みんなが初心者だからいい。全員で動く、アジャイルチームの成長日誌

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June 18, 22

スライド概要

ScrumFestOsaka2022の登壇資料になります。

長期間にわたり、保守・開発を続けていると、メンバーの間にいつの間にか上下関係ができてしまい、うまく行っていたスクラムチームがいまいちな状態になったことはないでしょうか?
私たちにもそのような時期がありました。そのようなチームに突如訪れたメンバー交代、そして入ってきたのは、アジャイルをやったこともなければ、エンジニア経験も浅いメンバーたち。
そのようなメンバーを中心として、チームを再構成する中で、アジャイル開発を体験したメンバーがどのように成長を遂げ、新しい形でチームを作り上げていったのかお話します。

チームを作るのに、何かとらわれのようなものを持っていないでしょうか?
チームとは何か、チームとして達成したいものは何か、私たちは何度も話し合い、自分たちにあった形で変えてきました。
アジャイルどころか、システム開発自体も知らなかったメンバーもいるなかで、スクラムを中心に取り組むこと、諦めることを先入観なしに行うことで、チームの雰囲気も変わり、大きく成長をすることができました。

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星野リゾートでエンジニアリングマネージャをやっています。 入社後、エンジニアが全くいない状態からエンジニア組織を立ち上げました。 SIer出身で、Javaを中心にシステム開発していますが、転職後は、AWSを触ったり、フロントエンドも触ったりと幅広く開発しています。 エンジニア組織で登壇する機会が増えてきていますが、アジャイル開発が好きで、アジャイル関連での登壇もよくしています。

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各ページのテキスト
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みんなが初心者だからいい。 全員で動く、アジャイルチームの成長日誌 株式会社星野リゾート 情報システムグループ 藤井 崇介 盛林 綾華

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藤井 崇介 星野リゾート 情報システムグループ エンジニアリングマネージャー @ZooBonta ・SIerとして10年働いたのち、18年に中途採用で入社。 ・入社後は1人からエンジニア組織を立ち上げ、 内製化を促進 ・アジャイル大好き/双子の父 ・IPAのアジャイルWGとしても活動中 「アジャイルのカギは経営にあり」 https://www.ipa.go.jp/files/000097991.pdf Hoshino Resorts Inc. 2

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盛林 綾華 (くまごろー) 星野リゾート 情報システムグループ エンジニア @kumaGoro_95 ● 2015年4月 大学卒業後警察官に ● 2020年7月頃 プログラミングに興味を持つ ● 2021年5月 星野リゾート入社 マイクラ工業化のた めに買ったPCでJava を始める - 北海道出身・大学時代は基礎スキー部 - 最近フィギュアスケート始めました Hoshino Resorts Inc. 3

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って何? 全国60施設のリゾート・温泉旅館・ホテルのオペレーションを 担っている総合リゾート運営会社です。 星野リゾートでは、宿泊に対する多様なニーズに合わせて、全 国のホテル・旅館を5つのブランド+その他に分類に分けて運 営している。 星のや :独創的なテーマで紡ぐ、圧倒的非日常 界 :心地よい和にこだわった上質な小規模温泉旅館 リゾナーレ:洗練されたデザインと豊富なアクティビティをそなえる西洋型リゾート OMO :旅のテンションを上げ街を楽しみ尽くす観光客のためのホテル BEB :居酒屋以上 旅未満みんなでルーズに過ごすホテル 1914年創業、長野県軽井沢に最初の旅館を開業し、今年で 108年を迎えました。 Hoshino Resorts Inc. 代表 星野佳路 4

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情報システムグループ 2015年時点ではわずか4名とパートナーメインの体制でした。DXを実現するに は自前化しかないという信念のもと、現場からの異動組、中途キャリア採用を 積極的に行ってきたことで、今では総勢60名近くの社内でも有数のビックチー ムとなりました。メンバーは軽井沢・東京・大阪を拠点に活動中です。 3年前からはエンジニアの採用も積極的に行い、システムの内製化を積極的 に進めています。 現在は開発・改善・インフラ構築・運用・開業支援など、広く多くのタスクを自ら 行っています。そこにはミックスチームだから成せる高いミッションへの遂行力 があります。 様々な社内からの要求はもちろん、ホスピタリティを追求する新たな価値の創 造を目指し、日々迫りくる課題に挑み続けています。

