キリの悪いカウントダウンを用いた限界突破手法の提案

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June 02, 20

スライド概要

6月1、2日にオンライン開催されたHCI188での発表スライドです

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明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室

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各ページのテキスト
1.

2020/06/02 HCI188 キリの悪いカウントダウンを用いた 限界突破手法の提案 南里 英幸(明治大学大学院 先端数理科学研究科) 中村 聡史(明治大学 総合数理学部)

2.

背景 • 6割以上の人が,将来の自分の健康に不安を抱えている • 6割以上の人が,普段から健康管理に気を使っている (2019年の明治安田生命の調査) →健康意識が高まっている

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背景 • 6割以上の人が,将来の自分の健康に不安を抱えている • 6割以上の人が,普段から健康管理に気を使っている (2019年の明治安田生命の調査) →健康意識が高まっている 健康を維持するためには,ランニングや筋トレなど 日常的に体を動かすことが大事 (平成26年の厚生労働省白書)

4.

背景 • 6割以上の人が,将来の自分の健康に不安を抱えている • 6割以上の人が,普段から健康管理に気を使っている (2019年の明治安田生命の調査) →健康意識が高まっている →エクササイズや筋力トレーニング,ヨガ等に関心が高まる →体を動かすためのスポーツクラブがたくさんできている

5.

背景 →エクササイズや筋力トレーニング,ヨガ等に関心が高まる →体を動かすためのスポーツクラブがたくさんできている →しかし、金銭的な都合などで、自宅でトレーニングをする 人もいる

6.

背景 • 現在の新型コロナウイルスの拡大による外出自粛要請 • リモートワーク・在宅ワークの拡大 • 対策によるジムの閉鎖 ©2020 Zoom Video Communications, Inc.

7.

背景 • 現在の新型コロナウイルスの拡大による外出自粛要請 • リモートワーク・在宅ワークの拡大 • 対策によるジムの閉鎖 →外出の機会が大幅に減少

8.

背景 • 外出の機会が減少することで、ジムに行くなど運動機会の が減少 • 自宅で一人でトレーニングをせざるを得なくなった

9.

背景 • 自宅で一人でトレーニングする場合、 • ジムのように専用の器具がない • サポートしてくれるトレーナさんがいない • 高負荷なトレーニング(限界までやるもの)が難しい • モチベーションやトレーニングの仕方が自分次第

10.

背景 • 自宅で一人でトレーニングする場合、 • ジムのように専用の器具がない • サポートしてくれるトレーナさんがいない • 高負荷なトレーニング(限界までやるもの)が難しい • モチベーションやトレーニングの仕方が自分次第 無意味なトレーニングや長続きしない

11.

本研究の目的 • 自宅で一人でトレーニングする場合、 • ジムのように専用の器具がない • サポートしてくれるトレーナさんがいない 自宅での一人トレーニングにおいて、 • モチベーションやトレーニングの仕方が自分次第 効果的なトレーニングや長続きできるように サポートできるようにする 無意味なトレーニングや長続きしない

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トレーニングの種類 • 有酸素運動…ジョギング,水泳など • 無酸素運動…筋トレ→限界までやるものも • メンタルトレーニング

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限界 …物事のこれ以上あるいはこれより外には出ることができない ぎりぎりの範囲,境のこと(コトバンクより) →このような状態を限界状態

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限界の難しさ • インストラクターがいる場合:限界までやるのは容易 • 自宅で一人でやる場合:限界でやるのは容易ではない

15.

限界の難しさ • インストラクターがいる場合:限界までやるのは容易 • 自宅で一人でやる場合:限界でやるのは容易ではない →「もう限界」と考えてしまうと、一気にパフォーマンスが落ちてしまうため

16.

カウントダウン • 特定の状態になるまでの数を数えること • 残タスク数が分かる・少なくなってくるとやる気が出てくる • 野球の練習の「あとxx回!」でやる気が出てくる

17.

カウントダウン • 特定の状態になるまでの数を数えること • 残タスク数が分かる・少なくなってくるとやる気が出てくる • 野球の練習の「あとxx回!」でやる気が出てくる カウントダウンを用いて限界突破できるように促す

18.

