2026 外国人児童・生徒への教育 第1回 導入:「外国人児童生徒」とは誰を指すのか?

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May 09, 26

スライド概要

広島大学 教育学部 初等教育学プログラム選択科目「外国人児童・生徒への教育」の授業スライドです

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ことばや文化の多様な背景をもつ学び手(例:外国につながる子どもなど)を手がかりに、教育学の基本問題である「教育の目的」「カリキュラム」「評価」を捉え直しています。近年は「何ができるようになったか」を到達的に示すことが求められがちですが、その中で学びが「標準への適応」や「不足の補い」として語られやすくなる点にも目を向け、人格の形成や関係、場への参加といった教育の価値を、カリキュラムと評価の視点で考え直します。

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各ページのテキスト
1.

第1回 なぜ学校の先生になるとき「外国につな がる子どもたち」のことを学ぶのか? 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 フェーズ1 フェーズ2 フェーズ3 外国につながる子どもた たちとその背景を 知る 外国人児童生徒もいる学校・教室の場で子どもたちを育てる方法 多言語・多文化の教育課 題を分析する ①日本語教育 アプローチ 概要 誰 受入方 法 歴史 言語 ②バイリンガル ア ③学校全 ④学校外 プローチ 体アプロ 連携アプ ーチ ローチ 15 分析1 分析2 分析3 まとめ 日本語 教科と 初期指 言語構 バイリ 複数言 学校づ 学外連 学校事 学校事 少数散 レポー ンガル 語指導 くり 導 造 携 例分析 例分析 在地域 ト 指導 日本語

2.

南浦 涼介のプロフィール 大学時代 小学校の教師を 目指していた タイで 日本語教師 兵庫県の 中学校で教師 社会科 ガソリンスタン ドで フリーター 社会科、図工、理科 日本語教育 社会科教育 滋賀県で 外国人児童生徒 の日本語教師 タイで 日本語教師 農業高校で 教師 山口大学で 教師 東京学芸大学で 教師 広島大学で 教師 地理 小学校全般 社会科教育 日本語教育 国語教育 附属小学校で 教師 大学院 外国人児童生徒教育 教育課程論 教育制度など 専門 • 教育方法学(授業論、カリキュラム論、評価論) • 外国人児童生徒教育学 • 社会科教育学 • 日本語教育学

3.

はじ めに この授業を受けると、どのような視点が身につくか? 何のために,何を,どう教えるか? つまづきやこぼれおちをどう支えるか? 力の形成の領域 福祉・ケアの領域 教師が意図的に 教え深めていくもの • 学力の形成 • 社会参加 • 社会形成の主体者 子どもが無意図的に 広げるものを支える • 関係性の拡張 • つまづきの解消 • キャリアの形成 子どものことを 理解したい 授業が 上手になりたい 教師の専門性は本来どちらも必要 ただ「教師をめざす」ときや 「教育の学問分野」は 往々にしてこの「どちらか」になりがち 外国につながる子どもたちの教育や 特別支援を必要とする子どもの教育は こうした「分断」が起きやすい ©

4.

はじ めに この授業を受けると、どのような視点が身につくか? 教育における人格の形成 力の形成の領域 福祉・ケアの領域 教師が意図的に 教え深めていくもの • 学力の形成 • 社会参加 • 社会形成の主体者 子どもが無意図的に この授業は 広げるものを支える 双方に • 関係性の拡張 かかわる • つまづきの解消 • キャリアの形成 子どものことを 理解したい 授業が 上手になりたい ©

5.

タスク2 「この子どもたち」をなんと呼ぶべきか? ここにあげているのは、数々の「外国人児童生徒等教育」の関連本です。 ところが、その対象となっている子どもたちの「呼称」はなぜかまちまちです。 外国人児童生徒 外国籍児童生徒 日本語指導が必要な 文化間移動をする 児童生徒 子どもたち ニューカマー の子ども JSL児童生徒 年少者 ©

6.

