープ・対象者・範囲 スコープは、臨床医が、修復物を必要と する重要な非歯内治療済みの乳歯および 永久歯の中等度および高度のう蝕病変を 治療するために、最も適切なCTRアプ ローチと直接修復材料を選択できるよう に支援することです このガイドラインの対象者には、歯科医 師とそのサポートチーム、歯科学生、患 者が含まれます。政策立案者もこれらの 推奨事項から恩恵を受ける可能性があり ます。 さらに、次のものはこのガイドラインの 範囲内ではありません: 間接材料 (イン レーやオンレーなど)、ライナーまたは フッ化ジアミン銀の使用、齲蝕組織を除 去する手段 (回転器具や手動器具、化学 薬品など) 、歯髄療法、または修復物を 修復するか交換するかの選択。

6.

定義 Table 1Definitions of carious tissue removal approaches and clinical presentation of caries lesion. むし歯組織除去アプローチ(つまり、むし歯組織の除去範囲) Nonselective Caries Removal Carious tissue is removed until hard dentin is reached. Also known as complete かつての標準治療 caries removal 硬い象牙質に達するまで、う蝕組織を除去する。完全齲蝕除去とも呼ばれる。 Selective Caries Removal 現在の標準治療で対照 Carious tissue is removed until soft or firm dentin is reached. Also known as partial or incomplete caries removal. 軟質象牙質または硬質象牙質に達するまで、う蝕組織を除去する。部分的う蝕除 去、不完全う蝕除去とも呼ばれる。 Stepwise Caries Removal コクランは、SEに対してSWを 対照としている/ ADAのCPGは、SEが対照だ が、フォレストプロットはコクラ ンと同じ左右の位置 Carious tissue is first removed until soft dentin is reached and then a temporary restoration is placed. Months later, the restoration and carious tissue are removed until firm dentin is reached and a permanent restoration is then placed. Also known as 2-step caries removal まず、軟らかい象牙質に達するまでむし歯組織を除去し、仮の修復物を装着しま す。ヶ月後、修復物とむし歯組織をしっかりした象牙質に達するまで除去し、永久修 復物を装着します。2段階う蝕除去とも呼ばれます。 No Carious Tissue Removal No carious tissue is removed prior to the placement of a definitive restoration 最終修復物を装着する前に、むし歯組織を除去しない。 ADAのCPG:eTable 12 ・・・stepwise carious tissue removal compared with selective carious tissue removal・・・. コクラン:SoF 10. Selective excavation of carious tissues compared to stepwise excavation of carious tissues ・・・

7.

作成方法 ガイドライン国際ネットワー ク-マクマスター ガイドライ ン開発チェックリストに従っ た。よって、GRADEアプ ローチに従っている。 エ ビ デ ンスの確実 性 高 中 低 非常に低 定義 真の効果が効果推定値に近いという確信がある。 効果推定値に対し、中等度の確信がある。真の効果が効果推定値 に近いと考えられるが、大幅に異なる可能性もある。 効果推定値に対する確信には限界がある。真の効果は効果推定 値とは大きく異なるかもしれない。 効果推定値に対しほとんど確信がもてない。真の効果は、効果推 定値とは大きく異なるものと考えられる。 Ref) Schünemann H.J. Wiercioch W. Etxeandia I. et al. Guidelines 2.0: systematic development of a comprehensive checklist for a successful guideline enterprise. CMAJ. 2014; 186: E123-E142 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc /articles /PMC3928232/ 日本語訳もある: https://cebgrade.mcmaster.ca/guidecheck. html 推奨の強さ 「強い」 (strong・強く推奨する・推奨する) 「弱い」 (weak・弱く推奨する・提案する・条件付きで推奨する・提案する) 定義 介入による望ましい効果(利益)が望ましくない効果(害、負 担、コスト)を上回る、または下回る確信が強い。 介入による望ましい効果(利益)が望ましくない効果(害、負担、コスト)を 上回る、または下回る確信が弱い。 臨床家にとって ほぼ全員が推奨される行動を受け入れるべきである。ガイド ラインに準じた推奨を遵守しているかどうかは、医療の質の 基準やパフォーマンス指標としても利用できる。患者の価値 観と意向に添った意思決定を支援するために、あえて形式 の整った支援活動を用意することまでは不要だろう。 患者によって選択肢が異なることを認識し、各患者が自らの価値観と意 向に一致したマネジメント決断を下せるよう支援しなくてはならない。個 人の価値観と意向に一致した決断を下すための決断支援ツールが有効 であると考えられる。臨床家は、患者の意思決定に向けて作業する際は、 患者と十分な時間をとらなければならない。

8.

ガイドライン国際ネットワーク-マクマスター ガイドライン開発チェックリスト

9.

作成手順・会議の状況 2019年8月に対面で会合:パネルと方法論者の全てのパネルメンバーの利 益相反を見直し、ガイドラインの範囲、目的、対象者、臨床的な質問を決 定しました。 2021年11月、2022年1月オンライン会合:ADA科学研究所の方法論者が 主導する関連システムレビュー(SR)の証拠を見直すため 2022年6月と7月:臨床的な推奨を策定するための会合。 また、方法論者(L.P.、S.P.)は、Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation (GRADE) Evidence-toDecision フレームワークを使用して推奨の策定を促進した。証拠を見直し た後、パネルメンバーは合意に達するまで議論を通じて臨床的な推奨を策 定しました。合意が得られない場合は、パネルが決定に投票しました。

10.

