周辺視野領域のぼかし強調による集中促進手法

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February 12, 20

スライド概要

視線を検出し,その注視点の周辺視野領域のぼかしを強調することで集中を促進するシステムを実装した.システムを用いて3つの実験を行った結果,ビデオゲームや作業課題において集中が促進でき ること,また集中を妨害するものが課題中に提示されてもその集中が維持できることを明らかにした.

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Nakamura Laboratory (Meiji University)

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明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室

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1.

周辺視野領域のぼかし強調による 集中促進手法 先端数理科学研究科 先端メディアサイエンス専攻 中村研究室 山浦祐明 2722182031

2.

背景 ‐日常生活において作業や仕事など 集中しなければいけない場面は多い ‐特にIT事業が盛んな現在、PCを用いた ディスプレイ上での集中は非常に重要 単調作業や退屈なことに対しては 集中できなくなることが多い

3.

集中を維持するための方法 ポモドーロ法 ‐タスクを25分続けた後、5分間の休憩をとる というサイクルを繰り返す 作業用BGM ‐好きな音楽を作業中に流すことで 作業効率を向上させる 効果が曖昧で誰でも 実践できるとは言い難い

4.

集中促進に関する研究 ‐バイオフィードバック(脳波と音楽)を 提示することで集中力が向上 [渡部ら 2016] ‐集中度向上照明 [大林ら 2016] 環境を整えるのが容易でない

5.

なぜ集中できなくなるのか? 集中している場面を例に分析 ‐Webページ上で情報収集をするような場面 ‐スライドなどの資料を作成している場面

6.

例:論文や記事を書いていたら... 言葉の意味が分からない時がある ‐「基準」と「規準」 どちらの言葉を文中で使うのがよい? Webサイトで検索してみる

7.

例:論文や記事を書いていたら...

8.

例:論文や記事を書いていたら... これだけを調べるだけで よかったのに…

9.

例:論文や記事を書いていたら...

10.

例:論文や記事を書いていたら... 気になってしまう!

11.

例:論文や記事を書いていたら... 趣旨を忘れてしまい そのまま別の言葉を調べ続けてしまう 気になってしまう!

12.

例:資料作成していたら...

13.

例:資料作成していたら... 右上に現れた通知が 気になってしまう!

14.

例:資料作成していたら... 右上に現れた通知が 返信したことで会話が続いてしまい 気になってしまう! そのまま作業が中断してしまう

15.

必要となる2つの要素 集中が阻害されてしまうケース ‐気になる情報に注意が向く ‐通知に気がとられてしまう 集中の維持が必要 そもそも集中できていないケース ‐注意が散漫な状態 ‐飽きてしまう 集中の促進が必要

16.

人間の視野特性 ‐対象をはっきりと知覚 周辺視野 ‐周囲をぼんやりと知覚 ‐情報を無意識的に処理 ‐明るさ・動きを知覚 周辺視野から得られる情報量が多すぎることで 集中が阻害されている可能性

17.

人間の視野特性 ‐対象をはっきりと知覚 周辺視野 周辺視野の情報量を削減できれば ‐周囲をぼんやりと知覚 ‐情報を無意識的に処理 集中を維持できるのでは? ‐明るさ・動きの知覚 周辺視野から得られる情報量が多すぎることで 集中が阻害されている可能性

18.

有効視野に注目 ‐周辺視野に含まれる ‐認知に関与 ‐集中すると狭窄する [三浦 1998]

19.

有効視野に注目 ‐周辺視野に含まれる ‐認知に関与 ‐集中すると狭窄する [三浦 1998] 有効視野が狭窄している感覚を演出できれば 集中を促進できるのでは?

20.

有効視野狭窄時の視界 有効視野が狭窄しているとき、周辺視野の 視界はいつもよりぼけて見える状態 周辺視野のぼかしを強調することで 有効視野が狭窄している感覚を演出でき ぼかしによって情報量を削減できるのでは?

21.

有効視野狭窄時の視界 有効視野が狭窄しているとき、周辺視野の 視界はいつもよりぼけて見える状態 周辺視野のぼかしを強調することで 集中の維持・促進が行えるのでは? 周辺視野のぼかしを強調することで 有効視野が狭窄している感覚を演出でき ぼかしによって情報量を削減できるのでは?

22.

