計算生命科学の基礎10(川人 光男)

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March 05, 24

スライド概要

人工知能技術、ブレインマシンインタフェースを含むブレインテックは、現代社会のデジタル化を急激に進め、社会の構造を変革している。コロナ禍と相まって、このような急激な社会変化は、心の不安をかきたて、精神疾患や依存症が増えている。脳科学と人工知能で心の不安に対処する戦略については、精神疾患診断と治療の現状と問題点をまず説明する。脳科学と人工知能を組み合わせて、客観的な診断のためのバイオマーカーが開発できること、また薬物に頼らない新しい治療法について説明する。

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関連スライド

各ページのテキスト
1.

1月31日 神戸大学 『計算生命科学の基礎』講義 AIを利用した精神疾患の診断、治療、 創薬支援 川人光男 • • • • • ATR脳情報通信総合研究所・所長 (株)XNef CEO AMED国際脳科学研究戦略推進プログラム・脳科学とAI技術に基づく 精神疾患 の診断と治療技術開発とその応用・代表 理研革新知能統合研究センター・特別顧問 情報通信研究機構(NICT) 脳情報通信融合研究センター(CiNet)副センター長 1

2.

ヒト型ロボットのシミュレーションは難しく、転倒すれば 故障するので、学習用の訓練データは多数試行取れない: DNNは使えない DARPA Robotic Challenge 2015 多数は転倒、少数は恐ろしくノロイ PM Gill Pratt 新しい概念皆無!? 2

3.

ロボットの起立運動の階層強化学習 少数学習サンプル<100からの学習 森本淳、銅谷賢治 Morimoto J. and Doya K.: Acquisition of stand-up behavior by a real robot using hierarchical reinforcement learning. Robotics and Autonomous Systems, 36, 37-51 (2001)

4.

AIの最大の困難: Overfitビッグデータ必須 underfit overfit 誤差 テストデータ 汎化誤差 e=d/(2n) 学習データ モデルの複雑さ (パラメータ数) Watanabe S: Algebraic Geometry and Statistical Learning Theory. Cambridge University Press; 2009. 4

5.

脳は、そして未來のAIはどのように 少数サンプルからの学習を可能にするか? 汎化誤差e=d/(2n) dを減少させるしかない • • • • • スパース事前分布 (e.g. sparse logistic regression) 階層強化学習 神経発火の同期でdを減少(小脳のモジュール) 内部モデルのモジュラー構造(MOSAIC) 高次認知機能:注意、エピソード記憶、概念化、メタ認 知、意識(前頭前野) 1. Yamashita O, Sato M, Yoshioka T, Tong F, Kamitani Y: Sparse estimation automatically selects voxels relevant for the decoding of fMRI activity patterns, NeuroImage, 42, 1414-1429 (2008) 2. Cortese A, De Martino B, Kawato M: Higher cognitive functions for learning from a small sample, Current Opinion in Neurobiology, 55, 133-141 (2019) 3. Kawato M, Samejima K: Efficient reinforcement learning: computational theories, neuroscience and robotics. Current Opinion in Neurobiology, 17, 205-212 (2007) 5

6.

ブレインテック・ニューロテック・ ブレインマシンインタフェースへの民間投資 イーロン・マスク ニューラリンク 2023/8ラウンド 420億円 時価7,500億円 東京大学医学部医療倫理学分野 中澤栄輔先生 ご提供 NeuroTech Industry Overview Q4-2021 https://www.neurotech.com/landscape-overview-2020 6

7.

脳科学と情報通信を組み合わせて超能力を実現する!? • テレキネシス(念動力):意志の力だけで物体を動かす (例、スプー ン曲げ) • テレポーテーション(瞬間移動):離れた場所に瞬間的に移動する • テレパシー(精神遠隔感応):遠隔の者と言葉を交わさずに通信する • 念写:心の中に思い浮かべている観念を印画紙などに画像として焼 き付ける 7

8.

テレキネシス → ブレインマシンインターフェース テレポーテーション → ロボット通信 → 脳デコーディング、 テレパシー ニューロフィードバック 8 諸事情により、この画像は 非公開とします 8

9.