パネルの構成と利益相反 2019年、米国歯科医師会(ADA)科 学問題評議会は、一般歯科医、小児歯 科医、公衆衛生歯科医からなる学際的 パネルを招集し、承認した。パネルメ ンバーは、ADAのメソドロジストと法 務部門によって審査された知的および 金銭的利益相反の開示フォームに記入 した。すべての知的および金銭的利益 相反は、範囲、目的、対象読者、臨床 的問題を定義するための最初のパネル 会議の冒頭と、推奨を策定するための 最後のパネル会議で開示された。パネ ルメンバーが特定の推奨事項に関して 利益相反がある場合は、方法論者はそ の議論と策定を控えるよう求めた。 パネルの構成が記載されているので、 診療ガイドライン委員長は参考にする とよい。

11.

エビデンスの収集(Appendix. Methodsに記載がある) 2つのシステマティックレビュー(SR)の結果が、本 臨床勧告に反映されているe1,e2。 また、ランダム比較試験のSRも検索した。パネル が策定した臨床的質問に含まれる介入を少なくと も2つ含んでいるもの、パネルが策定した臨床的質 問の一部として含まれる定義済みのアウトカムに ついて報告しているもの、研究の選択とデータ抽 出の詳細を提供しているものをレビューの対象と した。エビデンスの確実性を評価するために GRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)ア プローチ(または他の有効なツール)を使用して いないレビュー、除去したう蝕組織の範囲を報告 していないレビュー、同じSRまたはメタアナリシ スの後続の更新によって置き換えられたレビュー、 う蝕を除去する異なる手段(すなわち、機械的ま たは化学機械的)の有効性のみを正面から比較評 価したレビュー、歯内療法で治療した歯に修復物 を装着した一次研究を含むレビューは除外した。

12.

この、既存のSRを探す方法を、GRADE-ADOLOPMENTと言い、診療ガイドライン作成を効率化し、迅速に作 成するために必須の要件となっている。この利用したSRについては、付録結果の項目にも記載がある。 「SR1,e14は、いずれも方法論的に質が高いと判断された(図17)。また、SR1,e14はいずれも2021年に発 表されたものであったため、方法論者は更新を行わないことを決定した。しかしながら、2名の査読者(L.P.、 S.P.)が、SchwendickeらによるSR1に含まれる一次研究からデータを再抽出し、パネルが意思決定のために 重要で重要な結果をすべて提示されたことを保証した。」。この文章より、本診療ガイドラインは、コクラン レビューを使用して、効率化を図ったことが分かる。 しかし、この文章は、誤りで、どうも、Schwendickeを文献1としているが、これは、間違いで、文献13 (e1と同じ文献)のようだ。 Ref) e1: Schwendicke F, Walsh T, Lamont T, Al-Yaseen W, Bjørndal L, Clarkson JE, Fontana M, Gomez Rossi J, Göstemeyer G, Levey C, Müller A, Ricketts D, Robertson M, Santamaria RM, Innes NP. Interventions for treating cavitated or dentine carious lesions. Cochrane Database Syst Rev. 2021 Jul 19;7(7):CD013039. doi: 10.1002/14651858.CD013039.pub2. PMID: 34280957; PMCID: PMC8406990. https://www.cochranelibrary.com /cdsr/doi/10.1002/14651858.CD013039.pub2/full e2: Pilcher L. Pahlke S. Urquhart O. et al. Direct materials for restoring caries lesions: systematic review and metaanalysis—a report of the American Dental Association Council on Scientific Affairs. JADA. 2023; 154: e1 -e98 GRADE-ADOLOPMENT:Schünemann HJ, Wiercioch W, Brozek J, Etxeandia-Ikobaltzeta I, Mustafa RA, Manja V, Brignardello-Peter sen R, Neumann I, Falavigna M, Alhazzani W, Santesso N, Zhang Y, Meerpohl JJ, Morgan RL, Rochwerg B, Darzi A, Rojas MX, Carrasco-Labra A, Adi Y, AlRayees Z, Riva J, Bollig C, Moore A, Yepes-Nuñez JJ, Cuello C, Waziry R, Akl EA. GRADE Evidence to Decision (EtD) frameworks for adoption, adaptation, and de novo development of trustworthy recommendations: GRADE-ADOLOPMENT. J Clin Epidemiol. 2017 Jan;81:101-110. doi: 10.1016/j.jclinepi.2016.09.009. Epub 2016 Oct 3. PMID: 27713072. 1. Frencken JE, Peters MC, Manton DJ, Leal SC, Gordan VV, Eden E. Minimal intervention dentistry for managing dental caries - a review: report of a FDI task group. Int Dent J. 2012 Oct;62(5):223 -43. doi: 10.1111/idj.12007. PMID: 23106836; PMCID: PMC3490231. https://www.ncbi.nlm.nih .gov/ pmc/articles/PMC3490231/ e14. Worthington HV, Khangura S, Seal K, Mierzwinski-Urban M, Veitz-Keenan A, Sahrmann P, Schmidlin PR, Davis D, Iheozor-Ejiofor Z, Rasines Alcaraz MG. Direct composite resin fillings versus amalgam fillings for permanent posterior teeth. Cochrane Database Syst Rev. 2021 Aug 13;8(8):CD005620. doi: 10.1002/14651858.CD005620.pub3. PMID: 34387873; PMCID: PMC8407050. https://www.cochranelibrary.com /cdsr/doi/10.1002/14651858.CD005620.pub3/full/j a 13(e1と同じ).Schwendicke F, Walsh T, Lamont T, Al-Yaseen W, Bjørndal L, Clarkson JE, Fontana M, Gomez Rossi J, Göstemeyer G, Levey C, Müller A, Ricketts D, Robertson M, Santamaria RM, Innes NP. Interventions for treating cavitated or dentine carious lesions. Cochrane Database Syst Rev. 2021 Jul 19;7(7):CD013039. doi: 10.1002/14651858.CD013039.pub2. PMID: 34280957; PMCID: PMC8406990. https://www.cochranelibrary.com /cdsr/doi/10.1002/14651858.CD013039.pub2/full

13.