タスク2 「この子どもたち」をなんと呼ぶべきか? A リアン君 B 太田京花さん 小学校3年生。2か月前にイ ンドネシアから来日しました。 小学校5年生。中国人の母と, 日本人の父が結婚し,日本で生 まれました。日本国籍を持って います。 父母はともにインドネシア人で す。 日本語はたどたどしいけれど, クラスの友だちと少しずつ話す ようになってきています。でも ,クラスの中での学習はまだま だ難しいものがたくさんありま す。そのため,国語の時間を中 心に,日本語教室に通っていま す。 それから,自分ではあまり自覚 はないのですが,両親もイスラ ム教徒です。給食ではいつも, 食べてはいけないものがあるか どうか,ちょっと注意をしない といけないのが困っています 家ではお母さんとは中国語を話 し,お父さんとは日本語と中国 語半々で話をします。お父さん は仕事で家にいないときが多い ので,中国語の時の方が多いか なと思います。 学校では,友だちとの会話は みんなと同じようにできます。 ただ,どうも国語や社会の学習 は難しく,ついていけないこと があります。特に,4年生のこ ろから,そんなことが目立つよ うになってきました。 母が中国人だからと言って直 接何か言われるわけではないの ですが,クラスの授業で,中国 のことが話題になった時に,中 国の悪口が何気なく飛び交うと ,なんとなく嫌な気分にもなり ます。周りは自分の名前も太田 だから,特に気づかないのかも しれませんが。 C ん 田中・シモーネ・美由紀さ 中学3年生。小学校2年生の時 にブラジルから日本に来ました 。両親は,日系ブラジル人(か つて日本からブラジルに移民し た人を先祖に持つ)なので,ブ ラジル人とも言えるけれど,日 本の血も引いています。22歳ま でに,ブラジル国籍か日本国籍 かは決めなければなりません。 もう来日して7年がたちます 。来たころは日本語もわからな かったし,勉強にもとても苦労 しました。でも今は周りにもつ いていけます。高校受験も迫っ てきて,志望校に入れるように 頑張っていきたいと思っていま す。ただ,いつも思うのは,将 来私は日本かブラジルか,どこ で生きていこうかということ。 国籍を選択していくことも含め ,友だちとは共有しにくい悩み です。 ©

7.

タスク2 A 「この子どもたち」をなんと呼ぶべきか? リアン君 小学校3年生。2か月前にインドネシアから来日しました。父母はともにイ ンドネシア人です。 日本語はたどたどしいけれど,クラスの友だちと少しずつ話すようになって きています。でも,クラスの中での学習はまだまだ難しいものがたくさんあり ます。そのため,国語の時間を中心に,日本語教室に通っています。 それから,自分ではあまり自覚はないのですが,両親もイスラム教徒です。 給食ではいつも,食べてはいけないものがあるかどうか,ちょっと注意をしな いといけないのが困っています。 ①外国人児童生徒 ②外国籍児童生徒 ⑤日本語指導が必要な ⑥文化間移動をする 児童生徒 子どもたち ③ニューカマー の子ども ⑦年少者 ④JSL児童生徒 ©

8.

タスク2 「この子どもたち」をなんと呼ぶべきか? B 太田京花さん 小学校5年生。中国人の母と,日本人の父が結婚し,日本で生まれました。日本国 籍を持っています。家ではお母さんとは中国語を話し,お父さんとは日本語と中国 語半々で話をします。お父さんは仕事で家にいないときが多いので,中国語の時の 方が多いかなと思います。 学校では,友だちとの会話はみんなと同じようにできます。ただ,どうも国語や 社会の学習は難しく,ついていけないことがあります。特に,4年生のころから, そんなことが目立つようになってきました。 母が中国人だからと言って直接何か言われるわけではないのですが,クラスの授 業で,中国のことが話題になった時に,中国の悪口が何気なく飛び交うと,なんと なく嫌な気分にもなります。周りは自分の名前も太田だから,特に気づかないのか もしれません。 ③ニューカマー ②外国籍児童生徒 ④JSL児童生徒 ①外国人児童生徒 の子ども ⑤日本語指導が必要な ⑥文化間移動をする 児童生徒 子どもたち ⑦年少者 ©

