ユーザの視線情報分析に基づく現実空間のBADUI検出に関する検討

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January 16, 19

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第180回HCI研究会で使用したスライドです

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明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室

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各ページのテキスト
1.

ユーザの視線情報分析に基づく 現実空間のBADUI検出に関する 検討 松⼭直⼈(明治⼤学 ⽥島⼀樹 総合数理学部 中村聡史(明治⼤学) 3年)

2.

使いづらいユーザインタフェースに 出会った経験はありませんか?

3.

どうやって流す?

4.

どうやって流す?

5.

執念を感じるエレベータ

6.

執念を感じるエレベータ

7.

購⼊できない?

8.

購⼊できない?

9.

コーヒーメーカー

10.

コーヒーメーカー

11.

BADUI(BAD User Interface) • ユーザが使いづらいと感じるユーザインタ フェースのこと • ユーザの誤操作やトラブルの原因になる

12.

背景 BADUIの問題を解決するための研究が⾏われ ている ユーザテストやアンケートによる評価法 ユーザに実際にタスクに取り組んでもらい,ユーザ の操作や⾔動を観察することでBADUIを発⾒ ユーザテストのイメージ図

13.

ユーザテストの問題点 • リソースが必要[河崎 2003] ◦専⾨家による分析が必要 ◦分析に時間がかかる • UIにおけるユーザの操作や発話に出ない 操作の⼿がかりを探すような視線の迷いの 検出が困難 →開発者のBADUIの⾒落としの原因

14.

視線分析によるユーザビリティ評価 • 視線情報を⽤いたWebページのユーザビリ ティの問題点検出⼿法[中道ら 2003] • 視線の軌跡にあるオブジェクトの⾃動的な 強調表⽰による分析⼿法[中村ら 2011] 現実空間において視線情報を⽤いた BADUI検出は試みられていない

15.

アイトラッカー • メガネ型のアイトラッカーによってWeb以外 の視線情報の取得・分析が可能になった • 視線の情報から現実のBADUIの分析が可能に なるのでは? Tobii Pro Glasses 2 Tobii Pro Glasses 2で撮影された映像

16.

本研究の狙い 負例 正例 ? 正例と 動きが異なる 正解の操作時の視線情報を基準として, あるユーザの操作時の視線が迷っているか どうか判定することでBADUIを検出したい

17.

将来実現するシステム • 正しい操作をした⼈の視線の動きを⽤いて, BADUIに悩む⼈の視線を誘導するシステム ? 正しい操作をした⼈の視線 BADUIに悩む⼈への操作⽀援に 使える?

18.

将来実現するシステム • 正しい操作をした⼈の視線の動きを⽤いて, BADUIに悩む⼈の視線を誘導するシステム ? 正しい操作をした⼈の視線 BADUIに悩む⼈への操作⽀援に 使える?

19.

将来実現するシステム • 正しい操作をした⼈の視線の動きを⽤いて, BADUIに悩む⼈の視線を誘導するシステム 正しい操作をした⼈の視線 BADUIに悩む⼈への操作⽀援に 使える?

20.

本研究の⽬的 現実空間のBADUIにおける 視線の迷いを検出する • BADUI操作時の視線情報を分析 • BADUIの操作とそうでない時の操作が分離可能か

21.

実験概要 ⽬的:BADUIにおける視線情報の取得 1. 実験に使⽤するオブジェクトの選定 2. ルートの設定 3. 視線情報取得

22.

実験⽤のオブジェクトの選定 操作での迷い(BADUI) 商品選択での迷い 何を操作したら良いかわからない どれを選ぼうかで迷っている ボタンを押してるのに 商品が購⼊できない… どの商品を 購⼊しようかなあ… →これらの迷いを分離する必要がある

23.

実験⽤のオブジェクトの選定 • 操作を必要とするUIを選定 • BADUIと商品選択のオブジェクトを選定 BADUI 商品選択 BADUIタレコミサイトから8種類 ⾃動販売機等の商品選択オブジェクト2種類

24.

BADUI例 ⽔飲み場(明治⼤学中野キャンパス10階) ⽔を出すボタンが,⽔飲み場の下部の⾒えづらい 位置にあるため,⽔を飲めずに困ってしまう

25.

BADUI例 ⽔飲み場(明治⼤学中野キャンパス10階)

26.

BADUI例 卓上ライト(明治⼤学中野キャンパス9階) 電気を点けるスイッチがライトの上部にあり気づき にくいため,電気を点けられずに困ってしまう

27.

BADUI例 卓上ライト(明治⼤学中野キャンパス9階)

28.

BADUI例 セルフレジ 交 通 系 IC カ ー ド を タ ッ チ す る カ ー ド リ ー ダ が ⾒えづらい位置にあるばかりか,リーダであること がわかりにくい

29.

BADUI例 セルフレジ 交 通 系 IC カ ー ド を タ ッ チ す る カ ー ド リ ー ダ が ⾒えづらい位置にあるばかりか,リーダであること がわかりにくい

30.

視線情報取得 オブジェクト操作時の視線情報を取得 • Tobii Pro Glasses 2を⽤いて視線計測 • 実験協⼒者:12名(男性8名,⼥性4名) • 実験の経路とオブジェクトの操作,また諸注意の 説明を⾏った

31.

設定したルート 選定したオブジェクトを全て通る経路を設定 商品選択 BADUI • 所要時間:40〜50分程度 • オブジェクトの操作指⽰のため,筆者が常に 実験協⼒者と共に歩⾏

32.