採用したSchwendickeのSRについて

14.

アウトカムのランキング 永久歯に対するCTR法では、歯牙喪失、歯髄の活力、歯髄露出、感染によ る歯髄合併症、歯内療法の必要性、抜歯、う蝕の進行、術後の疼痛と不快 感、二次う蝕、修復物の寿命、歯牙破折が重要であり、修復物の失敗、コ ストと費用対効果、隣接組織や歯牙への傷害、治療中の患者の不快感、AE、 患者の満足度、修復に要する時間が重要であると評価された。

15.

介入が複数ある場合の対応 multiple interventions に対応したGRADE’s EtD approachを用いた。1 つ星から 3 つ星の範囲の星ベー スのシステムを使用して、因子で考慮されたすべての介入をランク付けしました。このシステムでは、星 1 つが最も低いスコアであり、効果が最も低い介入、または効果が最も低い介入の 1 つとみなされ、星 3 つ が最高スコアで、最も効果的な介入、または最も効果的な介入の 1 つと見なされます。 全体として、介入が受け取る星の数が多いほど、各基準においてより有利と判断されます。これらの判断 は、介入を相互に比較するときに使用される相対的な用語であり、材料の全体的な有効性が優れている、 中間である、または劣っているということを意味するものではありません。パネルが証拠を議論し、各要 素について判断を下した後、パネルは各推奨事項の方向性と強度を決定しました。 介入が複数ある場合は、multiple interventions に対応したGRADE’s EtD を用いて点数化して順位を決め る方法と、network meta‐analysisを利用して順位を決める方法(一般的なNMAのランキングとは異なる 方法)がある。今回は、文献13 Schwendickeのコクランレビューでは、NMAを行なっていたが、本診療 カイドラインでは、multiple interventions に対応したGRADE’s EtDを利用した。 Ref) Piggott T. Brozek J. Nowak A. et al. Using GRADE evidence to decision frameworks to choose from multiple interventions. J Clin Epidemiol. 2021; 130: 117-124 Connell N.T. Flood V.H. Brignardello-Petersen R. et al. ASH ISTH NHF WFH 2021 guidelines on the management of von Willebrand disease. Blood Advances. 2021; 5: 301-325 https://www.youtube.com/watch?v=U-oqSmiXekg

16.

ステークホルダーと一般市民の参加 本ガイドラインの策定過程において、2回にわたりステークホルダーとの 意見交換を行った。まず、ガイドラインの範囲、目的、臨床上の疑問点、 対象読者について、次に臨床上の推奨事項についてのフィードバックを社 内外の利害関係者に求めた。また、ADAのウェブサイト上で、一般の人々 にも推奨事項の検討とフィードバックを求めた。

17.

質問2 Question 2 In patients with vital permanent teeth requiring restorative treatment, without pulp therapy and regardless of direct restorative material and means to remove carious tissue (that is, mechanical or chemomechanical), should we recommend nonselective, stepwise (advanced lesions only), selective, or no CTR to treat moderate and advanced caries lesion. 歯髄治療を行わず、直接修復材料やう蝕組織除 去手段(すなわち、機械的または化学機械的) に関係なく、修復治療を必要とする重要な永久 歯を有する患者において、中等度および進行し たう蝕病変を治療するために、非選択的、段階 的(進行した病変のみ)、選択的、またはCTR を推奨すべきか。 今回は、この中で、stepwise (advanced lesions only)の介入が、selective選択的に対 して、推奨すべきCTRかについて考える。

18.

Figure 2. Clinical pathway of carious tissue removal approaches for the treatment of vital, nonendodontically treated, permanent teeth. 実行不可能ならば Stepwise (advanced lesions only) 図2では、moderatedとadvancedを分けている。Stepwiseは、advanced lesions onlyとなっている。今回は、このadvanced lesionを解説する。

19.

結果:Good Practice Statements 最初に、good practice statementsとは何かを解説します。診療ガイドラインと言っても、推奨文以外に、エビ デンスが希薄でも必要な実行可能で明確な推奨がある場合、それを診療ガイドラインの推奨とした方が、利用者の 利便性があがる場合があります。すなわち、診療ガイドラインに記載されている推奨には、正式な推奨以外に、次 のような内容が含まれることが現実問題として必要とされています。この中で、正式な推奨と混乱しやすいのが、 good practice statementsです。これには、ルールがあり、論文もありますので参考にしてください。 本邦では、CQとQや、推奨(GRADEとコンセンサス)と分けて、GRADEアプローチ以外で作成された推奨を記 載する診療ガイドラインが多い。しかし、これらのQなどは、 good practice statementsに従って作成されてなく、 本邦独自の方法が多いので注意が必要である。 Formal recommendations:正式な推奨とは、特定の集団において、また関連する場合は特定の設定において、2 つ以上の管理または介入の間の選択に関する実行可能な声明である。 Remarks: 推奨の条件の解釈を支援するために、推奨に付随して記載される。 Implementation considerations, tools and tips:勧告に基づいて介入の選択肢の一つを選択した後、それを実施 するために実行可能の考慮事項、ツール、およびヒント。 Research only recommendations:研究のみの推奨とは、特定の集団における介入選択肢の使用を研究設定に限 定する推奨である。 Good Practice Statements:エビデンスの確実性や推奨の強さの正式な評価には適さない間接的なエビデンスなど に従うが、必要な実行可能で明確な推奨がある場合の記述となる。作成は、5つの原則を遵守するべきである(本 稿では省略)。 Informal recommendations:非公式な推奨は、特定の集団における、また関連する場合は特定の設定における、 1つ以上の介入選択肢の選択に関する実行可能な声明である。これらの声明は、正式な審議プロセスを経て発表さ れたものではなく、ガイドラインのために収集されたエビデンス集と直接関連するものではなく、グッドプラク ティス声明を特定する厳密な一連の論理的ルールを満たすものでもない。 Cf)Good or best practice statements: proposal for the operationalisation and implementation of GRADE guidance. BMJ Evid Based Med. 2023 Jun;28(3):189-196. doi: 10.1136/bmjebm-2022-111962. Epub 2022 Apr 15. PMID: 35428694; PMCID: PMC10313969. https://ebm.bmj.com/content/28/3/189

