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December 01, 25
スライド概要
本スライドは2025年8月30日(土)に開催したゲーム開発者向けのリアルイベント『ゲームメーカーズ スクランブル2025』で行われた講演のスライドとなります。
タイトル:
エンジニアとアーティストにこそ知ってほしいゲームの物語と設定の作り方
内容:
小規模ゲーム開発に対するメンタリングの仕事を長年やっていて受ける相談の中で多いものの一つ「ゲームシナリオをどうするか」です。シナリオを発注する場合でも自分のゲームにどのような物語を加えるか、そもそもどんな背景世界でどんなキャラクターが活躍するのかビジョンを持っている必要があります。本講演ではそれらを考えるきっかけとしてどのように背景設定や物語を作っていくのか、ロジカルに考える方法をお話します。
登壇者:
ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン株式会社
シニア・アドボケイト
𥱋瀨 洋平 氏
講演動画も公開中!
【アーカイブ記事】https://gamemakers.jp/article/
【イベントページ】https://gamemakers.jp/scramble2025/
【イベントレポート記事】https://gamemakers.jp/article/2025_09_24_116494/
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エンジニアとアーティストにこそ 知ってほしいゲームの物語と 設定の作り方 ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン株式会社 簗瀬 洋平
本講演について •初心者向けです •少人数向けです •予算のあるプロジェクトはちゃんとプロに頼みましょう •シナリオを発注したことがないという人には役立つかも •ロジカルな作り方を紹介します •「魂に深く響く物語を作りたい!」という人はむしろ時田さんの講演を 聞きましょう!
•Unity Technologies Japan シニア・アドボケイト •東京大学先端科学技術研究センター 連携研究員 •大阪芸術大学 アートサイエンス学科 客員教授 1995 ゲームデザイナ/シナリオライタ - 2012 研究者 - 𥱋 瀨洋平
【自己紹介】
ゲーム
非公開
映画
その他
研究
共通点:体験を作る
情報→予測→感覚提示→結果
「想像通りになる」 「想像通りにならない」
【ゲームのシナリオ】
何のための物語は必要なのか?
複雑なシステムも物語にすると すんなりと理解できる
戦う理由、 パズルを解く理由を作る
人は自由を奪われると 回復しようとする (心理的リアクタンス) →自ら行動するよう仕向ける
ゲームを進める動機を作るために システムの上に重ねたレイヤーが 物語と背景世界
戦う動機、 パズルを解く動機を作る
わかりやすい理由 - 命の危機 - 失って取り戻す - 復讐 - etc
ウラジミール・プロップ 「昔話の形態学」 -ロシアの魔法昔話を31の機能に分類 0.導入(α) 1.家族の一人が家を留守にする(不在、β) 2.主人公にあることを禁じる(禁止、γ) 3.禁が破られる(侵犯、δ) 4.敵が探りをいれる(探りだし、ε) 5.敵が犠牲者について知る(漏洩、ζ) 6.敵は犠牲者またはその持ち物を入手するために、相手をだまそうとする(謀略 計、η) ……etc
とりあえずのテンプレ
プレイヤーキャラクターは「目的」のために 「ゲームのメインアクション」をする。 キャラクター自信には「個人的な動機」がある。
例 • 英雄の子孫である主人公は人類を脅かす魔物の王を倒すために旅に出る • 主人公の動機は「英雄の子孫ではなく自分を認めて欲しい」 • 廃部の危機にあるサッカー部を救うため足が速いだけの主人公がサッカー部 に入る • 主人公の動機はマネージャーに気があるから
「個人的な動機」は満たされない、場合に よってはむしろ反対の結果になるが「より 大きな目的意識」に目覚めていく。
例 • 英雄としての名声が高まるとむしろ批判が高まり安らげなくなる • 認めてもらうかどうかではなく眼の前の人を救う意義に目覚めていく • マネージャーが好きなのはサッカーそのものと思い知る • だがマネージャーの情熱を受けてサッカーの奥深さに目覚めていく
様々な障害を乗り越え最終目的に近づ くが、主人公にはそれ以外にも気がか りなことがあった
例 • 魔王の城に乗り込み魔王を倒せば世界は救われる • だが魔王の呪を受けた仲間は魔王を倒すと死んでしまうかもしれない • 全国大会で活躍し日本代表のオファーが来るまでになる、 あとは決勝を残すだけ • だがこれ以上足を痛めると再起不能になるかもしれない
最近作ったゲームを解説
Unity1週間ゲームジャム 2024年12月 テーマは「ない」 制作期間 4日(30時間程度)
シンプルな論理パズルを テキストと音楽で 味付けしている
ゲームジャムは 最小構成要素を 模索するのに向いてます
途中までもっと 劇的な展開を作ろうと 思っていたけど 論理的に難しかったので シンプルにまとめなおした
ゲームメカニクスに合った キャラ付けを行う
GGJ2025 2025年1月 テーマは「Bubble」 制作期間3日(24時間程度)
Player
Player ?
