西洋美術史ゼミ第18回:抽象表現主義・ポップアートなど

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August 18, 22

スライド概要

隔週程度で行っている世界史と西洋美術史の勉強会のスライドです。今回は抽象表現主義・ポップアートなどについて扱っています。厳密な考証は行っていませんが、可能な限り正確に書くことを心掛けています。以下のURLからスライドと補足資料をダウンロードできます。参考文献もこちらに記載しています。
https://github.com/amazuun/Art_of_Europe

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理系の大学生です。近代以降の美術史や思想史、現代美術について興味があります。厳密な考証は行っていませんが、可能な限り正確に書くことを心掛けています。後の物の方が出来が良いので、最新のものを最初に読むことをお勧めします。githubからはスライドと補足資料をダウンロードできます。参考文献は補足資料に記載しています。

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各ページのテキスト
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西洋美術史ゼミ 第18回 抽象表現主義・ポップアートなど 発表者 あまずん 1

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発表者について あまずん Twitter : @quii_w (メイン) @amazuunsc(サブ) 理系の大学生(数学科)です。 近代以降の美術史や思想史、現代美術について 興味があります。 2

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ゼミについて • 週1回程度で美術出版社「増補新装 カラー版 西洋美術史」を一章ずつ 読み進め、内容をまとめ発表します。 • また、高校世界史に沿う形で当時の 出来事についても説明します。 • そのため、世界史と美術史を同時に 学ぶことができるため、歴史が好き な方も美術が好きな方も学びを深め ることができます。 3

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前回の内容 • 1929年に世界恐慌が起こり、世界経済が 混乱した。世界は「持てる国」と「持た ざる国」に分かれ、この対立が第二次世 界大戦を引き起こした。 • 機械文明を賛美する未来派がイタリアで 興った。 • ロシア・アヴァンギャルドが起こり、抽 象的なシュプレマティスムと革新的な構 成主義が興った。また、モンドリアンの 抽象画もある種の到達点である。 • 反芸術を標榜するダダと、それに影響を 受け、無意識により現実を超えようとし たシュルレアリスムが生まれた。 デュシャン《泉》

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本日の内容 世界史について • 冷戦と第三世界の台頭 美術について • アンフォルメル • 抽象表現主義 • アメリカとイギリスのポップ・アート • フルクサス • 機械文明と美術 • 表現世界の拡大 5

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全体の概略 • 戦後にアメリカとソ連の間で冷戦が起こった。緊張は⾧く続き、 局所的な武力衝突にまで発展したが、89年に正式に終結した。 • 世界大戦の混乱によりパリの芸術家がアメリカに移住し、ここ で新たな芸術が花開いた。その中で主流なのは抽象表現主義と ポップ・アートである。 • このスライドでは美術史を体系的に学習するという目的のもと、 それぞれの潮流を一つの流れの中に位置づけようと試みていま す。しかし、非常に多様な様式が誕生した近現代において、こ れはあくまで一つの位置付け、一つの視点でしかなく、文献に よって多少異なることがあるのを留意してください。 6

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本日の内容 • 世界史:米ソ冷戦 • 美術史:アンフォルメルと抽象表現主義 • 美術史:アメリカとイギリスのポップ・アート • 美術史:機械文明と美術 • 美術史:表現世界の拡大 7

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米ソ冷戦(1) • 東ヨーロッパやバルカン諸国には大 戦中にソ連軍に解放された国が多く、 戦後、ソ連はそれらの国に親ソ的な 政権を樹立させた。 • これによりアメリカはソ連への警戒 を強め、ソ連の拡大を封じ込める政 策を出したがソ連側も対抗した。 • これを発端として、以後「冷戦」と 呼ばれる緊張状態が米ソ間で激化し ていく。 ベルリンの壁

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米ソ冷戦(2) • 東欧諸国ではソ連の後押しを受けた 共産党主導の改革が進められたのに 対して、西ヨーロッパ諸国はアメリ カと同盟を結び、東西は対立して いった。 • ヨーロッパのように南北に分断され ていた朝鮮では、1950年に朝鮮戦争 が起こる。これは北朝鮮と韓国の戦 争だったが米ソ両陣営が深くかかわ り、冷戦体制はさらに強まった。 朝鮮戦争で戦う国連軍

