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November 08, 17
スライド概要
スマートフォンの普及により,リアルタイムに地図を確認できるようになったが, それでも道に迷う人は後を絶たない.我々はこれまでメガネ型視線計測装置を用いて歩行時の視線ログを収集し,歩行者が道に迷ったと気付く前までの視線対象の傾向を分析してきた.しかし,歩行者が道に迷ったと気付く前には既に迷っているため,迷子の要因を分析するためには道に迷う前までの視線対象や振る舞いを分析する必要がある.そこで本研究では,歩行者が道に迷う前までの歩行経路や視線対象,振る舞いなどから,なぜ道に迷うかの要因を明らかにする.
明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室
歩行経路と視線対象に 基づく迷子要因の分析 神山拓史(明治大学大学院 先端数理科学研究科) 中村聡史(明治大学 総合数理学部)
背景 道に迷う要因 道に迷う要因について ★ 地理的要因 ✦ 五叉路などの複雑な交差点 ★ 心理的要因 ✦ 何も考えずにぼーっと歩く ★ 人間の空間認知の要因 ✦ 斜め45度以下の曲がり角は直進と認識 [山本 2002] ★ 注意力 ✦ 道に迷いやすい人は動的なものに注意 [新垣 1999]
背景 道に迷う要因と視線 道に迷う要因について 人間の視線が密接に関わっている! ★ 地理的要因 ✦ 五叉路などの複雑な交差点 ★ 心理的要因 ✦ 何も考えずにぼーっと歩く ★ 人間の空間認知の要因 ✦ 斜め45度以下の曲がり角は直進と認識 [山本 2002] ★ 注意力 ✦ 道に迷いやすい人は動的なものに注意 [新垣 1999]
関連研究 歩行中の視線計測に関する研究 歩行中の視線を計測する研究 ★ 道を探索しながら歩行する時の眼球運動を測定 ✦ 注視と歩行の関係について調査 ๏ 屋外の巨大迷路にて[松下 1991] ๏ 小規模の屋内迷路にて[北濱 1999] ๏ 地下鉄駅舎内にて[鈴木 2001] 街中で迷うことについて考慮されていない
関連研究 歩行中の視線計測に関する研究 歩行中の視線を計測する研究 ★ 道を探索しながら歩行する時の眼球運動を測定 ✦ 注視と歩行の関係について調査 ๏ 屋外の巨大迷路にて[松下 1991] ๏ 小規模の屋内迷路にて[北濱 1999] ๏ 地下鉄駅舎内にて[鈴木 2001] 街中での歩行時の視線対象の分析も必要
我々の過去の研究 街歩き時の視線ログ分析による迷子特徴に関する調査 [神山 2017] ★ 道に迷ったと自覚するまでの視線対象の傾向を分析 ✦ 道に迷う人は迷ったと自覚する前までに 景観や建物を見る時間が長い 道に迷ったと自覚した時にはすでに迷っている どのように道に迷ったかについて考慮していない
我々の過去の研究 街歩き時の視線ログ分析による迷子特徴に関する調査 [神山 2017] ★ 道に迷ったと自覚するまでの視線対象の傾向を分析 ✦ 道に迷う人は迷ったと自覚する前までに 景観や建物を見る時間が長い 道に迷ったと自覚した時にはすでに迷っている 道に迷った要因を検証するには不十分 どのように道に迷ったかについて考慮していない
目的 道に迷ってしまう要因を調査 ★ どのように道に迷ったかを分類 ★ 道に迷う前までの視線ログを使って分析 道に迷わせない手法の提案への発展
歩行実験 設計 迷子を誘発する歩行実験 ★ 歩行者の視線や振る舞いに関して, 道に迷った時と迷わなかった時の違いはなにか? 新宿駅周辺で実施 ๏ 大人でも迷子になってしまう駅 第2位* ✦ 10個の経路を用いたオリエンテーリング形式の歩行実験 ๏ 各経路ごとに条件を付与し,道に迷う要因を想定して設計 ✦ • • 地上を歩く 雨風をしのげるような地下を歩く *: and more… https://gakumado.mynavi.jp/freshers/articles/13183
歩行実験 概要 実験概要 ★ ウェアラブルな視線計測装置を装着して順に歩く ✦ Tobii Pro Glasses 2を使用 ★ 歩行時の参照情報の制限はなし ★ 実験人数:23人 ✦ ✦ 18〜23歳の学生 男性 18人,女性5人