目的 周辺視野領域のぼかし強調によって 集中の維持・促進を行うシステムの実装 ぼかし強調システムを実装し 3つの仮説を検証することで有用性を調査

23.

ぼかし強調システム 検出した視線データを用いてリアルタイムに ‐注視している箇所(中心視野)を鮮明に ‐注視点の周囲(周辺視野)を不鮮明に

24.

関連研究 視線の位置に応じて、その奥行きに フォーカスされた画像を提示するシステム [Okatani 2009] →あらかじめフォーカスされた画像を 用意する必要があったため手間がかかる 本手法では事前に準備する必要がないため 手間がかからない

25.

関連研究 集中力向上のための 作業用壁紙 [橘 2012] →縞模様の刺激であるため、周辺視野領域の 情報量が大きく欠落する恐れがある 本手法ではぼかしによって 適度な情報量を維持できると期待できる

26.

3つの仮説 コンテンツ体験拡張実験(仮説1) ‐集中が促進できるかの調査 (主観評価が中心) 集中促進実験(仮説2) ‐集中が促進できるかの調査 (客観評価が中心) 集中妨害抑止実験(仮説3) ‐集中が維持できるかの調査

27.

コンテンツ体験拡張実験(仮説1) ビデオゲームの体験における 集中の促進が行えるか? コンテンツの体験において重要な臨場感や 没入感などの印象を集中の指標とする *視線位置に応じて仮想世界のぼかし具合を 変化させることで面白さや奥行き感が増幅 [Hillaire 2008]

28.

集中促進実験(仮説2) 作業課題における 集中の促進が行えるか? 課題のスコアを集中の指標とする *有効視野狭窄しているようなエフェクトを 計算課題中の周辺視野に提示することで 深い集中状態に入れる[髙橋 2017]

29.

集中妨害抑止実験(仮説3) 記憶課題に取り組んでいる際に 妨害刺激が提示されても 集中が維持できるか? 記憶課題のスコアを集中の指標とする *注視点から6.5~40度の範囲では図形の 構成要素の一部しか知覚できない [福田 1978]

30.

3つの仮説 コンテンツ体験拡張実験(仮説1) ‐集中が促進できるかの調査 (主観評価が中心) 集中促進実験(仮説2) ‐集中が促進できるかの調査 (客観評価が中心) 集中妨害抑止実験(仮説3) ‐集中が維持できるかの調査

31.

コンテンツ体験拡張実験(HCI184にて発表) 実験協力者 ‐大学生・大学院生6名 実験概要 ‐実際に発売されている ゲームをそれぞれ ぼかしありなしで 交互に4回プレイ ‐使用ゲームは4種類 ‐できるだけハイスコア を目指してもらう

32.

選定ゲーム BADLAND ©Frogmind Oy 2017 ぷよぷよテトリス ©SEGA Tetris ®&© 1985~2017 Tetris Holding. SPACE INVADERS EXTREME ©TAITO CORP 1978, 2018 Getting Over It ©Bennett Foddy 2017

33.

選定ゲーム BADLAND ©Frogmind Oy 2017 SPACE INVADERS EXTREME ©TAITO CORP 1978, 2018 明度の差が大きなものに対して ぼかしはどう影響するか? ぷよぷよテトリス ©SEGA Tetris ®&© 1985~2017 Tetris Holding. Getting Over It ©Bennett Foddy 2017

34.

選定ゲーム BADLAND ©Frogmind Oy 2017 SPACE INVADERS EXTREME ©TAITO CORP 1978, 2018 多くの色を使った演出に対して ぼかしはどう影響するか? ぷよぷよテトリス ©SEGA Tetris ®&© 1985~2017 Tetris Holding. Getting Over It ©Bennett Foddy 2017

35.

選定ゲーム 視認性に影響が及んだ際に 技術力にも影響は及ぶか? BADLAND ©Frogmind Oy 2017 ぷよぷよテトリス ©SEGA Tetris ®&© 1985~2017 Tetris Holding. SPACE INVADERS EXTREME ©TAITO CORP 1978, 2018 Getting Over It ©Bennett Foddy 2017

36.

選定ゲーム 難易度が高いため 集中力が途切れやすいが どう影響するか? BADLAND ©Frogmind Oy 2017 ぷよぷよテトリス ©SEGA Tetris ®&© 1985~2017 Tetris Holding. SPACE INVADERS EXTREME ©TAITO CORP 1978, 2018 Getting Over It ©Bennett Foddy 2017

37.

