ブロックチェーンが切り拓く世界

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March 27, 19

スライド概要

ブロックチェーンが話題になっている。それも、単にビットコインのような仮想通貨の世界だけで無く。でもまだ、「ブロックチェーンは、インターネット並みのインパクト、そして多くの機会とイノベーションを解き放つポテンシャルがある」との認識は少数派の印象。しかし、インターネット立上げの時も似たような状況だったのではないかな、と。色々と課題があるように見えて、突然立ち上がる。そんな認識から、「ブロックチェーンが切り拓く世界」というタイトルでざっと荒っぽい資料をまとめてみた。

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定年まで35年間あるIT企業に勤めていました。その後、大学教員を5年。定年になって、非常勤講師を少々と、ある標準化機関の顧問。そこも定年になって数年前にB-frontier研究所を立ち上げました。この名前で、IT関係の英語論文(経営学的視点のもの)をダウンロードし、その紹介と自分で考えた内容を取り交ぜて情報公開しています。幾つかの学会で学会発表なども。昔、ITバブル崩壊の直前、ダイヤモンド社からIT革命本「デジタル融合市場」を出版したこともあります。こんな経験が今に続く情報発信の原点です。

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各ページのテキスト
1.

ブロックチェーンが切り拓く世界 B-frontier研究所 代表 高橋 浩

2.

目次 • ブロックチェーンとは何か – ビットコインとは何か • 現在までの経緯 • 応用例 – シェアリングエコノミー – サプライチェーン • ブロックチェーンが切り拓く世界 – 自動車 2

3.

ブロックチェーンとは何か 共創の壁 • 新しい価値を創出する際、それぞれが保 有しているデータの共有が必要 相手が競合ではないか? 勝手に二次・三次利用されないか? 大事なお客様の個人情報が守られるか? データを預けるのにコストがかかる。 ・・・・ 3

4.

ブロックチェーン: 新たな考えに基づくコワーキング 4

5.

ブロックチェーンを本質的に捉えれば・・ 石井 敦, slideshare2019.2.19掲載 「世界のブロックチェーン技術動向と実際のユースケース」 クーガーCEO 5

6.

基本原理 • 時系列に発生した事実をダイジェストしてブ ロック化 • ブロックを鎖のように連結 • 前のブロックの出力を次のブロックの入力に • ブロック書き換え時はそれ以降のブロック全 ての書き換えが必要 6

7.

価値のインターネット • 文書、音声、画像・・あらゆる“情報” がデジタル化によってインターネットに • 印鑑、銀行、政府・・あらゆる“信頼” がデジタル化によってブロックチェーン に – 信頼の流通が可能に – 従来実現出来なかった関係性を構築可能に 7

8.

ブロックチェーンの特徴 • 改ざんが困難 • 中央集権的管理が不要 • 高いシステム障害への耐性 加えて、ビジネスの課題である・・ • データの信頼性(透明性) • 関係者間の直接的な情報の共有 • 高コストの抑制 8

9.

ブロックチェーンの種類 パブリック型 プライベート型 管理者 なし あり 参加者 不特定のユーザーが使 用 認証されたユーザーが使用 情報閲覧 原則公開 制限可 合意形成 演算処理による証明な ど 組織内特定者間の合意 など 設計方針 ユーザーが信用できない 前提で設計 ユーザーが信用できる前提 で設計 9

10.

ブロックチェーンの本質的価値 • 情報共有 • 相互監視の仕組みによる信頼性 – ブロックチェーン以前は、取引相手に対して 権威のある第三者の管理などを背景に間接的 に信頼せざるを得なかった。 • ブロックチェーンは“仕組みを信頼でき る”ため、信頼の所在を他に求める必要 がなくなった(ビザンチン将軍問題の解 決)。 10

11.

ビザンチン将軍問題とは・・ 11

12.

但し、ブロックチェーンによる信頼の 範囲は限定される点に注意 特にIoTの場合に注意 IoT:Internet of Things(モノのインターネット) 12

13.

ブロックチェーンを導入しても信頼が 攻撃される例:冷凍宅配 想定されるシナリオ: 配送トラックが冷凍さ れている。 攻撃シナリオ: センサーは冷却区画に あり、残りのトラック は冷凍されていない。 13

14.

ビットコインとは何か ブロックチェーンとビットコインとの関係 ブロックチェーンとは・・・ 「新しい信頼」を築くための技術 ビットコインとは・・・ ブロックチェーン上に構築された最初の キーアプリケーション 14

15.

サプライチェーン、 シェアリングなど あらゆる分野 製造、医療 などあらゆ る分野 汎用的な分散基盤として仮 想通貨以外の領域に拡大 ビットコインを実現するため にブロックチェーンが誕生 15

16.

ビットコインの概要(1) 銀行がいらなくなる 送金者 送金者 銀行 受取人 受取人 16

17.

