デジタルイノベーションに向けた新たな組織化論理

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February 07, 18

スライド概要

現在は、「デジタル技術の進化に伴い、私たちの生活や社会、産業が根本的に変わり、創造的破壊が行われる時代を迎えている」とはよく聴く。でも何故このような変化が発生するかのメカニズムについては、立ち入った説明理論になかなかお目にかからない。そんな意識を持っていたら、ある程度、その仕組みを説明している論理を見つけた。Temple大学教授のYoungjin Yoo氏を代表とするグループ。
そこで、「デジタル化による変化は、新しい時代の始まりをはるかに凌駕する時代の到来」との認識で、組織変革に貢献するITの新たな役割に焦点を当ててまとめてみた。

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定年まで35年間あるIT企業に勤めていました。その後、大学教員を5年。定年になって、非常勤講師を少々と、ある標準化機関の顧問。そこも定年になって数年前にB-frontier研究所を立ち上げました。この名前で、IT関係の英語論文(経営学的視点のもの)をダウンロードし、その紹介と自分で考えた内容を取り交ぜて情報公開しています。幾つかの学会で学会発表なども。昔、ITバブル崩壊の直前、ダイヤモンド社からIT革命本「デジタル融合市場」を出版したこともあります。こんな経験が今に続く情報発信の原点です。

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各ページのテキスト
1.

デジタルイノベーションに向けた 新たな組織化論理 -組織変革とイノベーションに対するITの新たな役割B-frontier研究所 高橋 浩

2.

問題意識 • 現在は、企業も社会も、デジタル化による変化 は不可避との認識が広がっていると観察される。 • そして、デジタル化による変化は、新しい時代の 始まりをはるかに凌駕する時代の変化ではないか との認識がある。 • 背景には、Apple、Amazon、Googleなど先進企 業が提供するサービスの顧客体験がある。 • 結局、抜本的変革が必要だとすれば、製品アー キテクチャ、情報システムはもとより、企業形態、 組織構造も変わる。・・・とりわけ大規模な組織変 革は難題となるだろう。 • このような認識から、組織変革に貢献するITの 新たな役割に焦点を置いて考えてみる。 2

3.

目次 • • • • はじめに-ジェネラティブマシンの時代 ジェネラティビティのイノベーション特性 階層モジュラーアーキテクチャ デジタルイノベーションに向けた新たな組織 化論理 – デジタルカメラの事例 • ITは組織変革とイノベーションにどのように 貢献できるか 3

4.

はじめに-ジェネラティブマシンの時代 2012年1月19日、Kodakが倒産 新しい時代の始まりをはるかに凌駕する1つの時代の終わりを見ている のではないか。 • 産業経済の代表 Kodak AT&T GM WHなど テーブルは廻った • 新しい企業の勃興 • • • • Google Apple Facebook Amazonなど 産業経済の終焉は、強力な知的伝統(Herbert A. Simon (1977; 1996)の複雑システムのモジュール性)の終焉をも 伴って到来しているのでは・・・ 4 Y. Yoo, “The Table Has Turned: How can IS field contribute to the technology and innovation management?” , Prepared for the Special Issue of Journal of AIS.

5.

デジタル技術の創造的かつ無限大の マテリアル性 • 従来、この知的伝統は戦略とイノベーショ ンに重要な理論的基盤を提供してきた。 Herbert A. Simon • モジュール性は、ITが新しい組織構造を創 造する上で転換となる基本的基礎を作り 出してきた。 • しかし、モジュール性が引き続き機能し続け られない理由の1つは、デジタル技術のユ ニークなマテリアル特性 5

6.

物理機械の時代 垂直統合時代 • 工業化の初期段階は、物理機械と呼べる広 範な設備投資によって特徴付けられる。 – 物理機械には多額の設備投資が必要 – 信頼できる原料の供給と流通経路へのアクセス が必要 ⇒ 垂直統合の登場 – 独占企業の出現 – プロフェッショナルなマネジメントクラスの出現 (Chandler 1977; 1984) – 価値創造の源泉は、圧倒的な資本から物理的資 源へと広がった規模と範囲の経済 • ITは調整と統制の手段として重要な役割 6

7.

