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June 24, 26
スライド概要
2026年6月24日(水)中部大学の講義「ロボットフロンティア」にて
ロボットの認知機能の話中心です。「最新」かと問われるとどうでしょう??
プログラマー
最新のロボティクスと確率 千葉工業大学 上田隆一 2026年6月24日 @中部大学
誰だお前は? • 上田隆一 • 千葉工業大学先進工学部未来ロボティクス学科教授 • 今までやり散らかしてやってきた主なこと • 2000年代にロボットサッカー競技(RoboCup) で遊んでいた • 「確率ロボティクス」の教科書を翻訳・執筆 • 「シェル芸」という言葉の考案 • 引きこもり執筆(右上の本とか) • 学生さんの指導(右下の研究とか) 機械学会教育賞(2020) ロボット学会学会誌論文賞(2024) ※不審者ではないことを示す ために掲載(自慢はよくない) 2026年6月24日 ロボットフロンティア@中部大学 2
最近の仕事 • 研究 • 機械学習を利用して複雑なものを掴む研究 • あとで見せます • 確率論と知能について考えてなにか書く • 右の本とか • 執筆 • 連載 • RustでBashのクローン作り。4年目 • 工学徒向けのOSの教科書 2026年6月24日 ロボットフロンティア@中部大学 3
本題: 最近ロボットがなんか急に賢くなった • 工場を飛び出て活躍 • タスクの高度化 • 荷物を運ぶ(含む自動車) • 洗濯機から服を出して畳む • 様々な能力を駆使 • 初めて見る景色を理解 • 人と話す • 言葉の指示を理解して実行 なぜこうなった? 2026年6月24日 注意: デモ動画を見る時は過度な演出や 環境の作り込みがある前提で見ましょう (それにしてもよく動いている) 4 ロボットフロンティア@中部大学
ひとつの原因: 確率・統計の応用 • ロボットをより難しい状況で動かしたい →ここ30年は、なぜか確率・統計を用いる手法が解決 •例 • 確率的位置推定・地図生成 • ベイズ推論 • 変分オートエンコーダ・拡散モデル・フローマッチング • その他人工ニューラルネットワークの学習 • なんで確率・統計なのか? • 実世界で人間が生きる(=ロボットが賢くなる)ために必要 なんで必要なのか考えてみましょう(人間でもロボットでも) 2026年6月24日 ロボットフロンティア@中部大学 5
必要な理由の例1: 中途半端な情報での判断 • センシングが中途半端になったり間違えたり • 東京タワーが近くに見えるだけではどこにいるかは1点に定まらない • GNSSがこう言っているけどビルの谷間であんまり信用できない • ものによって認識にかけるコストが変わる 様々な箇所を候補に→ 各候補に点数をつけると 確率分布に • あっ!1万円札っぽいものが落ちている! • ちょっとでも可能性があれば見に行ったほうがよい • あっ!10円玉っぽいものが! • 1万円札よりはやる気が出ない 期待値計算に 2026年6月24日 ロボットフロンティア@中部大学 6
必要な理由の例2: 考えずに動く・考えない 「こうすればたぶん 大丈夫」という観察 (=統計データ)に従う • 経験やほかの人の行動から学ぶ • なんで墜落しないか分からないけど飛行機は乗る • 自分でもどうやってるか分からないけど靴紐は結べる • なんとなく大学に行ってなんとなく就職してなんとなく結(以下略) • 理系だからといって不必要なときに・・・ 変な空気になる • タラバガニはザリガニだと主張しない という経験に • JavaScriptとJavaと略している人に喧嘩を売らない 従うほうがよい 情報を経験則(=確率・統計)で扱わないと疲れる 注意: 全て惰性で済ますことを肯定するわけではない 2026年6月24日 ロボットフロンティア@中部大学 7