20.

Carious Tissue Removal Approaches in Permanent Teeth(永久歯のう蝕の除 去)に関しては、Good practice statementはなかった。 参考)Direct Restorative Materials for Permanent Teeth(永久歯の直接修復): Good practice statement: The Food and Drug Administration recommends not using dental amalgam in “children, especially those younger than six years of age; people with pre-existing neurological disease; people with impaired kidney function; [and] people with known heightened sensitivity (allergy) to mercury or other components (silver, copper, tin)” wherever possible.∗∗ ∗∗ The guideline panel assigned no prioritization among the recommended interventions. 永久歯のための直接修復材料: グッドプラクティスステートメント 食品医薬品局 は、「小児、特に6歳未満の小児、神経学的既往症のある人、腎機能障害のある人、 水銀や他の成分(銀、銅、錫)に対する過敏性(アレルギー)が高まっていること が分かっている人」には、可能な限り歯科用アマルガムを使用しないことを推奨し ている。 ∗∗ ガイドライン委員会は、推奨される介入策に優先順位をつけなかった。

21.

結果:望ましい効果と望ましくない効果 1件のSR13(6件のRCT)21,26,27,28,29,30により、失敗、治療中の患者の不 快感、歯髄露出、歯髄壊死、感染による歯髄合併症、および歯の喪失に関する データが確認された。 6つのRCT21,28,29,30,31,32は、進行したう蝕病変を治療するためのCTRア プローチに関する推奨に影響を与えた。非選択的CTRは、ほとんどの転帰にお いて段階的CTRよりも効果が低い可能性があり、非選択的CTRも選択的CTRも 他方よりも効果が高い可能性はない。非常に確実性の低い証拠は、段階的CTR と選択的CTRのいずれも、他方よりも有効でない可能性を示唆している(Very low certainty evidence suggests that neither stepwise nor selective CTR may be more effective than the other (eTable 12, eFigure 15, eFigure 16, eFigure 17, available online at the end of this article).)。 重要な永久歯の中等度う蝕病変を治療するためのCTRアプローチに関する選択 基準を満たす研究は見つからなかった。 パネルディスカッションでは、永久歯の進行したう蝕病変についてまとめられ たエビデンスと同じエビデンス群を用いて、この臨床的疑問について情報を提 供することを決定し、間接性の重大な問題(非常に低い)のため、エビデンス の確実性(CoE)を1段階引き下げた。<これは、質問2全体に対する文章と思 われる→Stepwiseのみ別だとする考察は、後で記載した>

22.

その他の結果について 選択基準を満たしたSRで、望ましくない効果を報告したものはなかった。 パネルでは、永久歯に関する推奨を得るために、質問1で述べたPVP、必要 な資源、受容性、実現可能性 に関する同じエビデンス群を使用した(The panel used the same body of evidence on PVP, resources required, acceptability, and feasibility described for Question 1 to inform recommendations for permanent teeth.)。 治療効果推定値および95%CIを算出することができなかった乳歯および永 久歯のCTRアプローチに関する転帰および比較の叙述的要約については、 本論文の末尾にある付録結果を参照のこと。望ましい結果の後で記載した。

23.

コクランレビューの望ましい結果のSR13より Comparison 10: stepwise excavation of carious tissues compared to selective excavation of carious tissues for treating cavitated or dentine carious lesions 比較10:むし歯組織の段階的な掘削とむし歯組織の選択的な掘削を比較した、空洞化ま たは象牙質むし歯病変の治療法.。2件のRCTが深い病変を有する乳歯での失敗を報告し (Elhennawy 2021; Orhan 2010)、3件の研究が深い病変を有する永久歯での失敗を 報告している(Labib 2019; Maltz 2018; Orhan 2010)。 深い病変を有する乳歯では、う蝕組織のSWとSEの差を示す証拠は不十分であった (プール推定値OR 2.05, 95% CI 0.49 to 8.62; I2 = 0%; 2研究, 126歯; 解析10.1; 図13)。エビデンスの確実性は非常に低いと判断し、研究の限界(シーケンス生成、割 り付け隠蔽、盲検化に関するバイアスのリスクが高く、1つの研究では66%の重み付 け)および重大な不精確さを理由に格下げした。 次スライドで拡大

24.