スマートマシンの時代 モジュラーアー キテクチャ時代 • 企業は複雑性に効果的に対処する方法が必 要に ⇒モジュラリティ論理の登場 – モジュール性は、再結合可能なコンポーネ ントに分割で対処する複雑システムの一般 的特性 – デザインルールによって緩やかに結合された モジュールに製品を分解することで、複雑 さを減らし、柔軟性を高められる。 – モジュラー形式で設計機能と生産機能の 両方を体系化することが可能になる。 7

8.

• モジュール構造は企業の設計機能と生産機 能の垂直非統合に導く。 • 「スマートマシン」の登場 – 安価で強力なパーソナルコンピュータの普及で、 企業は統制と調整メカニズムを分散化 – 企業が組織の業務に情報提供が可能に – 従来は緊密に組織的だったプロセスを時間と空 間に分離へ • ITは垂直統合から分散された専門企業の ネットワークに組織構造を変革する重要な役 割 8

9.

ジェネラティブマシンの時代 階層化モジュラー アーキテクチャ時代 • 移動通信、埋め込みコンピューティング、セン サー、バッテリー等の技術開発とマイクロプロ セッサ小型化などは組織にとって破壊的技術 ⇒階層化モジュラアーキテクチャの登場 ⇒デジタル技術の本来の生成的性質:ジェネラ ティビティの登場 • ジェネラティビティとは、「規模が大きく、変化した、そして 調整されていない聴衆によって駆動される、予期しない 変化を生み出す全体的能力」(Zittrain 2006、p.1980) • 組換えが可能な製品の様々な層の異なるコ ンポーネントを切り離し可能に ⇒予期せぬ組み合わせ、新しい組み合わせが登場 9

10.

事例:Google Map • Google Mapは標準インタフェース(API)を備え たコンテンツ(地図)とサービス(検索、閲覧、 交通、ナビゲーション、ストリートビューなど) の束 ⇒最終商品として利用可能 • 同時に、携帯電話、テレビ、車、ナビゲーショ ンシステム、デジカメなどと組み合わせて、 様々な方法で利用可能 ⇒マッシュアップ • 再結合の結果の多くは、Google Map初期導 入時、必ずしも意図されたものではない。 10

11.

モジュール化論理との根本的な違い 1.モジュール性の目 的は複雑性と柔軟性 を高めること – モジュラー性の柔軟 性は程度の違い 2.製品とサービスの 固定された境界のあ るアーキテクチャか ら出発 1.ジェネラティビティの 目的は多様性を創 造すること ⁻ ジェネラティビティの 論理は種類の違い 2.潜在的な機能の固 定セットから出発せ ず、特定の最終機能 を念頭に置かず 11

12.

根本的な転換が発生 • 製品のアイデアはもはや有用ではなくなった。 – 製品中心の考え方が、KodakやAT&Tを破壊し た。 • 産業境界のアイデアが挑戦されている。 • モジュール性に基づく分解可能なシステムの考 え方を超越することが要求されている。 – 分解とそれに伴う機能階層の論理は複雑さを 扱う基本的メカニズム(Simon 1996)だが、 – このような見方は、製品やサービスがますま すデジタル化されるにつれて有効でなくなって いる。 12

13.

• デジタル技術の非常にマテリアル的でない性質 と均質化効果が、同じ情報の多くの異なる機 能文脈での使用を可能にしている。 • 必要とされるのは、パターンのネットワーク に基づいた補完的視点 – 全パートの関係性に基づくのではなく、汎化 - 特 殊化に基づく視点 • 全パートの関係:コンピュータは、CPU、メモリ、入出力 デバイス、周辺デバイスからなる。⇒境界は固定さ れ、定められている。 • 汎化 - 特殊化の関係:コンピュータは、パーソナルコ ンピュータ、メインフレームコンピュータ、ラップトップコ ンピュータ、タブレットコンピュータからなる。⇒境界は 柔軟であり、認識できない。 13

14.

• パーツ間のインタフェースは機能階層では重要 な役割を果たすが、オブジェクト間の継承がパ ターンのネットワークでは非常に重要化 – 物理製品の多くは機能階層に基づいて編成される。 – しかし、ソフトウェアはパターン構造のネットワークに 基づいている。 • 従来の大部分の組織は機能的な階層構造に 従って構成され、部分的な関係になっているが、 • デジタル技術が組織に深く浸透するにつれて、 機能的階層に分解された構造とパターンのネット ワークによる一般化の継承との間に緊張が発生 する。 14

15.

