西洋美術史ゼミ第十二回:新古典主義

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May 27, 22

スライド概要

隔週程度で行っている、世界史と西洋美術史の勉強会のスライドです。今回は新古典主義について扱っています。厳密な考証は行っていませんが、可能な限り正確に書くことを心掛けたつもりです。以下のURLからスライドと補足資料をダウンロードできます。
https://github.com/amazuun/Art_of_Europe

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理系の大学生です。近代以降の美術史や思想史、現代美術について興味があります。厳密な考証は行っていませんが、可能な限り正確に書くことを心掛けています。後の物の方が出来が良いので、最新のものを最初に読むことをお勧めします。githubからはスライドと補足資料をダウンロードできます。参考文献は補足資料に記載しています。

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各ページのテキスト
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西洋美術史ゼミ 第12回 新古典主義・ロマン主義・写実主義 発表者 あまずん 1

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発表者について あまずん Twitter : @quii_w (メイン) @amazuunsc(サブ) 理系の大学生(数学専攻)をやっています。 近代以降の美術史や思想史、現代美術について 興味があります。 2

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ゼミについて • 週1回程度で美術出版社「増補新装 カラー版 西洋美術史」を一章ずつ 読み進め、内容をまとめ発表します。 • また、高校世界史に沿う形で当時の 出来事についても説明します。 • そのため、世界史と美術史を同時に 学ぶことができるため、歴史が好き な方も美術が好きな方も学びを深め ることができます。 3

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前回の内容(1) • バロック美術がイタリアから始まり、 ヨーロッパ諸国に広がりました。カ トリック改革を背景に美術が発展し ていきましたが、オランダでは市民 の影響力が強まり世俗的な絵画が多 く描かれました。 • 18世紀フランスでは、バロックとは 対照的な軽妙洒脱な様式であるロコ コ美術が生み出され、華やかな文化 が営まれました。 ベラスケス《教皇インノケンティウス10世》

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前回の内容(2) カラッチ《豆を食べる男》 スルバラン《壺のある静物》

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前回の内容(3) ルーベンス《キリスト昇架》 フェルメール《真珠の耳飾りの少女》

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前回の内容(4) レンブラント《夜警》

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本日の内容 世界史について • フランス革命とナポレオン • 19世紀のヨーロッパ文化 美術について • 新古典主義 8

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全体の概略 • 19世紀の象徴的な出来事として、フランス革命があります。ナ ポレオンの活躍もあり、革命によって絶対王政が覆され、市民 社会が形成され始めました。 • この時代の美術はフランスが舞台の中心となり、フランスの趨 勢に応じて美術様式は区分されています。具体的には、ポンペ イ遺跡の発掘をきっかけとする新古典主義、ナポレオンのプロ パガンダとしてのロマン主義、産業革命による経済格差の影響 を受け、ありふれた現実に美を見出した写実主義の三つです。 • 今回は歴史メインで、新古典主義までを扱います。 9

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本日の内容 • 世界史:フランス革命とナポレオン • 美術史:新古典主義 10

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フランス革命とナポレオン:構成 • 構成は次の通りです。 ① 概略 ② 革命以前のフランス社会 ③ 革命の勃発と立憲君主制の成立 ④ 革命の激化 ⑤ 革命の終焉とナポレオン登場 ⑥ ナポレオン政権

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フランス革命とナポレオン:概略 • 1789年、フランス革命が起こりまし た。これは徹底的な市民革命で、絶 対王政が行われていたフランス社会 を根底から変革するものでありまし た。そして、これは近代社会成立へ の転換点ともなりました。 • この革命で大きな役割を果たしたの はナポレオンです。革命が終結した 後、彼は皇帝に即位して第一帝政が 開始されることとなります。 ダヴィッド《サン=ベルナール峠を越えるボナパルト》