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タスク2 「この子どもたち」をなんと呼ぶべきか? C 田中・シモーネ・美由紀さん 中学3年生。小学校2年生の時にブラジルから日本に来ました。両親は,日 系ブラジル人(かつて日本からブラジルに移民した人を先祖に持つ)なので, ブラジル人とも言えるけれど,日本の血も引いています。22歳までに,ブラ ジル国籍か日本国籍かは決めなければなりません。 もう来日して7年がたちます。来たころは日本語もわからなかったし,勉強 にもとても苦労しました。でも今は周りにもついていけます。高校受験も迫っ てきて,志望校に入れるように頑張っていきたいと思っています。ただ,いつ も思うのは,将来私は日本かブラジルか,どこで生きていこうかということ。 国籍を選択していくことも含め,友だちとは共有しにくい悩みです。 ①外国人児童生徒 ②外国籍児童生徒 ⑤日本語指導が必要な ⑥文化間移動をする 児童生徒 子どもたち ③ニューカマー の子ども ⑦年少者 ④JSL児童生徒 ©

10.

タスク2 「この子どもたち」をなんと呼ぶべきか? 日本語指導が必要な児童生徒の数 69,123 4991 58,353 50,759 43,947 26,281 1128 797 5246 2860 29,794 1182 888 5978 3318 33,470 35,007 1365 1072 1980 1257 7576 9012 3593 3956 33,184 2137 1240 7558 4609 37,905 2272 1586 7809 2915 1803 8792 2006 2016 2010 2012 10260 2014 中学校 13369 外国籍 7991 日本国籍 7546 小学校 7669 5899 19504 18365 17154 18884 15946 18142 2008 11283 日本国籍 7250 22156 2007 3677 2071 4295 2376 2598 日本国籍 外国籍 高等学校 26316 2018 31191 2021 38141 外国籍 2023 Q1 さっきのグラフと、何が違うのか? Q2 どうして高校になると減ってしまうのか? 出所)文部科学省(2022)「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査(令和5年度)」 https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/31/09/1421569_00004.htm ©

11.

タスク2 「この子どもたち」をなんと呼ぶべきか? 129,449 外国籍の児童生徒数全体 114,853 10821 高等学校 9926 30792 93,133 70,936 7909 19311 72,751 7433 20119 75,043 7284 21253 74,214 8189 71,545 8948 73,289 80,119 8968 8584 9614 中学校 28101 23051 20686 22218 21405 21143 84930 74683 小学校 59094 43129 44595 45491 42748 40263 42721 2006 2007 2008 2010 2012 2014 49093 2016 2018 2021 2023 「外国籍の児童生徒全体」と「日本語指導が必要な〈外国籍+日本国籍〉の児童生徒」の統計はあるのに どうして「外国人の児童生徒全体」の統計はないのか? ©

12.

タスク2 「この子どもたち」をなんと呼ぶべきか? 「文化」への着目 「ことば」への着目 文化間移動をする児童生徒 日本語指導が必要な児童生徒 JSL児童生徒 年少者 「移民の歴史」 への着目 「日本人ではない」 ニューカマーの子どもたち 外国人児童生徒 外国籍児童生徒 ことへの着目 「統一的な呼び方」はできないのだろうか? 外国につながる子ども 海外にルーツを持つ子ども 言語的文化的に多様な子ども Students of Japanese as an Additional Language ©

13.

今日の 論点 境界は何だろうか? 論点1 「外国人/日本人」の境界は何で決まるのか? 論点2 「日本語指導が必要」とは何で決まるのか? 論点3 「多様性を包摂する」とはどういうことか? 「差異を承認する」ことなのか「格差を是正する」ことなのか? ©