2022研修資料Web編集版

4.2K Views

November 21, 22

スライド概要

GoogleEarthの土地家屋調査士実務利用の方法を導入に
GIS,ドローン利用についての概略を紹介し、諸外国地籍の情報から土地行政管理(Land Administration)を紹介するもの。

一部、ドローンについては免許制度化への過渡期にあって変化のありそうな部分、航空レーザー測量等リモートセンシングデータ利用についての部分は(他スライドがあるため)省略しています。

profile-image

土地家屋調査士 Land and House Investigator( Licensed Cadastral Surveyor of Japan)

シェア

埋め込む »CMSなどでJSが使えない場合

関連スライド

各ページのテキスト
1.

GoogleEarthの実務利用と QGIS、ドローンと 諸外国土地行政管理への誘い (講義資料Web編集版) 広島県土地家屋調査士会 山中 匠

2.

Agenda 01 02 03 04 05 はじめに Google Earth QGIS ドローン Conclusion を使いこなす 更に本格的な 簡単な使い方から 本格的な使い方ま で &Vision 重ね図の作成 おわりに 2022 やまなか事務所

3.

01 はじめに 今回の研修内容を お話させて頂くにあたって

4.

はじめに… PCやその周辺デジタル機器の処理能力や記憶容量の進化によって • スタジオにしかなかった高価な設備 • 高価なヴィンテージ機材 • 多大な人件費を必要とする音 • 熟練のミュージシャンの演奏 • 実在の有名ホールや教会などの音響特性 といったものが次々とPCアプリケーションの中に取り込まれてゆき、アマチュ アからプロまでこういった機材とアプリケーションを使いこなせないと“音楽制 作が出来ます”とは名乗れないと言っても過言ではないかもしれません。 この写真 (作成者: 不明な作成者) は CC BY-SA-NC に基づいてライセンスが許諾されています。 今やそういった機能は携帯端末のアプリでも十分な機能を持っており 「DeskTop」(机上)どころか「HandHeld」(手持ち)になっています。 突然自分の趣味の話で恐縮なのですが・・・ DTM (Desk Top Music) ってご存知でしょうか? 1990年前後から素人の趣味レベルでもPCを使った音楽 作成が可能になってきました。今では、むしろプロフェッショナ ルでも殆どの工程がPC上に取り込まれています。 DTP(Desk Top Publishing)などもさらに身近で私達も恩恵を蒙っ ているわけですが(複合機等の高性能化によって印刷物を今外注して いる事務所は今ほとんどないかかなり量は減っているのではないでしょう か?)一方で、DTS(Desk Top Surveying)の時代が来ないと言 えるでしょうか? 2022 やまなか事務所

5.

さて、こちらのQRコード (もしくは下記のアドレス)を お手持ちのスマホ等で 読み込んでみてください。 https://o-yamanaka.com/potree/ Potree_yakinotouge/yakinotouge.html HandHeld現場・・・とでもいいましょうか・・・ 2022 やまなか事務所

6.

決してコスト=クオリティー という訳でもありません 実売10万しないドローン(Mavic Air)で 撮影してもきちんとした解析と処理を施せば このくらいのものが出来ます。 2022 やまなか事務所

7.

そしてこのような形が個人的には近い将来、『測量によって得られた地 理空間情報を“図面”に換わって効率的に伝達するもの』の一つの有力 なカタチとなるだろうと考えています。 ちなみにこの背景のデータモデルは RTK搭載ドローンによるもので ・センチメートル精度 ・現場作業25分(2フライト)で現況が完成 ・現場回数・滞在時間の大幅な削減が可能 働き方が変わります。

8.

カジュアルな測量の時代も 確実に近づいています。 この三次元計測モデル、 測量用機材(RTK搭載ドローン)とiPhoneの LiDAR(赤外線レーザー測距機能)のデータを 組み合わせたものです。 どこがどちらによるものか分かりますか? 2022 やまなか事務所

9.

最近SDGsというのを何かと 見かけるようになりました。 こういった社会的要求に 当て嵌めて自分たちの 業務を考えるならば・・・? 土地家屋調査士そのものが「持続可能」であるためにも、 私達は今回のようなドローンや点群利用のような先端技術 であれ、また今回の内容とは違いますが、法学的分野、 政策提言的分野であれ業界の我田引水・自己満足 ではなく「今、問題解決方法として何故それが必要で 外務省HP Japan SDGsAction Platformより引用 https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/about/index.html 私達はどのように取り組んでいるか」ということを対外的に 示しアピールして行かなければならない時代なのだと思います。 2022 やまなか事務所

10.