デジタル化は、産業組織に新たな破 壊的変化をもたらす • 核となるのは、ジェネラティビティの論理 • 企業はますますソフトウェアベースのデジタ ル機能を物理的製品に組み込もうとする。 • その結果、パターンのネットワークと機能的 階層構造の間に緊張が発生し、 • ITは両者の共存、新しい洞察と対応を実現す る手段として重要な役割を期待される。 15

16.

3つの時代の基本構造とITの役割 時代 物理機械の時 代 基本構造 垂直統合 規模と範囲の経済が価値 創造の源泉 複雑性の効果的対処 垂直非統合(水平)化 モジュラリティ論理 ITの役割 ITは設備投資され た物理機械の調整と 統制の手段 スマートマシン ITは企業を分散さ の時代 れた専門企業のネッ トワークに変革する 手段 ジェネラティブマ 多様性の創造 ITは両者の共存、 シンの時代 異質性への対処 両者のバランス、不 パターンのネットワーク化 確実性への対応を 機能的階層構造とパター 実現する手段 ンのネットワークの継承構 ・・・を期待 造間に緊張が発生 16

17.

ジェネラティビティのイノベーション特性 イノベーションの3特性 (1)デジタル技術プラットフォームの重要性 (2)分散型イノベーションの出現 (3)コンビナトリアル(組合せ)イノベーショ ンの跋扈 Y. Yoo et al., “Organizing for Innovation in the Digitized World”, Organization Science, Vol. 23, No. 5, September–October 2012, pp. 1398–1408. 17

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(1)デジタル技術プラットフォームの重要性 • イノベーションの中心にプラットフォーム登場 • プラットフォームには2つの役割がある。 1)製品だけでなくプラットフォーム構築でイノ ベーション促進が可能 – スマホ・エコシステムは、コンピューター、家電、メ ディア、モバイル通信業界などを結合 2)組織全体で様々な機能をサポートするプラッ トフォーム推進が可能 ー 大規模で複雑なERPシステム、電子カルテシステ ムなどは、共有データを一層活用するため他ツー ルが追加できるプラットフォームとして利用可能 18

19.

プラットフォームの組織的含意 • 組織は、プラットフォームによるジェネラティビ ティと制御の微妙なバランス管理が求められ る。 • 企業は、組織境界を越えてより多くのデータ とプロセスを共有することが求められる。 – 標準化されたツールを活用して、組織やバリュー チェーン全体で製品、サービスを設計、製造、サ ポートする為に • 企業は、組織をますます水平化させることが 求められる。 – 複数の製品やプラットフォームを跨って同じイノ ベーション活動と知識を適用し効率を上げる為に 19

20.

(2)分散型イノベーションの出現 • イノベーション製品とプロセスはますます分散 – ITの結果としてのコミュニケーションと調整コスト の削減がイノベーション活動を地理的に分散化 • イノベーションの「民主化」 • イノベーション活動はますます組織の周辺に • 企業は組織外の創造性を活用 – オープンイノベーション、オンラインコミュニティ他 • イノベーションのために必要な知識リソース の異質性が上昇 20

21.

分散型イノベーションの組織的含意 1)知識資源はますます異質化し、しばしば一 時的に統合されるだけでなく、異質性と統合 のレベルがエコシステムの予測できない変化 に対して動的に変化 2)イノベーションはますます他の人々がイノ ベーションすることを必要とする状況に – そのツールがAPI,SDK,オープンデータなど 3)新しい産業構造の出現 – 異質の知識体系を統合する能力の結果として、 世界的な支配力を達成するスーパースターと非 常に特殊なニッチプレイヤーとの共存が発生 4)新しい形のリスクをもたらす可能性の登場 21

22.

(3)コンビナトリアルイノベーションの跋扈 • 既存モジュールと組込みデジタル機能を組合 わせた新しい製品、サービスが創出 – デジタル機能のほぼ無限の再結合が新しいイノ ベーションの源に – 標準インタフェースに従う多くのソフトウェアベー ス・デジタルモジュールが、同じ標準規格に準拠 する他モジュールと容易にマッシュアップ • モジュールは、各モジュールがどのように別 モジュールと統合されるのかの完全な設計知 識無しに設計されることが多い。 22

23.

