VR ホラーゲーム 『Ghost Photographers』 のサウンド制作事例

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June 24, 25

スライド概要

#CRI_ADX勉強会 https://cri.connpass.com/event/353775/
VRホラーゲーム『Ghost Photographers』でのサウンド制作事例。
ADX2を採用し、立体音響・距離減衰・ランダム再生などの機能を活用して、没入感のある恐怖演出を実現。開発期間は約2か月(2024年9月〜10月)。

主な使用技術と演出例:
ランダム再生・シーケンス:敵のうめき声、蝋燭イベントなど

マルチチャンネル再生(5.1 / 7.1.4):環境音や上階からの叫び声

距離に応じた減衰・遮蔽処理:蝋燭からの鈴音など

リアルタイム残響効果:部屋ごとの響きの変化に対応

ADX2 採用理由:
Quest2対応

チームに既存ノウハウあり、開発を約2週間短縮

メモリ再生対応で容量管理が容易

改善要望:
UnityEditor上で完結する開発機能

キューシートなしの再生対応 など

#CRI_ADX勉強会
VR ホラーゲーム 『Ghost Photographers』 のサウンド制作事例

質疑応答・懇親会雑談抜粋

・遮蔽について
→リアルタイムにレイを最小限飛ばして壁があればローパスフィルターをじんわりかけるという扱い
フェードでかけるくらいでちょうどよい感じの移動速度のゲームならでは

・環境音は5chとかambisonicsかどうかなど
→本作ではステレオヘッドロック素材にした
(環境音に意識をもっていかれないような、印象低めの扱い)
 →ボイスチャットもあるので邪魔にならない程度
 →敵の足音による位置や蝋燭の位置などの方向性を強調したい意図も

・なぜADX2を使ったのか
音にこだわりのあるタイトルだった(ホラーは音が重要)
7.1、5.1素材が正しく再生される保証があった 
(UnityだとspatializeやミキサーDSPとの兼ね合いなど謎なバグに巻き込まれる可能性がある危険を回避)
SteamAudioとかも検討したけど、動作保証があやしい(quest2で動くのか)など検証に時間をかけたくなかったのもある

・Unity Audioと併用した
vivoxボイスチャットにはUnityのミキサースナップショットでの残響、CRIの音声にはCRIのDSPでのエフェクトと倍の負荷になっている。 (スペック低い端末では避けたい事象)
願わくば CRIの出力ルーティングがUnityのミキサーに入るとか柔軟さが欲しいところ

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ゲームジャム、サウンド、VR、VRChat、リアクティブな音やシステム、楽器、作編曲、音制作、SynthsizerV、ファミコンやFM音源、MML、レトロゲーム、音声合成、CRI ADX2、Nuendo、Unity、MIDI、Max8、MMD、TouchDesigner、JUCE、Python MyDearest所属:テクニカルオーディオデザイナー 代表作VRゲーム:アルトデウス‚ ディスクロニア‚ ブレイゼンブレイズ‚ クローバークライマー‚ 8番出口VR‚ Ghost Photographers‚ ChainedEscape‚ Mad Surgeon -Goblin Hospital-‚ Devils Roulette‚ Bad Bunny Bonanza‚ Little Thief‚ Guerrilla Gorilla˸ Megajaws Attacksǃ

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(ダウンロード不可)

関連スライド

各ページのテキスト
1.

VR ホラーゲーム 『Ghost Photographers』 のサウンド制作事例 ADX / ADX LE勉強会LT 2025-06-24 18:40 田中孝

2.

このセッションで得られるもの VRホラーゲーム【 GhostPhotographers】のサウンドに関わった時の話になります ・ CRI Atom Craft で実際に組んだデータの紹介 ・ 約 2 か月(2024/9/5 – 10/31)の開発メモ共有 ・ADX2 採用に至る経緯の共有 ・ADX2に望むもの

3.

本タイトルでのADX2利用ポイント ・Quest2でも動作する ・マルチチャンネル素材再生機能( 5.1 / 7.1.4 など) ・リアルタイムエフェクト変更(残響) - 部屋や場所によって響具合を変化 ・細かな距離減衰設定 ・100個程度の音数( SE・環境音・ BGM)すべてメモリ再生 ・ループ再生 ・ランダムトリガー再生(ラウンドロビン再生) - 足音・ドアタッチ音 ・シーケンス再生 ・SoundxR(7.1.4.4 立体音響)

4.

敵が追いかけてくるときの Ambient + 叫び声 使った機能 ランダムシーケンス ADX2 の利点 恐怖演出をバラつきのある音で実現 - うめき声のランダムタイミング再生 - 定常音の微妙なピッチの揺らぎ - 定常音の時間経過による音量減少 頻繁に鳴る音なので、ランダムを多様して機 械っぽい再生にならないように工夫した

5.

