ふりかえり講座プレビュー版

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April 27, 23

スライド概要

新卒向けに書いた「ふりかえり講座」の資料のプレビュー版です。
「この辺が違和感あるかも」、「こういう内容も書くと良いよ」などご意見いただけると幸いです。

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サーバーサイドエンジニアだった何か

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各ページのテキスト
1.

ふりかえり プレビュー版

2.

本資料について - 2023年の新卒研修用に書き起こしたもの - 実際に講座をやる前に公開して反応がもらえればラッキーと思って公開

3.

今日の目標 - ふりかえりがどういったものかを知る - ふりかえりを体験してみる

4.

ふりかえりの説明に入る前に

5.

会社とは? - 目的を達成するために - お金や労働力、技術などを集めて - 事業(収益を上げる活動)を行う組織

6.

仕事って何? - 「自分の能力」を使って「会社」に価値を提供 - 代わりに対価(お金や経験値)を得ること 価値 価値

7.

プログラマが提供する価値 - 要求されたも価値を提供できるものを作る(最低ライン) - 要求を満たしつつ、付加価値があるものを作る - 実行速度が速い - バグが出ない - メンテナンスがしやすい - セキュアである - スケーラブルである - etc

8.

複数人で出す価値 - もっと効率的に仕事ができるようにする - プログラマ同士やプログラマ以外の関係者と協力してモノを作る - お互いの得意なところを活かす - 協力するときに認識のズレを防ぐ - よりスムーズに連携できるような仕組みを作る - より楽しい雰囲気で仕事ができる

9.

価値を抽象化する - 仕事のクオリティを高める - 組織・チームで協力して価値を発揮する 組織の限界は組織構造と個人に依存する 組織に参画するみんなが個々に成長しないと組織は現状維持のままになる 現状維持だけの組織は、成長する他の組織との競争に負ける 著者の意見

10.

仕事で求められる価値とカイゼン - 仕事のクオリティを高める - - もっと仕事のクオリティを高めるにはどうすればいいか? 組織・チームで協力して価値を発揮する - より良く協力するにはどうすれば良いか?

11.

ふりかえりとは? 個人や組織(チーム)が成長するための手段の1つ 自分たちの現状を知り、 今後どうなりたいか、どうなれそうかを考え、 それらに取り組むための仕組み(繰り返し行いサイクルを回す)

12.

ふりかえりの基本

13.

ふりかえりとは? 様々な手法が提案されているが、基本的な要素は以下のものになる 1. 目的と対象期間の設定 2. 事実と付随情報の列挙 3. 列挙された内容の関係性の整理・掘り下げ 4. 気づきや課題の発見 5. 今後のアクションの決定 6. アクションの実施

14.

ふりかえりを「どこまで」するか - ふりかえりを「どこまで」するかは習熟度によって変わる - まずは事実を見る - 事実を見るのに慣れてきたから、関係性を整理し特性を考える - 特性が解ってきたら、少しずつ変化を加えていく

15.

参考:ふりかえりの段階 引用:ふりかえりナビ

16.

ふりかえりをどこまでやるかの例 ダイエットに例えると… - - - まずは事実を見る - 体重計に乗って体重や体脂肪率を記録する - 食事を記録する 事実を見るのに慣れてきたから、関係性を整理し特性を考える - 体重は増加傾向にある - 食事は外食でラーメンが多い - 運動はなかなか続かない 特性が解ってきたら、少しずつ変化を加えていく - 運動の時間を取るのではなく、通勤時にいつもより遠回りしてみる

17.

目的と対象期間設定 - - ふりかえりの目的 - まずは現状確認 - より価値を出すために何ができるかを考える - 実施したカイゼンを評価しながら、チームや個人を成長させる ふりかえりの対象期間 - 毎日、1週間、1ヶ月、3ヶ月など様々 - ふりかえりのサイクルを安定して実施できる期間を選ぶと良い

18.

事実と付随情報の列挙 - したこと、起きたことを列挙 - - 誰が、いつ、何を、どのように、(どこで、なぜ) したこと、起きたことの付随情報を列挙 - 感情 :その時どう思ったか - 成功・失敗 :どこが上手くできて、どこが上手くできなかったか - 学び :どのような学びや知識を得たか (上記は筆者がよく使うものです。これら以外に良いものがあれば試してみよう。)

19.

列挙された内容の関係性の整理・掘り下げ - - 出てきた情報の因果関係を整理、掘り下げる - 出てきた情報を並び替えたり、グループ化する - 思い出したものがあれば随時書き足していく - 気になる部分があれば掘り下げる(ex. なぜそう思ったの?) 整理観点としては以下のようなものが考えられる - 時系列 :Aをしたら、Bが起きて、結果Cの対応が必要になった - 感情 :喜怒哀楽、好き嫌いなど - 成功・失敗 :上手くいった、うまくいかなかった - 立場 :当事者としては〇〇のように見えたが、外からは〇〇のように見えた

20.