本研究の提案手法 • システム側がユーザ状態を検知 まだ余裕 余裕そう

19.

本研究の提案手法 • システム側がユーザ状態を検知 ↓ • ユーザの限界を判定 限界きた どうかな

20.

本研究の提案手法 • システム側がユーザ状態を検知 ↓ • ユーザの限界を判定 限界きた 限界かな

21.

本研究の提案手法 • システム側がユーザ状態を検知 ↓ • ユーザの限界を判定 ↓ • カウントダウンを提示 うおおお 5

22.

カウントダウン • 10や15のような比較的キリの良いもの • 9のようなキリの悪いもの うおおお 4 • 11のようなキリ悪いが、すぐにキリの 良いものになるもの

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カウントダウン • 10や15のような比較的キリの良いもの • 9のようなキリの悪いもの うおおお 3 • 11のようなキリ悪いが、すぐにキリの 良いものになるもの そもそもカウントダウンが限界突破を促せるのか?

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実験① • 学生10名を対象に合計11日間にわたる体幹トレーニング実験 • 通常群とカウントダウン(提示)群に分かれて実験を行った • 奇数日を記録を計測する日とした • フロントブリッジを題材に実験を行った

25.

計測日以外 • 1日2回,限界までフロントブリッジを実施する • 1回ごとに休憩を5分ほど行う • 実験協力者が限界と感じるまでやってもらう • 終了のタイミングは実験協力者が判断 • あと10秒で限界に到達しそうな時に申告 • カウントダウン群では,5秒後に15秒のカウントダウンを提示

26.

計測日 • 1日2回,限界までフロントブリッジを実施する • 1回ごとに休憩を5分ほど行う • 実験監督者がやめという(限界と判断する)まで実施する • それ以外ではやめないようにすることを指示 • ただし怪我の恐れがある場合は即座に中断する • 実験後,アンケートを行った

27.

実験①結果 左図:カウントダウン群 右図:通常群

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実験①結果・考察 どの実験協力者も記録が伸びている→能力がわずかについたため

29.

実験①結果・考察 特に極端に記録が伸びている→限界突破を促せている可能性

30.

実験①結果・考察 実験後のインタビュー・アンケートから 「まだいけそうだった」「終わりのアナウンスが来なくてつらかった」

31.

実験①結果・考察 実験後のインタビュー・アンケートから 「まだいけそうだった」「終わりのアナウンスが来なくてつらかった」 →適切な「限界状態」を判断できていない可能性

32.

実験①結果・考察 実験後のインタビュー・アンケートから 「まだいけそうだった」「終わりのアナウンスが来なくてつらかった」 →適切な「限界状態」を判断できていない可能性 実験協力者の反応が非常に弱いとき「限界状態」であると判断しているが, ユーザごとに振る舞いが異なっており,判断基準がぶれてしまっている可能性

33.

実験①結果・考察 実験後のインタビュー・アンケートから 「カウントダウンが見えた瞬間、力が湧いてきた」 「カウントダウンが0になってから数秒長くブリッジしようと思った」

34.

実験①結果・考察 実験後のインタビュー・アンケートから 「カウントダウンが見えた瞬間、力が湧いてきた」 「カウントダウンが0になってから数秒長くブリッジしようと思った」 →「カウントダウン」によって, 限界突破をすることができている可能性が示唆

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実験①結果・考察まとめ • どの実験者も記録は伸びており、極端に伸びていた実験者が いた →限界突破を促している可能性が示唆 一方で、手法間での差はなく、個人差が大きかった • 限界状態を第三者の人間が判断すると、基準がぶれる • システムによって機械的に「限界状態」を判別するのが適?

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実験①の反省点 • カウントダウンのキリ良さ • 毎回同じ数字であることによって、 • 見られている感の気味の悪さがある可能性? →カウントダウンの数字をキリ悪くする

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新しいカウントダウン手法 • 9カウント手法 • 10カウント手法 • 11カウント手法 • 1000カウント手法 • 12501カウント手法 基本となるキリの良い カウントダウン

38.