?
O2
O2
テーマにあった背景を 考えつつそこから アイディアをふくらませる
Tips
導入
日常を壊す • ゲームプレイとは基本的にチャレンジだが安定した状態では人はチャレンジを しないので安定を壊す、もしくは壊れたところからスタートする • 居場所を奪う • 部活が廃部の危機、あるいは廃部になる • 村が焼かれる → ただし陳腐化に注意 • 奪われた状態からスタート • 記憶喪失 • 異世界転生
日常を壊す • ゲームプレイとは基本的にチャレンジだが安定した状態では人はチャレンジを しないので安定を壊す、もしくは壊れたところからスタートする • 居場所を奪う • 部活が廃部の危機、あるいは廃部になる • 村が焼かれる → ただし陳腐化に注意 • 奪われた状態からスタート • 記憶喪失 • 異世界転生
主人公たる理由の説明 • 戦える理由、パズルを解ける理由とは? • 職業 → 兵士、冒険家 • ライバルやモブとの比較で特別感が出る • 能力 → 特別な血筋、神や特別な武器に選ばれるなど • 閉鎖環境 → 主人公しかいない、相対的に主人公がやる • 一人だけ生き残る • チュートリアルで基本操作を憶える過程を特別な体験にするなど
展開
主人公の成長 • ゲームが進むとプレイヤーキャラクターとしての主人公、もしくはプレイヤー 本人のスキルは成長していく • それに伴い、物語中の主人公も少しずつ描いていく • ゲーム的には順調にクリアしているのに物語的には 敗北するとプレイヤーが辛い →やるなら正当な理由が必要(調子に乗っている描写など) • ゲームが難しくなる部分はシナリオ的にも盛り上げるようにするのが良い
壁に当たる • 主人公の敗北 • 戦闘には勝ったが戦争には敗退 • 勝利しても仲間とは決別 • 能力を失うなどのパターン • 失った仲間や能力を再び得る過程は熱く描きやすい • 物語の本筋が進められない要因の解消 • 地理的、物理的障壁や政治的、人的要因など • 寄り道からの解決や成長
物語とゲーム難易度 • 調整の仕方は好みによるが単純に上昇していくと息苦しくなりがち • 難易度を上げる→新しいことをおぼえる→それによって楽になる • こういうリズムを作ると次の困難も成り立ちやすい • 同時に物語のリズムも作りやすい • 日常エピソード、困難を乗り越えた後の絆の描写など • 強いボスの前に長くて敵のいない通路、もしくは弱い敵しかいないエリアを 作るなどセオリー
終盤
物語を覆す • 順調に物語を進めすぎると作業になりがち • 途中でゴールを再設定する、リセットするのもあり • ただしやってきたことが無駄と思わないような工夫が必要 • 序盤で教えられた目的に嘘がある、あるいは全部知らされていないなど • 戦う理由、パズルを解く理由を説明するのがシナリオなので、システムに疑 問を持たせたり裏切らせたりすると効く • クリエイターの都合で作ったキャラクターやシステムを物語に組み込む
結末 •やりたいようにやりましょう!
シナリオでゲームを売るには 最後までやってもらう必要がある
なので最後まで遊んでもらえる ゲームを作ることが大事
良いシナリオはクリエイターの 信用につながる
強いこだわりがないなら プレイヤーに納得してもらう ことを大事にしよう!
システムと背景世界
人狼の役職名だけ変えて別なゲームにしてみる • 毎ターン村人を食い殺す • 人狼 • 村人 • 狩人 • 占い師 • 能力なしの一般プレイヤー • 毎ターン指定した1人を人狼から守れる • 毎ターン1人を指定し人狼かどうか判別する • 霊媒師 • 死んだプレイヤーが人狼かどうかわかる • 狂信者 • 村人だけど人狼が勝ったら勝ち • フリーメイソン • 2人1組で互いが村人だと知っている
考えてみよう!
まとめ • 「必然」から始める • 凡庸なものから深めていく • ゲームの盛り上がりと物語の盛り上がるを一致させる • 先が読みやすい物語ほど裏切りやすい • まず手を動かしてみることが大切!
初心者であることは やらない理由にならない
初心者とは最初の志を 胸に抱き続ける者のこと