カウントダウン提示時の残タスク数がタスクの処理速度に及ぼす影響

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スライド概要

HCI196にて発表したスライドになります

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Nakamura Laboratory (Meiji University)

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明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室

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1.

カウントダウン提示時の残タスク数が タスクの処理速度に及ぼす影響 第196回HCI研究会 | 2021/01/12 明治大学大学院 先端数理科学研究科 南里英幸 明治大学 中村聡史

2.

研究概要 カウントダウンが提示されたときの残タスク数で タスク処理がどう変化するかどうか調査する研究 カウントダウン タスク 少ない 手を抜く? 多い 諦める? 1

3.

背景 時間:出来事や変化を認識するための基礎的な概念 物理的時間:客観的かつ、絶対的な時間 心理的時間(体感時間) :その人自身が軸な主観的な時間 2

4.

背景 心理的時間は、人の体調や周囲の環境など様々な条件で大きく変化 同じ映画を見た2時間であっても、心理的時間は異なる あっという間 だった! 面白い映画 とても退屈だった… つまらない映画 3

5.

背景 心理的時間が変容する要因: 体調や周囲の環境(気温や湿度など)、タイムプレッシャーなど 4

6.

背景 心理的時間が変容する要因: 体調や周囲の環境(気温や湿度など)、タイムプレッシャーなど 5

7.

背景 タイムプレッシャー:「時間内に終わらせなければいけない」という 圧迫感から生じる心理的ストレス タイムプレッシャーにおける意思決定で、 強いストレスや疲労→注意を欠き、より単純な推論策をもち思考する[小川ら 2019] 〆切効果:タスクの締め切り直前になるとそのタスクに対し意欲が湧く タイムプレッシャーにより 心理的時間を変容させ、行動に変化をもたらす 6

8.

背景:これまでの研究(HCI192) タスク中にカウントダウンを提示することでタスクを促進する手法を提案 採点タスクを用いて以下の3手法を比較検証 タスク開始 途中提示手法(提案手法) タスク終了 カウントダウン非提示 カウントダウン提示 常時提示手法 非提示手法 7

9.

背景:これまでの研究(HCI192) | 結果 手法間に差は現れなかった →この理由として、タスクの進行状況によって行動が変化した可能性 残り26個 残り39個 完了 未完了 カウントダウンが終わるまでに間に合いそう カウントダウンが終わるまでに間に合わなさそう 8

10.

背景:これまでの研究(HCI192) | 結果 手法間に差は現れなかった →この理由として、タスクの進行状況によって行動が変化した可能性 残り26個 残り39個 完了 タスク速度がUP 未完了 カウントダウンが終わるまでに間に合いそう カウントダウンが終わるまでに間に合わなさそう 9

11.

背景:これまでの研究(HCI192) | 結果 手法間に差は現れなかった →この理由として、タスクの進行状況によって行動が変化した可能性 残り26個 残り39個 完了 タスク速度がUP 未完了 カウントダウンが終わるまでに間に合いそう タスク速度がDOWN カウントダウンが終わるまでに間に合わなさそう 10

12.

背景:これまでの研究(HCI192) | 結果 手法間に差は現れなかった →この理由として、タスクの進行状況によって行動が変化した可能性 0:30 残り20個 残り20個で30秒なら 少し遅めでもピッタリ 終わりそう 11

13.

背景:これまでの研究(HCI192) | 結果 以下の関係性があることが明らかになった ①残りのタスクがカウントダウンに間に合うとき、タスク速度が上昇 ②残りのタスクがカウントダウンに間に合わないとき、タスク速度が減少 ③カウントダウンに合わせてキリ良く終わらせようとする 残りのタスク数によって行動が変化する可能性が示唆 12

14.

研究目的 残りのタスクがカウントダウン内に 「間に合うか」・「間に合わないか」によってタスクに対する 行動が変容する関係性を詳しく調査する 13

15.

研究目的 明らかに間に合わない条件、少し頑張れば間に合う条件、 自身の能力と同じ条件、気を抜いても間に合う条件の4条件を 用意して、関係性を実験より明らかにする カウントダウン タスク 手を抜く? 余裕 能力と同じ 間に合いそう 無理 普通にやる? 間に合わせる? 諦める? 14

16.