コンビナトリアルイノベーションの組織的含意 1)製品の境界が分からず、製品やサービスは 不完全なままで残る。 2)組織が新しい形態の創造性に投資する必要 がある。 – 偶発的オンラインの管理と育成など 3)アイデアは普及するだけでなく、普及につれ て突然変異し、進化する。 – 異種コミュニティの人々が互いに衝突するため、 イノベーションの絶え間ない変化が発生 4)イノベーション・プロセスの複雑さの増大 23

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デジタル・マテリアル性と人工物の進化 • デジタル信号の発明が デジタル情報処理の道 を開いた。 • 1970年代初め、これが スイッチングデバイスと 端末に組み込まれ電話 機はデジタル化した。 • 電話機は安価になり、 品質と信頼性を向上さ せたが、 • 生産者と顧客の関係を 根本的には変えなかっ た。 • 一方、iPhone、iPad、 Androidなどによって引 き起こされた変革は、 • 今日の電気通信、モバ イルメディア、放送、出 版業界での混乱を引き 起こし、 • 消費者、コンテンツプ ロバイダー、製造業者、 通信事業者間に新た な形の関係を生み出し た。 24

25.

• コンピュータや通信 • 書籍、音楽、写真、地図な ハードウェアの急速な どあらゆる形式のコンテン 小型化は、 ツがデジタル形式で利用 • 処理能力、ストレージ容 できるようになった。 量、通信帯域幅、効率 • 従来は非現実的であった 的な電力管理機能と組 種類の情報も、日常的に み合わせることで、 取り込まれ、保存され、分 析されるようになった。 • 従来の非デジタル人工 物を広範にデジタル化 • 自動車、家具、建物など、 することを可能にした。 以前は非デジタルであっ た分野も、ますます強力な • その結果、情報の壮大 デジタル構成要素によっ な量がデジタルで作成 され、保存され、消費さ て人工物の進化に巻き れるようになった。 込まれて行く。 25

26.

デジタル人工物を生成し 高度に進化させるデジタル技術の特性 (1)データの均質性 デジタル表現は任意の信号をビットにマッピ ングするため全てのデータが均質化 (2)再プログラム可能性 デジタルデバイスは記号的機能論理を物理 実施形態から分離しているために可能に (3)デジタル技術の自己参照性 デジタル技術(例えばコンピュータ)の使用を 必要とし、これが拡散加速をもたらす。 26

27.

階層化モジュラーアーキテクチャ デジタルイノベーションが与える影響の概念図 複雑なエコシステムの形成 例、電子書籍:コンピュータ業界、家電、 インターネット検索、オンライン小売、 書籍小売、通信、出版など デジタル 化 新たなビジネス価値の創造 ビジネス価値を創造するためのITの役割 ビジネス モデル 企業 Apple,Amazon 企業の戦略論、構造論 Apple,Amazon 製品と サービス そのもの 携帯電話 本 製品アーキテクチャ: ・機能要素の配置 ・機能要素から物理要素へのマッピング ・コンポーネント間のインタフェースなど ビジネスエコシステム理論 新たな変革の力≒ジェネラティビティ iPhone Kindle デジタル化時代の製品アーキテクチャ: ? 従来の取組みが不充分 27 , Y. Yoo, O. Henfridsson, K. Lyytinen, “The New Organizing Logic of Digital Innovation: An Agenda for Information Systems Research” Information Systems Research, Vol. 21, No. 4, December 2010.

28.

• デジタル技術は新しい製品アーキテクチャ:階 層モジュラーアーキテクチャを生み出す。 – 物理製品のモジュラーアーキテクチャとデジタル化によ る階層化アーキテクチャのハイブリッド – デジタル技術の階層化アーキテクチャは物理製品 に組み込まれており、ソフトウェアベース機能を装 備するに連れて製品機能を強化 • モジュール化は産業組織に影響を及ぼした が ・・・Bal​d ​ win and Clark 2000、Langlois 2003他 • 階層モジュラーアーキテクチャも企業の組織化と イノベーションに深刻な変化をもたらす。 28

29.

階層アーキテクチャーへの路 • デジタル技術が階層アーキテクチャへの路を 開く。 • 2つの重大な分離が発生: (1)「データの均質化」の故にネットワークとコンテン ツ間が分離 (2)「再プログラム可能性」の故にデバイスとサービス 間が分離 • 階層アーキテクチャは、デバイス、ネットワー ク、サービス、コンテンツの4つの層で構成さ れる。 29

30.

