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June 15, 19
スライド概要
GAFAなどのプラットフォーマーの活躍が一段と目覚ましくなっている。それに伴い、両面市場やマルチサイドプラットフォーム理論として知られるプラットフォーム理論も世間で脚光を浴びている。最初の理論発表は2003年のことであった。しかし、現在は当時とはかなりビジネス環境が変わってきた。例えば、スマホのようなリアル機器を多くの顧客が日常的に所持する世界が登場した。その結果、マッチング環境も従来と様変わりしている。即ち、理論登場当時とは、ビジネス環境はデジタル化の深化で大きく変化したということだ。本来は、それに伴って、新たなプラットフォーム理論の登場を期待したいところだが、最近の対象の広がり、変化のスピードを見ていると、その期待は難しいように思う。 だからと言って、既存理論を現在の状況に無自覚に適応しようとするのも極めて危険なのではないか。こんな風に私は感じている。このような問題意識をできれば多くの人と共有できればと思い、拙い資料を作成してみた。
定年まで35年間あるIT企業に勤めていました。その後、大学教員を5年。定年になって、非常勤講師を少々と、ある標準化機関の顧問。そこも定年になって数年前にB-frontier研究所を立ち上げました。この名前で、IT関係の英語論文(経営学的視点のもの)をダウンロードし、その紹介と自分で考えた内容を取り交ぜて情報公開しています。幾つかの学会で学会発表なども。昔、ITバブル崩壊の直前、ダイヤモンド社からIT革命本「デジタル融合市場」を出版したこともあります。こんな経験が今に続く情報発信の原点です。
デジタルエージのプラットフォーム 理論の新潮流 B-frontier研究所 高橋 浩
目次 • 全体構成図 • 第1章 プラットフォーム理論の歴史 – – – – – 1.1プラットフォームの経済学 1.2 プラットフォーム理論の創始者たち 1.3 プラットフォームのエコシステム 1.4 プラットフォーム理論統合の動き 1.5 直接相互作用の導入 • 第2章デジタルプラットフォームの拡大 – – – – 2.1 2.2 2.3 2.4 プラットフォームレボリューション GAFAは何故これほど大きくなったか IoTとプラットフォームガバナンス イノベーションのコアは周辺に移動 • 第3章デジタルインフラストラクチャの理論 – 3.1 ジェネラティビティとは – 3.2 階層モジュールアーキテクチャ – 3.3 デジタルカメラに見る特性 ・・・ 3 ・・・ 4 ・・・ 13 ・・・ 23 ・・・ 34 ・・・ 47 ・・・ 56 ・・・ 83 ・・・ 99 ・・・112 ・・・123 ・・・142 ・・・159 • 第4章プラットフォームとインフラ同時考慮と今後の戦略 – 4.1 エコシステム理論の構築に向けて ・・・169 – 4.2 デジタルプラットフォームとデジタルインフラストラクチャ ・・・191 – 4.3 デジタルエージのプラットフォーム理論の課題 ・・・213
プラットフォーム理論の基礎 第一章 プラットフォーム理論の歴史 プラットフォーム理論の発展 両理論が融合する新たな時代 第二章 デジタルプラットフォーム の拡大 底流にあるデジタル化影響論の基礎 第三章 デジタルインフラストラクチャの理論 図1 全体構成図 第四章 プラットフォームと インフラ同時考慮 と今後の戦略
1.1 プラットフォームの経済学 市場の二面性 • 買い手がたくさん集まる場に は多くの売り手が集まり、多く の売り手が集まる場には多く の買い手が集まること (間接的ネットワーク効果) (直接的ネットワーク効果) • 「市場の二面性」(two-sided market)が産業組織論で一躍 注目を浴び、「プラットフォー ム」という言葉と対になって新 たな研究領域を拡大してきた。 4
• プラットフォームとは、「複数の階層あるいは 補完的な要素で構成される産業やシステム 商品において、他の階層や要素を規定してい る下位構造」 • 「市場の二面性」とは、あるプラットフォームを 基盤として複数の異なるレイヤーや補完的な 要素について、市場で取引される際に働く相 乗効果 • 事例: – アプリケーション・ソフトを起動する基盤OS – 自動車のボディ設計の基本部分(車台) 5