タスク設計 本研究の目的: 目の前のタスクに対して、間に合うか・間に合わないか によって行動が変化することを明らかにする これまでの研究(HCI192)と同様に区切りのあるタスクが望ましい しかし、採点タスクは簡単すぎたため、このタスクより認知的負荷の 高いタスクが望ましい 15

17.

タスク設計 マス計算タスクを採用した ※対応するマス同士で特定の演算をするタスク →ページ単位で区切りがあり、 採点タスクと比べ認知的負荷が高い 16

18.

タスク設計:マス計算タスクシステム マス計算タスクシステムを実装した ※ランダムな2桁の自然数同士の加法演算するもの 42+46=88 17

19.

タスク設計:マス計算タスクシステム 18

20.

タスク設計:マス計算タスクシステム マス計算タスクシステム ※ランダムな2桁の自然数同士の加法演算するもの • 検証の妨害の恐れのあるものを除外 • 51以上の2桁の自然数(51~99) →計算結果が3桁になってしまうため(56+78=134) • 10の倍数のもの(10, 20, 30, 40, 50) →計算が明らかに簡単すぎるため 19

21.

タスク設計:マス計算タスクシステム マス計算タスクシステム ※ランダムな2桁の自然数同士の加法演算するもの • 演算する場所はシステムがランダムに指定 →一般的には左上から順に行うが、前後関係で結果が 分かってしまう 20

22.

タスク設計:マス計算タスクシステム マス計算タスクシステム ※ランダムな2桁の自然数同士の加法演算するもの • 検証の為の30秒のカウントダウン機能(以前の研究と同様) 30 21

23.

タスク設計:検証のためのカウントダウン 実験目的の検証の為には、以下のような状況を作る必要がある • • • • 明らかに間に合わない条件(無理条件) 少し頑張れば間に合う条件(気合条件) 自身の能力と同じ条件 (平均条件) 気を抜いても間に合う条件(余裕条件) 能力差を考慮して、残りのタスク数に対してカウントダウンを 提示するタイミングを決め、以上の状況を仮想的に作成する 22

24.

タスク設計:検証のためのカウントダウン 条件を再現するカウントダウンを提示するタイミングを決める →その人のタスク速度を計測し、それをもとに各条件を再現する 倍率を決める 30秒あたりn問 無理条件の倍率𝑚1 残り(n × 𝑚1 )の時にカウントダウンを提示 気合条件の倍率𝑚2 残り(𝑛 × 𝑚2 )の時にカウントダウンを提示 平均条件の倍率𝑚3 残り(𝑛 × 𝑚3 )の時にカウントダウンを提示 余裕条件の倍率𝑚4 残り(𝑛 × 𝑚4 )の時にカウントダウンを提示 23

25.

タスク設計:検証のためのカウントダウン 各条件の倍率を決めるための予備実験で検証した結果、 • • • • 明らかに間に合わない条件(無理条件):2.0倍 少し頑張れば間に合う条件(気合条件):1.2倍 自身の能力と同じ条件 (平均条件):1.0倍 気を抜いても間に合う条件(余裕条件):0.8倍 24

26.

実験:対象 20歳~25歳の大学生20名(男性11名、女性9名)を対象に実施 順番をランダムに4条件を2回ずつの計8タスク実施 25

27.

実験:タスク・実験設定 • タスク速度を計るための計測時間を6分 • 計測時間が終了後に次のページに移動したときに、 • 条件ごとのタイミングで30秒間のカウントダウンが提示される 26

28.

実験:タスク・実験設定 カウントダウンの提示するタイミングは、 6分間で解いたのが100.44個のとき、30秒当たり平均8.37個 処理できている • • • • 無理条件:8.37×2.0倍=16.740→残り16個の時提示 気合条件:8.37×1.2倍=13.392→残り13個の時提示 平均条件:8.37×1.0倍=8.3700→残り8個の時提示 余裕条件:8.37×0.8倍=6.6960→残り6個の時提示 ※小数点以下切り捨て 27

29.

実験:手順 ①実験に関する説明の熟読 操作説明の動画の視聴 ②5分間の練習 ③メインタスクの実施(計8タスク) ④事後アンケート 28

30.

実験:手順 ①実験に関する説明の熟読 操作説明の動画の視聴 ②5分間の練習 ③メインタスクの実施(計8タスク) ④事後アンケート 29

31.