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Hoshino Resorts Inc. 6

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チームの仕事 ● 宿泊予約・販売関連のプロダクトを開発するチーム 20を超えるリポジトリ 200万行のソースコード と格闘 横断検索サイト 販売管理画面 歴史があるが故に、 覚える技術は多岐に渡る 予約サイト ギフト券システム Hoshino Resorts Inc. 7

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チームの歴史 ● 0から作り上げた開発チーム 発足4年 https://www.slideshare.net/ssuser91c7c7/105-227849243 Hoshino Resorts Inc. 8

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コロナ禍でも貢献 ● 不具合修正や改善だけでなく、機能追加も行う Hoshino Resorts Inc. https://www.slideshare.net/ssuser91c7c7/scrum-festosaka2021-fujii 9

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チームの過渡期 ● 社内の新規案件立ち上げに伴い、メンバーも変更 ○ リーダーは新規案件に移動 ○ チームも1チームに縮小 ○ 発足初期からいるパートナーと 新規メンバーでチーム結成 PO エンジニア未経験 エンジニア歴 5年~10年 Hoshino Resorts Inc. 10

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過渡期で起きていたこと ● うまく回らないスクラムチーム ○ 初期メンバーがアラームを上げられなくなる ○ 自然とできる見えない壁 ○ スクラムマスターを立てても機能しない ○ パートナー会社からの契約解除通告 Hoshino Resorts Inc. 11

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新チーム発足 ● 新チームのコンセプト ○ 経験が浅いチームを中心とする ○ 呼べばいつでもサポートしてくれるチーム(サポートチーム)を作る ○ 経験問わず、全員がフルスタックエンジニアを目指す ○ スクラムマスターは廃止。アジャイルコーチがアドバイスのみ行う。 アジャイルファームチームと命名 ISBN-10: 4820729632 Hoshino Resorts Inc. 12

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新チーム発足 PO 半数が未経験&メンバー全 員が3年未満の経験 アジャイルファームチーム フロントエンド、 バックエンド、 インフラ、 アジャイル開発の サポート サポートチーム Hoshino Resorts Inc. 13

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Hoshino Resorts Inc. 14

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アジャイルファーム発足時の私たち ● 自分たちでPJを回していきたい!という気持ちはある - でも、とにもかくにも経験がない - 新規開発~リリースまでの道筋が全く見えない!完全なる闇 - もはや何がわからないのかわからない → とにかく不安の一言。 本当に自分たちでやっていけるのか...? Hoshino Resorts Inc. 15

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この半年を振り返ってみると... ● 越えても越えても、色んな壁が立ちはだかる日々 ● その度に皆で話し合い、協力して乗り越える ● 成長するために色んな試みをやってみる。 → 成長のきっかけが要所要所にあった 時系列にふりかえってみます Hoshino Resorts Inc. 16

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アジャイルファーム 始動 社内最弱チームの土台を作る日々が始まった... Hoshino Resorts Inc. 17

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土台作り期前半(2021.11~2022.1) ● この頃はインフラ環境の構築やデータベース設計をやっていた ● わからん...まじでなんもわからん! ○ インフラ構築(AWS) ○ アプリケーションのログ設計 ○ DB設計 etc… とにかく全部未経験 ● わからないけど、とりあえずできるところからやっていくしかない Hoshino Resorts Inc. 18

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土台作り期前半(2021.11~2022.12) ● AWS環境構築・プロジェクトの土台作りから着手 ● サポートメンバーに相談 ● 色々話を聞いた結果、一人では絶対無理という意見で一致 → とりあえず、チームメンバー全員で作業を行うことに Hoshino Resorts Inc. 19

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どんなことをやったの? ● 難しいタスクはペアプロ・モブプロでやる → 今までは各々が作業することが多かった ● 朝会後に開発者ミーティングを開いて状況の共有 → 誰がどういうことやってるのかお互いわかる状態に Hoshino Resorts Inc. 20

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その結果どうなった? ● メンバー間で逐一話し合う習慣が生まれた 誰かの悩みは チームの悩み! → 「タスクはチームのもの」という感覚になった ● 業務中に勉強になることがすごい増えた → 4人分の知恵と検索能力が結集すると成長速度も上がる ● 一人ひとりが出来ることが増えてきた → モブプロだと未経験のタスクに挑戦しやすい インフラ バックエンド フロント なんでも挑戦 ● 雑談時間が増えて、話しやすいチームになっていった → ふとした思いつきも発言できる。突破力につながった Hoshino Resorts Inc. 21

