衝突(コンフリクト)のマネジメント

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November 28, 25

スライド概要

マネジメントする人もされる人も知っておくといいことありそうな衝突の話

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各ページのテキスト
1.

衝突(コンフリクト) のマネジメント マネジメントする人もされる人も 知っておくといいことありそうな衝突の話 Toshiyuki Ohtomo(@toshiotm) Cafigla. LLC

2.

こんなことはありませんか? チームの雰囲気が悪いんです メンバーからある人とある人の仲が悪くて仕事がやりづらいという相談を受ける マネージャーをやっていて、こういったことはないですか?

3.

一昔前なら … みんな不満が溜まっているんだろう、とりあえず一緒に飲み行こう! ガス抜きも必要だ! とか とりあえず雑談入れて話聞いてみようか とか

4.

一昔前なら … こういった対応だけになっていませんか?

5.

人はなぜ衝突するんだろうか? そもそも、衝突する原因はなんだろうか?

6.

人はなぜ衝突するんだろうか? どうしてこれで完成だと思ったんだろうか? →価値観の違い

7.

人はなぜ衝突するんだろうか? あんなことを言う彼には任せられない →コミュニケーションのすれ違い

8.

人はなぜ衝突するんだろうか? これもやってくれると思っていたのに… →役割や期待の不一致 などなど

9.

衝突(コンフリクト)と は?

10.

衝突(コンフリクト)とは? 衝突には種類がある ● ● ● タスクコンフリクト(Task Conflict) プロセスコンフリクト(Process Conflict) 関係性コンフリクト(Relationship Conflict) 参考:A multimethod examination of the benefits and detriments of intragroup conflict

11.

タスク コンフリクトとは?

12.

タスクコンフリクトとは 遂行中のタスクに関するグループメンバー間の意見の不一致 グループ内のアイデアの対立や、タスクの内容・課題に関する意見の相違

13.

タスクコンフリクトとは ここでいうタスクには2種類ある ● ● 定型的・反復的なタスク(ルーティンワーク) 非定型的なタスク(複雑な仕事)

14.

タスクコンフリクトとは 定型的・反復的なタスクの場合 定型的・反復的なタスクでコンフリクトが起こると チームや組織にとって有害となる

15.

タスクコンフリクトとは 非定型的なタスクの場合 非定型的で創造性が要求されるタスクの場合は、 有益となることもあるが、それには高度に自主性が高い必要がある ※ここでいう自主性とは 「自由にできる」ではなく、他に依存せずに自ら意思決定・実行・責任を担い判断できる こと

16.

プロセス コンフリクトとは?

17.

プロセスコンフリクトとは 仕事の進め方・役割分担を巡る対立 チームの構成や誰が何をすべきかについての意見の相違、リソースに関する議論、タ スクを効率的にスケジュールする方法についての衝突

18.

関係性 コンフリクトとは?

19.

関係性コンフリクトとは 人間関係に起因する個人的な対立や感情的衝突 メンバー間の不仲、不満、反感、緊張感など

20.

関係性コンフリクトとは 関係性コンフリクトは、タスクの種類(定型、非定型)に関わらず有害 Jehn, Karen A Administrative Science Quarterly; Jun 1995 “A multimethod examination of the benefits and detriments of intragroup conflict”

21.

関係性コンフリクトとは チームのコンフリクトは本質的に二人称 チームとは本質的には関係性の集合体であり、特定のメンバーの集合体というよりも、 メンバー間の二者関係や相互作用の集合体こそがチームを成立させる(Humphrey & Aime, 2014) チーム内の対立は実は二人の間での関係性コンフリクト ということは、まずは 1対1の関係修復にフォーカスしたうえで、タスクの進め方など の議論を行うことで成果に繋げられそう

22.

関係性コンフリクトとは 信頼水準が低いチームではタスク上の議論が 個人攻撃と誤認されやすい 信頼水準が低いチームではタスク上の議論が個人攻撃と誤認されやすく(誤った原因 帰属)関係性コンフリクトを招きがち 信頼関係の強いチームでは活発なタスクコンフリクトが生じても個人への敵意に発展 せずに済む Task Conflict and Relationship Conflict in Top Management Teams: The Pivotal Role of Intragroup Trust

23.

関係性コンフリクトとは 私たちは意味づけをする生き物 ”人はそれぞれの経験を作り出すことを やめないし、お互いに対する意味付けを やめることもない。問題は私たちがこうし たプロセスと向き合い、可視化しようとし ない点にある” 出典:クリア・リーダーシップ

24.

関係性コンフリクトとは 根本的な帰属の誤り 残念だけど、誰にでもある思考の傾向 私たちはある人の欠点を、その人が直面 している状況ではなく能力や姿勢と関連 づけて解釈するようになる。 出典:チームが機能するとはどういうことか

25.

コンフリクトの アプローチ

26.

