視線に連動した記憶対象文字列へのぼかし深度操作による記憶容易性向上手法のより多角的な調査

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March 13, 24

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明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室

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1.

視線に連動した記憶対象文字列への ぼかし深度制御による 記憶容易性向上手法のより多角的な調査 青木柊八 髙野沙也香 中村聡史 明治大学大学院 先端数理科学研究科

2.

視線に連動したぼかし深度制御 記憶対象文字列に ぼかしを付与 ↓ 視線を向けると かかっているぼかしが 段階的に弱まる 2

3.

背景 • 記憶は学習において重要な要素である 記憶という行為は容易ではない • 暗記をする際には短期記憶を長期記憶に 昇華させる必要がある 繰り返し学習には多くの時間と労力がかかる 3

4.

背景 • 学習効率を上げることで 少ない繰り返し学習でより多くの暗記が行える • 単語の記憶容易性が向上する手法は いくつか存在する • ハイライトなどで単語を目立たせる • 赤ペン・赤シートなどで復習をしやすくする 4

5.

背景 • 学習効率を上げることで 少ない繰り返し学習でより多くの暗記が行える 単語の記憶容易性が向上する • 単語の記憶容易性を向上させる手法は 効果として知られている いくつか存在する • ハイライトなどで単語を目立たせる 非流暢性効果に着目 • 赤ペン・赤シートなどで復習をしやすくする 5

6.

関連研究:非流暢性効果 • 文字の流暢度が低ければ低いほど 記憶容易性が高くなる効果(=非流暢性効果) • 文字色を薄くして流暢度を低くすることで 記憶保持力が向上する[Oppenheimer 2011] Oppemheimer, D. M., Diemand-Yauman, C., Vaughan, E. B.. Fortune favors the bold (and the italicized): Effect of disfluency on educational outcomes. Cognition. 2011, vol. 118, no. 1, p. 111-115. 6

7.

関連研究:非流暢性効果 • 非流暢性効果に加え,単語への注視を 行わせることが重要であると考えた 視線に連動したぼかし深度制御に着目 7

8.

視線に連動した流暢度制御の提案(HCI201) • 実験結果 • 提案手法を利用した際の方が 単語の記憶容易性を向上させられる • 提案手法を利用した際の方が 単語へ視線を向けていた時間が長くなる 8

9.

視線に連動した流暢度制御の提案(HCI201) • 比較対象: • 記憶対象に何も変化を与えていない • 提案手法では記憶対象がぼかしにより強調されていた →記憶対象が明確化されていた 9

10.

視線に連動した流暢度制御の提案(HCI201) • 比較対象: • 記憶対象に何も変化を与えていない • 提案手法では記憶対象がぼかしにより強調されていた →記憶対象が明確化されていた 強調された 単語への誘導による影響 10

11.

目的 視線に連動したぼかし深度制御の有用性に 関するより多角的な検討と調査 1. 実際に学習の際に用いられる既存手法を 比較対象として提案手法の有用性を調査する 2. 視線のログを利用して視線の遷移や 単語への注視が記憶効率に与える影響を調査する 11

12.

既存手法 • 既存手法としてハイライトで単語を強調する • 実際の学習でも利用される 12

13.

特徴記憶実験 • 特徴記憶実験 固有名詞 架空の生物や 物体の特徴を覚えてもらう • 実験協力者の視線のログを取得 文字列に向けられていた 視線情報を分析できるようにした 7つの 特徴 13

14.

実験設計:特徴記憶実験手順 記憶フェーズ 忘却フェーズ 試験フェーズ 14

15.

実験設計:記憶フェーズ • 90秒で特徴を覚えてもらう 15

16.

実験設計:忘却フェーズ • 15分間の休憩時間を用意 • 特徴の記憶維持に意識を向けさせない • 簡単にできる単純作業として 15分の間パズルを行う • ジグソーパズル→ブロックパズルに変更 16

17.

実験設計:試験フェーズ • 21項目から10項目を出題 • 固有名詞の特徴を 回答してもらう形式 17

18.

過去の実験設計 • 提案手法2回,手法なし2回を 順番ランダムで行う • 実験者内比較 →提示した順番による影響 18

19.

実験設計の変更:実験者間比較 • 事前に2回手法なし, 約一週間あけた後に 手法ありを3回行う形 • 手法なしの結果をもとに 実験協力者を各群に分配 既存手法群 提案手法群 • 基礎的な記憶力の偏りを 軽減する 19

20.

実験設計の変更:実験者間比較 • テーマは5つ 既存手法群 • 化石,惑星,宇宙人, 宝石,微生物 • 順番を統一させることで 影響を軽減 提案手法群 • 前半:宇宙人→宝石 • 後半:化石→惑星→微生物 20

21.

実験結果 • 実験協力者:大学生および大学院生30名 • 提案手法群:15名 • 既存手法群:15名 • 前半2回のテストの平均点(基礎点数)と 後半3回のテストの平均点(手法点数)において 片方でも平均から±2SDの間に含まれない人を除外 • 提案手法群:14名 • 既存手法群:13名 21

22.