必要な理由の例3: 情報の統合 • カメラの画素 or 網膜の視細胞の信号 (デジタルデータ)を統合して物体を認識 • ニューロンを最適化 • 様々なものの形や質感を覚えることで認識可能に • 理屈の寄与は少ない 何に見える? 実は統計 • 個々の結果から原因を推定 • これは統計学そのもの いくつの発生源から点が観測されてる? 2026年6月24日 ロボットフロンティア@中部大学 8
必要な理由の例4: たくさんのものの記憶 • いままで見てきた風景を思い出してください • できますね? • 脳みそにはHDDやSSDはないのになぜ? • 実はこれも(少なくともロボティクスでは)確率論で実現 2026年6月24日 ロボットフロンティア@中部大学 9
ということで • 今日は確率・統計的手法をいくつか見ていきましょう • 認識や記憶の仕組みを中心に • 確率的な自己位置推定 • ベイズ推定 • 変分オートエンコーダ/拡散モデル/フローマッチング 2026年6月24日 ロボットフロンティア@中部大学 10
確率(分布)のおさらい • 確率的に起こることは関数ではなく確率分布で表す • 𝑥𝑥~𝑝𝑝 ( 𝑥𝑥は分布𝑝𝑝から生成される。右図) • 例: ダーツで次の矢がどこに当たるか? 𝑝𝑝 • 条件で確率分布は変化(条件付き確率) • Aさんの分布: 𝑝𝑝 𝑥𝑥 𝐴𝐴 • Bさんの分布: 𝑝𝑝 𝑥𝑥 𝐵𝐵 確率(の密度)高い • Aさん/Bさんが投げるという「情報」 で分布が変化するとも解釈可能 2026年6月24日 ロボットフロンティア@中部大学 𝑥𝑥 低い 11
確率的な自己位置推定 ロボットが工場から外に 2026年6月24日 ロボットフロンティア@中部大学 12
確率的な自己位置推定 • 自分の位置(+向き)を確率分布で表して更新し続ける • ロボットが動いたとき: 𝑏𝑏�𝑡𝑡 𝒙𝒙 = 𝑝𝑝(𝒙𝒙|𝒙𝒙′ , 𝒖𝒖𝑡𝑡 ) 𝑏𝑏𝑡𝑡−1 (𝒙𝒙′) • 情報が得られた時: 𝑏𝑏𝑡𝑡 𝒙𝒙 = 𝜂𝜂𝐿𝐿(𝒙𝒙|Z𝑡𝑡 )𝑏𝑏�𝑡𝑡 𝒙𝒙 (ベイズの定理) Y このへん にいそう 動くと位置が 不明確に(分布が広がる) ロボット が移動 戻る X センシング センサ値から 考えるとこのへんが 高確率 情報の統合 2026年6月24日 ロボットフロンティア@中部大学 13
なにがよいか? • 測量からロボットを開放 • 一か所で計測しなくてもよい • 最悪、1点に測れなくてもよい • 自己位置同定→自己位置推定 • メタ認知(無知の知)の表現 • 自身の認識が不確かだと分かれば 慎重になる/より知ろうとする • これのできてない人が 身の回りにいませんか? • 最近はできてないほうが 投資を呼べるっぽい 自著「詳解確率ロボティクス」より転載 2026年6月24日 ロボットフロンティア@中部大学 14
アイデアから実現へ • アイデア自体は昔から存在 • 例: カルマンフィルタ[Kalman1960] • ロケットを月に導く • 分布の形を著しく制限 • ガウス分布ひとつ • 自由な分布の表現には計算量の問題 • 解決 • Monte Carlo localization [Fox1999][Dellaert1999] • 「パーティクルフィルタ」の自己位置推定への応用 • 候補点をばらまく→センサの情報と合わない点は確率の計算で消す 2026年6月24日 ロボットフロンティア@中部大学 15
