国内外のガイドラインから見る多様な大腸癌化学療法(湖南がん診療ネットワーク講演)20170518

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May 18, 17

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滋賀県立総合病院 化学療法センター 腫瘍内科医

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各ページのテキスト
1.

湖南ネット 2017.5.18 国内外のガイドラインから見る 多様な大腸癌な化学療法 滋賀県立成人病センター 後藤知之

2.

大腸癌の主要な診療ガイドライン 大腸癌研究会 ESMOコンセンサス NCCNガイドライン ガイドライン ガイドライン 2017.3.13 2016.7.5 2016.11.22

3.

ステージによって治療が目指すところが異なる 切除手術後の補助療法 切除後の治癒率の向上を目指して行う 大腸癌であれば6ヶ月の術後化学療法が一般的 切除不能・再発がんに対する 延命や症状緩和のための治療 基本的に治癒を期待して行うものではない 得られるベネフィットと毒性とのバランスを保ち QOLを保つことが重要

4.

治療フローチャートの骨格は日欧米でほぼ同じ ▪ 5つの「キードラッグ」を、 定められた組み合わせで使用してゆくのが基本戦略 殺細胞性抗腫瘍薬 抗体薬(分子標的薬) フッ化ピリミジン 抗VEGF抗体 オキサリプラチン 抗EGFR抗体 イリノテカン

5.

抗腫瘍薬は頭文字をもって略語で呼ばれる 殺細胞性抗腫瘍薬 フッ化ピリミジン FOLFOX FOLFIRI オキサリプラチン イリノテカン フォリン酸

6.

転移・再発大腸癌化学療法の治療選択のながれ FOLFOX FOLFIRI FOLFIRI FOLFOX ▪ FOLFOXとFOLFIRIをベースに順番に使う ▪ 2種類の抗体薬をそれぞれ上乗せする

7.

NCCNガイドライン(米国)でもベースは同じ ▪ 米国ガイドラインでもFOLFOXかFOLFIRIがベース ▪ 抗体薬(分子標的薬)を上乗せする考え方は同じ NCCN guidelines - Colon Cancer ver 2017.2

8.

ESMOコンセンサスガイドラインも似た考え ▪ 欧州ガイドラインでも、多少の差異はあるが 基本的な治療薬の選択の考え方は同じ Ann Oncol. 2016. p1386-1422

9.

治療戦略は日欧米ガイドラインでもほぼ同じ 転移再発の大腸癌には ◼ ◼ FOLFOX(フッ化ピリミジン+オキサリプラチン) FOLFIRI(フッ化ピリミジン+イリノテカン) のいずれかをベースにして、 ◼ ◼ 抗VEGF抗体(ベバシズマブ等) 抗EGFR抗体(セツキシマブ、パニツムマブ等) を上乗せしたものを順番に使うのが基本的な治療となる (レベル1A)

10.

EBMと実臨床の乖離の問題 ▪ ガイドラインの土台となるエビデンスが作られるのは 「がんセンターなどの専門的な高次医療機関」 「豊富な人材・充実した設備・綿密なモニタリング」 「合併症が少なく、理解もよく、全身状態のよい患者」 ▪ 実際のがん診療が行われるのは 「がん以外の疾患も集まる一般的市中医療機関」 「限られたマンパワー、患者があふれる外来」 「合併症・高齢・社会背景など複雑な因子を持つ患者」

11.

必ずしも 「最新・最強の治療」が 最善の治療ではない

12.

必ずしも「最強の治療」が最善ではない ▪ 最新・最強の多剤併用療法 がベストとは限らない ▪ 高齢や全身状態不良で「強い治療」が難しいケースも ガイドラインでは考慮されている ▪ 個々の症例に応じて 治療薬を選ぶことが重要

13.

「強力な治療の適応とならない患者」の項目 強力な治療の適応とならない患者に考慮すべきレジメン ▪ 5FU+LV ▪ カペシタビン(ゼローダ®) ▪ UFT+LV(ユーエフティ・ユーゼル®) ▪ S-1(ティーエスワン®) ◼ 上記の薬剤に抗VEGF抗体を上乗せしても良い ▪ 抗EGFR抗体 単独 大腸癌治療ガイドライン 医師用2016年版 p.33

14.

