漫画内キャラクタの覚えやすさに関する基礎調査

2.5K Views

March 12, 23

スライド概要

profile-image

明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室

シェア

またはPlayer版

埋め込む »CMSなどでJSが使えない場合

関連スライド

各ページのテキスト
1.

漫画内キャラクタの 覚えやすさに関する基礎調査 櫻井翼 中村聡史 明治大学 総合数理学部

2.

背景 ⚫ 連載漫画は週単位・月単位で更新されることが多い ➔ 一定の空白期間 ⚫ 複数作品を同時に読み進めることも多い 漫画の内容(物語)や登場キャラクタについて 忘れてしまう

3.

背景 漫画を読んでいるときに名前が出てきたシーンで キャラクタの顔が浮かばないことがある ➔ 漫画の見返し,読み直し,インタネットでの検索が必要に この前会った 田中さんが…

4.

背景 漫画の見返しや読み直し ➔ 見直すべき箇所を探すのが難しい 先の内容を理解するため,義務的に振り返ることも インタネットでの検索 ➔ ネタバレを受けてしまう可能性 漫画を読み進めながら正しく物語を理解し, キャラクタについても正確で長期的に覚えられるようにする必要

5.

背景 人の顔と名前を覚えるのは難しい ⚫ 20~60代の男女1332名にアンケート [Sirabee 編集部 2017] ➔ 「顔と名前を憶えるのが苦手だ」と回答は57.0% ⚫ Baker-bakerパラドックス [McWeeny 1987] ➔ 顔画像に対応付けられた属性のうち, 職業や容姿の特徴と比べて名前を覚えるのは難しい

6.

背景 漫画,アニメ,映画,ドラマといった 様々なコンテンツ作品において登場人物を覚える必要がある 漫画では... ⚫ 連載による空白期間 ⚫ モノクロ・線画のため,顔の特徴量が少ない ⚫ 顔の描写が変化する・はっきりしていない

7.

背景 大目的 漫画キャラクタを(読書中に)覚えるための記憶手法の実現 手法の確立には... ➔ 正しく覚えられるキャラクタと覚えられないキャラクタ間で どのような違いがあるかを明らかにする必要

8.

目的 漫画内キャラクタの 覚えやすさに影響する要因の基礎調査 ➔ キャラクタに関する記憶テストの設計および実施

9.

関連研究(キャラクタの特徴) 登場人物の人数と役割について分析 [斉藤ら 2021] ➔ 物語の序盤に主要となるキャラクタが登場し, 世界観・キャラクタ設定などを説明する場面がある アニメにおけるキャラクタの特徴と髪色に関する調査 [崎田ら 2018] ➔ 描かれ方やキャラデザによって覚えやすくする工夫がなされている場合も

10.

関連研究(漫画の描かれ方) 部分的に遮蔽された顔刺激の再認記憶について調査 [富田 2017] 刺激特性自体は記憶されているが再認能力は低い ➔ 漫画もコマ割りによって再認効果の薄い表現になっている可能性 物語に関する再認テストを 漫画をセリフのみと絵のみへと分割して実施 [邑本 1993] ➔ 物語の重要度や,テスト問題と物語の文脈の適合度が影響

11.

キャラクタを覚えているとは 「キャラクタを覚えている」ことの定義 ⚫ 何も見ずにキャラクタについて思い出せる ⚫ 視覚的にキャラクタを確認すると思い出せる ⚫ 名前を見れば思い出せる ➔ 読書中,漫画の理解に困らないためには キャラクタの顔と名前をペアとして認識できていることが重要

12.

キャラクタを覚えているとは 物語を理解する上で必要なこと 顔 (視覚情報)のみ 名前のみ ©こざき亜衣「あさひなぐ」 ©許斐剛「テニスの王子様」 場面や容姿から立場・役職が分かれば, その時点での物語は理解できる 名前以外のヒントが少ない ➔ そのキャラクタをイメージできないと 物語を理解できない可能性

13.

キャラクタを覚えているとは 物語を理解する上で必要なこと 顔 (視覚情報)のみ 名前のみ キャラクタの名前から顔を思い浮かべる(名前→顔) ことができるかに着目 ©こざき亜衣「あさひなぐ」 ©許斐剛「テニスの王子様」 場面や容姿から立場・役職が分かれば, その時点での物語は理解できる 名前以外のヒントが少ない ➔ そのキャラクタをイメージできないと 物語を理解できない可能性

14.

実験設計 名前→顔を思い浮かべられるかの確認方法 ⚫ 正誤の発生するクイズ形式のテスト ➔ 選択肢として顔画像を提示した場合,後のキャラクタの回答に影響(順序効果) ⚫ 名前のみを提示し,キャラクタの絵を描かせる方法 ➔ 実験として難易度が高い 自己申告による記憶テスト ➔ テスト内容が記憶度合いに影響を与えない

15.

実験設計 自己申告による記憶テスト ⚫ キャラクタの記憶度について 「覚えている・覚えていない」を自己評価で回答 ⚫ 対象キャラクタの名前のみの提示のため, テスト内容が他キャラクタの記憶に影響を与えない 自己申告方式による懸念点 ⚫ 読者の基準で回答に偏りが生まれる ⚫ テストとしての正確性に欠ける

16.