ブレイン・マシン・インタフェースで実現していること • テレキネシス:頭で考えただけで、コンピュータのカーサやロボット を動かす • テレポーテーション:1万キロ離れた場所にいる第2の身体に憑依 する • テレパシー:ある人達の脳情報を読み取って、他の人に誘導す る:機械学習に基づくニューロフィードバック • 念写:脳の活動から映像を取り出す 9

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ブレイン・マシン・インターフェー ス 脳の感覚・中枢・運動機能を電気的人工回路で 補綴・再建・増進 感覚 運動 中枢 10 人工内耳 人工感覚型BMI • 人工内耳 コクレア社 • 人工視覚 ドーベル研究所 • 人工網膜 Argus II • 人工前庭器官 10

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ブレイン・マシン・インターフェース 脳の感覚・中枢・運動機能を電気的人工回路で 補綴・再建・増進 感覚 中枢 運動 11 DBS:脳深部電気刺激 癲癇BMI電気刺激治療 11

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ブレイン・マシン・インターフェース 脳の感覚・中枢・運動機能を電気的人工回路で 補綴・再建・増進 感覚 • 半導体多重電極(サイバーキネティクス社 運動 米国) 12 • 皮質脳波-ECoG(脳プロの成果) (阪大脳外、東大工、ATR) • 脳波と近赤外光の組み合わせ (Honda, ATR, 島津製作所) 12

13.

ホンダー島津ーATR(2006じゃんけん, 2009 ASIMO) 脳計測装置 脳活動データ ロボット制御 デコーディング ネットワークBMI(総務省委託)ーデューク大学ーICORP計算脳(2007) 13

14.

デコーディッドニューロフィードバックはどのように産まれたのか? オペラント条件付けに使わ れるスキナー箱 ©Wikipedia Eberhard Fetz 神経オペラント条件付け サル運動野ニューロン発 ⽕ fMRIボクセルデコーディング ︓ヒト視覚野の脳活動(ボ クセルパターンから)その表現 する情報を解読するー神⾕ 之康研究室の画像の再構 成 ATRーHONDAー島津ブレインマシンインタフェース ATR-Honda-Shimazu Brain Machine Interface for controlling ASIMO based on EEG-NIRS combined decoding 諸事情により、 この画像は非公開と します。 特定の脳領域(ROI)の活動を増減するfMRI実時間ニューロフィードバック 14

15.

先端的(BMI的) fMRIニューロフィードバック • • • • • 脳波ニューロフィードバック(アルファ波) ブレインマシンインタフェース 神経オペラント条件づけ fMRIボクセルデコーディング fMRI実時間ニューロフィードバック • BMI三大要素:脳活動計測、デコーディング、脳の可塑性に絞っては? • バイオフィードバック、ニューロフィードバックをBMIで高度に • オペラント条件付けに基づいて、脳内に意識せずに、情報やダイナミク スを誘導する手法:ある意味洗脳だが治療・教育に使える 15

16.

デコーディッドニューロフィードバック法: コンピュータ機械学習とヒト強化学習を組み合わせて、 脳内に特定の情報パターンを生成する 視覚課題成績 知覚学習 視覚意識(トップダウン信号)なし 視覚刺激なし 因果関係 訓練前 訓練後 低次視覚皮質における特定 活動パターンの繰り返し Shibata K, Watanabe T, Sasaki Y, Kawato M: Perceptual learning incepted by decoded fMRI neurofeedback without stimulus presentation. Science, 334 1413-1415 (2011) 16

17.

DecNefで知覚学習の脳内座の論争解決 事前 視覚テスト 視覚刺激提示 fMRIデコーダ 作成 方位報告 300 ms 時間 方位 インダクション (fMRI feedback) 事後 視覚テスト 10度 70度 130度 S/N比 低い 高い 17

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fMRIデコーダ:ボクセルパターンから方位 事前 視覚テスト 3方位 の尤度 3方位の縞視覚刺激 に対する脳活動の fMRIデータ 21% fMRIデコーダ 作成 MSLR デコーダ インダクション (fMRI feedback) 事後 視覚テスト V1/V2 61% 18% ATR成果 MSLR: Multinomial Sparse Logistic Regression Yamashita et al., NeuroImage (2008) 18

19.

デコーディッドニューロフィードバック 事前 視覚テスト 被験者に提示された視覚刺激 脳活動の操作 フィードバック(報酬) fMRIデコーダ 作成 時間 ターゲット 方位 インダクション (fMRI feedback) 事後 視覚テスト デコーダ V1/V2 61% Decoded fMRI neurofeedbackシステム 19

20.

DecNefをした方位だけ、弁別能力上昇 100 ターゲット 80 60 事前テスト 事後テスト 40 4 6 8 12 S/N比 (%) 80 * t-test P<10-2 60 40 事前テスト 事後テスト 4 6 8 12 S/N比 (%) 100 正答率 (%) −60度 正答率 (%) 正答率 (%) 100 +60度 80 60 事前テスト 事後テスト 40 4 6 8 12 S/N比 (%) 事前/事後、方位、S/N比の間に有意な交互作用(Three-way ANOVA, P = 0.02) • • • • 脳活動が原因で、行動変化が結果(因果的な手法) 意識に上らない(混乱認知要因がない) 世界の二十施設に提供し、ユーザグループ形成 疾患治療に使える(特定の恐怖症、痛み、PTSD) 20