4つの層は異なる設計階層を表現 テキスト、音、画像、ビデオなどのデータ。 コンテンツの起源、所有権、著作権、エン コード方法、コンテンツタグ、地理タイムス タンプなどのメタデータやディレクトリ情報  ネットワーク とコンテンツ 間の分離  デバイスと サービス間 の分離 ユーザーがコンテンツを作成、操作、保存、 使用する際に直接役立つアプリケーション 機能 物理トランスポート層(ケーブル、無線スペ クトル、送信機などを含む)と論理伝送層 (TCP / IPやピアツーピアプロトコルなどの ネットワーク標準を含む)にさらに分割 物理機械層(例えば、コンピュータハード ウェア)と論理能力層(例えば、オペレー ティングシステム)にさらに分割 30 , Y. Yoo, O. Henfridsson, K. Lyytinen, “The New Organizing Logic of Digital Innovation: An Agenda for Information Systems Research” Information Systems Research, Vol. 21, No. 4, December 2010.

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階層モジュラーアーキテクチャの連続体 デジタル技術の3つのユニークな特徴 データの均質性 再プログラム可能性 自己参照性 • • • • • 固定した製品境界 一設計階層に基づく部 品 製品特有の部品 部品は製品特有の知 識を共有した企業に よって設計・製造 例:一眼レフ・カメラ • • • • • 流動化した製品境界 複数の設計階層に準拠した 異種の層 製品に不特定な部品 層は標準や異種の企業に よって共有されたプロトコー ルを通じて結合 例:Googleマップ 階層化モジュラーアーキテクチャのジェネラティビティ 31 は、レイヤー間の緩やかな結合によって達成される。

32.

そもそも統合アーキテクチャと対比される モジュールアーキテクチャとは? • モジュラーアーキテクチャ:コンポーネント間の インタフェースが標準化 – モジュール性は複雑なシステムの一般的特徴。 製品が再結合可能な成分に分解される程度を指 す・・Schilling 2000 • 指定されたインターフェースを介して相互に 結合された疎結合コンポーネントに製品を分 解することで、複雑さを軽減し柔軟性を増加 させる。・・・Baldwin and Clark 2000 32

33.

製品アーキテクチャの変化は企業の 組織化論理の変化を引き起こす • 統合アーキテクチャが支配的な組織化論理 は垂直統合 – 単一企業が必要イノベーションの大部分を実行 – 価値創造の主要な源泉は規模と範囲の経済 – 競争戦略はポジショニング戦略・・・Porter 1980 • モジュラーアーキテクチャでは設計、生産機 能を垂直分解 – 設計活動と生産活動が分散 – 価値創造の源泉はコンポーネントを迅速に再結 合する能力から生じる俊敏性 33

34.

モジュラーアーキテクチャの一種の 階層モジュラーアーキテクチャとは • 物理製品にデジタルコンポーネントが組み込ま れるに連れて、階層モジュラーアーキテク チャが登場 • 階層アーキテクチャがモジュラアーキテクチャ にジェネラティビティを追加する度合いによっ て連続的な変化が発生 – 一方では、固定された製品境界に基づく従来型 モジュラーアーキテクチャから出発して、・・ – もう片方では、製品レベルで固定の境界を持たな い本格的な階層モジュラーアーキテクチャへ 34

35.

モジュラーアーキテクチャの一種の 階層モジュラーアーキテクチャとは(続) • コンポーネント設計は単一の設計階層からは 導出されない。 • 代わりに異なる設計階層に属する異種層の集 合からコンポーネントの集合を編成する。 – コンポーネント設計者は、どのようにコンポーネントが 使用されるのか完全には把握できない。 • ジェネラティビティはレイヤー間の緩やかな結 合によって達成される。 – モジュラー製品のコンポーネントは単一の設計階 層に属すが、・・・ – 階層モジュラーアーキテクチャのコンポーネントは 複数の異機種の設計階層に参加する。 35

36.

デジタルイノベーションに向けた新たな組織化論理 • 階層化モジュラー製品は、1つの層では独自 プラットフォームの役割を果たしつつ、別の層 ではコンポーネントとして機能しうる。 • 同じ企業が1つの層では競合し、他の層では 共存できる。 – AppleのiPadとAmazonのKindleは、デバイス層、コ ンテンツ層では競合しているが、・・・ – 同時に、AmazonはiPad向けにアプリケーションを 提供しており、iPadサービス層のコンポーネントプ ロバイダでもある。 36

37.