評価指標 ‐臨場感 ‐没入感 ‐立体感 ‐緊張感 ‐心地よさ具合 ‐見えやすさ ‐集中しすいさ ‐目の疲れ 順位(各ゲームのプレイスコア) 客観集中度(JINS MEME ES) いずれも [-2] ~ [+2]の 範囲で選択

38.

4種類のゲームの値を平均した結果

39.

4種類のゲームの値を平均した結果

40.

4種類のゲームの値を平均した結果

41.

4種類のゲームの値を平均した結果

42.

ぷよぷよテトリス Getting Over It BADLAND SPACE INVADERS EXTREME

43.

ぷよぷよテトリス Getting Over It BADLAND SPACE INVADERS EXTREME

44.

個別に見ても、4種を平均した結果と ぷよぷよテトリス Getting Over It ほぼ変わらない BADLAND SPACE INVADERS EXTREME

45.

結果まとめ ぼかし強調により ‐没入感や臨場感などの印象が増幅する ‐見やすさなどの生理的印象が低減する ‐集中しやすさが向上する ‐技術力に影響は及ばない 集中が促進されたと言える

46.

3つの仮説 コンテンツ体験拡張実験(仮説1) ‐集中が促進できるかの調査 (主観評価が中心) 集中促進実験(仮説2) ‐集中が促進できるかの調査 (客観評価が中心) 集中妨害抑止実験(仮説3) ‐集中が維持できるかの調査 立証!

47.

3つの仮説 コンテンツ体験拡張実験(仮説1) ‐集中が促進できるかの調査 (主観評価が中心) 集中促進実験(仮説2) ‐集中が促進できるかの調査 (客観評価が中心) 集中妨害抑止実験(仮説3) ‐集中が維持できるかの調査 立証!

48.

集中促進実験(HCI184にて発表) ‐大学生・大学院生6名 ‐日常的な作業を想定した 課題を3種類用意 ‐ぼかしありなし条件で それぞれ交互に行う ‐集中と作業パフォーマンス に対しての影響を調査

49.

用意した3課題 タイピング課題 文章理解課題 集中持続課題

50.

タイピング課題 「e-typing」

51.

課題設定:タイピング課題 選定理由 ‐PCを利用した作業にはタイピング行為が必須 ‐タイピング行為そのものがどう影響を 受けるかを調査するため 課題内容 ‐約230字の長文をタイピング、計4回実施 ‐所要時間・速度・ミスタイプ数を計測

52.

課題2:文章理解課題 「青空文庫」

53.

課題設定:文章理解課題 選定理由 ‐論文や記事を読み、内容を理解したうえで レポートにまとめる作業を想定 ‐理解速度や読む速度にどう影響を与えるか 調査するため 課題内容 ‐約6000字の小説を読み、その概要をテキスト ファイルに記述する、計2回実施 ‐約200字の小説をチュートリアルとして読書 ‐読了時間・記述時間を計測

54.

課題3:集中持続課題 「Super Jigsaw Puzzle: Monuments」 ©Flat Cat Games

55.

課題設定:集中持続課題 選定理由 ‐あることをやり続ける作業を想定 ‐集中力や作業パフォーマンスが持続するように なるのかを調査するため 課題内容 ‐80ピースのジグソーパズルを10分間の 制限時間内に可能な限り当てはめる、計4回実施 ‐チュートリアルとして40ピースの ジグソーパズルを3分間行う ‐経過時間・当てはめられたピース数を計測

56.

評価指標 ・課題に対する主観評価 ‐課題の精度・達成速度・出来 [-2]~[+2]の 範囲で選択 ・生理的印象 ‐心地よさ具合・見えやすさ 集中しやすさ・目の疲れ ‐各課題のスコア(所要時間等) ‐客観集中度(0pt~100pt [JINS MEME ES])

57.

タイピング課題 文章理解課題 集中持続課題

58.

課題の主観評価に 差は見られなかった タイピング課題 文章理解課題 集中持続課題

59.

タイピング課題 文章理解課題 心地よさ具合と見えやすさが低下した 集中持続課題

60.

タイピング課題 文章理解課題 タイピング課題以外の 課題のスコアが上昇し タイピング課題への影響はほぼない 集中持続課題

61.

