0.9K Views
December 10, 19
スライド概要
HCI185で発表したスライドです
明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室
周辺視野へのぼかしエフェクトによる ディスプレイ上の集中妨害効果の抑止 山浦祐明 中村聡史 明治大学
背景 PCを用いた作業や課題における集中は 正確さや速さに関わるため非常に重要
背景 PCを用いた作業や課題における集中は 正確さや速さに関わるため非常に重要 集中が乱される場面は多い
例:論文や記事を書いていたら... 言葉の意味が分からない時がある ‐「基準」と「規準」 どちらの言葉を文中で使うのがよい? Webサイトで検索してみる
例:論文や記事を書いていたら...
例:論文や記事を書いていたら... これだけを調べるだけで よかったのに…
例:論文や記事を書いていたら...
例:論文や記事を書いていたら... 気になってしまう!
例:論文や記事を書いていたら... 趣旨を忘れてしまい そのまま別の言葉を調べ続けてしまう 気になってしまう!
例:資料作成していたら...
例:資料作成していたら... 右上に現れた通知が 気になってしまう!
例:資料作成していたら... 右上に現れた通知が 返信したことで会話が続いてしまい 気になってしまう! そのまま作業が中断してしまう
いずれも気になる情報に注意が向く Webページ上での情報収集 ‐キャッチーな記事が気になってしまう 資料作成中 ‐画面端の通知に気を取られる ある情報が気になってしまった結果 作業から離れてしまうことがある
集中していてもなぜ気になるのか? 知覚的鋭敏化 ‐本人にとって重要であったり価値がある 情報に対して思わず注意が向いてしまう ‐選択的注意の一種であるため 無意識的に反応してしまう ‐周辺視野でも起こる現象 [大野 2018] 意識的に注意を向けない ということが極めて困難
周辺視野での知覚的鋭敏化を防ぐには? 周辺視野の視覚情報が自分にとって 価値があるかどうかが分からなければよい 周辺視野の情報を曖昧にすることが できれば知覚的鋭敏化が防げるのでは?
過去の研究について 視線に追随するぼかしエフェクトが ビデオゲームの体験に及ぼす影響の調査[山浦 2019] 視線計測を行い、視線データを用いて ‐注視している箇所(中心視野)を鮮明に ‐注視点の周囲(周辺視野)を不鮮明に
過去の研究について 視線に追随するぼかしエフェクトが ビデオゲームの体験に及ぼす影響の調査[山浦 2019] 周辺視野のぼけ具合が強調されれば 知覚的鋭敏化を抑止できるのでは? 視線計測を行い、視線データを用いて ‐注視している箇所(中心視野)を鮮明に ‐注視点の周囲(周辺視野)を不鮮明に
研究目的 周辺視野のぼかしを強調することで 知覚的鋭敏化が抑止できるかの調査 知覚的鋭敏化が起こる状況下と起こらない 状況下において、ぼかし強調を行ったとき と行っていないときのタスクの結果を比較
実験 ‐大学生・大学院生8名 ‐ボタンの配置を記憶する 記憶タスクを行う ‐8種類の条件で比較 ・ぼかしの強さを4段階用意 ・自身の名前が表示される条件と 表示されない条件の2条件
実験 ‐大学生・大学院生8名 ‐ボタンの配置を記憶する 記憶タスクを行う ‐8種類の条件で比較 ・ぼかしの強さを4段階用意 ・自身の名前が表示される条件と 表示されない条件の2条件
参考にした実験 記憶タスクの周りに自身の名前を表示させることで ‐記憶力が低下 ‐視線が自身の名前に向いてしまう 上記の結果から、知覚的鋭敏化が発生[大野 2018]
記憶タスク 9つのボタンの点滅する順番を覚え その順番通りに入力する 記憶フェーズ ‐合計7回点滅するボタンの順番を覚える ‐4回目からボタンの周辺に名前が徐々に 表示される 入力フェーズ ‐覚えた順にボタンをキーボード入力 ‐入力後、正答率が表示される 1 試 行
実験 ‐大学生・大学院生8名 ‐ボタンの配置を記憶する 記憶タスクを行う ‐8種類の条件で比較 ・ぼかしの強さを4段階用意 ・自身の名前が表示される条件と 表示されない条件の2条件
実験 ‐大学生・大学院生8名 ‐ボタンの配置を記憶する 記憶タスクを行う ‐8種類の条件で比較 ・ぼかしの強さを4段階用意 ・自身の名前が表示される条件と 表示されない条件の2条件
ぼかしの強さについて どのレベルの強さのぼかしが 知覚的鋭敏化の抑止に適しているかが不明 Hataらの研究で行った実験を参考に 4段階のぼかしの強さを設定 [Hata et al. 2016]
ぼかしレベル0 (ぼかし強調がされていない)
ぼかしレベル1 (弱いぼかし強調)
ぼかしレベル2 (中程度のぼかし強調)
ぼかしレベル3 (強いぼかし強調)
ぼかしレベル0 ぼかしレベル1 ぼかしレベル2 ぼかしレベル3
実験 ‐大学生・大学院生8名 ‐ボタンの配置を記憶する 記憶タスクを行う ‐8種類の条件で比較 ・ぼかしの強さを4段階用意 ・自身の名前が表示される条件と 表示されない条件の2条件