物品所有権なしに買い手と売り手をマッチング Business Market-maker (プラットフォーム) Side 1 Side 2 コンピュータソフトウェア Matchmaker (プラットフォーム) examples Side 1 Side 2 不動産屋 仲介業者 売主 買主 Microsoft アプリケーション開発者 利用者 有価証券 証券取引所 売り手 買い手 Apple アプリケーション開発者 利用者 商業 ショッピングモール 加盟店 消費者 Open Source アプリケーション開発者 利用者 電子商取引 B2B, B2C exchanges (EBay, Purchase Pro) 売主 消費者 Palm (PDA) アプリケーション開発者 利用者 ビデオゲーム 広告支援メディア Two Sided Market Matchmaker (プ ラットフォーム) Side 1 Side 2 新聞 雑誌社 広告主 購読者 テレビ TV 局 広告主 視聴者 衛星放送 Radio Network (Sirius, XM) 広告主 視聴者 Webメディア Web sites (ex:facebook) 情報提供者 (広告主) 情報利用 者 Matchmaker (プラットフォーム) examples Side 1 Side 2 Microsoft (XBOX) ゲームソフト開発者 ゲーム愛好者 Sony ゲームソフト開発者 ゲーム愛好者 Nintendo ゲームソフト開発者 ゲーム愛好者 リアル世界 クレジットカード Side 1 Matchmaker (プラットフォーム) examples Side 2 VISA 加盟店 消費者 Mastercard 加盟店 消費者 AMEX 加盟店 消費者 2014年ノーベル経済学賞受賞のトゥルー ズ第1大学のジャン・ティロール教授 「プラットフォームの経済学」の創始者 クレジットカードの研究から Jean-Charles Rochet and Jean Tirole (2003), “Platform 6 Competition in Two-Sided Markets”, Journal of the European Economic Association, 1(4): 990-1029.
市場の2面性を生かすビジネスが拡大 異なる2種類のユーザー・グループを結び付けるビジネス ⇒一方を優遇または無料化することが多い。 * 優遇または無料化 新聞 クレジット・カード 「*消費者」 と「加盟店」 eマーケットプレイス オークション・サイト クラウド・コンピューティング 検索エンジン ショッピング・モール ウェブ・サイト OS 時間 「 *消費者」 と「加盟店」 「*購読者」 と「広告主」 「 *検索者」 と「広告主」 「コンピュータ利用者」と 「 *アプリケーション開発者」 「 *情報利用者」 と「情報提供者」 「 *サービス利用者」 と「サービス提供者」 SaaS,PaaS,IaaS,・・ 7
ネットワーク効果とは 同じ製品・サービスを利用するユーザーが増え るとそれ自体の効果や価値が高まること ① 「サイド間ネットワーク効果(間接的ネットワーク効 果)」:一方のユーザー数が閾値を越えれば他方 のユーザーは高い対価を払ってでも参入する。 ② 「サイド内ネットワーク効果(直接的ネットワーク効 果)」:ユーザー数が増えれば、そのユーザー・グ ループは大きくなり易い。 2面市場:一方のユーザー・グループにとって の市場価値が他方のユーザー・グループの数 によって決まる市場 「収穫逓増の法則」が働き激しい競争が発生す る。 成熟化すると寡占化が発生(例:クレジット・カード、 PCのOS)。 8
2面市場への取組み戦略 1)「価格戦略」: どちらのユーザー・グループをどのくらい 優遇するか? Thomas R. Eisenmann ハーバードビ ジネススクール 教授 2)「一人勝ち」対応: 社運をかけた決断を如何におこなうか? 3)「隣接市場からの強敵参入」への対応: 如何に戦うか? Thomas R. EisenmannGeoffrey ParkerMarshall W. Van Alstyne, “Strategies for Two-Sided Markets”, Harvard Business Review, October, 2006 9
