下顎前方誘導と顎関節症との関連(2022)

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May 20, 23

スライド概要

矯正海外論文サイトから最新の矯正情報をお届けします。BMC Oral Healthに2022年に投稿された論文です。現時点でのインパクトファクターは3.747。成長期の下顎前方誘導が顎関節症に影響を及ぼすのか否か。システマティックにレビューした論文です。

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矯正歯科の海外最新論文をPubMedから紹介します。特にマウスピース型矯正(インビザライン)論文中心にお届けします。

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各ページのテキスト
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Keywords: Functional mandibular advancement, Temporomandibular joint disorders, Class II malocclusion, Orthodontics, Systematic review The effect of functional mandibular advancement for adolescent patients with skeletal class II malocclusion on the TMJ: a systematic review and meta-analysis Lan Ding, Rui Chen, Jiaxin Liu, Yuan Wang, Qian Chang and Liling Ren BMC Oral Health (2022) 22:51 https://doi.org/10.1186/s12903-022-02075-8 紹介者:矯正海外論文サイト https://kyousei-kaigaironbun.com

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目次 ©kyousei-kaigaironbun.com 1 2 3 4 5 6 • Introduction • Materials and Methods • Results • Discussion • Conclusions • References

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目次 ©kyousei-kaigaironbun.com 1 2 3 4 5 6 • Introduction • Materials and Methods • Results • Discussion • Conclusions • References

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1. Introduction ©kyousei-kaigaironbun.com 【背景】 骨格性Ⅱ級不正咬合はよく見られる疾患であり[1-4]、上顎の過成長と下顎の劣成長が原因である[5]。 成長期の患者[9]は、下顎骨の成長を促すために下顎前方誘導FMA)が行われている。[11]。 一方、顎関節症 (TMD)の要因は、疼痛疾患[14]、睡眠時無呼吸症候群、精神状態[15]、外傷[16.17]が 挙げられるが咬合要因もその一つである[18]。 TMDは関節内変位と関節外変位に分類され[17]、関節円盤と下顎頭の関係を含む関節内の機能障害は、 関節円盤の変位と下顎頭の関係で起こることがほとんどである。下顎前方誘導は関節円盤をより前進さ せるため、関節円盤と下顎頭の関係を変化させ、TMDを誘発する可能性がある。FMAがTMDに及ぼす影 響は、触診による顎関節の痛み、顎関節の音、筋肉の痛みなどが報告されている[6,19]。 動物実験によると、FMAはTMDの症状がないことを証明しているが、FMAについてはまだ論争がある [7,22-28]。 【目的】 成長期の患者を対象にFMAがTMDを引き起こすか、顎関節 (TMJ)に影響を与えるか どうかを検索データベースによって系統的にレビューすること

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Materials and Methods 【適格基準】 ● 研究デザイン:ランダム化比較臨床試験、非ランダマイズ化研究 ● 参加者:FMAを受けた思春期の患者 ● 矯正治療:プロフィールとクラスⅡを改善するためにFMAを用いた ● 包含基準 a. FMAによるTMDへの影響に関するすべての対照試験 b. 治療終了までコンプライアンスが良好な患者の症例数が80%以上 ; c. 矯正治療、顎矯正術、顎関節症治療歴がないもの ; d. 16歳未満であること; e. 研究の質が中、高であること ● 除外基準 a. 繰り返し行われた研究; b. 対照試験や前後比較を行っていない; c. 16歳以上であること; d. 基準により研究の質が低いもの ● アウトカム:TMJの形態、筋肉障害、TMJの位置、TMJの音、口腔顔面痛 ©kyousei-kaigaironbun.com

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Materials and Methods ©kyousei-kaigaironbun.com 【検索データベース】 PubMed、Web of Science、EMBASE、Cochrane Central Register of Controlled Trails、Scopus 【キーワード】 mandibular advancement, mandibular forward positioning, functional mandibular advancement, Herbst appliance, activator appliance, bionator appliance, twin-block appliance, Fränkel appliance, Forsus appliance, temporomandibular joint, temporomandibular joint disease, craniofacial pain, condylar resorption, class II malocclusion, orthodontics, randomized clinical trial, controlled clinical trial, placebo, double-blinded method and single-blinded method

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3. Results 対象となった研究の特徴 ©kyousei-kaigaironbun.com Ding et al. (2022)

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3. Results ©kyousei-kaigaironbun.com Ding et al. (2022)

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3. Results ©kyousei-kaigaironbun.com Ding et al. (2022)

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3. Results ©kyousei-kaigaironbun.com Ding et al. (2022)

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3. Results ©kyousei-kaigaironbun.com Ding et al. (2022)

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3. Results ©kyousei-kaigaironbun.com バイアスリスクの分析 Ding et al. (2022)

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3. Results ©kyousei-kaigaironbun.com バイアスリスクに関する判断 Ding et al. (2022)