Summary of findings 10. Selective excavation of carious tissues compared to stepwise excavation of carious tissues for treating cavitated or dentine carious lesions SE compared to SW for treating cavitated or dentine carious lesions Population: treating cavitated or dentine carious lesions, primary and permanent dentition Setting: primary and secondary care/university Intervention: SE Comparison: SW Outcomes Anticipated absolute effects* (95% CI) Relative effect (95% CI) № of participants (studies) Certainty of the evidence (GRADE) Comments Risk with SW Risk with SE Failure of therapy: SW vs SE – primary, deep Follow‐up 12–24 months (乳歯なので題材とし ない) 48 per 1000 94 per 1000 (24 to 305) OR 2.05 (0.49 to 8.62) 126 (2 RCTs) ⊕⊝⊝⊝ Very lowa In primary teeth with deep lesions, the evidence is very uncertain about the effect of SE on SW. Failure of therapy: SW vs SE –permanent, deep: Follow‐up 12– 60 months 144 per 1000 274 per 1000 (182 to 390) OR 2.25 (1.33 to 3.82) 371 (3 RCTs) ⊕⊕⊕⊝ Moderateb In permanent teeth with deep lesions, SE probably reduces failure compared to SW. *The risk in the intervention group (and its 95% confidence interval) is based on the assumed risk in the comparison group and the relative effect of the intervention (and its 95% CI). CI: confidence interval; OR: odds ratio; RCT: randomised controlled trial; SE: selective excavation; SW: stepwise excavation of carious tissues. aDowngraded three levels for study limitations (high risk of bias across multiple domains) and serious imprecision (low number of events, small sample size and wide confidence intervals). bDowngraded one level for risk of bias.

25.
[beta]
Figure 13

Ref) 13(e1と同じ).Schwendicke F, Walsh T, Lamont T, Al-Yaseen W, Bjørndal L, Clarkson JE, Fontana M, Gomez Rossi J, Göstemeyer G, Levey C, Müller A, Ricketts D,
Robertson M, Santamaria RM, Innes NP. Interventions for treating cavitated or dentine carious lesions. Cochrane Database Syst Rev. 2021 Jul 19;7(7):CD013039. doi:
10.1002/14651858.CD013039.pub2. PMID: 34280957; PMCID: PMC8406990.
https://www.cochranelibrary.com/cdsr/doi/10.1002/14651858.CD013039.pub2/full

Free article) Labib 2019 {published data only}: Labib ME, Hassanein OE, Moussa M, Yassen A, Schwendicke F. Selective versus stepwise removal of deep carious lesions in
permanent teeth: a randomised controlled trial from Egypt-an interim analysis. BMJ Open. 2019 Sep 17;9(9):e030957. doi: 10.1136/bmjopen-2019-030957. PMID:
31530615; PMCID: PMC6756573.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6756573/

26.

本診療ガイドラインの付録の図表より eTable 12 Absolute effects (95% CI) and certainty of the evidence for stepwise carious tissue removal compared with selective carious tissue removal for advanced caries lesions on vital permanent teeth. OUTCOME RESTORA STUDIES ABSOLUTE TIONS, (PARTICIPANTS EFFECT, RISK DIFFERENC NO. ), NO (95% CI) Failure‡ (12-60 Mo) 395 3 RCTs § (395){,#,** 0.07 (−0.05 to 0.20) ANTICIPATED ABSOLUTE EFFECTS, 95% CI CERTAINTY OF WHAT HAPPENS THE EVIDENCE (GRADE† ) 5 fewer to 20 more Very low††,‡‡,§§, ¶¶,## Very There is very low certainty evidence low††,§§,##,** regarding the difference between stepwise carious tissue removal and selective carious * tissue removal for the outcome of pulp exposure. There is very low certainty evidence regarding the difference between stepwise carious tissue removal and selective carious tissue removal for the outcome of failure. Pulp Exposure 168 (Postprocedural) 2 RCTs (168){,** 0.06 (0.00 to 0.13) 0 more to 13 more Pulp Necrosis (12 Mo) 303 2 RCTs (303){,# 0.16 (−0.47 to 0.79) 47 fewer to 79 Very There is very low certainty evidence more low††,§§,##,†† regarding the difference between stepwise carious tissue removal and selective carious † tissue removal for the outcome of pulp necrosis. Pulpal Complications Due to Infection (12 Mo) 132 1 RCT (132){ −0.03 (−0.09 to 9 fewer to 3 0.03) more Very There is very low certainty evidence low††,§§,##,‡‡ regarding the difference between stepwise carious tissue removal and selective carious ‡ tissue removal for the outcome of pulpal complications due to infection.

27.