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DecNefにより様々な脳部位について、 様々な脳情報を自身で誘導可能 強化学習とメタ認知 Cortese et al., Nat Commun, 2020 知覚確信度(メタ認知)の増減 Cortese et al., Nat Commun, 2016; NeuroImage, 2017 視覚知覚学習 痛みの制御 Zhang et al., Current Biology, 2020 Berman et al., Phil Tran Roy Soc, 2023 顔の好みの増減 Shibata et al., PLoS Biol, 2016 動物恐怖症の治療 Taschereau-Dumouchel et al., PNAS, 2018; Cushing et al., Biol Psychi, 2023 Shibata et al., Science, 2011 Wang et al., J. Vision, 2021 色と方位の連合学習 Amano et al., Current Biology, 2016 価値の付与 Cortese et al., eLife, 2021 恐怖記憶の減弱 Koizumi et al., Nat Hum Behav, 2016 PTSD治療 Chiba et al., Front Hum Neuro, 2019 Cortese A, Tanaka SC, Amano K, Koizumi A, Lau H, Sasaki Y, Shibata K, Taschereau-Dumouchel V, Watanabe T & Kawato M: The DecNef collection, fMRI data from closed-loop decoded neurofeedback experiments, Scientific Data, 8(65) (2021) 21

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DecNef:恐怖症, PTSD, 疼痛 患者毎のデコーダが必要で疾患を選ぶ、オーダーメード的治療法、デコー ダの性能が高ければ高い成功確率、長期効果もある ユーザーによる 脳活動の誘導 現在の 脳活動パターン 目標の 脳活動パターン 比較 “類似度”をフィードバック Cortese A, Tanaka SC, Amano K, Koizumi A, Lau H, Sasaki Y, Shibata K, Taschereau-Dumouchel V, Watanabe T & Kawato M: The DecNef collection, fMRI data from closed-loop decoded neurofeedback experiments, Scientific Data, 8(65), doi: https://doi.org/10.1038/s41597-021-00845-7 (2021) 22

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DecNefによる恐怖記憶の消去 DecNefによる恐怖反応低減 刺激呈示による従来の恐怖記憶消去 従来法 恐怖記憶を消さずに、「抑制」する 報酬 恐怖記憶に関わる脳活動パターンを 報酬と結びつける 実験方法 色と電流刺激の連合を形 成 一方の色のみ恐怖記憶を消去するDecNef訓練 = = 6 7 Koizumi A, Amano K, Cortese A, Shibata K, Yoshida W, Seymour B, Kawato M, Lau H: Fear reduction without fear through reinforcement of neural activity that bypasses conscious exposure, Nature Human Behavior, 1: 0006 (2016) 23

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動物恐怖症DecNef:二重盲検RCT • ハイパーアラインメントによるデコーディング • コンピュータが治療対象動物を無作為に選定 • 扁桃体の活動と皮膚電位反応で恐怖反応を評価 Taschereau-Dumouchel V, Cortese A, Chiba T, Knotts JD, Kawato M, Lau H: Towards an unconscious neuralreinforcement intervention for common fears Proc Nat Acad Sci USA, 115(13), 3470-3475 (2018) 24

25.

DecNefを用いたPTSDの新規治療法の開発 予備実験結果 点 合 再 fMRI 総 体 験 待機 醒 θi 覚 𝒙 過 スタート DecNef直前 DecNef直後 2か月後 避 トラウマ曝露時 の脳活動 実験条件:曝露相当 (N=5) 回 脳活動操作 PTSD重症度 苦痛を伴わないニューロフィードバック曝露療法 (千葉俊周、他 点 合 総 醒 覚 過 避 #現在の脳活動とトラウマ曝露時 (曝露療法中)の脳活動の類似度 回 半径 ~ P 験 P 体 脳状態の計算 再 Feedback PTSD重症度 対照条件:非曝露相当 (N=4) 25 Front. Hum. Neurosci. 2019; Nature Commun 2024) 25