「腫瘍進行が緩徐な場合の選択肢」の項目 強力な治療が適応となる患者であっても 腫瘍進行が緩徐と判断される場合に選択肢となるレジメン ▪ 5FU+LV ▪ カペシタビン(ゼローダ®) ▪ UFT+LV(ユーエフティ・ユーゼル®) ▪ S-1(ティーエスワン®) ◼ 上記の薬剤に抗VEGF抗体を上乗せしても良い ▪ 抗EGFR抗体 単独 大腸癌治療ガイドライン 医師用2016年版 p.36

15.

第1サイクルからの dose の減量は?? ▪ 「強力な治療が難しそうだから 80% でスタート」 というのはガイドラインでは勧められていない ▪ 強力な治療が難しい場合は レジメン自体を変更する ▪ 「治療を継続する場合には、全身状態や有害事象を 考慮して適宜減量する」と記載されている。 ▪ ただしESMOコンセンサスガイドラインでは 少量より開始する方法もあり。 Unfit症例に対する2nd choiseとして “Reduced-dose CT doublet” 大腸癌治療ガイドライン 医師用2016年版 p.35 Ann Oncol 2016 p.1386-1422

16.

高齢者に抗がん剤は…の誤解 ▪ 高齢者に抗がん剤が効かない?と 印象を与える報道がなされた ▪ 元となった研究では高齢者の対象が 19人しか含まれておらず ▪ 現時点では一定の年齢で 有効・無効にコンセンサスはなし ▪ 大腸癌治療ガイドラインCQ13 「70歳以上でもPS・臓器機能などに 問題なければ治療を推奨(レベル1A)」 日本経済新聞 2017.4.27 大腸癌治療ガイドライン 医師用2016年版 CQ.13

17.

ガイドラインは 世間のイメージよりも 様々な状況を想定して作られている

18.

近いうちに増える新しい分子標的薬 ▪ VEGFR2抗体 ラムシルマブ(サイラムザ®) ◼ ◼ ◼ 二次治療のFOLFIRIに上乗せして使用される RAISE試験の日本人サブグループ解析 ベバシズマブ(B beyond PD)と役割が重複?? ▪ VEGF阻害剤 アフリベルセプト(ザルトラップ®) ◼ ◼ VEGF標的治療関連の有害事象がかなり増える ベバシズマブ(B beyond PD)と役割が重複??

19.

他の癌腫で使用されている薬剤が導入される例 ▪ 大腸癌の2-5%には HER2陽性大腸癌 が存在 トラスツズマブ(ハーセプチン®)がPhase IIで好成績 NCCN guidelines - Colon Cancer ver 2017.2

20.

他の癌腫で使用されている薬剤が導入される例 ▪ MMR/MSI大腸癌限定で 免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-1抗体) ニボルマブ(オプジーボ®) ペンブロリズマブ(キイトルーダ®) NCCN guidelines - Colon Cancer ver 2017.2

21.

大腸癌の局在によって治療効果が変わる? 右半結腸の場合はEGFR抗体の 効果が極めて乏しい ASCO-GI 2017 Daily News Nat Rev Cancer 2017, 79-92 J Clin Oncol 2017, online first 21

22.

右側結腸癌には抗EGFR抗体は推奨されない? ▪ 右側結腸大腸癌ではEGFR変異やBRAF変異など 抗EGFR抗体に抵抗性を示す大腸癌が多く効きにくい NCCN guidelines - Colon Cancer ver 2017.2

23.

このような 海外のガイドラインの動きは 今後の日本のガイドライン改訂にも 少しずつ取り込まれてゆく

24.

旅に出る場合には地図などから情報を集め、予定を立てて出かけられ ると思います。これからがん治療を受ける方、現在治療中の方も、 このガイドラインから色々な情報を集め、わかる範囲で結構ですので 自分なりに病気のことを学んでみることをお勧めします。 患者さんのための乳がん診療ガイドライン