∗ 齲蝕の進行、歯冠の破折、歯全体の破折、隣接組織や歯の損傷、修復物の寿命、歯内療法の必要性、治療中の患者の不快感、患者や保護者の満足度、 術後の痛みや不快感、歯髄壊死、修復物の喪失、麻酔による安全性の問題、二次齲蝕、歯の喪失、修復に要する時間に関するデータを報告した選択基準 に合致した研究はなかった。 † Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation (GRADE) Working Group によるエビデンスのグレードは以下の通り である: 高い確実性:真の効果が効果の推定値に近いと非常に確信できる。中程度の確実性: 真の効果は効果の推定値に近い可能性が高いが、大きく 異なる可能性もある。確信度が低い: 効果の推定値に対する信頼性は限定的である;真の効果は効果の推定値と大幅に異なる可能性がある。確信度が 非常に低い: 効果推定値の確信度が非常に低い;真の効果は効果推定値と大幅に異なる可能性が高い。 ‡Orhan ら21 は、歯の異常移動、瘻孔、病的歯牙吸収、臼歯間部または歯根周囲部の放射線透過性、打診および触診に対する過敏性、自発痛、歯周組 織の腫脹を失敗と定義した。Labibら31 は、修復物の完全性の欠如、歯髄露出、歯髄壊死を失敗と定義した。Maltzら32 は歯髄壊死を失敗と定義した。 § RCT:ランダム化比較試験。 ¶ Labib and colleagues.31 # Maltzら32 ∗∗ Orhan and colleagues.21 †† バイアスのリスクに関する重大な問題のため、1段階評価を下げた。 ‡‡ 非一貫性(I2= 72%)の深刻な問題により、2段階評価を下げた。 §§不精確さの深刻な問題により2段階格下げ。 Failure ¶¶1.31%の閾値を用いると、信頼区間の下限は段階的う蝕組織除去に有利な重要な差を示唆し、上限は選択的う蝕組織除去の重要な有益性を 示唆する。(Using a threshold of 1.31%, the lower bound of the confidence interval suggests an important difference favoring stepwise carious tissue removal, whereas the upper bound suggests an important benefit of selective carious tissue removal.) ## 重要な永久歯の中等度う蝕病変(moderate caries lesions)に対するう蝕除去アプローチの臨床的推奨に使用する場合、非直接性であるという重 大な問題があるため、1段階評価を下げた。<採用した3論文は、コクランレビューのComparison 10 にthree studies reported failure in permanent teeth with deep lesions (Labib 2019; Maltz 2018; Orhan 2010).(深い病変を有する)となっており中程度moderatedでない・質問2には、 Stepwiseは、advanced lesions onlyとなっており、eTable 12はadvanced caries lesionsのテーブルなのに、中等度う蝕病変(moderate caries lesions)に対するう蝕除去アプローチの臨床的推奨に使用する場合との記載がある。最終的に、非直接性で下げたか不明(他の要因で非常に底のた め)だが、記載自体が要らないと思う> Pulp Exposure ∗∗∗ 0.12%の閾値を用いると、信頼区間の下限は段階的う蝕組織除去と選択的う蝕組織除去の間に差がないことを示唆するが、上限 は選択的う蝕組織除去の重要な有益性を示唆する。 Pulp Necrosis ††† 1.23%の閾値を用いると、信頼区間の下限は段階的う蝕組織除去を支持する重要な差を示唆するが、上限は選択的う蝕組織除 去の重要な利点を示唆する。 Pulpal Complications ‡‡‡ 0.45%の閾値を用いると、信頼区間の下限は段階的むし歯組織除去に有利な重要な差を示唆するが、上限は選択的むし 歯組織除去の重要な利点を示唆する。

28.

閾値 thresholdについて 同じADAの論文のMiroshnychenkoの論文に次の記載がある。 「We used a minimally contextualized approach with a null effect threshold to rate the certainty that there is a benefit or a harm.8 When the point estimate was close to the null effect, we rated our certainty that there was a trivial effect (that is, no important difference) using a threshold of 10% of the baseline risk for dichotomous outcomes and 10% of the scale range for continuous outcomes,9 For dichotomous outcomes pooled using risk ratio, we presented absolute estimates of effect using the mean baseline risk across the trials.」 (有益性または有害性の確実性を評価するために、無効効果閾値を用いた最小限の文脈化アプ ローチを用いた8。点推定値がヌル効果に近い場合、2値アウトカムの場合はベースラインリス クの10%、連続アウトカムの場合は尺度範囲の10%を閾値として、些細な効果(すなわち、 重要な差がない)であることの確実性を評価した9。) これより、eFigure 15のselectiveのベースラインリスク、26/199=13.1%の10%は、 1.31%となり、数字が一致する(一般にはベースラインリスクの方が対照なのでSEが対照だが、 フォレストプロットは、対照がSWとなっている)。eFigure16,17も同様であった。 Ref) Miroshnychenko A, Ibrahim S, Azab M, Roldan Y, Diaz Martinez JP, Tamilselvan D, He L, Urquhart O, Tampi M, Polk DE, Moore PA, Hersh EV, Carrasco-Labra A, Brignardello-Petersen R. Injectable and topical local anesthetics for acute dental pain: 2 systematic reviews. J Am Dent Assoc. 2023 Jan;154(1):53-64.e14. doi: 10.1016/j.adaj.2022.10.014. PMID: 36608963. https://jada.ada.org/article/S0002-8177(22)00681-X/fulltext#secsectitle0200 8) Hultcrantz M, Rind D, Akl EA, Treweek S, Mustafa RA, Iorio A, Alper BS, Meerpohl JJ, Murad MH, Ansari MT, Katikireddi SV, Östlund P, Tranæus S, Christensen R, Gartlehner G, Brozek J, Izcovich A, Schünemann H, Guyatt G. The GRADE Working Group clarifies the construct of certainty of evidence. J Clin Epidemiol. 2017 Jul;87:4-13. doi: 10.1016/j.jclinepi.2017.05.006. Epub 2017 May 18. PMID: 28529184; PMCID: PMC6542664. https://www.jclinepi.com/article/S0895-4356(16)30703-X/fulltext 9) Zeng L, Brignardello-Petersen R, Hultcrantz M, Siemieniuk RAC, Santesso N, Traversy G, Izcovich A, Sadeghirad B, Alexander PE, Devji T, Rochwerg B, Murad MH, Morgan R, Christensen R, Schünemann HJ, Guyatt GH. GRADE guidelines 32: GRADE offers guidance on choosing targets of GRADE certainty of evidence ratings. J Clin Epidemiol. 2021 Sep;137:163-175. doi: 10.1016/j.jclinepi.2021.03.026. Epub 2021 Apr 20. PMID: 33857619. https://www.jclinepi.com/article/S0895-4356(21)00108-6/fulltext

29.