実験:手順 ①実験に関する説明の熟読 操作説明の動画の視聴 ②5分間の練習 ③メインタスクの実施(計8タスク) ④事後アンケート 30

32.

実験:手順 ①実験に関する説明の熟読 操作説明の動画の視聴 ②5分間の練習 ③メインタスクの実施(計8タスク) ④事後アンケート 31

33.

実験:手順 ①実験に関する説明の熟読 操作説明の動画の視聴 ②5分間の練習 ③メインタスクの実施(計8タスク) ④事後アンケート 32

34.

実験結果:用語説明 タスク開始 カウントダウン前90秒 カウントダウン後 タスク終了 カウントダウン前 カウントダウン後 カウントダウン開始 33

35.

実験結果:タスク促進効果 30秒当たりの平均タスク処理量を正規化し、全体の平均を求めたもの カウントダウン前90秒(左の値) カウントダウン後 (右の値) タスク終了 カウントダウン開始 34

36.

実験結果:タスク促進効果 30秒当たりの平均タスク処理量を正規化し、全体の平均を求めたもの タスク促進効果 気合条件において、最もタスク促進効果があることが分かった(+14.1%) 35

37.

実験結果:タスク精度 カウントダウン前後のタスクの精度の比較 カウントダウン前 カウントダウン後 変化率 平均条件 0.965 0.950 -1.6% 気合条件 0.962 0.917 -4.6% 無理条件 0.957 0.944 -1.3% 余裕条件 0.962 0.907 -5.7% 全体平均 0.961 0.930 -3.3% タスク開始 タスク終了 カウントダウン前 カウントダウン後 カウントダウン開始 36

38.

実験結果:タスク精度 カウントダウン前後のタスクの精度の比較 カウントダウン前 カウントダウン後 変化率 平均条件 0.965 0.950 -1.6% 気合条件 0.962 0.917 -4.6% 無理条件 0.957 0.944 -1.3% 余裕条件 0.962 0.907 -5.7% 全体平均 0.961 0.930 -3.3% タスク精度 どの条件においても、タスク精度が低下 特に余裕条件で最も低下した 37

39.

実験結果:カウントダウン前後のタスク処理量の変化率 30秒当たりのタスク処理量の変化率の全体の平均を求めたもの カウントダウン前90秒(左の値) カウントダウン後 (右の値) タスク終了 カウントダウン開始 38

40.

実験結果:カウントダウン前後のタスク処理量の変化率 30秒当たりのタスク処理量の変化率の全体の平均を求めたもの タスク処理量の変化率 90秒(左の値) 30秒(右の値) 分散分析を行った結果、有意差が認められた(p<0.05) タスク終了 Turkey法の多重比較を行った結果、気合条件と余裕条件で有意差(p<0.05) カウントダウン開始 39

41.

考察:タスク促進効果 全ての条件においてタスク促進効果があることが明らかになった 40

42.

考察:タスク促進効果 全ての条件においてタスク促進効果があることが明らかになった 「ここまで終わらせたいというような目標ができる」 という意見があり、カウントダウンによってタスクの終わりが 提示されたため、目標勾配効果[Ranら 2012]によりタスク促進効果があった 41

43.

考察:条件によるタスク促進効果 条件によってタスク促進効果が変化した 42

44.

考察:条件によるタスク促進効果 条件によってタスク促進効果が変化した 「カウントダウンが表示された際のマス目の埋まり具合で急ぎの度合いが 変わった」 「もうすぐで埋まりそうなときは埋められるように少し早く計算していた。 まだ全然埋まってないときは計算ミスをしないようにより注意深く やるようにした。」 という意見が得られていることから、 埋まっている状況によって行動が変化したことが考えられる。 43

45.

考察:条件によるタスク促進効果 条件によってタスク促進効果が変化した 「カウントダウンが表示された際のマス目の埋まり具合で急ぎの度合いが 変わった」 「もうすぐで埋まりそうなときは埋められるように少し早く計算していた。 まだ全然埋まってないときは計算ミスをしないようにより注意深く やるようにした。」 以前の研究(HCI192)と という意見が得られていることから、 同様の結果があることが明らかになった 埋まっている状況によって行動が変化したことが考えられる。 44

46.

考察:各条件のタスク促進効果 気合条件においてタスク促進効果が最もあることが明らかになった →タスク速度を上昇すれば間に合いそうなタスク量なため、キリ良く 終わらせようとして、タスク速度が上昇した 30 完了 未完了 スピード上げれば 間に合いそう! 45

47.