現在の確率的位置推定 • 屋外で利用可能に • レーザースキャナ(LiDAR)の発達 ロボットが 点字ブロックで 激しく振動 • つくばチャレンジ レーザが地面に • 多くのチームは確率的自己位置推定を利用 • (特に3次元LiDARを使うと)ノイズに強い 見学者に レーザーが反応 2026年6月24日 ロボットフロンティア@中部大学 16
確率的な自己位置推定のまとめ • 工場からロボットを外に出した功績が大きい • 実装方法は右の本で • 他、言っていないことの補足 • 地図作成にも確率の計算が 2026年6月24日 ロボットフロンティア@中部大学 17
原因の推定 原因の確率分布を考える 2026年6月24日 ロボットフロンティア@中部大学 18
世の中の情報のとりまとめや背景の推定 • 世の中でばらばらに起こることは個別に見るより まとめたり、背景を考えたりしたほうが理解できる • 例: ニュースを見て「最近、○○の犯罪が多いね〜」 →統計をとると違う • LiDARでみるとこんなデータがとれました →「位置」が原因(自己位置推定) 最新の情報に 必ず引きずられる • 原因を考える(推論する)ほうが賢い • 実際に「○○の犯罪」が多いなら原因を考えて対策 • 勉強も丸暗記より背景の理論を覚えたほうがよい ロボットも同じ 2026年6月24日 ロボットフロンティア@中部大学 19
ロボットでの推論の例 • ロボットハンドで様々な掴める位置(把持位置)があるけど どうせなら掴みやすいところを掴みたい • 把持位置を多く出す面が広くて平ら →把持位置をグループ分けするとわかる • 動画 [下鳥 2026?] 2026年6月24日 ロボットフロンティア@中部大学 20
どこまで推論を真面目にやるか • 「原因の確率分布」まで考えるべき • 素朴な例: 最小二乗法 • データのなかに1本線を引く • やっていることは関数の推定 • 常に生じる疑問: データが少ないのに線を引いていいのか? • 素朴でない例: ベイズ線形回帰 • 直線の確率分布を考える • 実際にはパラメータの分布を考えれば良い 不確かさを表現できる 2026年6月24日 ロボットフロンティア@中部大学 21
ベイズ線形回帰の方法 • パラメータ𝒘𝒘の分布𝑝𝑝(𝒘𝒘)を考える • 𝒘𝒘: たとえば直線( 𝑦𝑦 = 𝑤𝑤1 𝑥𝑥 + 𝑤𝑤0 )なら傾き𝑤𝑤1 と切片𝑤𝑤0 • 他、補助的なパラメータも入ることがある • 例: データのばらつきの分散など • データを知る前の分布𝑝𝑝0 (𝒘𝒘)をなにかしらの仮定で設定 • すごくぼやけた分布にしておく • データを知った後の分布を計算 • 計算式(ベイズの定理): 𝑝𝑝 𝒘𝒘 𝒙𝒙1:𝑁𝑁 = 𝜂𝜂𝜂𝜂(𝒙𝒙1:𝑁𝑁 |𝒘𝒘)𝑝𝑝0 (𝒘𝒘) パラメータの分布は必ず尖る→より推定が確かに 2026年6月24日 ロボットフロンティア@中部大学 22
もうひとつの例: クラスタリング • さきほどの動画で解いている問題 • 右図のように散って観測されたデータのグループ分け • (人間は無意識にやっちゃいますね) • 古典的な方法(k-means法) • 問題1: 原因を考えていない • 問題2: クラスタの個数をあらかじめ指定 2026年6月24日 ロボットフロンティア@中部大学 23
少し良い方法: EM(expectation maximization)法 • データに確率分布を当てはめる • どんな背景(=確率分布)でデータが生成されているかを考える • 一番当てはまりのよいものを求める • クラスタリングの「背景」の例 • 各集団ごとにデータの発生源がいる • 発生源からガウス分布にしたがってデータが発生 • この場合、当てはめるとよい確率分布: 混合ガウス分布 • 𝑝𝑝 𝒙𝒙 𝜋𝜋1:𝑛𝑛 , 𝝁𝝁1:𝑛𝑛 , Σ1:𝑛𝑛 = ∑𝑛𝑛𝑗𝑗=1 𝜋𝜋𝑗𝑗 𝒩𝒩(𝒙𝒙|𝝁𝝁𝑗𝑗 , Σ𝑗𝑗 ) 2026年6月24日 ロボットフロンティア@中部大学 24