閾値と95%信頼区間の関係 Failure失敗なので、失敗が少ない方が優位となる。よって、閾値が1.31%と言うことは、対照の 選択的の失敗率を0とすると、-0.0131を越えて失敗率が少なければ、介入の段階的が優位となる。 ここで、最小コンテキスト化・些細な効果と定義しているにも関わらず、どうも臨床的に重要な差と して解釈している文章である(さらに、不精確さの判定にも使用していないようだ)。また、対照優 位と介入優位の閾値が同じ幅かどうかは状況によって異なるはずだが、同じ幅と仮定していると思わ れる。。そうなると、以下の図の-0.0131~0.0131と、-0.0012~0.0012が臨床的に差がない範囲 となり、その幅を超えたときに臨床的に重要な差となる。 次に、重要な点が、「有意差がない」場合についての注意点を理解しないとならない。『これまでに、 「有意差がないから同等とは言えない」は、良く知っていると思います。また、「P値が0.052の場 合に、有意な傾向があったと書くのは、間違いではないがミスリーディングの可能性があるので注意 すること」というのも知っていると思います。ここで知って欲しいのは、プラセボに対して新薬の有 効の1.2のリスク比(すなわち、20%高い:95%信頼区間 -3%~48%)で、P = 0.091で有意差が なかった場合、差があるとは言えないということだけで、もしかしたら差がある可能性もあると言う ことです。二重否定の文章で分かりにくいかもしれませんが、新薬の効果がないということではない と言うことです。誤って、効果がないと表現すると、差がない・同等であると考えているのと同じ事 となります。統計学的な有意差は認めなかったのは事実であるが、帰無仮説を棄却できなくても、治 療がアウトカムに影響しないとは言い切れない。P値0.05での有意差があるないの二元論はデメリッ トが多いということです。 意訳となるが、点推定値で20%の効果があったが、稀には、わずか3%の悪化の可能性も考えられる が、稀には48%の効果となることもあったという結果を議論しましょうということです。ぶっ飛び 意訳なら、稀なたった3%の悪化のため、点推定値の20%の効果を無視してはならない(もちろん、 エビデンスの確実性が高い場合)。 Ref) Scientists rise up against statistical significance. https://www.nature.com/articles/d41586-019-008579?utm_source=twt_nnc&utm_medium=social&utm_campaign=naturenews&sf209757517=1 』

30.

次に大切なのは、Minimally Important Difference(臨床における最小重要差、 MID・MCID)であり、差なので0.00(比なら1.00)を95%CIがまたいでいる(有意 差の0.05)とかまたいでないとかだけではないことを理解する必要がある。 これらを理解すると、下図が理解できるはずである。 Failure失敗 0.0131(1.31%) -0.05 stepwiseが優位← 0.07 0 0.20 →selectiveが優位 Pulp Exposur歯髄露出 -0.0012~0.0012が 臨床的に差がない範囲 0.0012(0.12%) 0.00 0.06 stepwiseが優位← 0 ¶¶1.31%の閾値を用いると、信頼区間の下 限は段階的う蝕組織除去に有利な重要な 差を示唆し、上限は選択的う蝕組織除去の 重要な有益性を示唆する。 0.13 →selectiveが優位 ∗∗∗ 0.12%の閾値を用いると、信頼区間の 下限は段階的う蝕組織除去と選択的う蝕 組織除去の間に差がないことを示唆する が、上限は選択的う蝕組織除去の重要な 有益性を示唆する。

31.

eFigure 15~17 eFigure 15Forest plot of comparison of stepwise carious tissue removal vs selective carious tissue removal for advanced caries lesions on permanent teeth for outcome of failure at 12- to 60-month follow-up. <SR13のFig13と、若干数字が異なっ ている。SR13のOrhan 2010は、0を回避のため1を加えている、Labib 2019は、per-protocolのTotalで、CPGはITT> eFigure 16Forest plot of comparison of stepwise carious tissue removal vs selective carious tissue removal for advanced caries lesions on permanent teeth for the outcome of pulp exposure after treatment. eFigure 17Forest plot of comparison of stepwise carious tissue removal vs selective carious tissue removal for advanced caries lesions on permanent teeth for outcome of pulp necrosis at 12-month follow-up.

32.

コクランFigure 13を、数字そのままで、ORからRDにすると オッズ比から、リスク差にすると、ADAの本診療カイドラインの結果とほぼ同じであ るので、データの入力された数字の違いより、相対差と絶対差の違いと考えられた。

33.

価値観と意向(質問1と付録)・Values and preferences 永久歯のCTRを受ける際に患者が重視する様々な臨床結果(例えば、歯髄露出、歯内療法の必要性、 二次う蝕、修復合併症)の相対的重要性について報告する米国で実施された研究は見つからなかっ た。 選択的CTRと非選択的CTRに対する患者の意向に関するデータを収集した、ドイツで実施された1件 の混合方法研究e21を確認した。18歳から85歳までの150人の患者を対象とした結果、ほとんどの 参加者(82.7%)が選択的CTRよりも非選択的CTRを好んだ。他の変数を考慮すると、情緒が安定 しており、大卒の参加者は、情緒が安定しておらず、大卒でない参加者よりも選択的CTRを好む傾 向が強かった。さらに、リスク受容性評価では、患者は神経損傷、修復物の破損、二次カリエスと いう結果よりも、より高い費用、根管治療の必要性、審美性の低下を受容する可能性が高いことが 示された。 この永久歯のある人を対象に米国外で実施された研究から得られた間接的なエビデンスに加え、段 階的CTRや場合によってはCTRなしに必要な追加予約に関するパネルディスカッションを行なった。 段階的CTRと非選択的CTRに関しては、患者や介護者は、段階的CTRや場合によっては非選択的 CTRに必要な再診予約のために再来院しないことを好む可能性があることが議論された。 以上より、パネルディスカッションでは、患者の価値観や意向(PVP)には、すべてのCTRア プ ローチの中で重要な不確実性やばらつきがある可能性があると判断した。 参考:根尖歯周炎なら価値の論文があるので、今後は、このような研究が望まれる。 「Patients‘ Values Related to Treatment Options for Teeth with Apical Periodontitis」

34.