タイピング課題 文章理解課題 客観集中度が向上した 集中持続課題

62.

客観集中度の推移(集中持続課題) ぼかし強調によって 高い集中度を維持できていた

63.

結果まとめ ぼかし強調により ‐客観集中度が向上 ‐集中度を高く維持できる ‐見えやすさや心地よさが低下する ‐タイピングの以外のスコアが向上し タイピングのスコアには影響はない 集中が促進されたと言える

64.

3つの仮説 コンテンツ体験拡張実験(仮説1) ‐集中が促進できるかの調査 (主観評価が中心) 集中促進実験(仮説2) 立証! ‐集中が促進できるかの調査 (客観評価が中心) 集中妨害抑止実験(仮説3) ‐集中が維持できるかの調査 立証!

65.

3つの仮説 コンテンツ体験拡張実験(仮説1) ‐集中が促進できるかの調査 (主観評価が中心) 集中促進実験(仮説2) 立証! ‐集中が促進できるかの調査 (客観評価が中心) 集中妨害抑止実験(仮説3) ‐集中が維持できるかの調査 立証!

66.

集中妨害抑止実験(HCI185にて発表) ‐大学生・大学院生8名 ‐ボタンの点滅順番を記憶する 記憶タスクを行う ‐ボタンの周りに妨害刺激となる 苗字を表示(*知覚的鋭敏化) ‐4段階のぼかしの強さと 自身の名前の提示ありなしで比較 *知覚的鋭敏化 自身に関連した情報は無視ができない現象

68.

参考にした実験 記憶タスクの周りに自身の名前を表示させることで ‐記憶力が低下 ‐視線が自身の名前に向いてしまう 上記の結果から、知覚的鋭敏化が発生[大野 2018]

69.

ぼかしレベル0 ぼかしレベル1 ぼかしレベル2 ぼかしレベル3

70.

結果(タイミング別正答率 正規化) 視線移動量が多いグループ 視線移動量が少ないグループ

71.

結果(タイミング別正答率 正規化) 視線移動量が多いグループ 適度な強さのぼかし強調を行うことで 集中が妨害されず、正答率が向上 視線移動量が少ないグループ

72.

結果(視線ログ) ぼかしレベル0,名前提示条件 ぼかしレベル1,名前提示条件 知覚的鋭敏化が抑止された

73.

結果のまとめ ‐ぼかしレベル1のときに ・記憶タスクの正答率が向上した ・知覚的鋭敏化が抑止された ‐ぼかしレベル1以外のぼかし強調では 正答率が低下した 適度な強さのぼかし強調によって 集中が維持できたと言える

74.

3つの仮説 コンテンツ体験拡張実験(仮説1) 立証! ‐集中が促進できるかの調査 (主観評価が中心) 集中促進実験(仮説2) 立証! ‐集中が促進できるかの調査 (客観評価が中心) 集中妨害抑止実験(仮説3) 立証! ‐集中が維持できるかの調査

75.

3つの仮説 コンテンツ体験拡張実験(仮説1) 立証! ‐集中が促進できるかの調査 (主観評価が中心) 立証! 集中促進実験(仮説2) ぼかし強調によって集中の ‐集中が促進できるかの調査 維持・促進が行える (客観評価が中心) 集中妨害抑止実験(仮説3) 立証! ‐集中が維持できるかの調査

76.

考察(適切なぼかし強調に向けて) 今回行った実験の対象の情報には ‐明度や彩度といった色情報 ‐課題の複雑さ ‐意味を持つ文字列情報 など非常に多くの情報が含まれていた これらの情報によってぼかし強調の効果が 変動していた可能性が高い

77.

考察(適切なぼかし強調に向けて) 今回行った実験の対象の情報には ‐明度や彩度といった色情報 ‐課題の複雑さ ‐意味を持つ文字列情報 網羅的な実験からデータを収集することが など非常に多くの情報が含まれていた 理想的なぼかし強調を実現する道 これらの情報によってぼかし強調の効果が 変動していた可能性が高い

78.

まとめ 目的 ‐集中の維持・促進を行う手法の実現 アプローチ ‐情報量の削減と有効視野狭窄の演出により 集中の維持と促進を目指す 手法 ‐周辺視野のぼかしを強調 実験結果 ‐ビデオゲームと作業課題における集中が促進できた ‐知覚的鋭敏化による集中妨害が抑止され 集中が維持できた