第1の課題:価格戦略 「優遇側」と「冷遇側」の区分けを行う 一方のユーザーが増えれば他方のユーザーに価値 をもたらす場合、前者が優遇される側 2つのネットワーク効果を考慮する。 「サイド間ネットワーク効果(間接的ネットワーク効 果)」 ⇒一方のユーザー数が閾値を越えれば他方のユー ザーは高い対価を払ってでも参入してくる。 「サイド内ネットワーク効果(直接的ネットワーク効 果)」 ⇒ユーザー数が増えれば、そのユーザー・グループ は大きくなる。 10
第2の課題:「一人勝ち」 市場を独占する条件が整っているか? コスト優位性、差別化による優位の他に下記なども 1. 見込みユーザーとの関係を構築しているかどう か? 2. 勝算が高いという期待が高められているかどう か? 3. 消耗戦に耐える資金が準備できているかどう か? ユーザー基盤の拡大を焦らない方が良い場合も 事業拡大の準備が充分整っていない場合 資金調達の術を充分確保できていない場合 11
第3の課題:包囲の危機 隣接市場から新たなプラットフォーム・プロバ イダーが参入してきて、一人勝ちプラット フォームを包囲することがある。 各プラットフォームはしばしば重なり合う部分 がある。これをテコにしてまるごと飲み込むよ うな取組みが発生する。 • 技術進歩の速い2面市場では包囲状態が起きや すい。 • その結果、市場の境界が曖昧な収斂が起きる。 12
1.2 プラットフォーム理論の創始者たち プラットフォーム理論の概要 • 現在まで、プラットフォームは限定的にし か理論化されてこなかった。 • 2視点からのプラットフォームの概念 化のみ – 経済理論から:市場と把握(両面市場) ・・・・Rochet and Tirole, 2003 – 工学設計から:モジュラー技術アーキテクチャ ・・・・・Baldwin and Woodard, 2009 13 Annabelle Gawer, “Bridging differing perspectives on technological platforms: Toward an integrative framework”, Research Policy 43 (2014) などを参考にしている
プラットフォーム理論の創始者たち 経済学視点 1. 市場としてのプラット 両面市場モデルとその活用など フォームが如何に異 ロチェ & ティロール(2003) なる顧客グループ 間取引を仲介させ るか? パーカー & ファン・アルスタイン(2005) 2. ネットワーク効果が 如何にプラットフォー ム競争を活性化さ せるか? 2014年ノーベル経済学賞受賞のトゥルーズ 第1大学のジャン・ティロール教授 「プラットフォームの経済学」の創始者 工学視点 モジュラー技術アーキテクチャ バルドウィン & ウッドワード(2009) リーダーシップ論など ゲイワー & クスマノ(2002) 1. 製品プラットフォーム が如何に企業のモ ジュラー型製品イノ ベーションを支援す るか? Carliss Y. Baldwin Harvard Business School Gawer & Cusumano(2002) Imperial College London MIT Sloan School 14
経済学視点 市場としてのプラットフォーム • 最も重視するのは市場の 「両側」に生じる「ネットワ ーク効果」の存在 • 両面市場定義の例: 「一方のグループのプラットフォームへ参加の 利益が他方のグループのプラットフォームへ の参加の大きさに依存し、・・・・相互作用する 2グループ・エージェントを含む市場」 ・・・ Armstrong (2006) 15
調整メカニズムは価格 • プラットフォームなしでは取引できない消費者の 2(またはそれ以上の)グループを仲介すること で価値創造 • 調整は価格設定を通して行われる。 – 具体的には一方の優遇(最大の優遇は無料化)、 他方の冷遇 • プラットフォーム所有者の価値も、間接ネット ワーク効果の好循環に伴って増加 • 強いネットワーク効果は、一定の条件の下で、 「勝者全獲得(WTA)」の結果をもたらす。 ・・・・・Eisenmann et al., 2006 Thomas R. Eisenmann ハーバード大学