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米ソ冷戦(3) • 核兵器実験などの軍備拡大が行われ るなど緊張は強まっていた。スター リンの死後に歩み寄りの姿勢が見ら れた(「雪どけ」)が挫折し、 キューバ危機によって緊張は最高潮 に達した。 • しかし、米ソ両国はこの危機を何と か乗り越え、軍縮条約に調印するな ど緊張緩和に動いていき、89年に正 式に冷戦終結が宣言された。 キューバ危機

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第三世界の台頭 • 冷戦の激化に伴い、アジア・アフリ カの新興独立国のあいだには東西両 陣営の対立にまきこまれることへの 危機感が高まり、どちらにも属さな い第三勢力を形成しようとする動き が生まれた。 • こういった国々を第三世界と呼び、 平和共存や反植民地主義を目指して 協調した。ただし、この用語は主に 冷戦中に使われたものであり、今で は発展途上国やグローバル・サウス と呼ばれる。 • 第一世界=西側諸国 • 第二世界=東側諸国

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本日の内容 • 世界史:米ソ冷戦 • 美術史:アンフォルメルと抽象表現主義 • 美術史:アメリカとイギリスのポップ・アート • 美術史:機械文明と美術 • 美術史:表現世界の拡大 12

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抽象表現主義とポップ・アート • 戦後の美術運動において二大潮流が あり、それは抽象表現主義とポッ プ・アートである。 • 第二次世界大戦の混乱により、芸術 家の多くがヨーロッパからアメリカ に亡命し、美術の舞台もアメリカに 移ることとなった。 • こうしてアメリカでも新しい抽象絵 画運動の抽象表現主義が生まれた。 そして、この「高尚」な美術への反 発としてポップ・アートが生まれた。 Fair use, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=4268566 ウォーホル《キャンベルスープの缶》

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アンフォルメル(1) • 戦後のヨーロッパにおいて、アン フォルメルが生まれた。 • この名称は「不定形(Art informel)」を意味し、明瞭なかたち がもたらす秩序や構造を欠き、マチ エール(絵画表面の物質感)の荒々 しさが際立つ表現を追求し、戦争体 験など無秩序な現実に投げ込まれた 自己の生を問うた。 • この運動は後述する抽象表現主義と 時代的に呼応したものであった。 By Jean Fautrier - https://www.wikiart.org/en/jeanfautrier/t-te-d-otage-no-14-head-of-a-hostage-no-14-1944, Fair use, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=60108060 ジャン・フォートリエ 《Head of a Hostage No. 14》

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アンフォルメル(2) By User:TonyTheTiger - own picture, Fair use, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=11953760 デビュッフェ《Court les rues》 ヴォルス《無題》

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アンフォルメル(3) • 彼らに続くヨーロッパの画家にアン トニ・タピエスとルーチョ・フォン タナがいる。 • タピエスは美術用画材でないものを 利用した芸術である「アルテ・ポー ヴェラ」のスタイルで作品を作った。 • また、フォンタナは「空間主義」を 標榜してキャンバスを切り裂いた作 品を作った。これは三次元の絵画と も呼べるものであり、二次元性に縛 られていた絵画の可能性を広げた。 By Wmpearl File:Spatial_Concept_'Waiting',_cut_canvas_by_L ucio_Fontana,_Tate_Modern.JPG, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=83054320 フォンタナ《Waiting》

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抽象表現主義(1) • アンフォルメルと同時代にアメリカ で起こった芸術運動として抽象表現 主義がある。 • これは批評家のクレメント・グリー ンバーグに牽引された運動で、主な 特徴は 1. 巨大なキャンバス 2. 画面に中心がなく地と図の区別がな い「オールオーバー」な平面 3. 創作過程を重視(画面は作家の描画 行為の痕跡) である。 By Jackson Pollock - www.jackson-pollock.org, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=94787245 ポロック《Number 1 (Lavender Mist)》

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抽象表現主義(2) • グリーンバーグは絵画の本質を「平 面的な表面、支持体(面を構成する 物質)の形態、顔料の特性」である とし、この中でも特に平面性を重視 した。 • 彼はこの平面性こそがモダニズムを 近代以前と分かつものだと主張し、 純粋で高尚なアヴァンギャルド(⇔ キッチュ)である抽象表現主義を称 揚した。 By Willem de Kooning / Museum of Modern Art https://www.moma.org/learn/moma_learning/wille m-de-kooning-woman-i-1950-52-2/, Fair use, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=699885 87 デ・クーニング《Woman I》