5.1 ch 素材ブロック再生 使った機能 マルチチャンネル/ブロック ADX2 の利点 ステージ全体を包む環境音を高密度で再生 - 5.1chBGMによる楽器(打楽器、弦、叫び 声)につつまれる配置 - ユーザー位置による曲の進行度の同期 (入り口、ドアを開けた先、ボスキャラ対峙、エ レベータに逃げ込む) - ボイスチャットとの兼ね合いで音量を下げて しまったのが課題

6.

蝋燭でお札を燃やす イベント音 使った機能 ランダム再生+シーケンス ADX2 の利点 同じ操作でも毎回違う音、没入感を維持 - 燃える音のバリエーション - 印象音(スティンガー的なもの)のバリエー ション 蝋燭を燃やすイベントは回数が多いため似て いるけど少し異なるといった音にして、異質な 感じを演出 ホラーとして、機械的でないが シンプルなゲームの記号音としての意味合い を持たせられたと思う

7.

1F の叫び声が 上階へ移動 使った機能 7.1.4 素材 ADX2 の利点 垂直方向も含めた立体的な音場 - 建物上階にいるボスの声として 上4chで風の音や声が遠くに聞こえるように演 出 効果は微妙だった 上方向変化をもっと強調できるとよ かった 移動感のある音は OBAを使うなどでき るとよかった

8.

蝋燭位置音の距離減衰 使った機能 個別に詳細な距離カーブ ADX2 の利点 蝋燭部分音それぞれで自然な音量変化 - 蝋燭までの距離によって音の雰囲気が異な る 超近接 小さめの鈴音 中距離 大きめの鈴音、音数多い 遠距離 小さめの鈴音、音数少ない さらに遮蔽によるローパスフィルターもかかる ため、音の位置の存在を強調した 蝋燭から鈴音がなる説明がなかったのが残 念 (初見で伝わりにくいというゲームデザイン上 の反省点)

9.

ADX利用に至った経緯 サウンド MTG(9/5)における議事録(一部抜粋) ● ● ● ● ● ● ● ● ● 想定しているプラグイン(SA)がQuest2で動くのかという確認が必要。 背景の壁の設定をする人、どういう演出をする人をたてて、背景の材質を決めないと進行できない。(逆に言うと決めてしまえばできる) 上記の担当者はコライダーなど適切なコンポーネント(ちゃりさんに用意いただいたもの)を演出側で行う。 Vivoxの残響の機能があるかどうか。(できなかったら単純にできないが、音声のレベルの閾値をとって別の環境音を鳴らすのに変えるとかできるかも)(ロ ビーで聴こえるプレイ中の声の反響も同様) ドアを開く音は難易度が高くコスパが悪そうなので、開く音ではなく閉じる音の方にバリエーションをつけるという方に変更。フィールドへの反響もあり。 各階の各プレイヤーの位置をどうしていくか、各階のデータの持ち方をどうするかを決めないと、他の階からの反響はやり方が決められない。(これは ゲームデザイン主導で決めるところがある) 音で使う容量を決めておきたい(ADXを使うとあまり気にしなくても済む) 要望の優先度を決める。 事後コストがかかるが ADXを使った方が楽。 ○ ちゃりさんの方でざっくり2週間くらいショートカットできるイメージ。 ○ 音を使う容量を気にしなくても済む。( SAは容量を気にする必要がある) ○ 既にノウハウがあり、更にノウハウもたまる。 ○ ADXを使わず SAを使う理由は事後コストのみになる。 ○ ADXを使うことになるとボイチャにはコストが発生するようになる。 残響とかのリアルタイム表現が必要で ○ ADXを使えるかどうかは確認。 そこに注視するならADXを使うという流れに ○ 役員会で確認 - 実績があったので採用できた

10.

ADX2 採用を決めたポイント ● ● ● Quest2でも動作する 基本的な再生でアドベンチャーゲームで培った ADXの技法が使える チームの既存ノウハウが活かせ、 開発を約 2 週間ショートカットできる見込みがあった

11.

VRゲームGhostPhotographersのサウンドメモ 2024/10/31 2024/9/5 途中参加ながら約 2 か月で主要実装を完了

12.

おまけ:SEを作っている様子 SEを Nuendoで作る時 キュー名をマーカーと かにして管理してい る

13.

未来のADX2 に望むもの ・UnityEditorのみでデータ生成できる機能( UnityAudioとの互換) ・Unity上でのキューの定義のみで再生できる機能(キューシートなし再生) ・制限のない拡張機能(ルーティング・エフェクト・ UnityAudioとの互換) wavファイル

14.

おわりに ゲームサウンドは奥が深く より多くの現場で、サウンドの知見のある人が増えて ほしい もっとサウンドについて気になる方は https://effectorhack.connpass.com/ 毎月開催の「サウンドミニハッカソン」参加してみても良いかもです。 @tatmos