現在の理論の大きな制約 (a)プラットフォームの存在そのものが当たり前 のこととされている。 (b)消費者グループ間の需要の補完性が当たり 前のこととされている。 (c)プラットフォーム所有者と補完品開発者間の 競合的相互作用が欠落している。 (d)補完品開発者のイノベーションの動機が看過 されている。 ⇒補完的開発者は“消費者”としてのみ見られて いる。 17
評価 • プラットフォーム競争の静的、需要サイド の見え方を提供 – 【プラットフォーム間競争としては理解できても、プ ラットフォームエコシステムではないとも言える】 • プラットフォームが急速に市場支配力を 得る条件に焦点を当てることはできる が・・・ • プラットフォームの進化やプラットフォー ム・イノベーションに対応することはでき ない。 18
工学設計視点 技術アーキテクチャとしてのプラットフォーム 製品プラットフォーム概念の登場はかなり古い • 階層的で分解可能なシステムは複雑さの影 Herbert Simon 響を軽減できる。 ・・・・Simon (1962) 「THE ARCHITECTURE OF COMPLEXITY」 – 体系的設計理念がモジュール性を育成 – デザイン階層を探求 ・・・・・Clark(1985) • 製品ファミリー ・・Sanderson et al.(1995) • ドミナント・アーキテクチャ ・・・・Ulrich(1995) • イノベーション・テンプレート・・Krishnan( 2001) 19
プラットフォーム設計の特性 • モジュラー技術アーキテクチャが共有され ている。 • コアと周辺部で構成される特定タイプの 技術アーキテクチャである。 • システムは安定したコアコンポーネントと可 変な周辺コンポーネントに分割される。 • プラットフォーム自体は製品システムの 安定したコアで構成される。 ・・・ Baldwin et al(2009) 20
イノベーション容易化の仕組み • モジュール性で複雑さを管理 – 単純な相互接続ルールに帰着される。 – 設計者は必要な情報範囲を減少させられる。 – イノベーティブな仕事の専門化と分割ができる。 • プラットフォームはモジュラーシステムとして 優れていることでイノベーションを促進 • モジュールの組換えを通じた自律的イノベー ションが促進 ・・・・Garud et al(1995) 21
評価と制約 • イノベーション促進のために意図的に設計され た技術アーキテクチャ・・・ • イノベーションは安定したシステム・アーキテ クチャ内で発生し、安定したインタフェースに よって促進 ① プラットフォーム進化を説明するのには役立 たないし、・・・ ② プラットフォーム所有者と補完者間の競争も 扱えない。 22
1.3 プラットフォームのエコシステム • 垂直統合ではアプリケーションプラットフォーム(AP)が 主導権を確保 – アップル: App Store – グーグル: Google Play • 垂直統合者 – 昔は、キャリア – 近年は機器・OSベンダー(アップル、グーグル) • 統合水準 – きつい:アップル~クローズ – 緩い:グーグル~オープン Thomas Hazlett, David Teece, and Leonard Waverman,“Walled Garden Rivalry :The Creation of Mobile Network Ecosystems”, George Mason University Law and Economic Research Paper Series 11-50 (2011). 23 Thomas Hazlett
アプリケーションプラットフォームの特性は多様 【Appleの例】デバイスがクローズ。 加えて、キャリアに排他的対応を行う戦略を 実施した。 【Googleの例】最も“オープン”指向。 しかし、サードパーティ開発者によって提供さ れたアプリからの収入は共有を主張した。 24
複雑化がエコシステムを形成 エコシステムの定義: 『競合したり補完したりする多数企業が一緒に 動作して、新市場を創造し、顧客へ価値ある 商品やサービスを提供すること』 1. エコシステムには、新組織、イノベーション、 新知識、選択、開発などが存在し、居住者 が共同で進化 2. エコシステムの生存率は、クリティカルマス、 生産性、イノベーション、学習と協力などに 依存 25