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不安障害患者に優しいDecNef治療 • • • • • • • • • • • • • 不安障害の有効な治療法は暴露療法 暴露療法はトラウマ記憶を呼び起こすので患者にとって苦痛 児童虐待、家庭内暴力、戦場の恐怖などでは治療の脱落率が高い DecNefでは、恐怖記憶を意識に上げずに脳内に誘導できる 患者に優しい、暴露療法の代替 条件付け、特定の恐怖症、そしてPTSDへと進化 患者の意識に上らないようにデコーダを作成する様々な方法が開発された 事前登録二重盲検ランダム化比較試験(特定の恐怖症UCLA、痛みMcGill大、 PTSD千葉俊周)まで、進んでいる Koizumi A, Amano K, Cortese A, Shibata K, Yoshida W, Seymour B, Kawato M, Lau H. Fear reduction without fear through reinforcement of neural activity that bypasses conscious exposure. Nature Human Behaviour, 1, e0006 (2016) Taschereau-Dumouchel V, Cortese A, Chiba T, Knotts JD, Kawato M, Lau H: Towards an unconscious neural-reinforcement intervention for common fears Proc Natl Acad Sci USA, 115(13), 3470-3475 (2018) Chiba T, Kanazawa T, Koizumi A, Ide K, Taschereau-Dumouchel V, Boku S, Hishimoto A, Shirakawa M, Sora I, Lau H, Yoneda H & Kawato M: Current status of neurofeedback for Post-traumatic stress disorder: a systematic review and the possibility of decoded neurofeedback, Frontiers in Human Neuroscience, 13(233), (2019) Cushing CA, Lau H, Kawato M, Craske MG, Taschereau-Dumouchel V : A pre-registered decoded neurofeedback intervention for specific phobias, Psychiatry and Clinical Neurosciences, to be submitted (2023) Berman T, Cushing CA, Manuel S, Vachon-Presseau E, Cortese A, Kawato M, Woo CW, Wager TD, Lau H, Roy M & Taschereau-Dumouchel V: Modulating subjective pain perception with decoded MNI-space neurofeedback, Philosophical Transactions of the Royal Society B, under in-depth review (2023) 26

27.

機能結合ニューロフィードバック 結合ニューロ フィードバック 変更前 変更後 Megumi F, Yamashita A, Kawato M, Imamizu H: Functional MRI neurofeedback training on connectivity between two regions induces long-lasting changes in intrinsic functional network. Frontiers in Human Neuroscience, 9(160), doi: 10.3389/fnhum.2015.00160 (2015) • • • • 治療対象となる結合を選ぶために疾患のバイオマーカが必要 自閉症で、逸話的だが、2、3人で大きな効果 うつ病で、単一結合の操作で関連症状(沈思)が特異的に改善 統合失調症で、コントロール群と比べて認知制御改善 27

28.

特定の結合を改善すると特定の症状が改善 サブクリニカル群とうつ患者で左dlPFCと左pDMN結合に介入 サブクリニカル群で 安静時脳機能結合の改善と BDIと 陰気な反芻沈思の改善が相関 病 態 指 標 改 善 NF訓練成功 うつ病慢性患者3名でトレーニング成績向上 & HAM-D得点改善 No.2 15 100 20 15 10 5 e Pr 40 前 st 0 60 後 20 3 4 da y da y 2 0 1 st Po ・抑うつ気分 ・罪業感 ・自殺念慮 等の抑うつ症状が改善 80 da y 3 2 1 4 da y da y da y da y 3 2 1 4 da y da y da y 後 NFB score 後 前 ト レ ー ニ ン グ 成 績 da y Po st Pr e NFB score 前 0 80 ト レ ー 60 ニ ン グ 成 40 績 20 da y 抑 う つ 症 状 No.3 5 0 20 25 5 e ト レ ー 60 ニ ン グ 成 40 績 No.2 No.3 No.3 10 Pr 80 10 NFB score HAM-D score 抑 う つ 症 状 No.1 抑 う つ 症 状 Po No.2 15 HAM-D score No.1 HAM-D score No.1 脳機能回路改善 • Yamada T, Hashimoto R, Yahata N, Ichikawa N, Yoshihara Y, Okamoto Y, Kato N, Takahashi H, Kawato M: Resting-state functional connectivity-based biomarkers and functional MRI-based neurofeedback for psychiatric disorders: a challenge for developing theranostic biomarkers. Int J Neuropsychopharm, 20, 769-781. (2017) • Taylor JE, Yamada T, Kawashima T, Kobayashi Y, Yoshihara Y, Miyata J, Murai T, Kawato M & Motegi T: Depressive symptoms reduce when dorsolateral prefrontal cortex-precuneus connectivity normalizes after functional connectivity neurofeedback, Scientific Reports, 12, e2581, (2022) 28

29.