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ベロシティも上がった ペアプロ+雑談増で も ● メンバー間で合意形成できるようになったのが原因? ● 皆が納得して同じ方向に進めるようになった → 要所要所でペアプロ・モブプロを取り入れる習慣が確立 Hoshino Resorts Inc. 22

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土台作り期後半(2022.1~2022.2) ● 新規のアプリケーション開発も少しずつなれてきた ● チームとして開発方針を出せていないという問題に直面 ○ 教わった通り実装するような状況・自分で考えてないから手戻り頻発 ○ 上司には「皆、私が言った通りに実装しちゃうじゃん」と言われる → 「わからないから聞く」前に、自分たちなりに答えを出してみよう Hoshino Resorts Inc. 23

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どうやって自分たちで答えを出した? ● チケット作成をモブプロで実施してみることに ○ それまではコーディングでのペアプロが多かった コードレビュならぬ チケットレビュー ○ 実装方針を皆で話し合いながら、誰かがチケットを書く ○ 作成したチケットをサポートチームにレビューしてもらう → この繰り返しで、「自分たちなりの実装方針を出す」ことができるように Hoshino Resorts Inc. 24

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目の前の課題をひたすら乗り越える日々... チームの土台が少しずつ出来上がってきた Hoshino Resorts Inc. 25

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チームの土台がある程度出来上がった かつては... 今は 常にやりとりしてるので、アラーム上げるこ頃には チームで戦う態勢になっている ずっとチームで仕事してるので、壁?なにそれ状 態 スクラムマスターがいなくなって、メンバーがお互 いをフォローしあうようになった Hoshino Resorts Inc. 26

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チームの土台がある程度出来上がった 今は かつては... 常にやりとりしてるので、アラーム上げるこ頃には チームで戦う態勢になっている 過渡期に抱えていた問題は、知らないうちに解消されていた もはや壁を感じようがない スクラムマスターがいなくなって、メンバーがお互 圧倒的コミュニケーション量で、課題をチームで解決するス いをフォローしあうようになった タイルが確立 Hoshino Resorts Inc. 27

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皆に少しずつ余裕が出てきて、 チームをさらに良くするための取り組みを試せるようになってき た 色んなことをやってみました Hoshino Resorts Inc. 28

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試み1.ふりかえり方法の改善 ● ふりかえりの時よりも雑談の方が会話の密度が濃い → もっと良いふりかえりの方法があるかも? ● 今までは「よかったこと」「もっとよくできたこと」について話していた(プラス デルタ) ● ためしに「いろんな思い」というトピックを追加してみることに Hoshino Resorts Inc. 29

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ふりかえりのやり方を変えてみて 皆の率直な思いが出てくるようになった! Hoshino Resorts Inc. 30

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ふりかえりのやり方を変えて得られたもの ● ひっそり抱えている悩みを打ち明ける → お互いの考え・気持ちを理解。より話しやすいチームに ● 皆が同じ悩みを抱えていることがわかる → 悩みを解消するための実際のアクションにつながる ● 「仕事のやり方を変える」ことへのハードルが下がった → 「良さそうなことはとりあえずやってみよう!」という頭になった さらに色んなこと を試すように Hoshino Resorts Inc. 31

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試み2.チーム導入資料の整備 ● ふりかえりの中で出た悩みから発案 ● ずっと更新されていなかった環境構築手順書やWikiを整備 ● メンバーの「わからない」という悩みから生まれたアクション → 「わからない」がポジティブなものになった瞬間だった 「わからない」を 前向きな気持ちで言えるチー ムに Hoshino Resorts Inc. 32

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試み3.FindyTeamsでチームの生産性を分析 Findy Teamsとは? GithubやGitlab,Jiraなどでソースコードの アクティビティを解析することで、 エンジニアリング組織の生産性を可視化するサービス Hoshino Resorts Inc. 33

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試み3.FindyTeamsでチームの生産性を分析 数値を分析してみたところ... プルリク承認からマージまでに ものすごく時間がかかっていることが判明 Hoshino Resorts Inc. 34