実験 ‐大学生・大学院生8名 ‐ボタンの配置を記憶する 記憶タスクを行う ‐8種類の条件で比較 ・ぼかしの強さを4段階用意 ・自身の名前が表示される条件と 表示されない条件の2条件
表示される名前について ボタンの周りに6つの名前を表示 ‐知覚的鋭敏化を起こすため内1つが 実験協力者の名前として表示(名前提示条件) ‐知覚的鋭敏化が起こらない条件では すべてランダムな名前が表示(通常条件) ランダムに提示される名前は自身の名前に 使われている漢字を含まない (例:山浦と山田は同時に表示されない)
実験の流れ 視線のキャリブレーションを行う ↓ 8条件を1回ずつランダムな順番で行う (チュートリアル) ↓ 1条件について20試行 計160回の試行をランダムな順番で行う
得られたデータ ‐視線移動量 ‐全問正答率 ‐タイミング別正答率 (表示された7つ順番の各正答率) ‐視線ログ
結果(視線の移動量)
結果(視線の移動量)
結果(視線の移動量)
結果(視線の移動量) 視線移動量が3.00以上のグループと 視線移動量が3.00未満のグループの 2つのグループに分割
分析について 1:ぼかしレベル0における通常条件と 名前提示条件の正答率を比較し、 知覚的鋭敏化が起こっていたかを分析 2:ぼかしレベル1~3における通常条件の 正答率が名前提示条件を上回るかを分析
分析について 1:ぼかしレベル0における通常条件と 名前提示条件の正答率を比較し、 知覚的鋭敏化が起こっていたかを分析 2:ぼかしレベル1~3における通常条件の 正答率が名前提示条件を上回るかを分析
結果(平均全問正答率 個人の平均で正規化) 0.44 視線移動量が多いグループ 視線移動量が少ないグループ 名前提示条件の平均が 通常条件の平均よりも低い
結果(タイミング別正答率 視線移動量が多いグループ 順目平均で正規化) 視線移動量が少ないグループ ほぼ全ての順目で 名前提示条件の方の正答率が低い
結果(視線ログ) ぼかしレベル0,名前提示条件 ぼかしレベル0,通常条件 自分の名前に 視線が大きく引きずられている
知覚的鋭敏化は起きたのか? ‐名前提示条件の全問正答率が 通常条件の全問正答率よりも低い ‐ほぼ全ての順目で名前提示条件の 正答率は通常条件の正答率よりも低い ‐自分の名前に視線が大きく引きずられた 実施したタスクにおいて 知覚的鋭敏化は起きていたと言える
分析について 1:ぼかしレベル0における通常条件と 名前提示条件の正答率を比較し、 知覚的鋭敏化が起こっていたかを分析 2:ぼかしレベル1~3における通常条件の 正答率が名前提示条件を上回るかを分析
分析について 1:ぼかしレベル0における通常条件と 名前提示条件の正答率を比較し、 知覚的鋭敏化が起こっていたかを分析 2:ぼかしレベル1~3における通常条件の 正答率が名前提示条件を上回るかを分析
結果(平均全問正答率 個人の平均で正規化) 視線移動量が多いグループ 視線移動量が少ないグループ
結果(平均全問正答率 個人の平均で正規化) 両グループ共にぼかしレベル1のとき 視線移動量が多いグループ 平均全問正答率が通常条件を上回る 視線移動量が少ないグループ
結果(タイミング別正答率 正規化) 視線移動量が多いグループ 視線移動量が少ないグループ
結果(タイミング別正答率 正規化) 視線移動量が多いグループ 両グループ共にぼかしレベル1のとき 平均正答率が通常条件を上回る 視線移動量が少ないグループ
結果(視線ログ) ぼかしレベル0,名前提示条件 ぼかしレベル1,名前提示条件 自分の名前に視線が 引きずられなくなった
知覚的鋭敏化は抑止できたか? ‐ぼかしレベル1のみ名前提示条件の方が 平均全問正答率が高い ‐ぼかしレベル1のみ全ての順目で 名前提示条件の正答率が通常条件よりも高い ‐自分の名前に視線が引きずられなくなった 知覚的鋭敏化の抑止が可能
例:言葉の意味を調べていたら... このような周囲に文字列が表示されている 状況において有用である可能性が高い
平均全問正答率の傾向 0.44 視線移動量が多いグループ ぼかしレベルが高くなるにつれて徐々に 平均全問正答率が低下する傾向
平均全問正答率の傾向 ぼかしの強さが大きすぎると 知覚的鋭敏化の抑止は期待できない 視線移動量が多いグループ ぼかしレベルが高くなるにつれて徐々に 平均全問正答率が低下する傾向
ぼかしレベル1の特異性 ‐平均全問正答率の向上 ‐順目ごとの正答率の向上 ‐視線が名前に引きずられない 適切な強さでぼかすことで 知覚的鋭敏化が良い影響を及ぼす? 覚醒や注意が感覚を鋭敏にする [理化学研究所 2014]
今後の展望 ‐実際の作業環境を想定した実験 ‐どの強さのぼかし強調が適しているかの 具体的な閾値の調査 ‐他の抑止できそうな集中阻害要因の検討 ‐ぼかし強調と知覚的鋭敏化の交互作用に ついての具体的な調査
まとめ 目的:知覚的鋭敏化をぼかし強調により 抑止可能かの調査 実験:知覚的鋭敏化が起こる状況下で 記憶タスクをぼかしの強さを 4段階に設定し実施 結果:知覚的鋭敏化が起こる状況を再現でき 適切な強さでぼかし強調を行うことで タスクの正答率が向上