手書きとフォントの融合文字を用いたメッセージカード作成における利用分析

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July 10, 18

スライド概要

第178回ヒューマンコンピュータインタラクション研究会(SIGHCI178)発表スライド

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明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室

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各ページのテキスト
1.

手書きとフォントの融合文字を 用いたメッセージカード 作成における利用分析 佐々木 美香子(明治大学 総合数理学部 4年) 斉藤 絢基 中村 聡史(明治大学)

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メッセージ書きますか? 日本人は メッセージを書く機会が多い!

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手書きのメッセージの特徴 個性や温かみが感じられる!

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手書きに関する調査結果 Q. 年賀状などで手書きと印刷されたものとでは どちらがいいか? どちらも変わ らない 6% 印刷 5% 手書き 88% 2011年 文化庁「平成24年度 国語に関する世論調査」より

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手書きのメッセージへの抵抗 しかし、手書きのメッセージを書くことに 抵抗を感じる人も多い 2014年 ゼブラ株式会社「手書きに関する意識調査」より 8割以上の人が自身の手書きに苦手意識 → 字が汚く、その字を見せるのは恥ずかしい

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フォントを用いたメッセージの特徴  PC やスマートフォンで簡単にメッセージの作成 ができる!  場面に応じて書体を使い分けられる! 明朝体 レポート しっかりした印象を 与えやすい!

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フォントを用いたメッセージの特徴 しかし、フォントは字形が画一的であるため 読み手に機械的な印象を与えてしまう可能性 お誕生日おめでとう よい一年にしてね。

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フォントを用いたメッセージの特徴 しかし、フォントは字形が画一的であるため 読み手に機械的な印象を与えてしまう可能性 メッセージを書くとき、 手書きを使う場合、フォントを使う場合 お誕生日おめでとう それぞれで問題がある よい一年にしてね。

9.

手書きとフォントの融合 「コミック内の発話への読者手書き文字融合による 共感度向上手法の提案」[斉藤 ’17] 手書き フォント 融合文字 手書きとフォントの融合文字生成手法を提案

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SIGHCI176の発表では… 手書きとフォントの融合による 視認性向上と書き手の抵抗軽減に関する調査を行った 実験より、融合文字は…  自身の文字に対する抵抗が低減  手書きが持つ個性はそのまま残っている  融合文字を用いたメッセージカードは好意的な印象

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SIGHCI176の発表では… 手書きとフォントの融合による 視認性向上と書き手の抵抗軽減に関する調査を行った 実験より、融合文字は… 書き手が、融合するフォントの種類や 融合割合を自由に設定できなかった  自身の文字に対する 抵抗が低減  手書きが持つ個性はそのまま残っている 書き手と読み手の関係性を  融合文字を用いたメッセージカードは好意的な印象 「親しい友人」に限定して実験を行った

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本研究の目的 書き手と読み手の関係性やデザインの違いにより 書き手が本システムの利用をどのように変化 するのかを明らかにする

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プロトタイプシステム

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プロトタイプシステム

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手書きとフォントの融合文字生成 融合文字生成の手順 ❶ 手書き文字, フォントの数式化 ❷ 手書き文字とフォントの文字の融合 融合文字 = フォント×α + 手書き文字×(1ーα) フォント 手書き a=0 a=0.25 a=0.5 a=0.75 a=1.0

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手書きとフォントの融合文字生成 今回は、文字の骨格となる「芯線」と「太さ」の 部分をそれぞれ独立して設定 太さ 芯線 (文字の骨格)

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システムの利用実験 メッセージの書き手と読み手の関係性、 カードのデザインによる書き手の作成行動の変化 を明らかにする

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実験手順 実験協力者 20名 3パターンの書き手と読み手の関係性 それぞれに対して、カード上にメッセージを書く 年下 親しい友人 年上 今年もよろしくね 今年もよろしく 今年もよろしく おねがいします

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使用したカード デザインの違いから、利用行動がさらに変化するのでは と考えたため、実験協力者を10人ずつの2グループに分けた 同一デザインのグループ 異なるデザインのグループ 年下 親しい友人 年上

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アンケート調査 それぞれのカード作成後に、作成したカードに関する アンケートを実施 アンケート項目 ❶ 自分の理想通りの年賀状を作成できたか ( はい / いいえ ) ❷ 何を重視して年賀状を作成したか ( 融合したフォントの種類 / 文字のバランス 手書き文字の字形 / 融合文字の字形 / 融合割合 手書き文字の丁寧さ / その他 )

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アンケート調査 全てのカード作成後に、システム利用に関する アンケートを実施 アンケート項目 ❶ 自分の手書き文字は好きか ( 好き / 嫌い ) ❷ 書写経験はあるか ( ある / なし ) ❸ 今後このシステムを利用したいか ( はい / いいえ ) ❹ システムを使った感想等( 自由記述 )

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実験で記録したユーザ行動  メッセージカードの作成時間  融合したフォントの種類  融合した芯線と太さの割合  手書き文字の書き直しの回数  フォントと融合する前のカード画像  完成時のカード画像