コンフリクトのアプローチ コンフリクトが解決したとはどういった状態を指す のか?

27.

コンフリクトのアプローチ トーマス・キルマンモデル トーマス・キルマンモデル(二重関心モデ ル(Dual Concern Model))は、「自己の 関心(assertiveness)」と「他者への関心 (cooperativeness)」の2軸でコンフリクト 時に対応するスタイルを分類 普段自分が無意識にどの対応を行うこ とが多いかを知ることも重要 参考 :https://en.wikipedia.org/wiki/Conflict_resolution?utm_source=chatgpt.com

28.

コンフリクトのアプローチ トーマス・キルマンモデル スタイル 状況 理由 回避(Avoiding) ・対立の重要度が低いとき ・感情が高ぶりすぎて冷却期間が必要なとき ・他の優先課題に集中すべきとき 対立そのものを避け、関与を最小限にする 適応(Accommodating) ・相手との関係維持が最優先のとき 相手の意見を尊重し、自分を譲る ・自分の意見より相手の方が正しいと判断できるとき ・長期的信頼を重視するとき 競争(Competing) ・時間的制約が厳しいとき ・安全性・倫理など譲れない原則が関わるとき ・緊急対応(例:リスク管理・災害対応) 自分の立場・目標を強く主張し、相手を説得・押し切 る 妥協(Compromising) ・両者の立場が同等に重要なとき ・時間やリソースが限られているとき ・迅速な合意が必要なとき 互いが少しずつ譲り、中間点を探す 協働(Collaborating) ・信頼関係があり、十分に時間が取れるとき ・長期的な協働関係を築きたいとき ・根本的解決を図りたいとき 相互理解・創造的解決を目指し、双方の関心を満た す 参考:TKI® サンプルレポート(PDF): https://kilmanndiagnostics.com/wp-content/uploads/2018/03/TKI_Sample_Report.pdf ADR Toolbox 解説記事:The Dual Concern Model https://www.adrtoolbox.com/library/the-dual-concern-model/

29.

コンフリクトのアプローチ コンフリクトが解決したとはどういった状態を指す のか? 常に「妥協」ではなく、「状況」に応じてス タイルを選び衝突を適切に扱いたい 参考 :https://en.wikipedia.org/wiki/Conflict_resolution?utm_source=chatgpt.com

30.

コンフリクトのアプローチ ダニエル・キムの成功循環モデル コンフリクトを上手に扱って、関係の質を高く保ちたい 関係の質:相互理解、共感のある対話 思考の質:自己効力感、目的の明確さ 行動の質:自律的な行動、内発的な納得感 結果の質:成果につながり信頼が高まる 「成果」は「行動」から生まれるが、その行動は 「関係の質」や「思考の質」によって左右される

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そもそもコンフリクトは起こってみないと、何も手を 打つことができないのか? ”価値観は私たちが心に大切にしまっている信念であり、 他人に簡単に片付けられて しまうと、たとえ故意ではなかったとしても、私たちは強い感情を持って対応してしまう” 出典:チームが機能するとはどういうことか 信頼関係が構築できていないうちから、互いの価値観に関わる様な危険な領域に、 軽い冗談を言うように、いきなり踏み込んでしまうのは大変危なそう

32.

コンフリクトのアプローチ リハーサルの実施 ”コンフリクトが起きる前に事前にリハーサルを行うことで、コンフリクトの競争的対応 が67%削減し、協働的対応を 2倍に増加 ” 出典:Rehearsal: Simulating Conflict to Teach Conflict Resolution ※この実験では、対人コンフリクト(利害・権利・力の衝突)をLLMでリアルに模擬して練習できるシステ ムを使用して、事前にリハーサルを行ったグループとそうでないグループで実地対話テストで検証。

33.

コンフリクトのアプローチ リハーサルの実施 ということは、コンフリクトが起こる前に対立のリハーサルを実施して、いざ起こった ときの練習をやっておくことで、チーム内で事前にコンフリクトのリスクを軽減できそ う (AI相手に比較的容易に何度でも練習できる) 例えばプロンプトに ”下記の組織に所属してます。IRP(Interests-Rights-Power)、NVC(Non-violent communication)を使用 したコンフリクトのリハーサルを行うためのシナリオを検討してください? ・ソフトウェアの開発をしている組織 ・複数チームで開発している ・シニアとジュニアが混在しているチームもある” など ※NVCは後述

34.

コンフリクトのアプローチ コミュニケーション手法を学んでおく 危険な領域に入るための共通のプロトコル(約束事)を事前に学ぶ ”評価をまじえずに観察する” ”相手に共感すればするほど、わたしたちは安全だと感じる” 出典:NVC 人と人の関係にいのちを吹き込む方法 「根本的な帰属の誤り」や「我々は意味づけたい生き物」という避けがたい特性が誰 しもにある以上は、相手との深い会話に踏み込む(踏み込んだ)ときのお作法は心 得ておきたい

35.