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抽象表現主義(3) • ここでは詳細には立ち入らないが、 これは身体性の強いアクション・ペ インティングや、薄いヴェールのよ うな色面を作ったカラーフィール ド・ペインティングなどが含まれる 概念である。 • 抽象表現主義は幾何学的な「冷たい 抽象」に対し、表現主義的な「熱い 抽象」と呼ばれる。この運動から美 術の中心地はヨーロッパからアメリ カに移ってゆくことになる。 By http://gothamist.com/2012/05/09/record_for_rothko_orange_red_yell ow.php, Fair use, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=35864577 ロスコ《Orange, Red, Yellow》

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抽象表現主義(4) • 以下が代表的な画家である。 • ジャクソン・ポロック • マーク・ロスコ • ウィレム・デ・クーニング • バーネット・ニューマン • クリフォード・スティル • サイ・トゥオンブリー • フレンツ・クライン • ロバート・マザウェル

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抽象表現主義(5) By http://www.moma.org/collection/browse_results.php?c riteria=O%3AAD%3AE%3A4285&page_number=5&tem plate_id=1&sort_order=1, Fair use, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=12328709 ニューマン《Onement 1》 Fair use, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=10500721 スティル《1957-D No. 1》

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抽象表現主義(7) Fair use, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=1491796 クレイン《Painting Number 2》 Fair use, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=10881894 マザウェル 《Elegy to the Spanish Republic No. 110》

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抽象表現主義(8) By museum in progress, Cy Twombly, CC BY-SA 3.0 de, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=15817660 トゥオンブリー《Bacchus》 By Original work: Cy TwomblyDepiction: 19h00s - Own work, Fair use, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=71268167 トゥオンブリー《Untitled (Bolsena)》

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本日の内容 • 世界史:米ソ冷戦 • 美術史:アンフォルメルと抽象表現主義 • 美術史:アメリカとイギリスのポップ・アート • 美術史:機械文明と美術 • 美術史:表現世界の拡大 24

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アメリカとイギリスのポップ・アート:CONTENTS ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ 概略 ネオダダ ポップ・アート 戦後のイギリス美術 ブリティッシュ・ポップ フルクサス

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アメリカとイギリスのポップ・アート • 第二次世界大戦で国土が戦場となら なかったアメリカはどの国よりも早 く「豊かな社会」を実現しており、 この文化は西ヨーロッパ諸国にも流 入した。 • こうした文化状況から、大衆文化の 産物を主題や素材として用いたポッ プ・アートが生まれてきた。 • この運動はそれ以前の「高尚」な美 美術への反発であり、日常的現実へ の復帰とイメージのオブジェ化を目 指した。 Fair use, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=4161528 ハミルトン 《一体何が今日の家庭をこれほどに変え、魅力あ るものにしているのか》

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ネオダダ(1) • 1950年代の後半から、抽象表現に対 するアンチテーゼとして、アメリカ の国旗やダーツの標的などの大衆的 で明確な主題を用いたネオダダの運 動が起こった。 • ジャスパー・ジョーンズとロバー ト・ラウシェンバーグを中心とした 運動で、二次元のイメージのオブ ジェ化を行い絵画の可能性を開いた ほか、後述するポップ・アートへ多 大な影響を与えた。 Fair use, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=11164841 ジョーンズ《Flag》

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ネオダダ(2) By Sharon Mollerus - Robert Rauschenberg, Retroactive II, 1963 1/26/18 #mcachicago, CC BY 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=68077062 ラウシェンバーグ《Retroactive II》 By Jasper Johns - https://www.metmuseum.org/art/collection/search/487065, Fair use, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=56410277 ジョーンズ《White Flag》

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ポップ・アート(1) • アメリカではネオダダを継承した ポップ・アートが興り、イメージの オブジェ化はさらに多様となった。 • 彼らはポスター、看板、標識、漫画、 写真など、極めて卑近(キッチュ) な、工業化された大衆社会のなかの イメージを、破いたり、断片化した り、拡大したりと徹底してオブジェ に変えてしまった。 Fair use, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=4268566 ウォーホル《キャンベルスープの缶》

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ポップ・アート(2) • 主要なのはロイ・リキテンスタイン とアンディ・ウォーホルである。 • リキテンスタインは漫画の一コマを キャンバスに拡大し、ドットの一つ 一つまでもを描いた。 • ウォーホルはキャンベル・スープの 缶や、マリリン・モンローや毛沢東 など有名人の写真を用いた版画など を制作した。 • 彼らはカウンターカルチャーの時代 における大衆絵画作家としても成功 し、その作品は熱狂的に受け入れら れた。 By Roy Lichtenstein http://www.lichtensteinfoundation.org/0117.htm, Fair use, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=5673384 リキテンスタイン《溺れる女》