ビットコインの概要(2) 送金手数料が格安 約4%の海外送金コストがほぼゼロになり、 世界中に自由に資金を移動できる 17

18.

現在までの経緯 ビットコイン:ピアツーピア電子現金システム サトシ・ナカモト 2008年、「サトシ・ナカモト」と名乗る謎の 人物が上記論文を技術者系コミュニティに公開 その構想に魅了された人々が分担してプログ ラムを書き出したのが始まり 18

19.

初期の貢献者たち マルッティ・マルミ ヘルシンキ工科大学2年生 ハル・フィニー 暗号研究の専門家 でプログラマー ビットコイン・ フォーラム開設 と運営に貢献 パトリック・マーク ギャビン・アンドレセン ビットコイン普及を目 的にビットコイン財団 を創設 仮想通貨に関する ルールを整備した 法律家 19

20.

最初の応用例 • ビットコインの知名度が低かった段階で 主要な応用のひとつだったのが、麻薬売 買の闇サイト「シルクロード」 ビットコインを使ってドラッ グをネットで販売 想定ユーザーは薬物使用常習者 ロス・ウルブリヒト 20

21.

イーサリウムの登場 • 2015年7月にスマートコントラクトを装備 したイーサリウムが登場 • その後、Hyperledger、Eris、Stellar、 Ripple、Tenderminなども • 仮想通貨取引向けのビットコインとは対 照的に、・・イーサリウムらはスマート コントラクトを実装することであらゆる 分野にブロックチェーンの用途を拡 大 21

22.

ヴィタリック・ブテリン: イーサリウムの共同創業者 ロシア生まれでロシア系カナダ人のプログラマ、起業家。1994年生(25歳) 2011年父親からビットコインについて聞き、ビットコインを扱う雑誌の編 集を開始。2012年ウォータールー大学へ進学。 イーサリアムの原型となるプロジェクトに取り組み、次第に学業以上に時 間を割くようになり、2014年自主退学。 22

23.

スマートコントラクトとは ブロックチェーン上に実装された 手続により、ある条件が満たされ ると決められた処理を自動実行 分散型アプリケーション構築プラット フォームとしても機能 23

24.

ブロックチェーンのメリット • 自律分散型システムの構築 • 運営事業者に対する信頼なしに信頼性を 実現できる仕組み • 透明性の高い分散台帳を複数事業者や不 特定多数者で共有 • 契約内容をブロックチェーンで管理可能 • 契約成立の条件をブロックチェーン上に 記録し条件を満たした際に自動実行 24

25.

しかし、トラブルも発生 仮想通貨交換業者から仮想通貨が不正流出 (2018年1月) • 約580億円相当の仮想通貨が盗まれ流出 – 標的型攻撃による内部侵入と秘密鍵窃取 • 仮想通貨市場自体が大幅に下落するキッ カケとなった。 25

26.

2018年の仮想通貨盗難被害は世界で約10億ドル 2018.10.12 和田晃一良(28) • 2017年の被害額と比べ約4倍にまで拡大 • 背景に仮想通貨に注目が集まると同時に価 格自体も高騰した為 26

27.

日経新聞2019/3/8 • • • 北朝鮮は仮想通貨交換業者への攻撃で推計5 億ドル(555億円)を取得 制裁強化で外貨収入が細る中、サイバー攻撃に 特化した部隊が外貨獲得の任務を担当 アジアの仮想通貨交換業者に対し少なくとも5回 の攻撃が成功 27

28.

世界トップ50大学の42%がブロックチェーンを講義 2018.08.30 • • • 大学生の仮想通貨やブロックチェーンに対する需要の高 まり ブロックチェーンに関する知識や技術が将来の仕事に結 びつく可能性 ブロックチェーン関連の講義はコンピュータ・サイエン ス分野にとどまらず、数学、金融、経済、社会学といっ 28 た分野にまで拡大

29.

応用例 多様な分野への取組みが活発化している背景 1. ブロックチェーンは世界にまたがる公開台帳 で、どこからでも大量のデジタル取引を自動 的に記録し検証可能 2. この技術は多くの業界を変える可能性を秘め ていると信じる起業家が増加 3. 透明性が高く、検証可能な方法で取引データ を記録でき、中心的管理者が不要で、改ざん が難しいので、用途はいくらでもあるとの認 識 29

30.

応用例:シェアリングエコノミー 30

31.

ライドシェアの例 UberやLyftは分散化とは対極 彼等は運転手を管理し料金を決定 しかし、ブロックチェーンを使えば運 転手と乗客はもっと利用者に向けた価 値重視のライドシェアサービスを提供 できる可能性がある。 31

32.