結合ニューロフィードバックでSSD患者の認知制御改善 対照群 • SSD患者10名(京都大・医科歯 科大) • 作業記憶の訓練 結合neurofeedback(FCNef)群 • LFPNの結合増強を企図(作業記 憶脳回路マーカ: Sci Rep 2015, eLife 2018 及び認知制御) • SSD患者11名(ATR・京都大) • FCNef前後でLFPNの結合が増強 0.4 0.35 0.3 0.25 0.2 0.15 0.1 0.05 0 pre p = 0.047* post 結合増強したLFPNエッジ 結合が増強した被験者ほど ワーキングメモリ成績が改善 逆唱で群×時間に交互作用あ り(FCNef群で逆唱改善) 変化量 (day5-day1) 患者11名の平均 結合値の変化 FCNef前後の安静時撮像における 0.45 LFPNの結合値変化 0.14 0.12 0.1 0.08 0.06 0.04 0.02 0 0.03 * 0.02 0.01 0 1 -0.01 -0.02 -0.03 0 30 60 90 120 試⾏数(30trial/day) 150 29

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先端的ニューロフィードバック(DecNeF+FCNeF) によって改善される症状、改善されない症状 1. うつ病機能結合NFにより、BDI、HAMDさらにbrooding ruminationが改善、しか し不安は改善しない。つまり症状特異的な改善が見られた。 2. 統合失調症機能結合NFにより、認知臨床指標改善、逆向き復唱タスク改善 3. 発達障害機能結合NFにより、認知機能検査(持続的注意)改善 4. PTSD-DecNefにより、全ての症状改善(千葉俊周他)。患者の苦痛を伴わず、 暴露療法の代替として期待される。 5. 特定の恐怖症-DecNefにより、扁桃体活動は低下するが、主観的恐怖は改善 せず。 6. 慢性期統合失調症患者の認知機能、薬物治療抵抗性のうつ病患者、発達障 害当事者など、薬物治療や認知リハなども有効でない、いまだ満たされていな い医療ニーズに対応できる事が示された。 30

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うつ病診断の現状と課題 精神科医であってさえも、うつ病の診断 は⼀致しない うつの患者の90%以上は、初診では、精神科 や⼼療内科以外の⼀般医(内科など)を受診 し、診断精度は感度50% 診断一致度 1. 認知症 0.78 とても良い 2. PTSD 0.67 とても良い ・ 5. 双極 I 型障害 9. 統合失調症 0.56 良い ・ 良い 0.46 良い ・ 12. うつ病 0.28 疑問 13. 反社会性 PD 0.21 疑問 14. 全般性不安障害 0.20 疑問 DSM-5 Field Trials in the United States and Canada, Part II: Test-Retest Reliability of Selected Categorical Diagnoses (Regier et al., Am J Psychiatry, 2013) 31

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Reinforcing this impression of the brain’s ‘isolation’ is the fact that the number of synapses in the lateral geniculate nucleus of the thalamus and in layer IV of primary visual cortex devoted to incoming visual information is less averaging of the EEG has been used to significantly attenuate if not eliminate this seemingly random, ongoing activity leaving only predictably occurring, task-induced changes or event-related potentials (ERPs) as they are 安静にしているときの脳活動 すべての脳活動の基盤で、個人認証、流動性知性、記憶 力、注意力、年齢、課題時脳活動なども推定可能 課題実行の 活動 (2〜3秒おきに1ボリューム撮像) 安静時のエネルギー代謝 + 5% = 課題時の代謝 安静時の 活動 安静状態の脳活動を機能的磁気共鳴画像( MRI)装置で連続撮影(約10分) Raichle M, Trends in Cogn Sci. 2010; 14: 180-90 32

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fMRI安静時脳機能結合・脳回路マーカーによる診断支援 MRI装置で撮像(〜10分) さまざまな脳の領域の活動の 時間変化の相関を求めます ⼈⼯知能技術で、脳活動の 相関のパターンを分析 2つの領域同志の相関を, リーグ戦の対戦表のように並べ る 分析 診断を補助する情報 脳の活動の時間変化を計測 正の相関:互いに密に繋がっている 負の相関:互いに抑制関係 患者さんのタイプの 判断を補助する情報 33

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fMRI安静時脳機能結合が精神疾患バイオマーカの 素材として有望な理由 • • • • • • • • • • • 解剖結合とほぼ一致 Honey CJ (2009) PNAS, 2035 動物で共通 Vincent JL (2007) Nature, 83 他のモダリティー結合と一致 Keller CJ (2011) PNAS, 10308 各種治療法がfMRI安静時機能的結合を健常化 年齢を予測出来る Dosenbach NU (2010) Science, 1358 流動性知性を予測 Smith SM (2015)Nature Neurosci 1565 個人認証できる Finn ES (2015)Nature Neurosci 1664 作業記憶力を予測 Yamashita M (2015)Scientific Reports 7655 注意の持続を予測 Rosenberg MD (2016)Nature Neurosci 165 タスク時の脳活動を予測 Tavor I (2016)Science 216 自閉症、統合失調症、アルツハイマー、うつのバイオマーカーが作 れる(ただし単一施設内データにとどまり、多施設への検証がなさ れていない) Brain (2011) 3742, Biomed Eng (2013) 10, Radiology (2011) 213, Brain (2012) 1498 34

35.