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試み3.FindyTeamsでチームの生産性を分析 ● 今までチームにはベロシティという指標しか無かった ● ベロシティは途中のプロセスの評価までできない ● プロセスまで見ることで気づけた課題 ○ レビューを依頼しているのに、すぐにレビューしていない ○ レビューが完了したのに、POレビューで差し戻され、別タスクが増える → 完了の定義やPOレビューのタイミングを見直した Hoshino Resorts Inc. 35

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試み3.FindyTeamsでチームの生産性を分析 プルリク作成数 レビュー クローズ時間 Hoshino Resorts Inc. 36

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試み3.FindyTeamsでチームの生産性を分析 なんと5分の1以下に! FindyTeamsはこの後も、チームの健康度の指標として活用 Hoshino Resorts Inc. 37

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その他にも... 「アーキテクチャのことが全然わからない!」 ● 読書会を開催 「別々に作業してても、互いの状況がわかってるといいよね」 ● slackをツイッターのごとく使い倒す ISBN-10: 4297127830 作業内容も悩みも 逐一実況 「システムが複雑になってきて理解するのが大変...」 ● Miroに専用ボードを作成、図を作りながら話し合うスタイルに変更 Hoshino Resorts Inc. 38

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そして... 4/13 システムリリース! Hoshino Resorts Inc. 39

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半年前はこうだった... ● 自分たちでPJを回していきたい!という気持ちはある - でも、とにもかくにも経験がない - 新規開発~リリースまでの道筋が全く見えない!完全なる闇 - もはや何がわからないのかわからない → とにかく不安の一言。 本当に自分たちでやっていけるのか...? Hoshino Resorts Inc. 40

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半年経って、こんなチームになりました ● メンバーだけでインフラ構築~リリースまでできるようになった ● 新機能の実装方針を、自分たちで考えて決められるようになった ● ステークホルダーとの打合せ・目線合わせをメンバーだけで出来るように なった ● 自分たちには難しいタスクでも、抵抗感なく挑戦できるチームになった ● とにかく楽しく・前向きに・皆で突き進むチームに! Hoshino Resorts Inc. 41

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FindyTeamsで比較してみました 新チーム発足 前のチームを安定し て上回るように レビュー クローズ時間 プルリク作成数 最初は波があった Hoshino Resorts Inc. 42

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自分たち、めっちゃ成長しとるやん Hoshino Resorts Inc. 43

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なんで成長できたんだろう? 1. 私たちが起こしてきたアクション 2. チームを取り巻く体制 Hoshino Resorts Inc. 44

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1. 私たちが起こしてきたアクション ● 壁はチーム皆で乗り越えてきた ● お互いの気持ち・悩みを共有してきた ● ネガティブな思いからポジティブなアクションを生み出してきた → 自分たちのレベル以上の仕事もチームで楽しく・前向きに挑戦できた Hoshino Resorts Inc. 45

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2. チームを取り巻く体制 PO - 経験豊富なメンバー - 普段は別PJで仕事をして いる。相談するとすぐ応じ てくれる - 様々なアドバイスをしてく れるが、決定はチームに ゆだねてくれる アジャイルファームチーム 半数が未経験&メンバー全 員が3年未満の経験 サポートチーム Hoshino Resorts Inc. 46

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2. チームを取り巻く体制 カギとなったのが... 経験の浅いメンバーだけのチーム + サポートチーム Hoshino Resorts Inc. 47

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2. チームを取り巻く体制 ● サポートチームがいるという安心感 → 無知を非難されない・ガードレール的サポート ● 皆等しくよわよわだったことが、当事者意識の土壌に → サポートメンバーの誰か一人でもチームにいれば、この意欲が生まれなかった Hoshino Resorts Inc. 48

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メンバーが安心して挑戦できる土壌を作って もらえた。 私たちはその土壌で、前向きに仕事を楽し めるチームを作りあげたんだなあ... Hoshino Resorts Inc. 49

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さいごに ● 当然、私たちはまだまだです とはいえ、未経験でも/能力が高くなくても、 ● 実装もPJ管理も、まだ要所要所で 皆が同じ方向を向けば成果を出せることが わかった サポートを受けている ● まずはサポートチーム無しでも開発・保守運用を自分たちでできるチーム に ● ゆくゆくは私たちがそれぞれチームを作って、さらなる要望にこたえたい (LeSS?) Hoshino Resorts Inc. 50