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3. Results ©kyousei-kaigaironbun.com 交絡、選択バイアス、介入の分類、介入からの逸脱、結果の測定、報告結果の選択の分析 Ding et al. (2022)

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3. Results ©kyousei-kaigaironbun.com 研究間の出版バイアスの評価 Ding et al. (2022)

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3. Results ©kyousei-kaigaironbun.com Ding et al. (2022) 異質性の程度は有意であった。 メタ分析の結果、治療前と比較してFMA治療を受けた患者は、より深刻なTMDや新たなTMDを発 症しておらず、その結果は統計的に有意であった。

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3. Results ©kyousei-kaigaironbun.com Ding et al. (2022) 異質性に及ぼす各主要研究の役割を調べる感度分析の結果、Stephen D. Keelingの研究が最も異質性 に影響を及ぼし、この研究を除外すると異質性は明らかに減少した[I2=27%, OR=0.54, 95%CI (0.33, 0.87), p=0.01]。

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3. Results ©kyousei-kaigaironbun.com Ding et al. (2022) 基準によって5つの論文が選択された。

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3. Results ©kyousei-kaigaironbun.com 【顎関節症状】 FMA治療中に顎関節の症状を訴えた症例は少なく(962症例中32例、3.3%)、経過観察中に位置的な 症状は消失していることがわかった。顎関節音、顎関節痛、口腔顔面痛などの症状が報告されたが、 顎関節の機能障害はなかった。 【関節窩と関節頭】 MRIの結果、治療後の変形性関節症の変化や逸脱が報告されたのは17例(1.8%)だけであり、顎関節の 機能障害の報告はなかった。 【関節窩と関節円盤の位置】 MRIで測定した結果、治療終了時に47名 (4.9%)に円盤変位が認められたが、約1年間の経過観察に おいてすべて正常の位置にあることが示された[9,38]。

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3. Results ©kyousei-kaigaironbun.com サブグループの分析 Ding et al. (2022)

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4. Discussion ©kyousei-kaigaironbun.com メタアナリシスによる定量的評価の結果、FMAはTMDを引き起こさないことが示された。 多くの研究では、治療後下顎頭の位置がより前方になり下顎窩もリモデリングされることが示されて いる。anterior disc displacement with reduction (ADDR) [40] の患者でも確認されている。 下顎頭がより前方に移動しても、顎関節に大きなストレスがかかることはなく、咀嚼筋力の上昇 がみられたという報告がある[43,43]。 思春期は成人よりも顎関節のリモデリングが活発であり[45,46]、成長期である思春期の患者は、 筋肉痛や顎関節の不快感が比較的短期間で解消される可能性がある

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4. Discussion ©kyousei-kaigaironbun.com 【TMDと性差との関連】 システマティック・レビュー[53]によると、男性に比べて女性がTMDを発症するリスクは2倍である と報告されている。TMDには生理的、病理的な性差がある可能性があることが示唆されている[55]。 【TMDと誘導量との関連】 2年間の追跡調査の結果、下顎の前方誘導量が多くても顎関節症を引き起こすリスクが高くなること はないことが確認された[56]。 【治療期間とTMJの症状】 治療期間が長くなるにつれ、咀嚼系に軽微な機能障害が現れた[6,57]。しかし、これらの障害は一時 的であり[58]、症状は最終的に消失する。 【治療前の顎関節症の有無との関連】 顎関節症患者においてFMAは顎関節に有意な悪影響は示されていない[27,30,50]。 しかし、リスクの高い患者 (下顎頭に病的な変化がある) に対してはFMAは慎重に行われるべきであ ると指摘する研究者もいる[6,59]。

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5.Conclusions ©kyousei-kaigaironbun.com メタアナリシスの結果、 (1)機能的口腔内装置の装着中に顎関節症が発生することがあるが、経過観察期間中に症状が緩和 または消失することが示された。 (2)わずかな顎関節症の既往症が治療後に改善されることを示す説得力のある証拠はない。 (3) 治療中に顎関節円板前方変位が認められるが、そのほとんどは顎関節のリモデリングにより後に 正常な位置に戻る。 (4) FMAが顎関節症を誘発したり悪化させたりしないことを裏付ける中程度のエビデンス。 しかし、性別、追跡年、総進行量、治療期間が結果に影響を与える可能性があるため、性別、追跡年、 総誘導量、治療期間によるバイアスを減らすために、より詳細で厳密な実験を設計する必要がある。

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References ©kyousei-kaigaironbun.com

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References ©kyousei-kaigaironbun.com

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記事監修 ©kyousei-kaigaironbun.com Dr. 堀井和宏 (Kazuhiro Horii) 日本矯正歯科学会 臨床指導医(旧専門医)・ 認定医 日本舌側矯正歯科学会 American Association of Orthodontists 〒520-0832 滋賀県大津市粟津町4-7 https://www.horii-kyousei.com