多施設・複数疾患の脳画像ビッグデー タを一般・非制限公開 • 脳プロ・革新脳統一プロトコルで撮像した多施設(14施設)で複数種類(5種類)の精 神疾患患者および健常者の脳画像ビッグデータ(1627例)を公開 • 旅行被験者(9名12施設143撮像)データと合わせてデータベースを構築 • データベース・コンソーシアムのwebサイトでデータを一般・非制限公開 • Springer/Nature PGのデータベース専門雑誌であるScientific Dataに掲載 施設 1 旅行 被験者 多施設・複数疾患 脳 MRI データベース 疾患 A 施設 2 疾患 B 健常者 旅行被験者 施設3 匿名化 品質チェック キュレーション 世界に向けて公開 AI 2021年8月31日NHKニュース 「おはよう日本」にて紹介 諸事情により、 この画像は非公開 とします 諸事情により、 この画像は非公開 とします Tanaka SC, Yamashita A, Yahata N, Itahashi T, Lisi G, Yamada T, Ichikawa N, Takamura M, Yoshihara Y, Kunimatsu A, Okada N, Hashimoto R, Okada G, Sakai Y, Morimoto J, Narumoto J, Shimada Y, Mano H, Yoshida W, Seymour B, Shimizu T, Hosomi K, Saitoh Y, Kasai K, Kato N, Takahashi H, Okamoto Y, Yamashita O, Kawato M, Imamizu H : A multi-site, multi-disorder resting-state magnetic resonance image database, Scientific Data, 8(227), https://doi.org/10.1038/s41597-02101004-8 (2021) 35

36.

自閉スペクトラム症の診断支援マーカ 外部独立コホートに汎化する:日本3施設85%、米国数施設75% 定型発達 判別結果 数 40 ASD 日本 ASD 定型発達 30 人 20 10 0 ‒30 ‒20 ‒10 0 10 20 30 結合強度の重み付け和 (ASD度)=易罹病性 Yahata N, Morimoto J, Hashimoto R, Lisi G, Shibata K, Kawakubo Y, Kuwabara H, Kuroda M, Yamada T, Megumi F, Imamizu H, Nanez JE, Takahashi H, Okamoto Y, Kasai K, Kato N, Sasaki Y, Watanabe T, Kawato M : A small number of abnormal brain connections predicts adult autism spectrum disorder, Nature Communications, 7:11254, (2016) 36

37.

ハーモナイゼーション法の開発 • 異なった施設で取得した脳画像データを調和させ、均質なデータとする方法(=ハーモ ナイゼーション法)を開発し、多施設から集めた fMRI データを1つのデータベースとし て統合することに成功(Yamashita et al., PLoS Biology, 2019) • これにより、汎化性を持つ脳回路マーカーの開発が可能となった Yamashita A, Yahata N, Itahashi T, Lisi G, Yamada T, Ichikawa N, Takamura M, Yoshihara Y, Kunimatsu A, Okada N, Yamagata H, Matsuo K, Hashimoto R, Okada G, Sakai Y, Morimoto J, Narumoto J, Shimada Y, Kasai K, Kato N, Takahashi H, Okamoto Y, Tanaka SC, Kawato M, Yamashita O, Imamizu H: Harmonization of resting-state functional MRI data across multiple imaging sites via the separation of site differences into sampling bias and measurement bias, PLoS Biology, 17(4): e3000042 (2019) 37

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ハーモナイゼーションと複数施設データに基づく第二世代 うつ病脳回路マーカは、国内国外の数施設に完全に汎化する • • • • • • • 精度70%は低いのでは?? MRIはアクセスが悪い 精神科医が5分診断すれば済むのでは?? 医療費削減の世の中で新たな出費 治療ならまだしも診断では良いビジネスにならない 脳波でできないのか? 安静時脳機能結合よりもっとスゴいモデルがある • 医師は症状から、バイオマーカは脳回路からで、違 う情報を提供 日本には数千台、スマートスキャン 精神科医の診断一致率は0.28、9割が受診する一 般医はもっと低い 双極性障害と大うつ病は専門医でも最初のうつエピ ソードでは見分けられない。前者に抗うつ剤は禁忌 無駄な、有害な薬剤投与を避け、回復を早め、総医 療費削減 個別医療、最適治療法の選択 脳波は分解能が悪すぎて無理 モデルの次元とサンプル数の釣り合い • • • • • • • Yamashita A, Sakai Y, Yamada T, Yahata N, Kunimatsu A, Okada N, Itahashi T, Hashimoto R, Mizuta H, Ichikawa N, Takamura M, Okada G, Yamagata H, Harada K, Matsuo K, Tanaka SC, Kawato M, Kasai K, Kato N, Takahashi H, Okamoto Y, Yamashita O & Imamizu H: Generalizable brain network markers of major depressive disorder across multiple imaging sites, PLoS Biology, 18(12): e3000966, doi:https://doi.org/10.1371/journal.pbio.3000966 (2020) 38