コンフリクトのアプローチ 非暴力コミュニケーション( NVC) NVCは共感を土台としたコミュニケー ション手法 暴力的な言語(評価・非難・命令・断定・ 操作)を避け、互いのニーズに基づい て人間らしいつながりを取り戻すことを 目指します

36.

コンフリクトのアプローチ 非暴力コミュニケーション( NVC) 価値観にもとづいた判断」と「道徳にもとづいた判断」 ”くれぐれも「価値観にもとづいた判断」と「道徳にもとづいた判断」を混同しないよう に。わたしたちはみな、大切にしている価値観を基準にしてものごとを判断する〜だが 相手がそれに応じず、こちらの価値観に反するふるまいに出ると、とたんに「道徳にも とづいた判断」を下す。” 出典:NVC 人と人の関係にいのちを吹き込む方法 ついつい自分のことは独自の価値観で判断して、相手へは道徳にもとづいた判断をし てしまいがち

37.

コンフリクトのアプローチ 非暴力コミュニケーション( NVC) NVCの4つの要素 観察(Observation)「私(あなた)が〜の時」 感情(Feelings)「〜と感じた」 ニーズ(Needs)「〜が大切だから」 リクエスト(Request)「〜してくれる(どうかな)?」

38.

コンフリクトのアプローチ 非暴力コミュニケーション( NVC) 例) 1. 観察(Observation) → 評価や判断を交えず、事実だけを記述する ❌「あなたはいつも人の話を聞かない」 ✅ 「会議中に話していたときに遮られました」 2. 感情(Feeling) → 自分の感情を素直に伝える(相手を責めず) ✅「その時、私はがっかりして悲しくなりました」 3. ニーズ(Needs) → その感情の背後にある「満たされなかったニーズ」を伝える ✅「私は、尊重されたいという気持ちがありました」 4. リクエスト(Request) → 相手に具体的・肯定的な行動をリクエストする ✅「次回は最後まで話を聞いてもらえたら嬉しいです」

39.

コンフリクトのアプローチ 非暴力コミュニケーション( NVC) 自分の考えを相手に伝えるためには、日頃から自分の心の声を聴くことが大切 自分でも言語化できない感情の解釈を、相手に求めたり、察してもらおうとするのは暴力 自分の感情を日頃からないがしろにせず、まずは自分の心の声を聴く習慣をつけましょう

40.

コンフリクトのアプローチ 第3者を交えてコンフリクトを解消する 二人の関係が改善すればチームの関係が改善するので遠慮なく支援を求める メディエーション(調停)や修復的対話(RJ対話)を参考に、コンフリクト解消に向けたシ ナリオを描き、一歩踏み出してみる

41.

コンフリクトのアプローチ 修復的対話 (Restorative Justice Dialogue) 修復的対話とは、〜近代社会以前に、 どの社会でも行われていた人としての 対話を再評価し、現代に再生させたも の

42.

コンフリクトのアプローチ 修復的対話の事例 事例) イギリス国内の7つの組織が職場に修復 的アプローチを導入した事例を分析し、 その成果をまとめた資料 アジャイルな組織への変容を行う過程 で、修復的対話を含むアプローチが組織 文化を変革する重要なテーマとなる https://www.actionaces.org/wp-content/uploads/2021/0 6/The-Restorative-Lab-Restorative-Practice-EvidenceReport-for-Gloucestershire-County-Council.pdf

43.

コンフリクトのアプローチ メディエーション(調停) 手法はは色々とあるが、例えば … 中立者(媒介者)が間に入り、まずは当事者個別面談で「主張・感情・事実・状況」を聴 く 両者の合意のもと、それぞれから聴き取った内容を共有し橋渡しを行う 改めて合意の場を設定する

44.

例外

45.

例外:サイコパスとは 一方で共感を基盤としたコミュニケーションにも例外が … ”良心や共感性の欠如を特徴とする人 格上の特性 。人当たりは良いが傲慢で 尊大、口が上手くて大ボラ吹き、強い魅 力(カリスマ)はあるが人情がない” どれだけ用意していても、サイコパスのタ イプが関係性している場合は、早急に対 処しないとチームが崩壊することも

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まとめ

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まとめ コンフリクトが起こる前に、コンフリクトについての事前知識をつけたり、リハーサルを実 施して、実際にコンフリクトが起こることを未然に防ぎたい 仮に、衝突が起こってもチーム内で扱える文化を形成して、すべての衝突にマネージャ が介入しなくてもよくなると最高

48.

まとめ 紹介したものすべてに専門性があり早晩専門家になることはできないけれど、少しの 知識と実践で周りの環境が快適になれば、それだけでも十分 自分が身をおいている環境が少しでも良くなれば、自分も周りも幸せに近づける