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革命以前のフランス社会 • 革命以前の絶対王政下におけるフラ ンスの政治制度をアンシャン・レ ジーム(旧制度)という。 • 身分は第一身分(聖職者)、第二身 分(貴族)、第三身分(平民)に分 かれていたが、人口の2%である第 一、第二身分が特権的な地位を占め、 平民は不満が募っていた。 • また、ルイ16世がアメリカ独立戦争 に参加したことで財政が完全に破綻 した。 アンシャン・レジームの風刺画

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革命の勃発と立憲君主制の成立(1) • このような状況下で三部会(身分制 議会)が開かれたが特権身分と平民 が対立し、第三身分代表はこれを離 脱し国民議会を結成した。しかし、 国王と貴族は武力で議会を弾圧する こととなる。 • 1789年、民衆はこれに反発して、圧 政の象徴であったバスティーユ牢獄 を襲撃した。これがフランス革命の 発端となり、全国での農民蜂起を誘 発した。 ジャン=ピエール・ウーエル《バスティーユ襲撃》

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革命の勃発と立憲君主制の成立(2) • その後、国民議会は封建的特権の廃 止を決定し、人権宣言を採択した。 • その後、議会は市民の求める数々の 改革を行ったが、一方で国王はオー ストリアへの逃亡を企てたことなど から信頼は大きく損なわれていた。 • 1791年に立憲君主制を定めた憲法を 採択し、国民議会は解散した。そし て、憲法に基づき国民議会に代わり 立法議会が成立することとなった。 By Milky - Museum of the French Revolution, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=78860432 人権宣言のプリント

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革命の激化(1) • 立法議会では、革命のこれ以上の進 行を望まない立憲君主派と、穏健な 共和制を主張するジロンド派が対立 した。 • 国内外での反革命の動きが活発にな るとジロンド派が政権を握り、革命 に敵対的なオーストリアに宣誓した。 • フランス軍は連戦連敗し、フランス 国内への侵入を許したものの、義勇 軍が編成されヴァルミーの戦いで初 めて勝利した。 • 立憲君主制 →君主が憲法の制限を 受ける政治体制。 • 共和制 →主権が君主以外にあ る政治体制。主権が政 党である場合などもあ り、民主制とは限らな い。

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革命の激化(2) • また、義勇軍は国王を襲い王権を停 止した。そして、一院制議会である 国民公会が成立し王政の廃止と共和 制の樹立を宣言した。これを第一共 和政と呼ぶ。 ヴェルネ《ヴァルミーの戦い》

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革命の激化(3) • 国民公会では急進共和主義のジャコ バン派が勢力を増し、ジロンド派と 対立。1793年にジャコバン派はジロ ンド派を国民公会から追放し、独裁 権を握った。 • 当初ジャコバン派の指導者であった マラーが暗殺され、ロベスピエール が中心となり急進的政策を進めた。 これらの改革に反対するものは処刑 されたため恐怖政治と呼ばれた。 ロベスピエール

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ダヴィッド《マラーの死》

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革命の終焉とナポレオン登場(1) • 恐怖政治を行っていたロベスピエー ルであったが、1794年にクーデター が起こり処刑された。 • ジャコバン派は没落し、穏健共和派 が有力となった。そして、1975年に 新しい憲法が制定され、国民公会が 解散されて総督政府が樹立された。 議会のまとめ 1. 三部会 2. 国民議会 3. 立法議会 4. 国民公会 5. 総督政府 6. 統領政府(後述)

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革命の終焉とナポレオン登場(2) • しかし社会不安は続いており、市民 は社会の安定を望んでいた。 • こうした状況のもと、混乱をおさめ る力を持った軍事指導者としてナポ レオン=ボナパルトが注目されるよ うになった。 ダヴィッド《サン=ベルナール峠を越えるボナパルト》

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革命の終焉とナポレオン登場(3) • ナポレオンはイタリアやエジプトに 遠征し名声を高めていたが、イギリ スがロシア・オーストリアなどと同 盟を結び(第2回対仏同盟)、フラン スが危うくなると本国に帰還した。 • 帰国後、彼は同盟の侵略により支持 を失っていた総裁政府に対しクーデ ターを起こした。そして三人の統領 からなる統領政府を立て、第一統領 として事実上の独裁権を握った。こ れにより、10年間におよんだフラン ス革命はここに終了した。 François Bouchot《ブリュメール18日のクーデター》