EM法のアルゴリズム • E(expectation)ステップ • 各データがどのクラスタに属するか決定 • 1つに決めず、Aに50%、Bに50%のように確率的に • 各ガウス分布の値から決定 • M (maximization)ステップ • Eステップの結果から各ガウス分布のパラメータを計算 • 問題: EM法も想定するクラスタの個数は固定 2026年6月24日 ロボットフロンティア@中部大学 25
ベイズ推論を用いたクラスタリング • 当てはめたい確率分布の確率分布を考える • 例: 混合ガウス分布をデータに当てはめたい場合 • 混合ガウス分布の分布を考える • =混合ガウス分布のパラメータの分布を考える • 似た例: 先ほどのベイズ線形回帰の「直線の分布」 • 混合ガウス分布 • 𝑝𝑝 𝒙𝒙 𝜋𝜋1:𝑛𝑛 , 𝝁𝝁1:𝑛𝑛 , Σ1:𝑛𝑛 = ∑𝑛𝑛𝑗𝑗=1 𝜋𝜋𝑗𝑗 𝒩𝒩(𝒙𝒙|𝝁𝝁𝑗𝑗 , Σ𝑗𝑗 ) • 混合ガウス分布のパラメータの (+各データの所属に関する)分布 • 𝑞𝑞(𝜋𝜋1:𝑛𝑛 , 𝝁𝝁1:𝑛𝑛 , Σ1:𝑛𝑛 , 𝑘𝑘1:𝑁𝑁 ) 2026年6月24日 ロボットフロンティア@中部大学 26
変分推論(要旨だけ) • やりたいこと: 𝑞𝑞(𝜋𝜋1:𝑛𝑛 , 𝝁𝝁1:𝑛𝑛 , Σ1:𝑛𝑛 , 𝑘𝑘1:𝑁𝑁 |𝒙𝒙1:𝑁𝑁 )を求めたい • 計算が難しすぎてベイズの定理が直接計算できない • こうやるとベイズの定理の答えに近づく • 𝑞𝑞 𝜋𝜋1:𝑛𝑛 , 𝝁𝝁1:𝑛𝑛 , Σ1:𝑛𝑛 , 𝑘𝑘1:𝑁𝑁 = 𝑛𝑛 𝑞𝑞2,𝑖𝑖 (𝝁𝝁𝑖𝑖 , Σ𝑖𝑖 |𝒎𝒎𝑖𝑖 , 𝛽𝛽𝑖𝑖 , 𝑊𝑊𝑖𝑖 , 𝜐𝜐𝑖𝑖 )}𝑞𝑞3 (𝑘𝑘1:𝑁𝑁 |𝑟𝑟1:𝑁𝑁 と分解 𝑞𝑞1 𝜋𝜋1:𝑛𝑛 𝛼𝛼1:𝑛𝑛 {∏𝑖𝑖=1 • 次の2つの処理を繰り返し • 変分Eステップ: 𝑞𝑞1 , 𝑞𝑞2,𝑖𝑖 を固定して𝑞𝑞3 を改善 • 変分Mステップ: 𝑞𝑞3 を固定して𝑞𝑞1 , 𝑞𝑞2,𝑖𝑖 を改善 • いずれも赤い字で書いた分布のパラメータを更新していく • 具体的な方法は[ビショップ 2012]で 2026年6月24日 ロボットフロンティア@中部大学 27
変分推論の能力 • 当てはめる分布やその他仮定が正しい場合に上限の能力を発揮 • クラスタ数を多めにとっておけば余計な分布が消えてクラスタ数まで求まる • 上: 2次元データの クラスタリング • 下: 1次元データの分布 の推定(1つの分布の山 が実は2つの山の合成) 2026年6月24日 ロボットフロンティア@中部大学 28
ベイズ推定のまとめ • 次のアイデアで高い推定能力が得られる • 観測されるものの原因を考える • さらにその原因の不確かさ(=確率分布)も考える • 原因が関数なら関数の確率分布を考える • 原因が確率分布なら確率分布の確率分布を考える • データとベイズの定理で不確かさを減らす • くわしくは右の本で 2026年6月24日 ロボットフロンティア@中部大学 29
記憶と再生・生成 2026年6月24日 ロボットフロンティア@中部大学 30
なんで風景が思い浮かぶのか? • なんで? • 人間の頭はSSDではない • 何TBも画像を保存して置けない • 1枚の画像(数百万個の数字)すら無理 どこかに何かが 記録されている • かといって何かが脳に刻まれてないと無理 • なにがどういうふうに記録されているんでしょう? • もうひとつの疑問 • 見てないものも想像(妄想)できるのはなぜ • 夢とか 2026年6月24日 ロボットフロンティア@中部大学 31
