不動産登記・土地境界と 最新技術から見る「森林」

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November 21, 22

スライド概要

2019年作成
林業関係団体様からのお招きで作成した研修会資料。
森林の不動産登記情報、境界についての調査の基本と土地家屋調査士としての専門家の見方、解析等について。

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土地家屋調査士 Land and House Investigator( Licensed Cadastral Surveyor of Japan)

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各ページのテキスト
1.

不動産登記・土地境界と 最新技術から見る「森林」 令和元年7月26日 土地家屋調査士 あきたかたの森構想プロジェクト 山中 匠 部会勉強会

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● ● ● ● ● ● ● 広島市安佐北区の可部生まれ 安古市高校→大阪外国語大学、在学中に大阪大学と合併 在学中は南ヨーロッパ文化(イタリア)の専攻 バンドと作曲をしながら留年・休学 卒論は大阪音楽大学にお世話になりルネサンス期の多声音楽 30歳から地元の調査士法人で補助者 31歳測量士補、32歳で調査士を取得 自己紹介 ● ● ● ● ● ● 祖父、父の事務所を継いで個人事務所として開業 開業後行政書士登録のみを残した父、 妻(司法書士)も加わり合同事務所として経営。 日本土地家屋調査士会連合会 研究所 研究員(~2019) 広島県土地家屋調査士会 IT委員会 委員 広島県土地家屋調査士会 広島支部 副支部長 広島県青年土地家屋調査士の会 副会長(~2017) 【趣味】ギター・ピアノ、写真(愛機はSigma SD1)

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土地家屋調査士って? ● ● ● ● ● ● 不動産(主に登記)に関する法律と技術の専門家です。 不動産価格の査定はしません(苦笑)不動産鑑定士とよく間違えられます。 意外かもしれませんが、法務省が認定をおこなう国家資格です。(他の士業では弁護士 と司法書士。隣接業務だと測量士が国土地理院、行政書士は総務省になります) 登記簿が「新しく出来る」とき「無くなる」とき、土地や建物の分割・合併によって 「複数に分かれる」とき、「一つになる」とき、また種類が変更されたときなどに調 査・測量の上登記手続きを行います。 結構これも勘違いされますが、業務のうち測量は調査のうちのほんの一部で、資料解析 や、図面や書類作成、役所や地権者との折衝の割合がかなり多いです。 個人的には、法律と技術、デスクワークとフィールドワーク、等ないろんなものを行き 来できますし、学際的な領域なのでやりがいはあります。

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今日お話しようと考えていること 1. 2. 3. 4. 5. 山にまつわる用語、所有と境界をめぐる概念について 不動産登記調査、特に、「公図」について 最新技術利用による森林の調査その1 ~ドローン~ 最新技術利用による森林の調査その2 ~航空レーザー測量~ 質疑応答を含めたフリートーク 皆さんが、私から引き出して「知りたい!」と思っておられることが、今日スライドで 用意してきたこととは違うかもしれませんので、「5」まで行く前でも逐一疑問や質問 などはその場で言って頂き、やり取りの中で進めて行ければと思っています。 場合によっては、他の研修での資料で適当なものがある可能性もありますのでそういっ たものも利用してご説明出来ればと思います。

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1 山にまつわる用語 所有と境界をめぐる 概念について

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さて、あきたかたの「森」構想プロジェクト さん、ということで・・・ 「森林」とは? 森林経営管理法上では・・・森林=森林法第二条第3項に規定する民有林(第二条第1項) 森林法第二条 第1項 この法律において「森林」とは、左に掲げるものをいう。但し、主として農地又は住宅地若しくはこれ に準ずる土地として使用される土地及びこれらの上にある立木竹を除く。 一 木竹が集団して生育している土地及びその土地の上にある立木竹 二 前号の土地の外、木竹の集団的な生育に供される土地 森林経営管理法での「森林所有者」の 定義(第二条第2項)と同じ 第2項 この法律において「森林所有者」とは、権原に基き森林の土地の上に木竹を所有し、及び育成すること ができる者をいう。 第3項 この法律において「国有林」とは、国が森林所有者である森林及び国有林野の管理経営に関する法律 (昭和二十六年法律第二百四十六号)第十条第一号に規定する分収林である森林をいい、「民有林」とは、国 有林以外の森林をいう。