考察:各条件のタスク促進効果 平均条件では、気合条件と比べタスク促進効果が弱かった →通常通りに実施していれば間に合うタスク量であるため、 気合条件と比べ促進効果が弱まった 30 完了 未完了 普通にやれば 間に合いそう 46

48.

考察:各条件のタスク促進効果 無理条件でも、気合条件と比べタスク促進効果が弱かった 他の条件と比べ、カウントダウン提示後の変化率の分散が最大 →・間に合わないと感じ、タスク速度を大きく減少させた人 ・間に合わせようとしてタスク速度が大きく上昇した人 できるだけ 多くやろう! 完了 30 未完了 これは無理だ ゆっくりやろう 47

49.

考察:各条件のタスク促進効果 余裕条件では、他条件と比べタスク促進効果が最も弱かった 変化率がほぼ横ばいだった →集中して実施しなくても、余裕で間に合う状況であるため 促進効果が弱まった可能性 30 完了 余裕で終わるまでに 間に合う 未完了 48

50.

考察:タスク精度 カウントダウンが提示されることで、タスク精度が低下した → 精度よく実施するためには、速度を落とす 速度高く実施するためには、精度を落とす トレードオフの関係がある[Mooreら 2012] →カウントダウンに間に合わせようとして、タスク速度が上昇し、 タスク精度が低下したと考えられる 49

51.

考察:タスク精度 • 特に気合条件と余裕条件で、大きく精度が低下した →気合条件では、タスク速度が上昇したため、精度が低下した カウントダウン前 カウントダウン後 変化率 平均条件 0.965 0.950 -1.6% 気合条件 0.962 0.917 -4.6% 無理条件 0.957 0.944 -1.3% 余裕条件 0.962 0.907 -5.7% 全体平均 0.961 0.930 -3.3% 50

52.

考察:タスク精度 • 余裕条件では、タスク速度は変化していないため、精度が変化 しないと考えられたが、最も大きく低下した →余裕でカウントダウンが終わるまでにタスクを終えることができる ため、集中力が切れ、精度が低下したのではないか? カウントダウン前 カウントダウン後 変化率 平均条件 0.965 0.950 -1.6% 気合条件 0.962 0.917 -4.6% 無理条件 0.957 0.944 -1.3% 余裕条件 0.962 0.907 -5.7% 全体平均 0.961 0.930 -3.3% 51

53.

実験結果まとめ タスク促進効果について ・気合条件において最もタスク促進効果がある ・無理条件において行動が大きく2分化した ・余裕条件においてほぼタスク促進効果がなかった タスクの精度について ・全体として、カウントダウンを提示することで精度が低下 ・特に余裕条件、気合条件で大きく低下 52

54.

実験結果まとめ タスク促進効果について ・気合条件において最もタスク促進効果がある ・無理条件において行動が大きく2分化した ・余裕条件においてほぼタスク促進効果がなかった タスクの精度について ・全体として、カウントダウンを提示することで精度が低下 ・特に余裕条件、気合条件で大きく低下 間に合うか間に合わないかによってタスク速度や精度が変化する 53

55.

展望 今回は、マス計算タスクで実施した →このタスクは、区切りのあるタスクであり、時間内に実施できる タスク量が推定しやすい →また、カウントダウンを提示することで精度が低下した 単調かつ長続きしにくいタスクへの応用が考えられる 54

56.

展望 区切りがあるが、時間内に実施できるタスク量が推定しにくいタスク 区切りのないタスク →これらのタスクについてもタスク促進効果があるのか検証したい 55

57.

展望 各条件の倍率を、2.0倍、1.2倍、1.0倍、0.8倍と設定して検証した 1.4倍や1.6倍などについてどの程度のタスク促進効果があるのか不明 →検証していきたい 56

58.

まとめ 背景 先行研究で、残タスク数に対して間に合うかどうかによって 行動が変容することが明らかになった 目的 具体的に、残タスク数に対して間に合うかどうかについて マス計算タスクを用いて明らかにする 実験 無理条件・気合条件・平均条件・余裕条件の状況を用意し、 マス計算タスクを用いて、比較検証を行った 結果 気合条件においてタスク促進効果があることが分かった 展望 様々なタスクにおいても同様か検証していきたい 57