主導プレイヤーは何故入れ替わったのか • 顧客は先進的モバイルデバイスとモバイル サービスを求めていた。 1. APは、顧客に追加機能を獲得できるメカニ ズムを提供した。 2. APによって、小規模ソフトウェア、コンテンツ、 ワイヤレスサービスプロバイダは、簡単に彼 らの製品を顧客に提供が可能になった。 ⇒その結果、顧客に直接サービスを提供するA Pの主導権が強化された。 ⇒顧客に価値ある選択肢を提供し、選択が優れたモ デルを浮かび上がらせた(≒顧客との共創)。 26
モバイル・エコシステム形成のインパクト エコシステム主導者はニーズ把握と自社優位性を基盤に、 パートナーとの最適コラボレーションを通してモバイル・エコ システムを構築することでシステミック・イノベーションを実 現した。 1. キャリアは主導権を新エコシステム主導者に 奪われた。 2. モバイル機器メーカーはコア機器提供者から サービス享受手段提供者にさせられた。 3. コンテンツ開発者は顧客への直結ルートを確 保した。(但し、門戸開放で競争は激化) 27
“イノベーション·エコシステム”による価値創造 イノベーションの位置(場所)に注目! 1. 上流のコンポーネントの課題は焦点企業製 品の製造能力を制約することで価値創造を 制限する 2. 下流の補完品の課題は、焦点企業の製品 を消費することで最大利益を引き出そうとす る顧客の能力を制約する • エコシステム内の活動の相対位置を利用し て、異なる価値創造につながる課題の役割 を識別することができる。 Ron Adner and Rahul Kapoor, “VALUE CREATION IN INNOVATION ECOSYSTEMS: HOW THE STRUCTURE OF TECHNOLOGICAL INTERDEPENDENCE AFFECTS FIRM PERFORMANCE IN NEW TECHNOLOGY GENERATIONS”, Strategic Management Journal., 31: 306–333 (2010) Ron Adner ダートマス大学教授 28
エコシステム評価図式と課題の役割 製造側 供給者1 製品の ための 統合 消費側 補完者1 焦点企業 供給者2 コンポーネント ⇒焦点企業に影響する。 消費の ための 統合 消費者 補完者2 補完品 ⇒顧客に影響する。 29
コンポーネントの課題の特性 • 先行者優位の鍵は、学習曲線を進行させる 製品開発と市場経験の機会の活用である。 • コンポーネントの課題は企業の学習機会を 拡大させ、ライバルに先立って学習曲線を 進行させる。 • コンポーネントの課題は焦点企業に帰属さ れるパフォーマンス上の利点を増加させる。 30
補完品の課題の特性 • 多くのイノベーションはロックされている価 値を解除する補完品の可用性に依存する。 • 補完品の課題は、補完者が自分の技術 的ハードルを克服するのに苦労した結果 などで、補完品の可用性に遅れが生じる ことで起きる。 • 補完品の課題は焦点企業に帰されるパ フォーマンス上の利点を減少させる。 31
イノベーション課題の影響評価フレームワーク 新技術世代では企業パフォーマンスに如何なる影響を与えるか 補完品の課題 低い エリア1: 内部的課題のみ 高い エリア3: 内部的課題 +消費に関する外部的制約 低い 最初のプレーヤーが成功する。 先行者優位は標準レベル 準備は急ぐが、待つのが適当 先行者優位は減少する。 コンポーネ ントの課題 エリア2: 内部的課題 +製造に関する外部的制約 高い エリア4: 内部的課題 +製造に関する外部的制約 +消費に関する外部的制約 先行者は更に優位になる。 時と場合による。先行者優位は どの問題が最初に解決するかに よる。 出典:ワイドレンズ p.147 32
本書に記載の成功/失敗の事例 • Nokiaの3G携帯電話の失敗 • Amazon Kindleの成功 SONY電子書籍端末の失敗 • Appleの成功 • 電気自動車の失敗 • ミシュランのランフラットタイヤの失敗 • 電子カルテの失敗 イノベーションを成功に導くエコシステム戦略 ロン・アドナー著 ダートマス大学教授 2013年東洋経済 新報社 (英語版2012年刊) 33
1.4 プラットフォーム理論統合の動き 2つのモデル比較と問題点 経済学視点モデル 工学設計視点モデル プラットフォーム間競争 ○ × モジュール化、インター フェースによるイノベー ション × ○ × × エコシステムの範 囲拡大で、「ネッ トワーク効果」の みでは扱えない 領域が拡大 × × モノからソフト(+ データ)へのシフ トで、モノに準拠し たモデルの相対的 優位性が低下 34 プラットフォーム進化 補完者との競合 問 題 その他 点 今後に向けた課 題