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戦後のイギリス美術(1) • イギリスでも同様にポップ・アート が隆盛するが、この運動はフランシ ス・ベーコンの多大な影響下にある 美術界への反発であった。 • ベーコンは20世紀最も重要な画家の 一人として扱われもする人物で、抽 象絵画が全盛となっていた大戦後の 美術界において具象絵画にこだわり 続けた。 • 彼は磔刑や教皇、親しい友人などを モチーフとし、戦中戦後の苦痛や苦 悩が凝縮されたような絵画を描いた。 By desmoinesregister.com, Fair use, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=3042185 ベーコン 《ベラスケスによるインノケンティウス10 世の肖像後の習作》

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戦後のイギリス美術(2) ベーコン 《キリスト磔刑図を基盤とした3つの人物画の習作》 • By http://www.tate.org.uk/servlet/ViewWork?workid=674 &searchid=20526, Fair use, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=2982961

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ブリティッシュ・ポップ(1) • このようなベーコン的な作品への反 抗として、ブリティッシュ・ポップ (ブリットポップ)が興った。 • この運動はアメリカのそれと同様に 通俗的なモチーフが用いられた。特 にハミルトンの『一体何が今日の家 庭をこれほどに変え、魅力あるもの にしているのか』はポップアートの 誕生を告げる作品として名高いが、 他にもパオロッツィやホックニーが 有名である。 Fair use, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=4161528 ハミルトン 《一体何が今日の家庭をこれほどに変え、魅力あるもの にしているのか》

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ブリティッシュ・ポップ(2) By Photo file created by Tate Gallery: London -- Original artwork created by Eduardo Paolozzi (b:1924d:2005) - Internet site: Tate Gallery Collection -- URL: http://www.tate.org.uk/servlet/ViewWork?cgroupid=999999961&workid=11350&searchid=8201&a mp;tabview=image, Fair use, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=19467249 Fair use, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=4214938 パオロッツィ《私はお金持ちのおもちゃだった》 ホックニー《大きい水しぶき》

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フルクサス(1) • ネオダダと並び称される運動として、 1962年に結成され国際的に展開した フルクサスという運動がある。 • 「Fluxus」とはラテン語で「流れる、 変化する、下剤をかける」を意味し、 ヨーロッパの伝統的な芸術に対する 前衛的性質を掲げていたものの、流 動性ゆえにその厳密な定義は避けら れていた。 フルクサスマニュフェスト

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フルクサス(2) • 他の特徴として多国籍のグループで あることや、メンバーと非メンバー の区別があいまいであること、広い 芸術ジャンルにまたがること、グ ループとしてのはっきりした主義主 張を持たないことなどがある。 CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=305777 ナム・ジュン・パイク《Pre-Bell-Man》

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フルクサス(3) • 代表的な芸術家は以下である。その国際 性ゆえ日本人の作家も多い。 1. ジョージ・マチューナス(創始者) 2. アラン・カプロー 3. ナム・ジュン・パイク 4. ヨーゼフ・ボイス 5. オノ・ヨーコ 6. 靉嘔(あいおう) 7. ジョン・ケージ(音楽家、『4分33 秒』) 8. 刀根康尚(音楽家、ノイズミュージッ クの第一人者) • マチューナス以外の 作家は別の項目でま た扱うため、作品な どは後ほど紹介しま す。

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本日の内容 • 世界史:米ソ冷戦 • 美術史:アンフォルメルと抽象表現主義 • 美術史:アメリカとイギリスのポップ・アート • 美術史:機械文明と美術 • 美術史:表現世界の拡大 38

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機械文明と美術(1) • これまで見てきた抽象表現主義と ポップ・アートは正反対の志向を示 しながらも、人間の情念や感覚に訴 えかけるという点で共通する一面も 持っていた。 • このような美術潮流に対して、機械 技術の発展が著しいこの時代、その 新しい表現可能性に強くひかれた芸 術家たちもいた。 CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=292969 ヴィクトル・ヴァザルリの屋外作品