コンピュータは? • 前のスライドのとおりたくさん画像を保存可能 • しかし妄想はできない(できなかった) • 記録されていないものは出てこない(こなかった) • 画像の生成モデル(こんなやつ。個人的には嫌いな絵柄) • できなかったけど可能に • 実は確率的な推論の話が絡んでいる 人間はよく分からないのでコンピュータのほうを見ていきましょう 2026年6月24日 ロボットフロンティア@中部大学 32
記憶のモデル化(生成モデル) • 今まで見てきた風景の確率分布𝑃𝑃𝒙𝒙 を想定 • 100万画素と仮定すると300万次元の空間の分布 • スカスカ • 𝑃𝑃𝒙𝒙 を良い性質の分布𝑄𝑄𝒛𝒛 に変換/逆変換可能に • 良い性質1: スカスカでない • 良い性質2: 画像の枚数に比べて省メモリ • 良い性質3: ランダムに1つデータを選べる( 𝒛𝒛~𝑄𝑄𝒛𝒛 ) • 𝒛𝒛~𝑄𝑄𝒛𝒛 して𝑃𝑃𝒙𝒙 の空間に戻す: 𝒙𝒙の想像(生成) 超多次元分布P 𝒙𝒙の空間 𝒛𝒛の空間 分布Q(ガウス 分布など単純な 形状) 𝒇𝒇 • うまくいけば間を埋めるような𝒙𝒙も想像可能 どうやって? 2026年6月24日 ロボットフロンティア@中部大学 𝒙𝒙の空間 33
生成モデルの作り方(その1) • エンコーダとデコーダの準備 • エンコーダ: データを𝑃𝑃から𝑄𝑄の空間へ • デコーダ: 𝑄𝑄の点を𝑃𝑃の点へ • 人工ニューラルネットワーク (ANN)で構成 • 学習 encoder decoder • 入力したデータをエンコーダ、 デコーダに通して同じ出力になるように 2026年6月24日 入力 (たくさん用意) ロボットフロンティア@中部大学 出力 (入力と同じものを出力 するように学習) 34
変分オートエンコーダ[Kingma 2014] • variational auto-encoder(VAE) • 低い次元のガウス分布にまとめる • 𝑄𝑄の空間: 潜在空間(latent space) • 入力にノイズを加えてデータと データの間の隙間を埋める • 手書きの数字/顔写真で学習した例 • [Kingma 2013]の中の図4 • 2次元の潜在空間(デモのため) 2026年6月24日 ロボットフロンティア@中部大学 35
VAEの各部位の役割 • エンコーダ: 画像の情報を圧縮 • 効率よく圧縮するために似たものを潜在空間の似た位置に配置 • 潜在空間に記憶を作っていると言える • デコーダ: お絵描き器 • エンコーダから切り離して ちぎれた線に刺激を与えるとポンと画像を吐き出す • 刺激によっては学習に使っていない画像が出てくる • 別のエンコーダをつなぐと何かできるかも • たとえば言葉を潜在空間のベクトル𝒛𝒛に変換するエンコーダなど • 𝒛𝒛 = 𝟎𝟎にして言葉や追加の情報で横から制御する方法も 2026年6月24日 ロボットフロンティア@中部大学 36
生成モデルの作成(その2) • 拡散モデル • 𝑃𝑃を同次元のガウス分布𝑄𝑄にまとめる • 画像に少しずつ雑音を混ぜた学習用のデータを エンコーダではなく計算で作成 • デコーダに相当する部分が雑音除去を学習 • 雑音(=𝑄𝑄の点)を与えると絵が生成される • もっと単純化した(最適輸送ベースの) フローマッチングという手法も使われる • 𝑄𝑄 を効率よく𝑃𝑃 に変形する方法を学習 2026年6月24日 ロボットフロンティア@中部大学 拡散(学習データ作成) 逆拡散(学習) 分布を砂山に見立て、 一番効率のよい変換方法 にしたがって画像に雑音 学習 データ作成 学習 37