階層化モジュラーアーキテクチャでは、・・ • 企業はデジタル製品プラットフォーム以外の 層に新しいコンポーネントを設計制作するた め、異種アクターを引き付けようとする。 従って、ジェネラティビティは、・・ • 異なる設計階層に属する多数の異種かつ予 期しないコンポーネントを引き付けることがで きる製品プラットフォームを設計できる企業の 能力に由来する • その結果、階層化モジュラーアーキテクチャ でのイノベーションは、異なる種類の企業間 に分散される。 37

38.

階層化モジュラーアーキテクチャの 価値創造の源泉 • 層を跨いだ異種リソースの境界の無い混在と マッチング能力から来るジェネラティビティが 価値創造の源泉 • 分散は下記の二種: (a)製品コンポーネントを超えた制御が複数企業を 越えて分散 新戦略フレームワーク(S) (b)製品の知識が異機種分野やコミュニティを越えて 分散 企業ITインフラストラクチャー(I) 38

39.

物理製品のデジタル化と階層化モジュラーアーキテクチャは、 ・相互に影響を与える新しい戦略的フレームワークと、 ・新しい企業ITインフラストラクチャの構築を促す組織化論理、 の二重に分散したネットワークに導く。 企業ITインフラストラクチャー(I) 新しい戦略的フレームワーク(S) 39 , Y. Yoo, O. Henfridsson, K. Lyytinen, “The New Organizing Logic of Digital Innovation: An Agenda for Information Systems Research” Information Systems Research, Vol. 21, No. 4, December 2010.

40.

新しい戦略的フレームワーク(S) • 企業は新たな競争ダイナミズムに直面する。 • 従来の、ITをビジネス戦略に合わせ、コアのIT 資源を識別し、標準化されたコモディティとし てITを管理することから • ジェネラティビティ、異種性、デジタル製品プラッ トフォーム、意思決定能力など、新しい価値創 造の源を特定する新しいデジタル戦略フレーム ワークの構築へ – 製品に組み込まれた独自デジタル機能を意図 的に活用するための戦略フレームワーク 40

41.

• 新しい競争戦略を明確にし、その戦略を形成 するITの新しい役割を規定しなければならな い。 • 階層化モジュラアーキテクチャはデジタルコン ポーネントを物理製品に埋め込む幅広い可能 性を示し、戦略的選択肢となる。 • 主要コンポーネントや特定層内コンポーネント の特定組み合わせを制御する、デジタル製品 プラットフォームの戦略的管理が競争優位を もたらす可能性がある。 41

42.

• その際、 – (a)デジタル製品プラットフォームでは、何をオープ ンに、何をクローズにするか? – (b)戦略的に重要なコアコンポーネントを特定し制 御する方法は? – (c)製品プラットフォームに参加するさまざまな企 業に対する効果的なインセンティブ構築法は? • 企業が階層化モジュラアーキテクチャに移行 するかどうかはデジタルイノベーション戦略に 影響を与える。 • 二重に分散されたイノベーションネットワークで 異種の予期しない企業を誘致する様々なコン ポーネント構築能力が戦略的に重要になる。 – 戦略的資源は技術境界資源と社会的境界資源 42

43.

企業ITインフラストラクチャー(I) 時代 要件 垂直統合時代 製造とバックオフィスのプ ロセスの自動化など システム例 取引システム、情報管理 システム、意思決定支援 システム、役員情報シス テムなど モジュラーアー キテクチャ時代 ネット対応エンタープライ ズプロセスのサポートの拡 張など(ERPなども) 専門企業の分散活動を調整 するコラボレーションシステム、 ナレッジマネジメントシステム、 eビジネスシステムなど 階層化モジュ ラーアーキテク チャ時代 組織的制御の分散、複 数設計階層に起因する 知識リソースの異質性へ の対応、 更には不確実で緊急な 相互作用や独自軌道の 実現なども ? 例えば、多様なデジタル機 能の活用を支援するシステム、異 種企業同士の矛盾する目標追 求、複数の設計階層への参加、 一連のイノベーションの絡み合い に対処可能なシステム、既存と新 規の取組みを両立させ運用可能 なシステム(双方のギャップを埋 43 める実験機能なども保持して)

44.