新しいカウントダウン手法 • 9カウント手法 • 10カウント手法 • 11カウント手法 • 1000カウント手法 • 12501カウント手法 キリの悪い カウントダウン 少ない値or高い値 どちらが良いか?

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新しいカウントダウン手法 • 9カウント手法 • 10カウント手法 • 11カウント手法 • 1000カウント手法 • 12501カウント手法 キリの良い カウントダウン 値が大きめ

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新しいカウントダウン手法 • 9カウント手法 • 10カウント手法 • 11カウント手法 • 1000カウント手法 • 12501カウント手法 キリの悪い カウントダウン 大きな値

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新しいカウントダウン手法 • 9カウント手法 • 10カウント手法 • 11カウント手法 • 1000カウント手法 • 12501カウント手法 カウント無し手法 キリの悪い カウントダウン 大きな値

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実験② • リングコンを両手で押し込む状態を限界までやってもらう実験 ※任天堂から発売されているリングフィットアドベンチャーの専用コントローラ ©Nintendo

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実験② • 学生12人を対象に実施 • アンケートに回答しながら休憩しつつ6試行実施 • 体力や順序効果を配慮して「カウント無し」を除いてランダムに実施 • すべての試行終了後に楽さ・限界突破できたかについて順位をつけてもらった • 限界と感じる10秒前だと感じたときに申告してもらう • 5秒経過後に画面上には25秒間のカウントダウンが表示 • 提示されるのは先の6手法

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実験②結果・考察 カウント無し手法: 25%の実験協力者が10秒も経たずにやめている人がいた カウント有り手法: 100%の実験協力者が10秒間以上維持できた 20%カウントが終わるまでやるケースや、 20%カウントが終わってからも続けるケースがみられた

45.

実験②結果・考察 • カウント有り無しでは非常に有意差あり • カウントダウン手法間による分析では有意差なし(p<0.05) • 人による差が出たのではないかと考えられる

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実験②結果・考察 • 1000カウント手法が楽だ感じる人 が多い • 12501カウント手法が一番限界突破 できたという意見が多かった

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実験②結果・考察 • 1000カウント手法が楽だ感じる人 が多い 数字が速く変化する→心的負担が軽減される • 12501カウント手法が一番限界突破 できたという意見が多かった

48.

実験②結果・考察 • 1000カウント手法が楽だ感じる人 が多い 数字が速く変化する→心的負担が軽減される • 12501カウント手法が一番限界突破 できたという意見が多かった 大きい数字→より多くの記録を更新した感覚 →より限界突破した感覚

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実験②結果・考察まとめ • カウントダウンが表示されることによって、限界と感じるまでの時間 よりも長くトレーニングを実施することができた • 実験①と同様、限界突破を促すことはできた。 • 手法による記録に関しては、個人差や順序効果などが影響して • しまったためなのか有意差は見られなかった。 • 楽さや限界突破をできたという主観的な評価では、「12501カウン ト」、 「1000カウント」が一番良いとされた。

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今後の展望 • 実験①の検証について、長期的に実施した場合でも、限界突破を • 促せるかの検証 • 実験②の検証では主観的には「12501カウント」や「1000カウン ト」が一番良いとされたが、客観的な記録では、有意差が見られな かった。 • 10人と少ない人数であったこと、検証が1回であったため、複数回に分けて、 より多くの人数を使って検証を再び行いたい。

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今後の展望 • プログレスバーの周辺に回転する円を表示すると体感時間が変化 [松井 2019] • カウントダウンだけでなく、その他の提示方法との比較

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まとめ 目的 自宅での一人トレーニングにおいて、効果的な トレーニングや長続きできるようにサポート できるようにする 実験結果 カウントダウンによって限界突破を促すことができた 第三者が限界状態を判断するのは個人差が大きく 非常に難しい 同じ時間ではキリの悪さは関係はなく、速く大きく数字 が変化することが限界突破しやすいと感じた