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不動産登記法に於いては・・・ 「山林」という地目として扱われます。 不動産登記事務取扱手続準則第六十八条 九 山林 耕作の方法によらないで竹木の生育する土地 書籍(「山林の境界と所有」)では「植林のため耕作したり、苗木に肥料を与え下草刈りをしてい る状態の土地は「山林」に該当しない」とありますが・・・ 単に梅林や栗林、果樹園のようにその”木”そのものではなく”実”を収穫することが目的となる、いわ ゆる「農耕地」と区別すべきと考えたのでは・・・とも考えます。 些か、定義として異なり細かい定義が問題になる場面もあるかもしれませんが、いずれも概 ね(特に平地に森や林が少ない日本、更にその中でも山ばかりの広島では)一般に「山」と 呼ばれるもののことである、と考えて差し支えないかもしれません。

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森林経営管理法? (林野庁HPより引用)

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「森林所有者」ってなんでしたっけ? 権原に基き森林の土地の上に木竹を所有し、及び育成することができる者 (森林法第二条第2項、森林経営管理法第二条第2項) ≠ 土地を所有する者(不動産登記上の所有権登記名義人)です。また「育成することができる」と いう能力についての言及もあるのですが・・・ 比較イメージ(宅地) 森林の場合 ココの部分(底地ではない) を「所有」、「育成することがで きる」者 上モノ ※森林所有者のイメージ? 底地 不動産登記上の 土地「所有者」は この”底地”所有者 これら、上モノと底地の所有、占有等の関係がときに一致し、時に異なるという、複雑な「境界」 を形成します。(これは山に限らないのですが・・・)

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境界の概念からみると・・・ 所有権界 民法上の契約の自由に基づく 自由に異動する 筆界 不動産登記法に基づく 「登記」で設定され異動しない 施業界 林業実務用語 森林の育成、管理、伐採等の作業を実施する際 にその範囲を画する境界(「山林の境界と所 有」より) 林班界 森林行政用語 森林区画を50ha(林班)、5ha(小班群)、施 業上の区画(小班)に分け、「林小班」単位で 管理する。 それぞれ、扱う分野、管理する行政機関、私人間のものであるのか等によって多種多様に なってしまっているのが問題と言えば問題です。(これは山だけの問題ではないのです が・・・)

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2 不動産登記調査 特に、「公図」について

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とは言っても基礎情報としての土地登記の調査は 大事なわけですが・・・ 法務局備え付けの 「公図」 「地積測量図」 といったものを調査する必要があるわけですがこ れ多分難しいですよね。 書類としての登記簿なら読みなれたプロである司 法書士さんや弁護士さん、金融機関さん(調査士 も当然読めなきゃダメですが)も、こういった 「地図」的なものとセットで考える必要がある場 合は土地家屋調査士に聞いてこられるということ も多いです。

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調査のアプローチとしては二種類だと思いますが 1. 地番から、場所を割り出したい 問題点・・・公図は取れるけどそれは「どこなのか」 →技術的な解決方法があります(後述) ただし、一部の地域(公図の種類)では現地調査・聞き込み等も必要 2. 場所から地番を割り出したい 問題点・・・山はブルーマップにも漏れている どこから情報を得たら良いか →地籍図・林班図からの調査。 耕地に接していて運良く地積測量図が備え付けられていれば「隣接地番」表記がある場合も 矢張り、一部の地域(公図の種類)では現地調査・聞き込み等も必要