02 Google Earth を使いこなす 恐らく、最も身近なGISであるGoogle Earthを 土地家屋調査士業務で使いこなす。

11.

Google Earth(Pro)について • 2001年にKeyhole社のEarthViewerとして初版リリース (既に20年以上歴史がある) • 2004年にGoogleがKeyhole社買収、2005年ver.3.0か らGoogleEarthとしてリリース • 2017年、Ver.7.3 からProが無料になり標準バージョンとなる (←ここから劇的に便利に!) • 従前の無料版よりも • 高解像度(高解像度出力) • オーバーレイ(重ね)機能の充実 • 距離、面積等の測定が可能に • 以下のリンクからダウンロード、インストールが行えます。 • https://www.google.com/earth/download/ge p/agree.html • 作成したデータ(基準点等の座標データ等)をスマホ版 GoogleEarthで開くなどすると現場でも使えます。 2022 やまなか事務所

12.

取り敢えず、まず ココの これと、これを使って、 座標付のされていない公図や 地積測量図などを重ねてみましょう。 2022 やまなか事務所

13.

まず、右側のマル、定規ツールを使って。。。 開きたい公図や測量図との縮尺をあわせる為に基準となる線(パ ス)を引きます。 GoogleEathにはCadのように重ねる画像ファイルの縮尺に対する 設定がありませんので、図面を重ねるにあたって縮尺をあわせる基準 として線を引きます。 ①GoogleEarthで図面を重ねたい現場をズームしておきます。 ②「メニュー」→「ツール」→「定規」を開き、「ライン」のタブを開きます。 重ねたい図面の縮尺によって、「長さ」を「m」または「cm」に合わせて、 任意の場所に基準となる線を引きます。この線の長さは ○1/600の分間図の場合、図枠線の長さ(縦枠が約151mにな ります) ○三斜測量図の場合、分間図と同様、縮尺から計算した図枠の 長さや、図中に書かれている辺長のうち、一番長いものや分間図と 同様図枠の長さなどをから引く良いでしょう。 ③引いた線を保存します(適当に名前はつけてください) 2022 やまなか事務所

14.

次に「イメージオーバレイの追加」で重ねたい画像を選びます 簡単に言えば図面な どの「画像の読み込 み」です。 • イメージオーバレイのボタンを 押し、現れたウィンドウの「参 照」からCad展開用などにTiff 化した測量図、公図などを開 きます。 2022 やまなか事務所

15.

そのままOKを押さずに、移動回転、縮小・拡大して縮尺を合わせます ※このとき「Shift」キーを押しておけば縦 横比がおかしくなりません。 縮尺が合ったら、GoogleEarth の空中写真で現況とぴったり来 る位置を移動回転で探して重 ねると・・・ まるで現地に実寸台に引 き伸ばしたトレーシング ペーパーを重ねたような重 ね図が出来ます! 2022 やまなか事務所

16.

QGISを使ってみる さらに本格的な重ね図の作成など

17.

よく、 「GISってCADと何が違うの?」 と訊かれることがあります。 個人的な考えですが、 Microsoft Officeで例えるなら CAD=WORD GIS=EXCEL に近いです。 お互いもちろん、近いことも出来ますが • CADやWORD→ “主役”は一枚の図面・書類とし ての絵柄のきめ細かい書き込みや美しさ • GISやEXCEL→ “主役”は見た目の後ろにあるデー タであり、そのデータの可視化や解析 であると考えて使い分けています。 2022 やまなか事務所

18.

QGISの参考資料 中途半端な操作資料を作成するよりも以下のサイトの方がよくまとまっています。個人的なオススメ順に 「GIS実習オープン教材」 • https://gisoer.github.io/gitbook/book/ わかりやすく基本から纏まって おり、これさえ上から下まで読 んでマスター出来ればほとんど エキスパートです。 林野庁 十勝東部森林管理署 • https://www.rinya.maff.go.jp/h okkaido/introduction/gaiyou_sy o/tokatitobu/index.html 林業用のマニュアルです が調査士の利用方に近い です。 ※「QGIS参考マニュアル 基礎応用編」だけで十分 です。 国交省 GISホームページ • https://nlftp.mlit.go.jp/ksj/oth er/manual.html 「操作マニュアル」→「国土数 値情報 閲覧マニュアル (QGIS)」 「取り敢えずQGISって開いた ら画面真っ白でどうしたら良 いか・・・」という方へ 2022 やまなか事務所

19.