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機械文明と美術(2) • 彼らは情念の噴出や偶然の効果より も緻密な計算に基づく新たな秩序を 求めた。 • その結果生まれたのが錯視的な抽象 絵画である「オプ・アート」や、 モーターやモビールなどによる運動 や光、音を取り入れた「キネティッ ク・アート」、「ライト・アート」 である。 By Montrealais at the English-language Wikipedia, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=2251484 アレクサンダー・カルダー《赤いモビール》

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本日の内容 • 世界史:米ソ冷戦 • 美術史:アンフォルメルと抽象表現主義 • 美術史:アメリカとイギリスのポップ・アート • 美術史:機械文明と美術 • 美術史:表現世界の拡大 41

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表現世界の拡大(1) • 1970年以降、多くの芸術家たちが新 しい表現を求め、自己の創造世界を 切り開いていった。 • その結果、今日では絵画、彫刻、建 築といった伝統的分類では捉えきれ ない作品が数多く作られた。これを 象徴するのが、「フォーヴィスム」 などの「イズム」から、「ポップ・ アート」などの「アート」への名称 の移行であり、これは新しい試みは 新たな「芸術」であることを暗示す る。 ニキ《ナナ》(ドイツのハノーファー)

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表現世界の拡大(2) • 様々な表現が生まれたが、ここでは 以下を扱う。 ① パフォーマンス・アートの諸相 ② ヌーヴォー・レアリスム ③ ミニマル・アート

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パフォーマンスアートの諸相:CONTENTS ① ハプニング ② ヨーゼフ・ボイス ③ 「生きている彫刻」

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ハプニング • ハプニングとは、非再現的で一回性 の強いパフォーマンスアートや作品 展示のことである。 • アラン・カプローが1959年に行った 『6つの部分の18のハプニング』に端 を発し、様々な芸術家がこの表現を 行うようになった。 • ハプニングはパフォーマンスアート やインスタレーションに大きな影響 を与えた。 マルタ・ミヌヒン 《Reading the news》

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ヨーゼフ・ボイス • ヨーゼフ・ボイスは初期のフルクサ スに関わり、パフォーマンスアート やハプニングの数々を演じたほか、 『社会彫刻』の概念を編み出し芸術 家の地位向上にも貢献した。 • 彼は脂肪とフェルトを使った彫刻を 作ったほか、《私はアメリカが好き、 アメリカも私が好き》というコヨー テと共に一週間暮らすパフォーマン スなどの芸術実践を行った。 By Art talk : the early 80s, p. 80; photo by Caroline Tisdall, courtesy of Ronald Feldman Fine Arts, Fair use, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=68657130 ボイス 《私はアメリカが好き、アメリカも私が好き》

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「生きている彫刻」(1) • 1960年代の終わりごろから、ヨー ロッパにおいてもアメリカにおいて も、身体をメディア(表現媒体)と した制作が盛んとなっていった。 • ピエロ・マンゾーニは自他の身体を メディアとして使ったアーティスト である。彼は人の身体に署名をして それを「彫刻」とする『生きている 彫刻』や、自らの排泄物を缶詰にし た『芸術家の糞』を制作し、伝統的 な芸術観を戯画化した。 By Jens Cederskjold, CC BY 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=52830146 マンゾーニ《芸術家の糞》

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「生きている彫刻」(2) • ブルース・ナウマンは自己の身体を メディアとして用いたパイオニア的 アーティストである。 • 彼にとっては自らの身体こそが芸術 作品の根本的な素材であった。つま り、彼の身体は主体であり客体でも あった。 • 言語ゲームの概念に影響を受け、 『Flesh to White to Black to Flesh』のようなビデオ作品や、 『Human/Need/Desire』のような ネオン管を使った作品で知られる。 GVA IVAM 2013, Flesh white to black to flesh, 1968. Bruce Nauman, accessed 18 August 2022, <https://www.youtube.com/watch?v=HjEAtc0Ee4M> ナウマン 《Flesh to White to Black to Flesh》

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「生きている彫刻」(3) • ギルバート&ジョージは自らを「生 きた彫刻」とし、常に二人で行動し 同じスーツを着ることで、その生活 すべてを作品とした。 • 『歌う彫刻』というパフォーマンス が最も有名である。この作品は、彼 らは顔を金色に塗り、オートマタを 連想させる機械的な動きをしながら 歌を歌い続けるというものだった。 • フォトモンタージュの作品も制作し ており、先日も日本で展示を行うな ど未だ精力的に活動している。 By DarTar: original portrait cropped by Beyond My Ken (talk) 21:45, 11 August 2018 (UTC) - Own work, CC BYSA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=71 537075 ギルバート&ジョージ