2プラットフォーム理論の統合の試み 間接ネットワーク効果を「範囲の経済」と見る • ネットワーク効果はしばしば需要サイドの規 模の経済として特徴づけられる。 ・・・Katz and Shapiro, 1986 • 直接ネットワーク効果は需要サイドの規模の 経済を構成しているが、・・・間接ネットワーク 効果は、実際には、需要側の「範囲の経済」を 構成していると考えられる。 ・・・・Gawer,2014 Annabelle Gawer University of Surrey
規模の経済 vs 範囲の経済 • 規模(スケール)の経済 ・・巨大化・独占化 – 事業規模が拡大するにつれて購買力が向上した り製品当りの固定費負担が減少したりすることで、 平均単価・平均費用が減少する結果利益率が高 まる傾向のこと • 範囲(スコープ)の経済 ・・設備・技術の共用 – 事業を多角化したり商品やサービスのラインアップを 拡大することで得られるシナジー効果を通じ、製 品当り・顧客当り平均コストが減少する結果利益 率が高まる傾向のこと 36
イノベーションに「範囲の経済」を拡張する • 製品ファミリ内の異なる製品間のコンポーネント を系統的に再利用 • 「範囲の経済」は、共同製作コストが各製品の個 別生産コストより小さい時に発生 ・・・Panzar et al(1975, 1981)他 • 『イノベーションにおける「範囲の経済」の体系的 創造と装備』は、新製品開発の基本原理の一つ ⇒ 生産における「範囲の経済」概念をイノベー ションにおける「範囲の経済」に拡張 ・・Gawer(2014) 37
「範囲の経済」はイノベーション・エコシステムでも成立 • 初期研究では企業内で観察 • サプライチェーン内企業でも確認 ・・・ Brusoni(2005)、他多数 • 最近では大規模ネットワーク内でも判明 – 「イノベーション・エコシステム」・・・Adner et al(2010) ロン・アドナー著 ダートマス大学教授 産業プラットフォームを定義: 『・・・・イノベーション・エコシステムで緩く編成され ている他の企業でも、補完的製品、技術、サー ビスを開発できる基盤として機能するもの 』 ・・・Gawer(2009) 38
『範囲の経済』による統一化 視点尺度 経済学視点 工学設計視点 概念化 市場としての経済学 技術的アーキテクチャとし てのプラットフォーム 動向 需要サイド 供給サイド 焦点 競争 イノベーション 価値創造の 方法 需要サイドにおける範囲 供給サイドとイノベーション の経済 における範囲の経済 役割 買い手内で装置をコー ディネート 経験的設定 ICT イノベーター内で装置を コーディネート 製造業とICT 39
技術プラットフォームのスケールアップ 視点尺度 内部プラットフォーム サプライチェーン・プラットフォーム 産業プラットフォーム 分析レベル 企業 サプライチェーン 産業エコシステム プラットフォーム構成 一企業 アセンブラ プラットフォーム・リーダー エージェント その構成サブユニット サプライヤー 補完者 技術アーキテクチャ インターフェース アクセス可能なイノ ベーション機能 モジュラー設計、コアと周辺 閉じたインターフェース: インタフェース仕様は、企 業内で共有するが、外部 には開示されない 選択的にオープンなイン オープン・インターフェー ターフェース: インタフェー ス:インタフェース仕様は、 ス仕様は、サプライチェー 補完者と共有されている ン全体で排他的に共有さ れている 企業の能力 サプライチェーンの能力 潜在的には外部の無制 限の機能 経営階層を通じた権限 サプライチェーン加盟組 織間の契約関係 エコシステム・ガバナン ス:マルチサイド市場の 特殊な場合には価格を 通じて排他的に フォルクスワーゲン Sonyウォークマン ルノーと日産 ボーイング Facebook Google Apple などと Uber,Airbnbなども 調整メカニズム 例 40