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法務局へ行く?いえ、まずオンラインで。 遠方の法務局へゆくよりも登記情 報提供サービス https://www1.touki.or.jp/ が便利です。 一時利用のカード決済も可能です。 不動産登記関連実務者は提出先に 法務局取得のものを求められない 限り、ほぼ100%こちらで調査を します。 (一部取得出来ないものもありま すが最初の調査で問題になること はあまりないと思います)

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公図は概ね、三種類に分けられます。 ● (1)不動産登記法14条1項地図 地籍調査や、法務省14条地図作成によって備え付けられる地図 ● 不動産登記法14条4項地図(地図に準ずる図面) ○ (2)地租改正時(明治6~14年頃)の「改祖図」、「野取絵 図」と呼ばれるもの(広島では談合図と言われたりする) ○ (3)明治17年~の地押調査事業で作成された「更正図」、 「地押(ぢおし)調査図」などと呼ばれるもの(広島では分間 図などと言われたりする) ※(1)~(3)いずれも、地域的背景や測量者や成果の質などによるクセやばらつきがあるのも事実です。

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(1)理想的な公図「14条地図」 農耕・村落地や、山林については地籍調 査(国土調査)、都市部は法務省の14 条地図作成事業などで作成される現代的 測量による地籍地図です。 特徴として、右上と左下に「座標値」が 記されており、これによってこの公図に 対しての地球上の位置がハッキリと判る ので、GoogleEarthや国土地理院の配信す る地図タイル等のWebGIS等とも重ね合わ せて現地と境界の関係を知る事ができま す。

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14条地図を分かりやすく重ねるには・・・ 低 那須情報空間研究所「公図マッピングシステム」 https://kouzu-map.azurewebsites.net/ 難 易 度 根本聡土地家屋調査士事務所 https://nemotos.sakura.ne.jp/gpdfkmz.html QGIS(多機能のオープンソースGIS) 高 https://www.qgis.org/ja/site/

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安芸高田市では 赤と黄色の部分についてはこの 「14条地図」が備えられています。 じゃ、それ以外の場所の 公図は?

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(2)改祖図、野取絵図等と呼ばれる公図 測量に拠らないものも多くあり、素人の書いたフリーハンド見取り図レベルのもので、幾何 学的な妥当性に乏しい。測量された一般的な地図と重ねることは著しく困難で、こうしたも のを無理やり現在まで運用してきたことでさらに混乱を来していることも多い(地図混乱)

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ちなみにこうした、明治時代からの地図については 歴史的に3つの形態を辿ってきてきます 1. 和紙公図(旧公図)・・・作成当時のもの。法務局所蔵(最初は税務署 管轄だったものを移管されている)のほか、町役場などにあった副本 (写し)が役所に残っている場合もある。 2. マイラー公図・・・和紙公図の劣化から、昭和40年代~法務局でマイ ラー(樹脂シート)へのトレースが行われたもの 3. コンピュータ公図・・・マイラー図を電子化したもの。 という三段階を経てきています。調査士は境界について根本的に深く調べる際や少しでも疑義がある場合 は、必ず和紙公図に遡ります。

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幾何学的な妥当性は兎も角、和紙の時代まで遡って調べると作成当時 の土地の利用形態等、現在(マイラー図以降)の公図では見る事の出 来ない情報を得る事も出来る。

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安芸高田市では少ないかも・・・?「更正図」 1/600の縮尺で作成されているものが多い。 少し前までは土地家屋調査士や専門家でも「合わない」などと言われて軽視する向き もあったが、実測図であり、技術の進歩によって広範囲での検証が容易になってきた 近年、その妥当性が再評価されつつある。

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実測図ですので、深く解析する価値はあります この重ね方については、これだけでタップリ勉強会ができる分量になってしまいます。 簡単なものはGoogleEarthで、深い解析はQGISなどで可能です。