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ヌーヴォー・レアリスム(1) • 1960年4月、美術評論家ピエール・レ スタニの宣言文とともに、ヌー ヴォー・レアリスム(新しいリアリ ズム)という運動が始まった。 • このグループに属したメンバーはそ れぞれ表現の手段が異なっていたが、 「リアリズム」の名の通り、彼らは みな生活と芸術を近づけ、新しいリ アリティを表現することを模索して いた。 By Munfarid1 - Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1 14105823 クリストとジャンヌ=クロード 《梱包されたエトワール凱旋門》

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ヌーヴォー・レアリスム(2) • 以下が代表的な芸術家である。 1. イヴ・クライン(独自の青色 (International Klein Blue, IKB)を 用いた作品で有名。) • セザール(スクラップを圧縮する 「圧縮彫刻」や、人体の一部を拡大 する「膨張彫刻」を制作した。) • ニキ・ド・サン・ファル(フェミニ ズムの文脈において「射撃絵画」や 彫刻「ナナ」シリーズを作った。) • クリストとジャンヌ=クロード(建 築物を「梱包」した。) ニキ《ナナ》(ドイツのハノーファー)

52.

ヌーヴォー・レアリスム(3) セザール《L'Homme de Figanieres》 クラインの音楽劇場のレリーフ

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ミニマル・アート(1) • 1960年代にアメリカではミニマリズムが 登場し、要素を最小限度まで切り詰めよ うとする態度が芸術の諸分野で生まれた。 • 美術においてはフランク・ステラやドナ ルド・ジャッド、カール・アンドレらに よってミニマル・アートが生まれ、抽象 表現主義を批判的に継承しつつ、手仕事 性を消し去ることで抽象美術の純粋性を 徹底的に突き詰めた。 • また、ミニマル・アートの作品は場所に 固有(サイトスペシフィック)なもので あり、インスタレーションの考えにもつ ながった。 By Rept0n1x - Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=19488783 ジャッド《無題》

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ミニマルアート(2) By This Non-free content is a work which has been published or publicly displayed outside Wikipedia: https://www.tate.org.uk/art/artworks/andre-144-magnesium-square-t01767 The Identification of the source of the original copyrighted material, supplemented, where possible, with information about the artist, publisher and copyright holder, and year of copyright is displayed to help determine the material's potential market value., Fair use, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=65017104 By http://www.whitney.org/www/american_voices/240/index.htm l, Fair use, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=23120602 ステラ アンドレ 《旗を高く掲げよ(Die Fahne Hoch!)》 《144 Magnesium Square》

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ポストミニマリズム • このようなミニマリズムの影響を受 け、これをさらに発展させた芸術家 たちはポストミニマリストと総称さ れる。 • 「ポストミニマリズム」の語は特定 の運動ではなく美術・美学的な傾向 であり、日常的でシンプルな素材を 用いた作品が多い(が、多様なアー ティストがこの分類には含まれるた め、一概には言えない)。 • エヴァ・ヘスやリチャード・セラが 挙げられる。 This work is licensed under the Creative Commons Attribution 2.0 License. By Original work: Eva HesseDepiction: Claire P. - Flickr, CC BY 2.0, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=42071683 エヴァ・ヘス 《Repetition Nineteen III》

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本日のまとめ • 冷戦が起こり、世界は東西に分かれ た。緊張は⾧く続いたものの、89年 にとうとう終結した。また、この動 きの中で第三世界が台頭した。 • 戦後のアメリカではオールオーバー な画面が特徴である抽象表現主義が 生まれ、またこの潮流への反抗とし て大衆的なモチーフを用いたポッ プ・アートが生まれた。 • 他にもハプニングやミニマル・アー ト、ヌーヴォー・レアリスムなど 様々な潮流が生まれた。 By Roy Lichtenstein http://www.lichtensteinfoundation.org/0117.htm, Fair use, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=5673384 リキテンスタイン《溺れる女》

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次回の内容 • 時代が進むにつれ、現代美術はます ます多様になっていく。 • もはや物質性すら不要となったコン セプチュアル・アートや、写真を精 密に転写するスーパーリアリズム、 美術館を飛び出し大地に直接描いた アース・ワークが生まれるなか、新 表現主義によって絵画の復権が成さ れる。 • 関連ワード 1. 河原温『日付絵画』 Fair use, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=12426299 バスキア《Untitled (Skull) 》