ブロックチェーン版ライドシェア(1) Arcade City • 運転手は自分で料金を決める。 • Arcade Cityは料金の一定の割合を受 け取る。 • Arcade Cityは企業に管理されるので その経験も踏まえて創業 なく、独自の送迎ビジネスを築きたい プロの運転手にアピールできる。 • Arcade Cityの運転手は自由に独自料 金を設定し、常連客を増やし、宅配や 車のけん引など他のサービスを提供で きる。 Christopher David Uberの運転手をやっていた。 ブロックチェーンとシェアリングエコノミー – Arcade City, https://gaiax-blockchain.com/arcade-city 32

33.

ブロックチェーン版ライドシェア(2) La’zooz • イスラエルで2013年設立された“コミュニ ティ所有の分散型交通プラットフォーム” • 走行車の空席を埋め、稼働台数を減らすこ とで車や道路への投資を減らし交通問題を 緩和する目標を掲げている。 • ある地域内に一定の運転手と乗客の密度が 確保できないとマッチングが成立せず、正 式なサービス提供はできない。 – 現状はまだ正式サービス立上げに達した地域はなさそ う La’zooz HP: https://gaiax-blockchain.com/lazooz 33

34.

応用例:サプライチェーン 従来型サプライチェーン • 分散されており中央エンティティが存在し ない。 • 現在の状態が分からず推測が混入する。 Karl Wüst, Arthur Gervais, “Do you need a Blockchain?”, Crypto Valley Conference on Blockchain Technology (CVCBT), 2018. 34

35.

ブロックチェーン型サプライチェーン • 参加者が現在の状態を更新/読込みできる分 散元帳を保持している。 • 明確な現況把握による判断ができる。 35

36.

ブロックチェーン型サプライチェーンの特徴 消費者の望みをリアルタイムに把握でき るので柔軟性を高められる。 質的変化が発生 それを生かすには積極的に最適な生産決 定を選択できるように、企業に正確な市 場感が求められる。 関係者は情報通知を待つのではなく積極 的に情報を照会する体制が求められる。 36

37.

IBMと物流大手MaerskによるTRADELENSに、 企業、貨物船業者、港湾関係者、税関、銀行、 物流会社など94を超える企業や組織が参画中 1億5400万件の出荷イベントを処理 世界各地20ヶ所以上の港湾運送業者などが利用 37

38.

予想市場規模 38 出典:平成27年度 我が国経済社会の 情報化・サービス化に係る基盤整備 (ブロックチェーン技術を利⽤したサービスに 関する国内外動向調査)

39.

ブロックチェーンが切り拓く世界 • 「ブロックチェーンは、インターネット並み のインパクト、そして多くの機会とイノベー ションを解き放つポテンシャルがある」・・ MITメディアラボ所長伊藤穰一氏 39

40.

これからのIoT/AI時代のビジョン 通信するデータの種類と量が爆発的に増加 あらゆるデバイスにAIが搭載 殆どの処理でリアルタイム性が求められる。 • AIの信頼性などをどのように担保するか – データ不具合時の影響が甚大となる為 • データに信頼性を持たせる技術が必要 40

41.

データ流通基盤がプラットフォーム化 IoT データの自動収集 データの自動保存 ビッグデータ スマートコントラク トによる処理 AI 知識表現 の具体化 ブロックチェーン 垣根を越えた データ受け渡し 改竄不可データ 無許可でデータ閲覧 可能 新たな価値を生む情報共有がデータ流通 基盤化 ⇒ 新たなインフラとプラット フォーム融合が登場 41

42.

IoT/AI時代のデータ流通基盤 IoT全盛時代はAI全盛時代でもある。 このような時代ではデータの種類と量が 爆発し、データが信頼できるかどうか考 える時間の余裕は少ない。 AIの成長履歴・実行履歴の保証と共に、 AIで利用されるデータの保証も必要にな る。 42

43.

新たなIoTプラットフォームベースの サービス価値創造モデル クラウド ブロックチェーンベースの分 散型IoTプラットフォーム (フォグサーバー/ エッジゲートウェイ群) AI/デバイス(IoT):VR/自動運転カー/ロボット 石井 敦, slideshare2019.2.19掲載 「世界のブロックチェーン技術動向と実際のユースケース」を元に作成 43

44.

応用例:自動車 EV(電気自動車)のバッテリー管理 IoT、AI 、ビッグデータ解析、ブロックチェーンを繋 げ、データ価値の創造とデータ流通のモデルを提唱 BMS:Battery Management System OBD:On-Board Diagnostics KAULA㈱44

45.

モビリティとブロックチェーン • 未来のクルマとの関連性 – 走行履歴、車両の事故履歴など管理上重要な情報 の管理 – 商品が正規品であることの証明(修理履歴、過去 の所有者ほか) – データを安全に記録して運転行動を分析(渋滞緩 和、燃費改善、EVバッテリー、EV充電ステーショ ンとのやり取り、自動運転におけるビッグデータ 活用ほか) – スマートロックで友人、家族間でのキー共有、レ ンタカー、カーシェア – スマートウォッチ使用でトランクの施錠(宅配便 へのトランクアクセス権付与など)他 45

46.