結果 道に迷う判断基準 道に迷ったとする判断基準 ★ 出発地から目的地までの歩行経路 ✦ ✦ 同じ場所を往来している はじめから違う場所へ向かっていた などなど ★ 歩行中の独り言 ✦ 「ここどこ?」「どう行けばいいんだ?」 ★ 実験後の感想
結果 道の迷い方の分類 どのように道に迷ったかの分類について ★ 実験協力者の歩行経路から以下の3つの状態に分類 ✦ 道に迷わなかった ✦ 出発してからすぐに目的地とは違う方向に歩いた ✦ 目的地に向かう途中から道に迷った
考察 道に迷う場所について 道に迷った人が多かった場所での経路の特徴 ★ 経路設計時のどのように道に迷うかの想定 ✦ 経路4:新宿駅西口改札 → 新宿の目 ๏ 多数の柱や標識と多くの歩行者がいるため 視界が遮られやすい
考察 道に迷う場所について 道に迷った人が多かった場所での経路の特徴 ★ 経路設計時のどのように道に迷うかの想定 ✦ 経路8:京王プラザホテル → 新線新宿駅 ๏ 道が上下に入り組んでいて構造がわかりにくい
考察 道に迷う場所について 道に迷った人が多かった場所での経路の特徴 ★ 経路設計時のどのように道に迷うかの想定 ✦ ✦ 経路4:多数の柱や標識と多くの歩行者がいるため 視界が遮られやすい 経路8:道が上下に入り組んでいて構造がわかりにくい 混雑している視界が遮られる屋内空間 道が上下に入り組んだ屋外空間
考察 道に迷いにくい場所 ほとんど道に迷わなかった経路 ★ 経路設計時のどのように道に迷うかの想定 ✦ 経路3:改札を通らずに東口から西口に向かうことが 地下通路の複雑であるために容易ではない ๏ 経路2で経路3に続く道を通っていた → 通るべき経路を想像しやすかった • 経路設計次第で迷う可能性有り
考察 道に迷いにくい場所 ほとんど道に迷わなかった経路 ★ 経路設計時のどのように道に迷うかの想定 ✦ 経路5:目的地付近で地上に上がる際に 何種類もの階段やエスカレータがあり戸惑う ๏ 目的地付近で行ける経路が何種類あっても迷わない
考察 道に迷いにくい場所 ほとんど道に迷わなかった経路 ★ 経路設計時のどのように道に迷うかの想定 ✦ 経路6・7:高層ビルが多く立ち並び, 現在地が把握できず混乱する ๏ 道路幅もかなり広く,向かう経路も かなり単純だったために迷いにくかった?
考察 道に迷いにくい場所 ほとんど道に迷わなかった経路 ★ 経路設計時のどのように道に迷うかの想定 ✦ 経路9・10:新宿駅西口まで向かう標識が示す矢印が 分かりにくい ๏ 1つの標識がわかりにくいだけでは迷わない • 標識が1つの場所に多数存在する方が混乱する
結果 道に迷う前の人の特徴 道に迷う前までの特徴的な行動について ★ 自身の進行方向に合わせて地図を回し,地図に自身を 投影するような行動 ★ 行くべき経路が分からず周囲を見渡す ★ 自身が向かう方向が正しいと思い込んでおり,周囲を あまり見ることもなく前進
考察 道に迷う前の人の特徴 道に迷う前までの特徴的な行動について ★ 自身の進行方向に合わせて地図を回し,地図に自身を 投影するような行動 ★ 行くべき経路が分からず周囲を見渡す ★ 自身が゙ 向かう方向が正しいと思い込んでおり,周囲を あまり見ることもなく前進 地図を回転させて閲覧する行動は道に迷う人の特徴
考察 道に迷う前の人の特徴 道に迷う前までの特徴的な行動について ★ 自身の進行方向に合わせて地図を回転して 地図に自身を投影するような行動 ✦ 多くの人が地図を回転した場所を道に迷う場所と仮定 ๏ 道に迷う場所を通知し,注意喚起 • 道に迷わせない手法の1つとして考えられる
考察 道に迷う前の人の特徴 道に迷う前までの特徴的な行動について ★ 自身の進行方向に合わせて地図を回し,地図に自身を 投影するような行動 ★ 行くべき経路が分からず周囲を見渡す ★ 自身が向かう方向が正しいと思い込んでおり,周囲を あまり見ることもなく前進 道に迷う前の周囲を見る回数については後述
結果 視線対象について 特に迷いやすかった場所において, 道に迷った人と迷わなかった人との比較 ★ どの程度経路を検索していたかの比較 ★ 周囲を見ていた回数の比較 ✦ 仮説:道に迷った人の方が迷わなかった人よりも 周囲を見ていた回数が多い ๏ 先行研究の結果:道に迷う人は迷ったと自覚する前までに 景観や建物を見る時間が長い