記憶と再生・生成のまとめ • いくつかの手法を見たが、いずれも確率分布の変換の計算 • スカスカ(疎)な分布 密でサンプリングしやすい分布 • 風景をばらばらに覚えるのではなく、デコーダに覚えさせる • 犬とは、猫とは、建物とは・・・ • (普通の人は)写真は描けないが下手な絵は描ける • (今回は扱いませんでしたが)言葉などで思い出し方を制御可能 • ロボットの動作も同じ方法で記録、再生可能 • 模倣学習 2026年6月24日 ロボットフロンティア@中部大学 本は書いてません (灰色の本を書いて から勉強したので) 38
まとめ • ロボットに使われる確率・統計について概要を確認 • 要所で使われている • 講師が学生のとき(2000年ごろ)は不思議がられたが 必修になってしまった • (大学のカリキュラムが追い付いていないので灰色の本を・・・) • 今回扱えなかった確率・統計に関する話題 • 言葉の扱い(分散表現、Transformers) • 特に大規模言語モデルの訓練には確率の話が出てくる • デコーダの制御(ガイダンス) • 模倣学習 • 強化学習(マルコフ決定過程、確率的な状態遷移) 2026年6月24日 ロボットフロンティア@中部大学 39
ボツスライド 2026年6月24日 ロボットフロンティア@中部大学 40
最近のロボットの動き方(大雑把にはこんな感じ) • 座標ではなく固定長のベクトルを駆使 • 512次元、1024次元のベクトル • 人工ニューラルネットワークに 言葉や画像などを入力して作成 • 様々なものをベクトルで表す • 視覚情報、単語、出力(ロボットの動作) • 意味的に近いものはベクトルの値も近い • 高次元なので様々な切り口での 「近さ」が表現可能 • タスクの終わりの状態を表すベクトル に現状の状態を近づけていくとタスクが終わる 2026年6月24日 ロボットフロンティア@中部大学 41
なぜ固定長のベクトルなのか • 人工ニューラルネットワーク(ANN)の各層の 入出力がそうなっている • 世界の状態を表しやすい • 身の回りのものをすべて座標系で表そうとすると 膨大な変数の数(しかも可変)に →次元を固定しておいてうまく収める • 各元に最初から意味を持たせ(られ)ない • これで言葉や画像など異なるドメインのものを 表現可能に 2026年6月24日 ロボットフロンティア@中部大学 現実(私の部屋)は汚い 42
ベクトル表現(符号化) の試み • 上田の博士論文[Ueda 2007] • ロボットの行動則をベクトル量子化 (vector quantization, VQ)で圧縮 • [Ueda 2007]の問題 • 行動則を計算するときの状態価値関数 を表現できていない • 状態価値関数: 各点からゴールまで どれくらいコストがかかるか • 素直にANN使え (当時未発達だからしょうがない) 2026年6月24日 ロボットフロンティア@中部大学 43
Deep Q Network[Hasselt 2015] • 強化学習で計算機にゲームをさせる • 行動価値関数(状態価値関数の変化型)をANNの中に表現 • 入力: ゲームの画面 • ものの位置の異なる膨大な数の「状態」が存在 • 出力: 操作 • ANNの構造: 論文の図1 • このなかで膨大な数の状態を分類してベクトル表現に • ゲームというタスクを遂行しやすい分類 このメカニズム=ある種の記憶 (入ってきた光景を「似てる・似てない」と分類) 2026年6月24日 ロボットフロンティア@中部大学 44