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二世代にわたる汎化する脳回路バイオマーカ 発達障害(ASD) うつ病 第 一 世 代 メランコリア、1独立COH精度69% • SSRI治療効果は機能結合による • • DLPFC-precuneusを結合NF • • • • • • 5独立COH精度70% 型限定なしで、層別化可能 SSRI治療反応性予測 (Yamashita et al., PLoS Biol 2020) ABIDE/COH精度70%(AUC0.77) • 日本から米国ABIDEへ汎化 側坐核−扁桃体を結合NF • 精度61〜70% 2つの海外独立 COH(COBRE, TOPFIT)へ汎化 SSD-ASDスペクトル構造判明 (Yahata et al, Nat Comm 2016) (Ichikawa et al., Sci Rep 2020) 第 二 世 代 統合失調症(SSD) • • 第一世代を上回る精度72%( AUC0.82)を達成 異なる世代、独立COH ABIDE, HARPへ汎化 (Itahashi et al., Mol Psych, under review) (Yoshihara et al, Schizophr Bull 2020) • 海外COBREを含む6独立 COHに対して精度79% (Kawashima et al., in preparation) 第二世代バイオマーカ: SRPB統一プロトコル、 ハーモナイゼーションあり 発見・検証あわせて千人程度、3〜4発見コホート、2〜6独立検証コホート 39

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100個の LASSO識別器の アンサンブル 1. 患者と健常者の数を揃 えるためにサブサンプ リング10回 2. 10重の交差検定 3. 正則化ハイパーパラメ ータ推定のための内側 ループ 4. 10x10で100個の識別 器のアンサンブル 40

41.

第二世代マーカ成功理由と第三世代への期待 1. LASSOは、0.075/0.02=4倍程度大きなFCを選ぶ 2. しかし、intra-participant inter-trial バラツキは、0.14/0.14=1で大き くなっていない。バラツキを押さえ込むFCの選択が出来ている 3. LASSOは、単独で、25個のFCの空間平均により (0.9/0.075)/(0.5/0.14) = 3.36 <~ 5= 25倍程、バラツキの低減を達成 4. 分類器の100個のアンサンブルでさらに2割程度バラツキを低減 5. プロトコルの効果は小さいのでSRPBS+BMBの第三世代に期待大!! ATR・理研AIP 山下宙人室長ら のSRPBS+BMB の旅行被験者デ ータ解析の論文 投稿寸前、国際 脳3の①と3の② の共同研究 Unraveling the Mechanisms of Effective Psychiatric Biomarkers: Multicenter Resting-State fMRI Connectivity Variation Study: Okito Yamashita1,2, Ayumu Yamashita2,3, Yuji Takahara2,4, Yasumasa Okamoto5, Go Okada5, Masahiro Takamura5,6, Motoaki Nakamura7, Takashi Itahashi7, Takashi Hanakawa8,9, Tomohisa Okada10, Hiroki Togo8,11, Haruto Takagishi12, Koichi Hosomi13, Kiyoto Kasai14,15,16, Naohiro Okada14,15, Osamu Abe17, Hiroshi Imamizu2,18, Takuya Hayashi19,20, Shinsuke Koike15,16,21, Saori C.Tanaka2,22 and Mitsuo Kawato1,2, Brain/MINDS Beyond Human Brain MRI Group 41

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うつ病バイオマーカー開発 【広島大学】 • 第二世代うつ病バイオマーカーの再現性を新規データで確認 85 広島大学 脳領域間の信号値の fMRIの撮像 常者(39名)× 2 80 ATR 75 脳回路マーカーを適用 70 時間変化の相関を計算 65 重み1×結合1 ROIs うつ病確率 Probability of MDD ROIs うつ病確率値 … ⾚⇔⻘ 正の相関 抑うつ症状評価 負の相関 BDI-Ⅱ 45 40 35 30 25 重み付け和 ・重み付け和 = 重み1×結合1 + ... + 重みn×結合n ・うつ病確率値 = 1 / (1+e-重み付け和) r = 0.26, P =0.024 20 15 10 5 12 10 40 8 30 6 20 4 10 2 0 脳回路マーカー (Yamashita et al., 2020)で計算されたうつ病確率 精度= 69.7% 感度= 72.1% 特異度 = 66.7% 0 0 グラフ タイトル 化面接でうつ病の診断 を満たすことを確認 信号値の時間変化 50 MDD 病患者(47名) 55 HCs 化面接で精神疾患 外 60 重みn×結合n ROI-1 ROI-2 85-90 80-85 75-80 70-75 65-70 60-65 55-60 50-55 45-50 40-45 35-40 30-35 25-30 20-25 15-20 10-15 5-10 0-5 診断や症状に関する情報なしで 番号のみを付したfMRIデータ 50 BDI Ⅱスコア) 抑うつ症状(BDIHCs MDD all 線形 (all) (Okada G et al., J Affect Disord. 2023 ) 42 42