予備実験 予備実験概要 ⚫ 漫画を一巻分読んで,登場キャラクタについてテスト ⚫ 読書直後と数日後の計2回テストを実施 質問項目 ⚫ Q1:覚えていたか(覚えている・覚えていない) ⚫ Q2:回答に自信があるか(自信あり・やや自信あり・やや自信なし・自信なし) ⚫ Q3:正しく覚えていたかを確認 についてそれぞれ自己評価

17.

予備実験 実験結果 ⚫ 2回目のテストで記憶度・自信度が下がった ➔ 記憶テストとして正しく機能 ⚫ 読者ごとで回答割合に違いはあったが,記憶能力や自信による影響 ➔ キャラクタ間の比較を行ううえでは大きな問題とならない ⚫ キャラクタによっては記憶度合いの回答が分かれていた ➔ 正確なキャラクタの評価は難しい

18.

予備実験 実験結果 ⚫ 2回目のテストで記憶度・自信度が下がった ➔ 記憶テストとして正しく機能 ⚫ 読者ごとで回答割合に違いはあったが,記憶能力や自信による影響 ➔ キャラクタ間の比較を行ううえでは大きな問題とならない ⚫ キャラクタによっては記憶度合いの回答が分かれていた 自己申告による記憶テストを採用 ➔ 正確なキャラクタの評価は難しい

19.

記憶テスト

20.

記憶テスト

21.

記憶テスト

22.

記憶テスト

23.

実験設計 漫画を一巻分読み,名前から顔を思い浮かべれられるか(名前→顔) を確認する記憶テスト ⚫ Q1:自己申告による記憶度に関する問題 ⚫ Q2:解答をフィードバックとして提示したうえで確認を行う問題

24.

実験設計(コンテンツの選定) 「スポーツ」ジャンル ⚫ 比較的登場キャラクタが多いジャンル ➔ スポーツが複数人で行うものである場合や,学校を舞台とした作品がある ⚫ キャラクタを正確に覚えていないと 物語を十分に理解できない場面が起こることが多い ➔ 対戦相手のキャラクタが久々に登場するなど

25.

実験 実験概要 ⚫ 記憶テスト:読書終了直後と3日後の合計2回 ➔ Q2の顔画像は正面を向き,感情表現の少ない場面 ⚫ 対象作品:「スポーツ」ジャンルから8作品 ➔ 1巻目での登場キャラクタが多い作品(9名以上) ⚫ 実験参加者:大学生・大学院生の20名 ➔ 1作品あたり平均10名

26.

実験結果 Q2 記憶テスト1回目 一致していなかったが, 画像を見て思い出した 一致していなくて, 画像を見ても思い出せなかった 47.1% 2.0% 0.2% なんとなく覚えている 7.8% 5.4% 3.2% まったく覚えていない 0.3% 19.3% 14.8% はっきり覚えている Q1 一致していた Q2 記憶テスト2回目 Q1 一致していた 一致していなかったが, 画像を見て思い出した 一致していなくて, 画像を見ても思い出せなかった はっきり覚えている 32.9% 1.1% 0.4% なんとなく覚えている 11.7% 6.7% 3.2% まったく覚えていない 0.2% 23.8% 20.0%

27.

実験結果 Q2 記憶テスト1回目 一致していなかったが, 画像を見て思い出した 一致していなくて, 画像を見ても思い出せなかった 47.1% 2.0% 0.2% なんとなく覚えている 7.8% 5.4% 3.2% まったく覚えていない 0.3% 19.3% 14.8% はっきり覚えている Q1 一致していた Q2 記憶テスト2回目 Q1 一致していた 一致していなかったが, 画像を見て思い出した 一致していなくて, 画像を見ても思い出せなかった はっきり覚えている 32.9% 1.1% 0.4% なんとなく覚えている 11.7% 6.7% 3.2% まったく覚えていない 0.2% 23.8% 20.0%

28.

実験結果 Q1ではっきり覚えていると回答した割合

29.

漫画内要素の分析 漫画の各要素数の収集 ⚫ 各キャラクタの名前が呼ばれた回数 ⚫ 各キャラクタが単体で描画されている回数 名前 単体描画 登場回数 ⚫ 各キャラクタの登場回数 ➔ キャラクタの記憶に影響している要素を調査 ©フウワイ・サカズキ九「送球ボーイズ」

30.

キャラクタのクラスタ分類 k-means法を用いて3クラスタに分類 ⚫ 漫画内要素の3項目 (名前・単体描画・登場回数) ⚫ 記憶テストの各選択肢の回答割合 ➔ 8作品全てのキャラクタをプロット

31.

クラスタ間の比較 クラスタごとの記憶テストの結果 記憶保持回答 画像想起回答 記憶困難回答 覚えていると回答し それが一致していた 覚えていないと回答したが 画像を見て思い出せた 覚えていないと回答し 画像を見ても思い出せなかった

32.