自然からの信号入力(例: 視覚) • 思ったよりデジタル • 右側の視細胞(2種類、1.3億個)で受け止め電気信号に • 電気信号は右に向かって処理されて図の下向きの赤い線から脳へ • 網膜の各部分の赤い線が「視神経(100万個)」の束になって脳に • こんな構造なので • 何か見ると1.3億のバラバラな信号として入る • 白黒の絵の場合は1.3億のスイッチの ON/OFFの信号に単純化できる なんでバラバラなのに形がわかるの? 2026年6月24日 ロボットフロンティア@中部大学 目の底(左側から光) (https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Retinadiagram.svg, by S. R. Y. Cajal and Chrkl, CC-BY-SA 3.0) 45
例: 絵や写真の記憶と想像 • なにか思い浮かべてみてください • なんで思い浮かぶのでしょう? • 絵や写真の数学的な扱い(ディジタル画像を仮定) • どんなディジタル画像でも超多次元空間のベクトル • 例: 1000x1000ピクセルのRGB画像 = 3百万次元 • 𝒙𝒙 = (𝑟𝑟0,0 , 𝑔𝑔0,0 , 𝑏𝑏0,0 , 𝑟𝑟0,1 , 𝑔𝑔0,1 , 𝑏𝑏0,1 , … 𝑟𝑟999,999 , 𝑔𝑔999,999 , 𝑏𝑏999,999 ) • 思い浮かべる: 𝒙𝒙~𝑃𝑃 • 𝑃𝑃: 頭の中の絵の分布(確かにある) • 𝒙𝒙: 超多次元 2026年6月24日 ロボットフロンティア@中部大学 46
確率的自己位置推定でなんでも動く? • 計測の不完全さは克服できるが座標系を使っている • 移動だけならいいが、マニピュレータでいろんなものを 操作しようとすると座標系の中に点が増える • 「〇〇の位置」だらけに • 「〇〇」と名前がつけられるものばかりではない • ぐにゃぐにゃしたものもある • 名前が付けられないと座標に登録できない • 位置が分かってもどう動いていいか分からない 無理 2026年6月24日 ロボットフロンティア@中部大学 現実は汚い 47
問題もある • 新しい手法であっても安定しているわけではない • ここでの「すごく安定」: 人間みたいに間違えても「おかしい」と修正可能 • 精度を追及してもダメなのに精度が追及されがち • 上田研の取り組み: VPS、GNSSを使った破綻からの復帰 [吉越2025][佐々木2025] VPS: visual positioning system GNSS: global navigation satellite system • 座標を使ってしまっている • 自身の位置くらいならよいが、いろんなものを操作しようとすると計測対象 (変数の数)が爆発してしまう • ほとんどの応用例で分布をつかって行動が決められていない • メタ認知が追及されていない/計測から解放したのに計測の道具に 2026年6月24日 ロボットフロンティア@中部大学 48
次元の呪いのなかでの救い • ものの配置は無限でも、たとえば人間が思い浮かべられる 配置は少ない • 部屋のレイアウトを思い浮かべてみましょう • 移動ロボットやマニピュレータの作業空間と操作対象も思い浮かべて みましょう • 意味のある動き自体にもあまりバリエーションがない • なにか仕事をしているマニピュレータを思い浮かべてみましょう • 想像もつかない変態的な悪い動きは当たり前だけど想像できない 人間は次元の呪いのなかで無数の候補からぱっと思い浮かぶ →生成モデルという仕組みでロボットもできるようになった 2026年6月24日 ロボットフロンティア@中部大学 49