2016年からUAV運用 本来は昭和初~中期の空中写真から過去の地形や境界 位置を推定するための画像解析をしていましたがドローンの登 場によって、その土地の「今」についても記録し解析することが 可能になりました。 ドローンについて ドローンを利用しているのは楽がしたいから。 GISもドローンも「楽を刷るための苦労なら厭わない」 という姿勢で取り組んでいます。 (無論、成果品のクオリティもアップしますが) ドローン関係での講師は ・広島法務局管内(中国地方)合同測量講習 ・広島県土地家屋調査士会 ・岡山県土地家屋調査士会 岡山支部・倉敷支部 ・福岡県土地家屋調査士会 久留米支部 ・佐賀県土地家屋調査士会 など 2022 やまなか事務所

20.

中略・・・・

21.

ドローンを飛ばせたら・・・最初は・・・? 個人的には、 「手軽に・面白く」から始めないと続かないと思うので 段階的なドローン活用が良いのではないかと考えています。 Step2 Step1 単写真利用 (素図等) 評定なしオルソ 写真(後述)の 利用(素図等) Step3 評定・検証で精度 管理をした本格的 なドローン測量に よるオルソ等利用 (現況平面) ※必要に応じてGIS幾何補正 2022 やまなか事務所

22.

Step1 : 単写真で屋根写真 を撮影、ザックリとした重ね図 現場でパッと飛ばし、見えにくい屋根材の撮影や 建物が滅失していることが分かるような写真を撮影 QGISやPhotoshop系の画像編集ソフトを利用 できれば右図のような重ね図も作成できます。 2022 やまなか事務所

23.

Step2の前に・・・空中写真をより有効な資料として利用する場合は、 本当は1枚だけの単写真ではいけません。なぜなら… 単写真のみでは • 中心投影による周辺部の歪み • 高低差による縮尺の違い 等があり、これらを補正しなくては地理空間情報 資料としての根拠と価値に欠けてしまいます。 …そこで必要なのが空中写真の オルソ(正射投影)画像化です。 そこで利用されるのがSfM/MVSと呼ばれる技術 副産物?として三次元情報も得られます。 出典:国土地理院サイト 2022 やまなか事務所

24.

Step2 : 対空標識設置なしでオ ルソ画像を作成して資料として利用 複数枚の画像を撮影し、Metashape等の SfM/MVSソフトウェアでオルソ化を行います。 その後QGISでジオリファレンス(位置合わせ)を 行い重ね図を地目変更、建物表題登記等の素 図(高い位置精度を要件としない資料)に利用 2022 やまなか事務所

25.

Step3 : 対空標識の測量を 行い評定・検証を行う。 現場の多角測量の際、対空標識の設置(その代 わりとなる地物の選択)を行い三次元座標を取 得しておき、より高い精度でオルソ化を行います。 現況平面図に代えて筆界推定や図面の背景とし て利用、よりわかり易く説得力の高いものを目指す 2022 やまなか事務所

26.

オススメ参考リンク ページ名 アドレス GIS実習オープン教材 https://gis-oer.github.io/gitbook/book/ 地理情報科学教育用スライドGIScスライド http://curricula.csis.u-tokyo.ac.jp/slide/index.html 高精細地形情報取得のためのオープン教材 (東京大学・院、地形鮮明化プロジェクト) https://hdtopography.github.io/learning/book/ 山口大学 空中測量研究室の技術ノート (山口大学大学院創成科学研究科 神野有生) https://ameblo.jp/rs-algorithm-designer/ エクセルで作る地形解析図 http://husvsakai.cup.com/tikei/tikei.html 2022 やまなか事務所

27.

中略・・・・

28.

余談1:諸外国地籍 ・・・最後に時間が許せば少し・・・ 2022 やまなか事務所

29.

ニュージーランド:LINZ DATA SERVICE https://data.linz.govt.nz/ 2022 やまなか事務所

30.

LINZ Landonline(専門家ツール) 測量データのインポートから分割プランの登録まで一貫して行う • 測量資格者はこのシステムにログインして基準 点から境界点までの測量データの処理、分割 等の計画の作成~登録を行う 分割プランシートのレイアウト 測量計算をオーバーレイして確認 2022 やまなか事務所

31.

Singapore Land Authority ヴィジョン:有限の国土、無限の空間 法務省の下にある組 織であり国土資源の 開発と規制に焦点を 置く 2001年に地籍 事務所、シンガポール 不動産登記所、測量 局、国土システム支 援部を併合して組織 開発面では土地関 連情報の発展と市場 展開、国土情報デー タベースの維持管理を 規制面では不動産 登記管轄機関であり、 国土調査・測量シス テムの維持管理を行 行う う https://data.gov.sg/ 2022 やまなか事務所

32.