クラスタ間の比較 各クラスタに該当するキャラクタ クラスタ1 主人公 ライバル クラスタ2 クラスタ3 部活の先輩 中学の同級生 部活の同期 マネージャー 部活の同期 ©古舘春一「ハイキュー!!」

33.

クラスタ間の比較 各クラスタに該当するキャラクタ クラスタ1 主人公 クラスタ3 クラスタ2 同級生 偉い役職 仲良し 3人組① 仲良し 3人組②・③ 先生 その他 ©うめ「東京トイボクシーズ」

34.

クラスタ間の比較 クラスタごとの漫画内要素の登場割合(登場回数,名前,単体描画)

35.

クラスタ間の比較 クラスタごとの漫画内要素の登場割合(登場回数,名前,単体描画)

36.

クラスタ間の比較 クラスタごとの漫画内要素の登場割合(登場回数,名前,単体描画) 平均的 または 徐々に増加

37.

クラスタ間の比較 クラスタごとの漫画内要素の登場割合(登場回数,名前,単体描画) 中盤は高く 終盤で低下

38.

結果:まとめ 覚えられるキャラクタ ⚫ 物語に直接関係している(主人公と仲が良い,影響を与える) ⚫ 漫画内要素(名前が呼ばれる など )が定期的に出現(クラスタ1, 2) 覚えられないキャラクタ ⚫ 物語に必要であるが主軸と外れている(先生・お供キャラ) ⚫ 中盤~終盤にかけて登場(対戦相手)

39.

考察(記憶テストの結果より) ⚫ 1巻目のみでは,キャラクタを十分に把握するのは難しい ➔ 正確に覚えられていたキャラクタ:読書終了直後 47.1%,3日後 32.9% ⚫ 登場キャラクタの性別比がテストに影響 ➔ 少数側の性別は紅一点という印象で記憶に残っていた クラスタ2 クラスタ3 男:女=9:1の作品 各漫画内要素数がほぼ同じ キャラクタ マネージャー 中学の同級生 部活の同期

40.

考察(漫画内要素の分析より) ⚫ 登場回数が序盤から終盤で平均的(クラスタ1) ➔ 記憶容易性が高い ⚫ 登場回数:序盤で低く,中盤・終盤で高い 名前が呼ばれた回数:中盤で高く,終盤で低い(クラスタ3) ➔ 記憶容易性が低い ➔ 登場の仕方や呼ばれ方に偏りがある場合,記憶に残らない可能性

41.

考察(キャラクタの覚えやすさと特徴) 覚えられていたキャラクタ(クラスタ1) ⚫ 主人公や物語として重要な人物 ⚫ 個性的なキャラクタ(お嬢様・熱血キャラ) ©新川直司「さよなら私のクラマー」 ©フウワイ・サカズキ九「送球ボーイズ」

42.

考察(キャラクタの覚えやすさと特徴) 覚えることが難しいキャラクタ(クラスタ3) 主人公と関わりがない,関わりが薄いキャラクタ(対戦相手の選手) ➔ 序盤のみ or 中盤以降からの登場で読者の触れる機会が限定的 ©新川直司「さよなら私のクラマー」 ©こざき亜衣「あさひなぐ」

43.

考察(キャラクタの覚えやすさと特徴) 画像を見て思い出すことができたキャラクタ ⚫ 特定の印象を与える役割・役職を持つキャラクタ(有名人・監督) ⚫ 視覚的に特徴があるキャラクタ(ヘアバンド) ©こざき亜衣「あさひなぐ」 ©フウワイ・サカズキ九「送球ボーイズ」

44.

考察(キャラクタの覚えやすさと特徴) 画像を見て思い出すことができたキャラクタ ⚫ 特定の印象を与える役割・役職を持つキャラクタ(有名人・監督) ⚫ 視覚的に特徴があるキャラクタ(ヘアバンド) 記憶テストのため,感情表現の少ない顔画像のみを提示していた ➔ 覚えられなかったキャラクタも 提示する画像によっては思い出させることができる可能性

45.

展望 今後 ⚫ キャラクタの記憶容易性についてさらに調査 ⚫ 効率的にキャラクタの想起を行える支援手法について検討 ➔ キャラクタの印象を構成する要素を実際に提示

46.

まとめ 背景 目的 関連研究 漫画の内容(物語)や登場キャラクタ について忘れてしまう 漫画内キャラクタの覚えやすさに 影響する要因の基礎調査 登場人物の人数と役割について 読書中にキャラクタについて覚えられ るよう手法の確立 ➔ 記憶テストの設計および実施 キャラクタデザインについて 物語としての漫画の描かれ方について ➔ キャラクタ間の違いを明らかに 実験 漫画内要素の分析 考察&展望 自己申告による記憶テストを実施 (名前→顔) 漫画内要素と記憶テスト結果をもとに キャラクタを分類 登場の仕方や呼ばれ方に偏りがあると 記憶に残らない可能性 ⚫ 8作品のスポーツ漫画の1巻目を対象 ⚫ 登場回数 ⚫ 1作品あたり平均10名が回答 ⚫ 名前が呼ばれた回数 視覚的な情報提示で 思い出させることができる可能性 ⚫ 単体で描画されている回数 効率的に想起を行える支援手法 について検討