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3 最新技術利用による森林の調査 その1 ~ドローン~

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ドローンは森林調査に有用なのか? 昨年の土砂災害現場での調査フライト。 災害ドローン救援隊DRONEBIRDhttp://dronebird.org/ 隊員としてのボランティア(広島市役所)

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災害などの調査には迅速かつ詳細である程度広範 囲に山を確認し、また地図化することが出来る 個人でこうしたファイルを持ったり、なんらかの事業で写真の著作権、情報の所有 権を契約により縛られてしまうよりも共有し誰でも閲覧、利用出来ることが重要。 https://map.openaerialmap.org/ 動画での現地を捉えて見ることも大事。(時間があれば動画を・・・)

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共有すれば、各専門家による多角的な解析の素材に 画像は、去年の土砂災害で大きな被害のあった呉市の市原地区。 安芸高田市同様、地籍調査が完了したエリアであったのでこうした形で土砂が流れてしまった場所の上に地番・境界を 重ねて見ることが可能。

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4 最新技術利用による森林の調査 その1 ~航空レーザー測量~

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ドローンと違って植生があっても地表面のデータが取れるのが特徴 国土地理院HPより引用

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これを利用して様々な地形表現と、今まで難しかった微地形判読も可能に

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人が踏み入って測量が難しいような深い山林も 点群は”Shizuoka Point Cloud DB”https://pointcloud.pref.shizuoka.jp/ より拝借

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フィルタリングによって植生(樹木)を除去すると フィルター手法は様々ありますがhttps://www.cloudcompare.org/doc/wiki/index.php?title=CSF_(plugin) こちらを利用。

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樹木を取り除いた地表面を抽出出来ます。 植生部の点群と地表部の点群に分割されます。 ほぼ、地表面のみの点群だけが抽出されていることが分かります。 ※設定の最適値は現場や目的によって変わります。また、竹林等、一部地表面にレーザーが届きにくい条件もあります。

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参考までに真上から 色: 赤 標高: 高い 緑 青 低い

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地理空間情報システム(QGIS)に展開

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等高線の抽出もできます。

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今までにない微地形の表現が可能 画像は高さの彩色と1m等高線の組合わせ。従来の地図・地形図と比べて地形の詳細度は非常に高く、 実際山に入る前に地形を把握したり危険を回避したりするにも有用な資料となる得るかも。

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最後に・これからの展望 ドローンや、航空レーザー測量の成果利用の敷居が下がったことで、今まで費用と現場作業の手間・時間が掛か っていた山林の状態の把握、地形の解析・視覚化は、現地に奥深く入り込むことなく(それなりに専門的な知識が 必要ですが)大半をパソコンの前に居て出来るようになってきました。 特に航空レーザー測量データは、広島県の砂防課をはじめ中国地方整備局、各市町村が持っていますが十分に公 開され活用されているとは言い難い状態です。静岡県などはこういった情報のオープンデータ化が進んでおり、広 島県などでもさらに進むことを期待しています。 土地家屋調査士として私は、解析した地形データを利用して公図では現地・境界の特定の難しい地域などにおい て、地元古老等の山に詳しい方がご健在のちに「山林境界」に関する証言を集め、データ化し我々専門家の目と考 察を通して蓄積しておくことは急務ではないかと考えています。(何らかの事業化が可能な形を模索しないと難し いのですが) また解析された地形データは、林業を専門とする方の目、地質を専門とする方の目、など様々な角度から解析さ れることによってより、防災から里山利用など多目的な利用が可能になりますし、その利用のための基礎情報とし て(たとえ大まかであっても)山林境界の情報は大きな助けになるのではないかと思っています。 本日は、ご清聴有難うございました。 ご質問・情報交換などはFacebookアカウント迄:https://www.facebook.com/takumi.yamanaka (その他リンク) 事務所HP:http://o-yamanaka.com/ 三次元データ:https://sketchfab.com/takumi_yamanaka 作成スライドデータ:https://www.slideshare.net/takumiyamanaka