評価指標 ①BADUIの操作時間 ②視線分析 • 視線ログ • (縦・横・斜めの)視線移動回数 • 視線交差回数 BADUIで迷った⼈=誤った操作をした⼈

33.

BADUIの平均操作時間 全体平均 問題なく操作 できた⼈ 操作に 迷った⼈ (a) (b) (c) (d) (e) (f) (g) (h) 1.55 6.31 6.73 1.54 3.93 23.77 7.79 4.35 1.55 1.79 3.08 1.37 2.17 18.55 1.65 3.79 - 15.33 11.10 1.80 6.58 34.19 12.18 8.76 BADUIに強く悩まされる⼈は, 操作時間がかかることが明らかになった

34.

視線分析(BADUI) ⽔飲み場で迷わなかった⼈の視線動画

35.

視線分析(BADUI) ⽔飲み場で迷った⼈の視線動画

36.

視線分析(BADUI) ⽔飲み場 迷った⼈と迷わなかった⼈で 視線の分散が⼤きかった

37.

視線分析(BADUI) 卓上ライトで迷わなかった⼈の視線動画

38.

視線分析(BADUI) 卓上ライトで迷った⼈の視線動画

39.

視線分析(BADUI) 卓上ライト BADUIで迷った⼈は視線を⼤きく動かしたり 滞留したりを数回繰り返していた

40.

視線分析(BADUI) 視線の動きにブレがあまり⾒られなかった 視線が⾏ったり来たりや⼤きく動く様⼦が⾒られた

41.

視線分析(BADUI) セルフレジ どちらも視線が複雑に交差する動きが ⾒られた

42.

視線分析(商品選択時)

43.

視線分析(商品選択時)

44.

視線分析(商品選択時) 商品選択時は,視線の垂直・⽔平の動きが 多く⾒られた

45.

視線分析(移動回数・交差回数) 移動回数 交差回数 斜め 横 縦 視線ログ

46.

視線分析(交差回数) 単位時間あたりの視線交差回数(回数/秒) 全体平均 迷わなかった人 迷った人 45.0 40.0 40.0 35.0 30.0 30.8 25.0 27.8 26.2 23.9 20.0 21.3 15.0 17.4 14.9 10.0 5.0 22.0 19.1 11.2 10.6 9.3 4.4 7.1 4.2 5.7 4.9 6.9 6.1 8.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 BADUI 商品選択 0.0 0.0

47.

視線分析(交差回数) 単位時間あたりの視線交差回数(回数/秒) 全体平均 迷わなかった人 迷った人 25.0 22.4 20.0 20.3 15.0 10.0 5.0 13.2 8.9 0.0 0.0 0.0 BADUI平均 商品選択平均 BADUIで迷った⼈は,迷わなかった⼈と⽐較して 視線交差回数が多くなる

48.

視線分析(移動回数) 迷った時の視線移動回数 縦 0.46 0.36 0.44 0.38 0.17 0.29 0.18 0.20 0.46 0.34 0.39 0.33 0.40 0.18 横 0.34 0.47 0.24 斜め 0.42 0.41 0.42 0.41 0.42 0.17 0.25 0.22 0.21 0.21 0.34 0.35 0.39 0.37 0.19 0.42 0.43 0.34 0.41

49.

視線分析(移動回数) 迷った時の視線移動回数 縦 0.46 0.36 0.44 0.38 0.17 0.29 0.18 0.20 0.46 0.34 0.39 0.33 0.40 0.18 横 0.34 0.47 0.24 斜め 0.42 0.41 0.42 0.41 0.42 0.17 0.25 0.22 0.21 0.21 0.34 0.35 0.39 0.37 0.19 0.42 0.43 0.34 0.41 BADUI操作時と商品選択時で 移動回数に差は出なかった

50.

考察(BADUI) • 迷った⼈と迷わなかった⼈で視線の分散が ⼤きい時にBADUIであるのではないか

51.

考察(セルフレジ) • 操作に複数の⼿順を必要とした • ⼿順をそれぞれ分離して考える必要があった

52.

考察(商品選択時) 商品を選択する際,商品棚に沿って商品を ⾒る傾向があると考えられる →商品の配置に依存するのでは?

53.

考察(BADUIの判定) 単位時間あたりの視線交差回数(回数/秒) 25.0 22.4 20.0 20.3 15.0 10.0 13.2 8.9 5.0 0.0 0.0 0.0 BADUI平均 商品選択平均 BADUIで迷った⼈と迷わなかった⼈は 視線交差回数によって判定できる可能性がある

54.

考察 BADUIで迷った⼈が少なかった 実験の実施場所の周辺で通学しており, オブジェクトの操作経験があったため (a) (b) (c) (d) (e) (f) (g) (h) 0 / 10 4 / 12 5 / 11 4 / 10 4 / 10 4 / 12 7 / 12 2 / 11 BADUIで迷った⼈数

55.

まとめ • 視線情報から現実空間のBADUIを検出可能か どうかの検証を⾏った • BADUIで迷った⼈と迷わなかった⼈は,分散 の⼤きさや視線交差回数から判断できる可能 性がある • 商品選択時は,商品棚に沿って垂直・⽔平の 動きをする傾向が⾒られた

56.

今後の展望 • 分析⼿法とBADUIの選定の⾒直し • オブジェクトの注視箇所や映像の分析等 • AR技術を使ったBADUI改善システムの実装 ? AR技術を使ったBADUI改善システムのイメージ図