One map Singapore https://www.onemap.sg/main/v2/ 2022 やまなか事務所

33.

何故、日本の「地図」は「統合的」でないのか? そして土地行政の情報基盤は何故「統合的」でないといけないのか? 2022 やまなか事務所

34.

国土地理院と法務局の情報連携による可能性 このあたりの現状・乱立したまま の情報の統合・一元化 標準化し国土空間 データ基盤のコアと して構築・管理 GISレイヤ化された 法務局地籍図 地理院地図 + 自治体、他省庁の 規制情報等含む 各種情報 登記簿 (引用:FIG-Statement on The Cadastre, 1995) • 世界測地化され可視化される事による所在不明土地の大幅な減少 • 土地行政の合理化・情報透明化による災害時対応、復旧等に於けるお 意思決定の迅速化、資源・国土保全、持続可能な社会への寄与 • 国民の不動産資産管理、取引のさらなる安全、明確化 • 民間での用途に応じた効率的で多様な利用 etc... 2022 やまなか事務所

35.

個人的な考えとして・・・ まず合理的土地管理システムの核を整えるには • 全国、どのような利用形態の土地も一律の現地実測型の地図整備のみで地籍図を完 成させる発想から現状の資料を十分に活かして 土地家屋調査士こそ が解析に強みを持つ • 数値地籍図 • 図解地籍図の数値変換 • 公図の幾何変換等解析の上で、数値化→既提出・新規提出測量図によ る修正、必要に応じて森林組合や自治体の固定資産税課や等の持つ課 税地番図を修正や参考に用いる • 談合絵図などで幾何的な整合性があまりにもない地区について境界や形状 が不明でも地番代表点だけでも数値化的に格納 全国が実測により14条地図化されることを待っていてはとても対応しきれない。 完璧主義でなくて良いので精度やズレの程度に応じてでも、紙ベースのGISレイ ヤ化された法務局地図というものをまずは整備出来ないか? これをベースに“LA”へ向かおうという考えや動きの中から日本の表示登記、各種 土地行政、社会問題を踏まえながらLADMにどう落とし込んでゆくのが良いかと いう議論の中で重要な位置を土地家屋調査士こそ担って行けないだろうか? 2022 やまなか事務所

36.

「所有者不明土地」問題の流れとの協働 土地=資産とは限らない時代に入り、申請主義(実質的申請主義)の不動産登記 では国民が地籍データベースである“不動産登記情報”更新に対して経済的負担を 負う程のインセンティブが得られなくなってきている。 所有者不明土地 所在・境界不明土地  現状の個人の強い「所有権(right)」に対して時代応じた「制限 (restriction) 」と「義務・責任(responsibility)」の見直し  登記の効力についての見直し  標準に則り誰もが分かりやすく、使いやすく様々な情報を一元的に扱え る土地情報基盤の整備  並行して新たな技術に対応した管理・処理方法と実務者ツールの整備 土地についても「個人の財産権」を中心として考える従来の法学者と 違った視点を持つ法学分野の方との対話を進めることが出来れば・・・ 2022 やまなか事務所

37.

地籍情報管理の進化を考える中で 土地家屋調査士は・・・ • どのような土地行政管理システムを構築するにあたっても地籍(≒日本における表示登記)情報 は空間の効率的利用を目指す社会にとって中心的構成要素でありその価値は変わらない。 • 実際に、土地家屋調査士は地籍に関わる登記の専門家として、LADMのベースにあるLAという概 念の中で「土地行政分野の専門職領域」として定義されている専門ツール(保有形態・登記制 度・タイトリングと境界確定・土地単位・境界・地籍調査と地籍図作成)の大半を担っているとも 言える。 • 連合会グランドデザイン案、「登記制度が地籍情報管理制度に飲み込まれ」るという世界観の中 で、土地家屋調査士がどのようにしてより重要な役割を果たしてゆくかの指針となり得るのでは? • より広い関心と深い研究、主体的関与によって不動産登記制度のこの先のあり方も含めて主導 的役割を果たす為に行動してゆくことが調査士制度と調査士がこの先も社会的に必要とされるの に重要なことでは。 2022 やまなか事務所

38.

ありがとうございます 山中 匠 takumi@o-yamanaka.com http://o-yamanaka.com