必要なリソース(質問1)・Resources required 費用の違いの1つとして、ステップワイズや、場合によってはCTRを行わ ない場合、複数回の来院が必要となり、処置の費用と治療期間が増加する ことが考えられる。また、形成前クラウンは、無 CTRの後に装着されるこ とが多く、他の直接修復法 よりも患者への負担が大きくなる。このように、 パネルでは、非選択的CTRと選択的CTRが最もコストが低く、段階的CTR は中間的なコスト、そしてCTRなしが最もコストが高いと判断された。

35.

受容性(質問1と付録)・Acceptability 臨床家の観点からは、非選択的carious tissue removal (CTR) approaches 、段階的CTR、選択的CTR、および無選択的CTRの受容性 の程度は様々であることを示唆する研究エビデンスがある。 2つの研究e22, e23では、進行したう蝕病巣を修復的に治療する際の信念、態度、および実践について臨床医を対象に調査を行った。ほ とんどの回答者は、歯髄露出のリスクに関係なくすべてのう蝕組織を除去し、修復を成功させるためにはう蝕組織を残すべきではない と回答した。 過去数十年にわたり、非選択的CTRが基準となってきたためe24 、Oenと共同研究者22 は、治療法を決定する際、保存的CTRアプロー チの有効性が高まることを示すエビデンスよりも、臨床医が同僚の承認や見解を重視する可能性があることを強調した。 さらに、Nascimentoとその共同研究者e25は、米国内の43の歯科大学の診療科教員を対象に、CTRアプローチの教育実践を評価した。 その結果、う蝕除去に関する原則の定義や病巣の深さが治療計画にどのように影響するかについては、歯科大学によって若干のばらつ きがあることがわかった。ほとんどの回答者(40歯科大学中26歯科大学)は、修復物下でのう蝕の進行を防ぐために感染象牙質を常に 除去すべきであることに同意し、修復物下でのう蝕の進行を防ぐために罹患象牙質を常に除去すべきであることには同意しなかった (40歯科大学中35歯科大学)。また、う蝕の除去は病巣の深さに関わらず低侵襲であるべきであり、感染象牙質のみを除去すべきであ るという意見には、賛成が27名、反対が8名であった。 パネルディスカッションでは、主要な利害関係者の中には、1つのCTRアプロ ーチをより好む者もいるが、全体的には、主要な利害関係 者はすべてのCTRアプロ ーチを受け入れることができると考えていることが議論された。 よって、パネルは、主要な利害関係者はおそらくすべてのを受容できると結論づけたが、う蝕組織を残すことに懸念を持つ臨床医と、 より保存的で生物学的な除去アプローチ(つまり選択的)を支持する臨床医がいるため、非選択的CTRと選択的CTRの受容性にはばらつ きがある可能性がある。 26,27 さらに、審査委員会は、乳歯においては、検討された研究に基づき、プレフォームドメタルクラウン(PMC・既成の乳歯冠)が適応される 症例では、一般的にCTRは容認されないと判断し、最終修復物を装着するために再診予約が必要であることから、段階的CTRは容認され ない可能性があることを強調した。

36.

実現可能性(質問1)・Feasibility すべてのCTRアプローチの実現可能性に関するエビデンスは見つからな かった。パネルは、すべてのCTRアプローチが一般的に実行可能であるこ とを指摘したが、より多くの脱灰組織を除去し、最終修復物を装着するた めに再診予約が必要であることから、ステップワイズは実行可能性がやや 低いと判断した。

37.

CQと推奨文 Table 3 Summary of clinical recommendations and good practice statements for carious tissue removal and direct restorative materials for caries lesions on vital, nonendodontically treated primary and permanent teeth. CQ: Carious Tissue Removal Approaches in Permanent Teeth 永久歯におけるう蝕組織除去アプローチ In patients with vital permanent teeth requiring restorative treatment, regardless of direct restorative material and means to remove carious tissue, and without pulp therapy, which caries removal approach should we recommend to treat advanced caries lesions? 修復治療が必要な重要な永久歯の患者において、直接的な修復材料やう蝕組織除去手段に関わらず、また歯髄治療を 行わない場合、進行したう蝕病変の治療にはどのう蝕組織除去アプローチを推奨すべきか? 推奨文: To treat advanced caries lesions on vital permanent teeth requiring a restoration, the guideline panel suggests prioritizing the use of selective carious tissue removal over stepwise carious tissue removal or nonselective carious tissue removal (conditional recommendation, very low certainty). 修復を必要とするバイタルの永久歯の進行したう蝕病変を治療するために、ガイドライン委員会は、段階的う蝕組織 除去や非選択的う蝕組織除去よりも選択的う蝕組織除去の使用を優先することを提案している(条件付き推奨、確信 度は非常に低い)。