結果 視線対象について(検索編) 検索回数について
結果 視線対象について(検索編) 参照した情報の種類に対する検索回数について
考察 視線対象について(検索編) 経路を検索するにあたって ★ 道に迷わなかった実験協力者でも,地図アプリ以外に 様々な情報ソースを利用 ✦ ✦ ✦ 画像検索結果 Webページ YouTube
考察 視線対象について(検索編) 経路を検索するにあたって ★ 道に迷わなかった実験協力者でも,地図アプリ以外に 様々な情報ソースを利用 ✦ ✦ ✦ 画像検索結果 Webページ YouTube
考察 視線対象について(検索編) 経路を検索するにあたって ★ 道に迷わなかった実験協力者でも,地図アプリ以外に 様々な情報ソースを利用 ✦ ✦ ✦ 画像検索結果 Webページ YouTube
考察 視線対象について(検索編) 経路を検索するにあたって ★ 道に迷わなかった実験協力者でも,地図アプリ以外に 様々な情報ソースを利用 ✦ ✦ ✦ 画像検索結果 Webページ YouTube 様々な情報を用いて経路を調べることは効果的
結果 視線対象について(周囲編) 周囲を見た回数について
考察 視線対象について(周囲編) 道に迷う前までの特徴的な行動について ★ 自身の進行方向に合わせて地図を回し,地図に自身を 投影するような行動 ★ 行くべき経路が分からず周囲を見渡す ★ 自身が向かう方向が正しいと思い込んでおり,周囲を あまり見ることもなく前進
考察 視線対象について(周囲編) 道に迷う前までの特徴的な行動について ★ 自身の進行方向に合わせて地図を回し,地図に自身を 投影するような行動 ★ 行くべき経路が分からず周囲を見渡す ★ 自身が向かう方向が正しいと思い込んでおり,周囲を あまり見ることもなく前進
考察 視線対象について(周囲編) 周囲を見た回数について ★ 特に迷いやすい場所での行動 ✦ 道に迷った人の方が周囲を見た回数が多かった ★ それ以外の場所で道に迷った場合の行動 ✦ 周囲をあまり見ずにまっすぐ前進していた様子が観察 仮説 道に迷った人の方が迷わなかった人よりも 周囲を見ていた回数が多い
考察 視線対象について(周囲編) 周囲を見た回数について ★ 特に迷いやすい場所での行動 ✦ 道に迷った人の方が周囲を見た回数が多かった ★ それ以外の場所で道に迷った場合の行動 ✦ 周囲をあまり見ずにまっすぐ前進していた様子が観察 周囲を見る回数が多すぎても少なすぎてもNG
考察 まとめ 歩行経路や視線の動きから道に迷った要因を分析 ★ 道に迷う場所 ✦ ✦ 屋内で視界が 遮られやすい場所 上下に入り組むなど複雑な構造をしている場所 ★ 道に迷う人の特徴 ✦ 地図を回転させて参照する行動はNG ★ 道に迷う前の行動 ✦ ✦ 様々な手段の経路検索を用いることが効果的 周囲を見渡しすぎても,見ないのもNG
今後の展望 要因調査の発展 実験規模について ★ 新宿駅周辺以外での実験実施 ✦ 東京都心:渋谷駅周辺・池袋駅周辺・大手町〜東京駅間 実験の分析について ★ 習熟度の考慮 ★ 年齢の考慮
今後の展望 道に迷わせない手法の提案 道に迷わせないインタラクティブシステム ★ 道に迷いやすい場所の通知 ✦ ✦ ✦ 多くの人が地図を回した場所 視界が遮られやすい屋内空間 道の構造が入り組んでいる場所 ★ 過去に様々な研究も行われている 見やすい略地図を生成・提示 ๏ [馬場口 1997], [二宮 2006], Google Map ✦ ランドマークを使って記憶しやすい経路を作成・提示 ๏ [Duckham 2010], [中澤 2012], [森永 2016] ✦
まとめ 歩行経路や視線の動きから道に迷った要因を分析 ★ 視線計測装置を用いた新宿駅周辺での歩行実験 ★ 歩行経路と視線ログから道に迷う前までの特徴を分析 ✦ ✦ 人通りが多い場所や上下に入り組む場所は迷いやすい 道に迷う前までの行動に特徴的な行動が見られた 今後の展望 ★ 他の実験場所での実施 ★ 習熟度や年齢を考慮した分析