気づきや課題の発見 - 気づきや課題を話し合う - 〇〇な時にはXXのようにした方が良さそう - 〇〇をするのを大事にしたいと思っていそうだ - 〇〇をするのが苦手なようだ - 前にも似たことがあったし、抽象的に考えると〇〇という特性がありそうだ

21.

今後のアクションの決定 - - 2つくらいアクションする対象を決める - 全ての気づきや課題に対してアクションを決めるのは無理 - 残りの気づきや課題はリストなどに残しておく - 決め方はドット投票など できるだけSMARTなアクションにする - アクションはチーム全体として取り組む姿勢を持つ - あまり大きなアクションは設定しない - - 決めきれないなら、「いつまでに、会議を開いて、結果を共有する」でもOK 次回のふりかえりのタイミングでアクションの結果を確認する

22.

SMART - Specific(具体的) - - Measurable(測定可能) - - アクションは現実的に達成できる Related(目標に関連した) - - アクションの評価が定量的に行える仕組みを備えている Achievable(達成可能) - - アクションと成果物が具体的で誰が読んでもわかる形になっている アクションは自分やチームの目標にとって意味があるに Time-bound(時間制約がある) - アクションの達成期限が明確に設定されている

23.

Q. 付随情報と整理観点の使い方 A. どれを使うかは慣れ。色々と試してね。 ふりかえり自体のフレームワークもあるから、 その辺も実際に使ってみて自分たちに合うか検討してね。

24.

再掲:ふりかえりとは? 個人や組織(チーム)が成長するための手段の1つ 自分たちの現状を知り、 今後どうなりたいか、どうなれそうかを考え、 それらに取り組むための仕組み(繰り返し行いサイクルを回す)

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ふりかえりに関わるマインドやモデル

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経験学習サイクル - - 学習を「自らの経験から学びを得ること」と定義し、4ステージを繰り返す - 仕事では研修や書籍からは学べないことが沢山ある - 経験を元に少しずつ変化を加えながら学んで行く必要がある 学習を4ステージに分類 - 経験 : 成功体験や失敗体験のようなエピソード的経験を積む - 省察 : 実体験を振り返り、その後の活動に役立つエピソードを抽出する - 概念化 : その後の活動に役立つ知見を自ら構築する(エピソードから共通点を抽出・概念化) - 実践 : 概念化したものを実践し、状況を乗り越える

27.

ABC理論 - 発生した事象(Activating event)が感情や行動(Consequence)を直接引き起こす のではなく、事象に対する個人の信念や解釈、思考(Belief)が感情や行動に影響 を与えるとしたもの 事象 信念 解釈 思考 感情

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ABC理論の例 A: 試験に落ちた、仕事に失敗した - - パターン1:(非合理的な信念) - B: 自分はダメな人間だ - C: 自分に対する自信喪失、もう試験を受けるのはやめよう パターン2:(合理的な信念) - B: 失敗から学ぶべきことがあった - C: 前向きな気持ち、課題を解決したうえで再度試験にのぞむ

29.

捉え方を変えることで、感情や行動が変わる - 解釈の角度を変えれば、感情や行動はある程度は変わる - 自分の解釈の傾向を知りれば、より好ましい捉え方に気づける - - 今後同様の事象が起きた時により良い対応ができる 「ふりかえり」を通じて別の捉え方が見つかるかもしれない - 事象と少し距離を置いて考えられる - 自分以外の視点に気づくことができる

30.

成長マインドセット - 失敗に対して前向きに捉える考え方 - - - 成長マインドセット - まだ出来ていないだけ - 自分の能力や知識は固定されたものではなく、努力や継続的な学習によって向上できる 固定マインドセット - 才能がないから無理 - 自分の能力や知識は固定されたものだから、何をやっても無駄 注意点 - 全ての人の思考が成長マインドセット、固定マインドセットのどちらかに別れるわけではない - 個人の中でも分野等によって反応が異なる - 日常の中で困難な状況に直面した際に自分がどのような反応をしがちか確認する

31.

学習性無力感 - 自分にはコントロールできない状況に繰り返し晒されることによって、 自分の行動によって状況を変えることができないと学ぶ現象 - 実験:犬が逃れられない電気ショックを受ける状況に繰り返し晒された後、 ショックから逃れるための行動をとらなくなった - ふりかえりを通じて自分の状況を客観的に評価し、 自分がコントロールできる要素を認識することが大切

32.

「変化」に対する期待と効力感が大切 - チームや個人が「変われそう」、「変われた」を感じる - 大きな変化ではなく、小さな変化で自己効力感を高めて行こう - 目標を達成するための能力を自らが持っていると認識することを - 変化が失敗したとしても、コストや影響範囲が小さくて済む - 小さい変化なら必要な期間が短く、結果がすぐに確認できる

33.