プラットフォーム統一概念の特徴 • プラットフォームはエージェント(消費者or 補完者)を単に連携しコーディネートするも のとし、それ以上のものとは見做さない。 【理由:産業エコシステムではプラットフォームは 補完者を集団的に連携させる存在でもプロセス でもないから】 • プラットフォーム・リーダーの正当性を維持する ためだけでなく、集団育成のためにもエコシステ ム・ガバナンスが重要化 ・・・Gawer et al,(2007) 41
統合理論で不足している点 1. (設計、評価、戦略などの)具体的施 策やアクションに結びつく方法論 2. イノベーションと競争の共存をまとめ て取り扱えるモデル 3. プラットフォーム理論と組織論の関 係性への橋渡し 4. 具体的事例に対する明快な分析の 蓄積 42
クローズアップされてきた相互作用 (補完者と消費者間の直接相互作用) (連携)or (競合) 消費者 補 完 者 1 補 完 者 2 (競合) ソフト・プラットフォーマー 補 完 者 n A(協調) ソフト・プラットフォーマー 43
統合理論適用による プラットフォーム進化と競争共存モデル 技術プラットフォームの組織的連続体と見做す 組織構造 インタフェース アクセス可能 領域 ガバナンス 44
組織的連続体の解説 1. 企業⇒サプライチェーン⇒産業プラットフォー ムの移動に連れて、イノベーティブ・エー ジェントや多様な能力へのアクセが拡大 2. 同時に、プラットフォーム構成エージェント 間の競合の公算も増大 3. 産業エコシステム内では協力は当然のこと ではない。 4. モジュール化は性能向上を可能にする一 方、・・・同時に競争と模倣を通じて利益が 侵食される可能性も増大 45
組織変革の経路 競 争 の 可 能 性 が 高 い 競 争 の 可 能 性 が 低 い プラットフォーム構成要素間の 競争 産業プラッ トフォーム サプライチェーン プラットフォーム 企業内プ ラットフォーム プラットフォーム構成要 素のイノベーションの自律性 イノベーティブエージェント は自律的で無い イノベーティブエージェント はより自律的である 46
1.5 直接相互作用の導入 プラットフォーム理論への直接相互作用の導入は・・ サービス提供者と消費者の補完性を両 者の直接相互作用の可否から検討でき るようにした。 サービス提供者のイノベーションの動機 を専門サービス提供者の側面から検討で きるようにした。 プラットフォームの存在を既存組織(垂 直統合モデルなど)と比較検討できるよう にした。 Andrei Hagiu ハーバード・ビジネ ススクール準教授 A. Hagiu, J. Wright, “Multi-sided platforms”, International Journal of Industrial Organization 43 (2015) 162–174 47
改良MSPモデルの定義と 代替ビジネスモデルとの関係 定義1:2つ以上の異なるサイド間の直接的相互作 用を可能にする。 定義2:各サイドはプラットフォームに加入(affiliate) する。 専門サービス提供者 消費者 直接的相互作用 改良MSP 加入 加入 代替ビジネスモデル 垂直統合 48 A. Hagiu, J. Wright, “Multi-sided platforms”, International Journal of Industrial Organization 43 (2015) 162–174
専門サービス提供者のモード選択心理 条件 組 織 の 意 思 表 示 個 人 経 営 者 向 け 動 機 付 け 従業員の努力を奨励 するため売上高に基 づいて垂直統合企業 がボーナスを支給 販売促進を誘導する ため売上高に基づい て専門サービス提供 者に可変手数料(≒ 価格決定権)を許容 個人経営者として 組織内の一員として MSP >垂直統合 MSP <垂直統合 ボーナス支給制 ボーナス支給 度が柔軟で無 制度が柔軟で い場合 シフトが顕著な 場合 選択 MSPによる料金 可変手数料制 可変制度の導 度が柔軟で無 入が顕著な場 い場合 合 選択 49
相互作用を成立させる信頼性の醸成 Airbnbのアルゴリズムビッグデータモデル クレジットカード パスポート Facebook,LinkedIn 顔写真 過去のクチコミ情報 ゲスト、ホスト相互評 価 ホストサービス評価 ”SuperHost” 総合的背景チェック など 50