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うつ病診断と治療の現状と課題 「うつ病」と診断される患者にも、様々なタイプがあり、 投薬が効果的な タイプ、逆に投薬では治療できないタイプなどがある 患者ごとに適した治療法を選ぶべき 現状:同一の診断がされる患者グループ 本来は ... 認知行動療法 抗うつ薬α 患者 1 患者 2 患者 3 患者1 患者 2 抗うつ薬β うつ病の薬αを処方します 問診による 診断基準 患者 3 うつ病です 医師 43

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うつ病治療の現在と未来 未来 個別化最適医療 現在 全ての患者に一様な治療 Drug A Drug A Drug B CBT 試⾏錯誤で 初回は20% のみ寛解 80%の寛解 に4年かかる Drug B CBT rTMS 初回にfMRI検査 層別化マーカにより サブタイプ毎に最適 治療選択 初回で49%寛解 rTMS 44

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層別化の戦略と臨床試験 Diagnosed MDD Cluster 1 Cluster 2 Stratification marker Optimized treatments Subtyped MDD Cluster 3 層別化による治療反 応性予測 サブタイプ毎にSSRI に対する反応が違う Drug FCNef CBT Cluster 4 • • • 教師あり学習と教師無し学習 の階層アルゴリズム まずLASSO 次にmultiple co-clustering 層別化マーカによる個別治療選択が従 来治療に⽐較して優れていることを照 明する戦略デザイン縦断研究 45

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うつ病層別化脳回路マーカーの可能性の1例(治療最適化) • 抗うつ薬による薬物療法への治療反応性が異なるうつ病患者サブタイプを同定 抗うつ薬(SSRI)を投与した際の 6週間後のうつ病改善率(%) 層別化に重要な脳回路 (Kashiwagi et al., ECNP2020) 47

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毎日新聞2022年6月2日 うつマーカをAI医療機器プログラムとして承認申請 2020年度 2022年度 2023年度 諸事情により、この画像 は非公開とします Nature, 2023 諸事情により、この画像は非公開とします 48

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研究開発と社会還元のビジョン 精神疾患と発達障害について、客観的な診断指標の提供 → 早期発見・早期の最適治療方針決定、 さらに創薬支援と革新治療を可能に! fMRIによる脳イメージング ニューロフィード バック法 人工知能技術 fMRI 画像での 新規な診断技術 診断に基づく 個別治療技術 診断 (resting-state fMRI) 治療 (fMRI neurofeedback) 創薬⽀援技術 49

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精神医療の未来 現状 5年後 10年後 計測値によらない診断 限られた治療法 客観的な診断と 診断に沿ったうつ治療 複数の精神疾患 に 薬B 薬A 認知行動療法など 患者 2 患者1 患者 2 タイプBの患者さんは、薬Cが有効 うつ病の薬A,Bを処方します DSM-5基準 医師 DSM-5基準 薬D 薬E 患者1 患者 3 患者 2 タイプAの患者:薬D タイプBの患者:結合NF… うつ病タイプBです うつ病タイプAです うつ病です ニューロフィードバック 薬C 患者1 客観的な診断と治療 精神疾患タイプBです 精神疾患タイプAです 脳回路マーカ 医師 DSM-5基準 脳回路マーカ 医師 50

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脳科学とAIは、精神・神経疾患の 診断や治療にどのように貢献できるか 1. 第2世代のバイオマーカ(SRPBSデータ)は有用なので(うつマーカは医療機器プログラム として承認予定)、第3世代マーカ(HARPデータ)の開発を進めるべき。 2. うつ層別化マーカは、サブタイプ毎の治療反応性を予測し、個別化最適医療を実現でき る。ガン医療における遺伝子データの役割を果たせるか!? 3. 疾患カテゴリカルにNFを用意するのではなく、マーカで選ばれた機能結合のうち特定の 症状に対応するステートマーカを対象にNFを行うのが有望である。疾患スペクトラムに対 応した新しいNF。統合失調症マーカは、覚醒剤精神疾患、そして多分認知症にも汎化。 4. 疾患横断的なステートマーカーとカテゴリカルなtraitマーカを組み合わせて、今現在、必 要な治療(state)や、病型(trait)として長い目で見た時のNF治療と層別化などの個別化医 療に貢献する。 5. 認知症を、記憶能力予測モデルに基づき、fMRIから脳波へ変換した脳波NFで治療できる 可能性:追求する予定(経済安全保障重要技術育成プログラム)。 51