ただし無理に変化しなくても良い - - ずっと変わり続けることは難しい - うまくいかない時は当然ある - 忙しくて手が回らないことも当然ある - 変化よりも今できていることを大事にするという選択肢も必要 まずは自分を知ることが大事 - 「こういう時はうまく行かない」と知れたことを歓迎する - 状態を確認するためにも「ふりかえり」は必要

34.

ふりかえりのポイント

35.

ふりかえりの手法は様々 出典:https://hurikaeri.booth.pm/items/1711909

36.

良く使われるふりかえりの手法の紹介 - DPA - KPT - YWT

37.

DPA(Design the Partnership Alliance) ふりかえりの場づくり(グラウンドルールの決定) - どんな雰囲気でふりかえりをしたいか、何を大切にしたいか - そのために何をするか - その場で守るルールを2つ作り、認識を合わせる グラウンドルールの設定は会議全般で使える手法です。 ついつい「暗黙の了解」があると信じてしまいます。

38.

KPT(Keep Problem Try) 以下の手順で行うふりかえりの手法 - 活動を思い出し共有 - Keep(続けたいこと)、Problem(課題)を洗い出す - KeepとProblemの要因を特定 - 今後チーム(個人)のために試すことをの候補の検討(3つ以内) - その後詳細を作成、共有

39.

YWT(やったこと わかったこと つぎにやること) 以下の手順で行うふりかえりの手法 - 活動を思い出し共有 - やったこと(自分、チーム)、やろうとしたことを洗い出す - わかったこと(気づき、感情、意見)を洗い出す - 次にやること(一人、チームで取り組むことを意識)を洗い出す

40.

ふりかえりを行う時のポイント(1) - - 機会を定期的に確保する - 継続的に観測することで変化を認識できる - 人は怠惰なので、ついつい後回ししがち 人数は多くしすぎない - - 会議全般に言えるが多くても5人前後 定期的に整理したものを目にする - 人は自分が経験したことを忘れがち - 事象と距離を取ることで別の見え方がし、新しい気づきを得ることがある

41.

ふりかえりを行う時のポイント(2) - - 事実と感情の列挙 - まずは自分たちの成果や行動、感情を見えるようにする - 大人になるにつれ、仕事では感情が蔑ろにされがち 出てきた意見を歓迎する - 感情や認識の話では「それは違うんじゃないか?」と反応してしまいがち - 否定的な反応により、その後の意見が出辛くなる可能性がある - 「そういう風に捉えたんだね」と受け入れる

42.

記憶力に自信がない人向け - 日記、日報 - - 記憶力に自信がない人は、起きたことや感情を残すようにして定期的に見返そう timesチャンネル(分報) - 各々が個人のチャンネルを持ち、自由に発言していくチャンネル - その時々の出来事や、気分やメモなどを目的 - 頭の中を言語化することでメタ認知が捗る

43.

筆者のGoogleカレンダーの活用例 - マイカレンダーで 「日記」を作っている - 日々の作業を大まかに記録 - 繰り返しのタスク「日記」を作成 - タスクの詳細に日記を書く

44.

チームでのふりかえりの追加効果 - - コミュニケーション - メンバー間のコミュニケーションを促進し、相互理解を深める - チーム内の信頼関係が築かれ、より効果的な協力が可能 フィードバックの共有 - メンバーが互いにフィードバックを共有できる - 個々人の成長やチーム全体の問題解決能力が向上する

45.

ふりかえりを試してみる

46.

ふりかえりをやってみよう - 目的 - - 対象 - - 学んだことに関する事実や感情を挙げてみる 4月の研修期間 問 - 研修で学んだことは何? - 研修でどう学んだ? - 何がうまくできて、何がうまくできなかった?

47.

日常的にふりかえりを練習をしよう あなたの人生はあなたのプロジェクトであり、あなたのプロダクトです。 まずは「ふりかえり」であなたの人生を良くしましょう。 その結果の学びを会社やチームで活用し、価値を得ていきましょう。

48.

参考資料 - 書籍 - アジャイルなチームをつくる-ふりかえりガイドブック-始め方・ふりかえりの型・手法・マインドセット森一樹 - - 企業内人材育成入門-中原淳 インターネット上の資料 - ふりかえりナビ

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おまけ

50.

ふりかえり時によく扱われる要素 - 事実 - 感情 - 学び(気づき) - 肯定的評価 - 批判的評価 - アイデア 「6色ハット思考法」に通じる部分もあるので読むと良い

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その他、将来的に知っておくといいこと - 行動心理学 - - カウンセリング - - 自分が何をどう考えているかを客観視するって話 マインドフルネス - - 人の話を聞く(受け止める)にはどうすればいいかって話 メタ認知 - - 人がどういう時にどういう行動をしやすいかって話 起きている事象を評価せずに、事実として認識するって話 批判的思考 - 普段、無意識に取ってている自分の行動や考え方を自覚し批判的に振り返ろうって話