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完成したカードの一例 同一デザイン 年下 親しい友人 年上

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完成したカードの一例 異なるデザイン 年下 親しい友人 年上

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実験結果:完成時の融合割合の平均値 同一デザイン 年下 親しい友人 年上 p < 0.05 芯線割合 太さ割合 0 0.1 異なるデザイン 芯線割合 太さ割合 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1

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実験結果:分散分析の結果 同一デザイン 年下 親しい友人 年上 p < 0.05 芯線割合 太さ割合 異なるデザインの芯線割合において有意差あり 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 →0 関係性の違いによって字形が変化 異なるデザイン 芯線割合 太さ割合 0.9 1

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両者のグループ:対応ありt検定の結果 芯線割合 同一デザイン 異なるデザイン p < 0.05 年下 親しい友人 年上 太さ割合 年下 親しい友人 年上 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1

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両者のグループ:対応ありt検定の結果 芯線割合 同一デザイン 異なるデザイン p < 0.05 年下 親しい友人 年上 有意差はみられなかった 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 → デザイン間の違いによる字形の変化はない 太さ割合 年下 親しい友人 年上 1

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考察:有意差がみられなかったのはなぜ? 年下 同一デザイン 異なるデザイン 親しい友人

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考察:有意差がみられなかったのはなぜ? 年下 親しい友人 同一デザイン 異なるデザイン 融合割合は、カードのデザインの違いではなく 関係性の違いに影響を受けて変化した可能性

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実験結果:融合したフォントの種類 ゴシック体 同一デザイン 明朝体 年下 親しい友人 年上 0 2 4 6 8 10 2 4 6 8 10 異なるデザイン 年下 親しい友人 年上 0

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実験結果:融合したフォントの種類 ゴシック体 同一デザイン 明朝体 年下 親しい友人 年上 年下の場合はゴシック体が多い 0 2 4 6 8 10 2 4 6 8 10 異なるデザイン 年下 親しい友人 年上 0

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実験結果:融合したフォントの種類 ゴシック体 同一デザイン 明朝体 年下 親しい友人 年上 0 2 4 6 8 10 8 10 異なるデザイン 年上の場合は明朝体が多い 年下 親しい友人 年上 0 2 4 6

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同一デザインと異なるデザインとの比較 ゴシック体 同一デザイン 明朝体 年下 親しい友人 年上 異なるデザインの方が、 2 4 6 8 フォントの種類の違いがより現れる 異なるデザイン 0 10 年下 親しい友人 年上 0 2 4 6 8 10

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考察:なぜ、違いがより現れたか? 書き手がカード上の文字の雰囲気に影響を受け、 融合するフォントの種類を意識的に変えたために、 違いがより現れた可能性

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考察から… ゴシック体 を推薦 読み手が子供 明朝体 読み手が年上 読み手との関係性に応じた、 を推薦 融合するフォントの種類の自動推薦

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実験結果:一文字消去・全消去の回数と 作成時間の平均値 年下 一文字 全消去 親しい友人 作成 時間(s) 一文字 同一 デザイン 2.4 0.6 111.5 0.8 異なる デザイン 2.3 2.1 125.6 2.5 年上 全消去 作成 時間(s) 一文字 0 78.2 4.3 0.5 127.4 1.9 111.9 7.2 3.3 196.9 全消去 作成 時間(s)

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実験結果:一文字消去・全消去の回数と 作成時間の平均値 年下 親しい友人 年上 一文字 全消去 作成 時間(s) 一文字 全消去 作成 時間(s) 一文字 全消去 作成 時間(s) 同一 デザイン 2.4 0.6 111.5 0.8 0 78.2 4.3 0.5 127.4 異なる デザイン 2.3 2.1 125.6 2.5 1.9 111.9 7.2 3.3 196.9 どちらの場合でも、作成時間が最も短い

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実験結果:一文字消去・全消去の回数と 作成時間の平均値 年下 親しい友人 年上 一文字 全消去 作成 時間(s) 一文字 全消去 作成 時間(s) 一文字 全消去 作成 時間(s) 同一 デザイン 2.4 0.6 111.5 0.8 0 78.2 4.3 0.5 127.4 異なる デザイン 2.3 2.1 125.6 2.5 1.9 111.9 7.2 3.3 196.9 どちらの場合でも、文字を消した回数が最も多い

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実験で記録したユーザ行動のまとめ 融合割合の平均値 関係性の違いに応じて、芯線・太さ割合は変化した 融合したフォントの種類 フォント 年下 親しい友人 年上 ゴシック体 ゴシック体,明朝体 明朝体 作成時間&書き直し回数 作成時間:年上 > 年下 > 親しい友人 書き直し回数:年上 > 年下 > 親しい友人

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アンケート結果:作成したメッセージカードは 理想通りだったか 同一デザイン はい 異なるデザイン はい いいえ 100% 100% 80% 80% 60% 60% 40% 40% 20% 20% 0% 0% 年下 親しい友人 年上 年下 いいえ 親しい友人 年上