実験結果:点数分析 • 既存手法群 • 基礎点数:68.1点 • 手法点数:44.6点 (点) • 提案手法群 • 基礎点数:62.5点 • 手法点数:49.0点 22

23.

実験結果:点数分析 • 既存手法群 • 分散が小さい • 提案手法群 • 分散が大きい • 高い点数の分布がいくつか 存在する 23

24.

実験結果:点数分析 • 基礎点数の高さによる傾向の調査 • 各手法で実験協力者を基礎点数が 平均点以上のグループ(高得点グループ)と 平均点未満のグループ(低得点グループ)に分類 • 既存手法:高得点7名,低得点6名 • 提案手法:高得点7名,低得点7名 24

25.

実験結果:点数分析 • 既存手法群 • 高得点グループと 低得点グループで差が小さい • 提案手法群 • 高得点グループの方が 低得点グループと比べて 点数が高い 25

26.

考察:点数分析 • 提案手法群の方が既存手法群より平均点が高い • 提案手法群の方が既存手法群より 基礎点数と手法点数の差が小さい • 提案手法群の方が既存手法群より分散が大きく, 有効的に働いた可能性がある 26

27.

考察:点数分析 • 提案手法群の方が既存手法群より平均点が高い 提案手法の方が既存手法よりも • 提案手法群の方が既存手法群より 単語の記憶容易性を向上させられる 基礎点数と手法点数の差が小さい ↓ • 提案手法群の方が既存手法群より分散が大きく, 強調による効果ではない 有効的に働いた可能性がある 27

28.

実験結果:視線分析 • 手法ごとの正解・不正解した単語を 見ていた総フレーム数の平均 • 提案手法の方が既存手法よりも 有意に長く視線を向けている • 提案手法では正解・不正解に関わらず時間が長い • 既存手法では正解した単語の方が有意に長く見られている 28

29.

実験結果:視線分析 • 提案手法群では右の位置に単語があった際には 正解・不正解で視線の長さに最も違いがある • 既存手法群では真ん中の位置に単語があった際には 正解・不正解で視線の長さに最も違いがある 29

30.

実験結果:視線分析 • 提案手法群では右の位置に単語があった際には 正解・不正解で視線の長さに最も違いがある • 既存手法群では真ん中の位置に単語があった際には 正解・不正解で視線の長さに最も違いがある 30

31.

実験結果:視線分析 提案手法群 高い点数を取った人の視線 低い点数を取った人の視線 31

32.

実験結果:視線分析 提案手法群:高い点数を取った人の視線 • 縦方向のブレが少ない • 1フレームあたりの 平均移動距離は125.5px 32

33.

実験結果:視線分析 提案手法群:低い点数を取った人の視線 • 縦方向のブレが多い • 1フレームあたりの 平均移動距離は91.1px 33

34.

実験結果:視線分析 既存手法群 高い点数を取った人の視線 低い点数を取った人の視線 34

35.

実験結果:視線分析 既存手法群:高い点数を取った人の視線 • 縦方向のブレが多い • 1フレームあたりの 平均移動距離は110.1px • 視線が単語の上で 停止している 35

36.

実験結果:視線分析 既存手法群:低い点数を取った人の視線 • 縦方向のブレが多い • 1フレームあたりの 平均移動距離は124.4px • 視線が単語と単語の間で 停止している 36

37.

考察:視線分析 • 既存手法群では正解した問題の方を 不正解した問題よりも有意に長く見ていた →学習の際は単語に視線を向ける時間を延ばすのが重要 • 正誤に関わらず提案手法群の方が既存手法群より 有意に長く単語に視線を向けていた • 提案手法を利用することで単語へ向けられる 視線の長さを延ばすことが可能 37

38.

考察:視線分析 • 既存手法群では正解した問題の方を 不正解した問題よりも有意に長く見ていた →学習の際は単語に視線を向ける時間を延ばすのが重要 単語へ向けられる視線の長さを 延ばすことでその単語の記憶容易性を • 正誤に関わらず提案手法群の方が既存手法群より 有意に長く単語に視線を向けていた 向上させることができた • 提案手法を利用することで単語へ向けられる 視線の長さを延ばすことが可能 38

39.

考察:視線分析 • 学習の際には視線のブレが多いと 記憶効率が下がってしまう • 学習の際には複数の単語を同時に見るよりも 一つの単語に集中する方が覚えられる • 自分が今視線を向けている単語のみを見やすくし, 他の単語をぼかしにより意識しにくくさせることの有用性 39

40.

今後の展望 • 視線による変化が与える影響の調査 • ぼかしのみを与えたものを比較対象とする • ぼかしを残すことによる 非流暢性効果の維持に対する検討 • 単語へのぼかしを完全に晴らすのではなく 多少残す手法の検討 40

41.

まとめ • 目的 • 視線に連動したぼかし深度制御のさらなる調査 • 結果 • 提案手法の方が既存手法よりも 単語の記憶容易性を向上させられる • 展望 • 視線の変化による影響の調査 41