• イノベーションの場所は一つの設計階層の境 界外に移動し、イノベーション活動は複数の 設計階層を横断する。 • ネットワークのエッジは絶えず進化する。 • これは異種性の課題を増幅させるので、知識 の異質性と不連続性の処理が必要になる。 1)異種コミュニティを動機づける方法に注力 2)APIやSDKなどの境界資源の役割拡大 3)サードパーティー・コンポーネントとの統合とその 拡張 • システム開発は異種企業同士の矛盾する目 標、複数設計階層への参加、一連のイノベー ション軌道の絡み合いによって作成へ 44

45.

このような環境で不可欠な能力は、・・・ 二重に分散した階層化モジュラーアーキテク チャの能力を最大限に引き出すようにネット ワークを動作させるためのデジタル製品プ ラットフォームの設計力 このために企業は、・・ a. 製品環境の積極的な再構築を通して製品の 境界を定期的に再定義し、 b. 製品とサービスの新しい意味を創造する能 力を持つ必要がある。 45

46.

デジタルカメラの事例 • 階層モジュラー製品のジェネラティビティは種類 の違いを生成する。 – 例:デジカメ:カメラだけでなく、ビデオプレーヤ、 フォトエディタ、インターネットクライアント、および その他の多くの方法で使用される • デジタルカメラは、(化学物質ベースの)フィル ムから(シリコンベースの)フラッシュメモリへ の単なる技術置換ではない。 • カメラは全ての人々のライフスタイルを変えた 驚異的な製品であり、 • 同時に、数世紀に亘って根本的な変化を遂 げた製品である。 46 Y. Yoo, K. Lyytinen, V. Thummadi, A. Weiss, “Unbounded Innovation with Digitalization: A Case of Digital Camera”, presented at the Academy of Management Annual Meeting 2010.

47.

デジタルカメラの歴史 • デジタルカメラの起源はNASAと米国諜報機 関・・・宇宙衛星画像を地球に戻す方法から • 1969年、Bell 研の研究者が電荷結合素子 (CCD)を発明・・・ CCDはカメラの光検出器に • 1972年、TIが電子カメラの特許取得 • 1975年、Kodakが最初のデジタルカメラ作成 • 1990年、 Kodakは1.3メガピクセルのプロ向け デジタルカメラを発表 • 1994年、Appleは最初の消費者向けデジタル カメラQuick Take 100を発表 • 2003年、デジタルカメラはフィルムカメラ逆転 47

48.

デジタルカメラの進化と他テクノロジーとの統合 1975 1990 2000 1995 Kodak世界発 のデジカメ発表 デジタルカ メラの進化 2010 2005 Kodak倒産 Yahoo、 Flickr買収 Kodakフォト CD概念発表 日立、SONY、 MPEG、JPEG Kodakイン 準拠カメラ発表 ターネットを介 して写真共有 Kodakコンパク カシオLCD パネル導入 トフラッシュメモ リーカード発表 リコー、世界初 のGPS対応デ ジカメ発表 他テクノロジー との統合 シャープ、最初 のカメラ付き携 帯電話発表 Altek、GPS チップ内蔵デ ジカメ発表 ノキア、世界最大の カメラメーカーに Android準 拠端末登場 iPhone登場 垂直統合時代 モジュラーアーキテクチャ時代 階層化モジュラーアーキテ 48 クチャ時代

49.

ITは組織変革とイノベーションにどのように貢献できるか そもそも、デジタル化とは、・・・ • 物理的製品を、①プログラム可能、②アドレ ス可能、③センシング可能、④伝搬可能、⑤ 記憶可能、⑥追跡可能、⑦結合可能、などに すること・・・・Yoo 2010 そして、デジタルイノベーションとは、・・・ • このような特徴を持つデジタル化を踏まえ、 • 企業が組織論理と企業のITインフラストラク チャ使用を再検討・再構築すること 49

50.

新しいITの役割:まとめ • ソフトとハードの区別がなくなり、従来はハード部 品と思われていたものでも、デジタル化でソフト 機能が組み込まれるようになった。 • その結果、パーツ(部品)の性質が機能階層で のインタフェースから、パーツ・ネットワークでの継 承(インヘリタンス)として扱うのが適当なように 変化した。 • この変化は組織構造やイノベーションの性質を 変化させ、ITの役割も変わる。 • ITは階層化モジュラーアーキテクチャ時代の微妙 なバランスを成立させる鍵の手段としての新たな 役割を期待される。 50