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アンケート結果:作成したメッセージカードは 理想通りだったか 年下の場合、おおむね理想通りに作成できた 同一デザイン 異なるデザイン はい はい いいえ 100% 100% 80% 80% 60% 60% 40% 40% 20% 20% 0% 0% 年下 親しい友人 年上 年下 いいえ 親しい友人 年上

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アンケート結果:作成したメッセージカードは 理想通りだったか 年上の場合、半数が理想通りに作成できなかった 同一デザイン 異なるデザイン はい はい いいえ 100% 100% 80% 80% 60% 60% 40% 40% 20% 20% 0% 0% 年下 親しい友人 年上 年下 いいえ 親しい友人 年上

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考察:なぜ、理想通りに作成できない ユーザが多かったのか 同一デザイン 異なるデザイン カードデザインのフォーマルさ 同一デザイン< 異なるデザイン ➡ それに合わせたカード作成が難しく、 理想通りに作れなかったユーザが多かった可能性

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アンケート結果:作成した際に何を重視 したか? 同一デザイン 年下 親しい友人 年上 10 8 6 4 2 0 融 合 し た フ ォ ン ト 文 字 の バ ラ ン ス 手 書 き の 字 形 融 合 文 字 の 字 形 融 合 割 合 手 書 き の 丁 寧 さ そ の 他

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アンケート結果:作成した際に何を重視 したか? 同一デザイン 年下 親しい友人 年上 10 8 6 4 2 0 融 合 し た フ ォ ン ト 文 字 の バ ラ ン ス 手 書 き の 字 形 融 合 文 字 の 字 形 融 合 割 合 手 書 き の 丁 寧 さ そ の 他

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アンケート結果:作成した際に何を重視 したか? 同一デザイン 年下 親しい友人 年上 年下の場合、融合割合が最も重視された 10 8 6 4 2 0 融 合 し た フ ォ ン ト 文 字 の バ ラ ン ス 手 書 き の 字 形 融 合 文 字 の 字 形 融 合 割 合 手 書 き の 丁 寧 さ そ の 他

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アンケート結果:作成した際に何を重視 したか? 異なるデザイン 年下 親しい友人 年上 10 8 6 4 2 0 融 合 し た フ ォ ン ト 文 字 の バ ラ ン ス 手 書 き の 字 形 融 合 文 字 の 字 形 融 合 割 合 手 書 き の 丁 寧 さ そ の 他

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アンケート結果:作成した際に何を重視 したか? 異なるデザイン 年下 親しい友人 年上 10 8 6 4 2 0 融 合 し た フ ォ ン ト 文 字 の バ ラ ン ス 手 書 き の 字 形 融 合 文 字 の 字 形 融 合 割 合 手 書 き の 丁 寧 さ そ の 他

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アンケート結果:作成した際に何を重視 したか? 異なるデザイン 年上 年下 親しい友人 年上の場合、手書きに関する項目が最も重視された 10 8 6 4 2 0 融 合 し た フ ォ ン ト 文 字 の バ ラ ン ス 手 書 き の 字 形 融 合 文 字 の 字 形 融 合 割 合 手 書 き の 丁 寧 さ そ の 他

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考察:記録したデータと、アンケートの 結果から… 関係性が年下のとき  融合割合の平均値 ➡ 他の関係性と比べて、太さ割合が最も高い  作成した際に重視してる点 ➡ “融合割合”を重視 年下(子供)にカードを書くので、読みやすい カードを書こうという気持ちが強かった可能性

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考察:記録したデータと、アンケートの 結果から… 関係性が親しい友人のとき  カードの作成時間 ➡ 他の関係性と比べて、最も短い  作成した際に重視してる点 ➡ 2名が“面白い字が書けるかどうか”と回答 気心が知れた仲だからこそ、 ありのままのカードを出そうという気持ちが 強かった可能性

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考察:記録したデータとアンケートの 結果から… 関係性が年上のとき  手書きの書き直し回数 ➡ 他の関係性と比べて、最も多い  作成した際に重視してる点 ➡ “手書きの丁寧さ”に関する項目を重視 綺麗な文字でカードを出したい、という思いから 丁寧に書こうとする気持ちが強くなった可能性

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実験のまとめ  本システムを用いて、書き手と読み手の関係性や、 デザインが異なる状況における利用行動を分析  実験の結果、読み手との関係性により書き手は 利用行動を変化させることを明らかにした  関係性に応じたデザインを用いて、カードを作成 すると、読み手との関係性の違いがより文字に 現れることが示唆された

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今後の展望 融合文字を用いたメッセージカードシステムの アプリ化・サービス化 スマートフォン上で、簡単に 融合文字を用いたメッセージカードのやり取りが可能に!

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今後の展望 手書きと融合するフォントの種類を増やす あいうえお あいうえお あいうえお あいうえお あいうえお あいうえお さまざまなフォントとの融合に対応!