自動車業界は、100年に1度の変革期 CASEが全てを変える 46

47.

CASEの4項目全てにブロックチェーンが関係 自動車、インフラ、周辺サービス提供者、 消費者は同じ台帳を持ち、・・ その台帳は悪意を持った人間からも改ざん されず、・・ システムがダウンすることもなく、・・ 現状のシステムと比較して安く運用できる。 47

48.

自動運転とブロックチェーン 自動運転システムは、カメラ、センサー、ジャイ ロコンパスなどの機器が複雑に絡み合うことに よって成り立っている。 『クルーズコントロール』や『自動ブレーキ』な どの便利な機能は、これらの機器の全てがうまく コミュニケーションを取ることで実現できる。 クルーズコントロール:高速道路などでアクセルから足を離しても一定の速度をキープする機能 スマートコントラクトの技術はこれらの問題を解 決できる可能性を秘めている。 48

49.

自走車両のデータ管理 自動車の内部のデータ通信を処理することももち ろん必要だが、・・ 本格的に自動運転が普及する社会を作るためには、 外部の膨大なデータも適切に処理して管理・保存 する必要がある。 ブロックチェーン技術を用いてこれらのデータを 蓄積して管理することによって、この問題点は大 きく改善できる。 49

50.

自動車製品の信頼性と透明性 自動車の部品などを製造する工程からブロックチェーン 技術を導入することによって、製品の安全性や信頼性を 大きく向上させることができる。 途中段階で何か重要な問題が発生した場合、その原因が 何だったのかを迅速に調査して対応する必要がある。 場合によってはすでに販売されている車両にもメンテナ ンスを行う必要があり、それらの作業は膨大な作業時間 やコストがかかる。 製造段階から消費者の手元に届くまでの全ての情報を記 録して管理することによって、パソコンやスマートフォ ンで簡単に情報を調べることが可能になる。 50

51.

ブロックチェーンを導入する大手自動車メーカー 「モビリティ社会」の新時代実現 車両のあらゆる情報管理 CO2削減 独自の仮想通貨 「MobiCoin」発表 走行距離などのデータ管理 独自トークン発行で交通渋滞の削減 MobiCoiはエコドライブを実現した人々へ の報酬として支払われる 51

52.

トヨタ、ブロックチェーンを自動運転車開発に導入へ――MIT始め多数の企業と提携 2017年5月23日 安全かつ信頼性の高い自動運転車の実現に向け てブロックチェーンを活用する。 消費者が自動運転技術を信頼することを可能に するソフトウェアの開発を目的としたプロジェ クトを進める。 52

53.

BMWがブロックチェーンで「未来のクルマ」を創る|今注目すべき最先端プロジェクト 2018年8月28日 carVertical(CV):ブロックチェーンでカーナビのデータ、車両の 事故履歴、走行履歴など車を購入する際や管理する際に重要となる情 報を管理する。 VeChain Thor(VET):ブロックチェーンで商品の品質を証明する。 修理履歴やより詳細な製品情報を確認でき、過去に車両を所有してい たドライバーの特性などを追跡できる。 53 Bloom(BLT):安全かつ簡単な方法で消費者への融資を支援できる。

54.

まとめ ブロックチェーンの応用分野は広い アプリ開発における所有権 と使用の証明 デジタル資産 の売買 デジタルコンテンツの保存 と配信の所有権の証明 従業員のピア ツーピア承認 証券取引所振替や 投票メカニズム デジタルセキュリティ取引 の所有権と譲渡 ライドシェアのた めのポイントベー スの価値転換 所有権の証明 (例:デジタルメディア) 医療での 患者記録 資産デジタル化 と偽造防止対策 文書や契約のデジタル化と 譲渡のための所有権の証明 コンピュータネットワークを使 用した分散ストレージ デジタル識別子 信頼性レビューと フィードバック収集 分散化したモノのインテーネット 消費者のプライバシーとデジタ ル入力アクセスシステム ゲームやローンのサービス 電子商取引と製造業のスマート コントラクトアプリケーション 個人用、ビジネス用の分散 インターネットとコン ピューティングリソース 会社設立、持分/所有権の移 転、ガバナンスのデジタル化 54

55.

まとめ ブロックチェーンが切り拓く世界 ブロックチェーンは経済システム全体を 変革する可能性が高い最も破壊的なテク ノロジの一つといえる。 情報を活用した新たな世界だけでなく、・・ モノを活用した新たな世界、・・ モノ造りの新たな世界にまで影響が拡大する。 55