Uber,Airbnbのビジネスモデル変革への適応 分散化を実現するプラットフォームの機能と型の変化(1) プラットフォームの型 トランザクション型 プ ラ ッ ト フ ォ ー ム の 機 能 マッチング 代 相互作用 Uber,Airbnb など 表 的 インテグレーション型 相 エコシステム 関 性 Google, Appleなど 時 代 の 潮 流 イノベーション型 補完性 Microsoft, Intelなど Peter C. Evans, Annabelle Gawer,” The Rise of the Platform Enterprise A Global Survey” http://thecge.net/wpcontent/uploads/2016/01/PDF-WEB-Platform-Survey_01_12.pdf を参考にして作成 Peter Evans 51 Center for Global Enterprise 副社長
分散化を実現するプラットフォームの機能と型の変化(2) 資産小でも広域エコシステム構築可能に! 企業構造 垂直統合(VI) +資産規模 プラットフォーム・ エコシステム GE Daimler 資産が大きい 企 業 タ イ プ 事例 企業名とプラットフォーム Predix Moovel 広域エコシステム 混在(中間) 資産が小さい Apple App store Amazon App store Google Map, Search Facebook SNS Google Google Play Uber Uber app Airbnb Airbnb app 広域エコシステム&トランザクション型 時 代 の 潮 流 52
分散化を促進するプラットフォームの変化 プ ラ ッ ト フ ォ ー ム の 変 化 ステップ2 ステップ1 プラットフォー ム提供機能が シフト デジタルプラッ トフォーム構築 が容易化 ステップ3 プラットフォー マーと専門サー ビス提供者が分 離し多様化 プラットフォーム所有者 クラウド (AWS) エ コ シ ス テ ム の 変 化 マッチング 相互作用 資産小でスピーディー な取組み 多数の専門サービス提供者 資産or労働提供と サービスレベル高度化 53
Uber, Airbnbプラットフォームの概要 Uberプラットフォーム Airbnbプラットフォーム Henten, A., Windekilde, I., “Transaction costs and the sharing economy”, 26th European Regional Conference of the International Telecommunications Society(ITS), Spain, 24-2754 June 2015
新たな傾向のプラットフォームは他にも登場 サービス産業を 消費財を投資財へ変換す Airbnb、Uber 変革するプラット るプラットフォーム フォーム 仕事仲介プラッ トフォーム グローバル入札 Upwork、 Innocentives 時々の非公式ワーク Task Rabbit, Homejoy ファイナンス仲介 資金調達プラットフォーム Kickstarter、 Indiegogo 金融機関置換プラット AngelsList、 フォーム Zopa M. Kenney, J. Zysman,” Choosing a Future in the Platform Economy :The Implications and Consequences of Digital Platforms”, Kauffman Foundation New Entrepreneurial Growth Conference, Discussion Paper, Amelia Island Florida – June 18/19, 2015 55
2.1 プラットフォームレボリューション 最近のビジネス環境には 新たな傾向が登場している 1)仕事をする人としてのユーザーに焦 点! 2)新概念:「ユーザーを包含するエコシステ ムで価値が生成」が登場 3)「ユーザーがプロデューサ(生産者)あ るいはコンシューマ(消費者)として相 互作用する際に価値創造される」という 考え方 SANGEET PAUL CHOUDARY 「PLATFORM REVOLUTION」 の共著者 WHY BUSINESS MODELS FAIL: PIPES VS. PLATFORMS