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ナポレオン政権 • ナポレオンは革命以来フランスと対 立していた教皇やイギリスと和解し た。また、財政の安定や商工業の振 興、公教育制度を整備した。 • このような活躍により、国民投票で 圧倒的な支持を受けナポレオンは皇 帝に即位し、ナポレオン1世と名乗る ようになった。これを第一帝政と呼 ぶ。 ジェラール《ナポレオン1世》

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ナポレオンの大陸制覇 • ナポレオン帝政の誕生に対抗し、イ ギリス・オーストリア・ロシアは第3 回対仏大同盟を結んだが、ナポレオ ンはトラファルガーの海戦などで同 盟を打ち破った。 • また、他の地域とも同盟や条約を結 ぶことによって、ヨーロッパ諸国を ほぼ支配下においた。 ターナー《トラファルガーの海戦》

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ナポレオンの没落(1) • ナポレオンの征服に対して、周辺諸 国では民族意識が成⾧した。 • これにより、スぺインやプロイセン などで反乱が起こった。また、ロシ アも条約を無視して貿易を行ったた めナポレオンはロシアに遠征したが 失敗。彼はその後も敗れ、エルバ島 に流されることとなった。 スホドルスキ《ベレジナ川を渡るフランス軍》

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ナポレオンの没落(2) • その後エルバ島を脱出して皇帝に復 位したが、ワーテルローの戦いで大 敗した(百日天下)。そのため再び 島流しに遭い、この地で死去した。 スチューベン《ナポレオンの帰還》

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本日の内容 • 世界史:フランス革命とナポレオン • 美術史:新古典主義 27

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新古典主義:構成 • 構成は次の通りです。 ① 19世紀の美術 ② 新古典主義概略 ③ ダヴィッド ④ グロ ⑤ アングル ⑥ ジョン・フラクスマン

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19世紀前半の美術 • 19世紀前半には、新古典主義、ロマ ン主義、写実主義の三つの美術様式 が成立した。当時の美術の中心地は フランスであったため、フランスの 趨勢に応じてこの区分がなされるよ うになった。 • 知識人や資本家といった、市民の視 点を持った人々により美術は変革さ れ、市民社会の価値観に基づいた作 品が生み出されたことが特徴であり、 これが近代芸術の成立である。 ドラクロワ《民衆を導く自由の女神》

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新古典主義(1) • 新古典主義とは、ルネサンスと同様 に古代ギリシア・ローマの美術を規 範としようとする運動である • 芸術家は規範美と考古学的な正確性 を目指すことが要求され、理性と倫 理観が重視された。 • 造形的に重要視されたのは輪郭線で あった。自然界に存在しない輪郭線 はそれゆえに事物の本質をとらえて 純化し、理想的芸術表現へと昇華さ せる手段となると考えた。 アングル《スフィンクスの謎を解くオイディプス》

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新古典主義(2) • 18世紀前半に行われた、ローマ時代 の町ヘルクラネウムとポンペイ遺跡 の発見がきっかけではあったが、そ のベースにあったの反ロココ美術で、 それはつまり享楽主義的な内容と感 覚的な様式に対する批判と反省で あった。 • 絵画においてはダヴィッド、アング ル、グロなどが有名であるが、ジョ ン・フラクスマンの版画作品も注目 に値する。 アングル《玉座のナポレオン》

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ダヴィッド(1) • 新古典主義はフランスの文化政策に よっても牽引され、絵画においては 歴史画を描く動機づけがあった。 • ダヴィッドはこの政策が生んだ最大 の歴史画家であり、新古典主義を代 表する画家でもある。 • 彼の代表作は『マラーの死』『ソク ラテスの死』『ナポレオン一世の戴 冠式と皇妃ジョゼフィーヌの戴冠』 である。 ダヴィッド《自画像》

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ダヴィッド(2) • 彼の歴史画は彫刻のようなポーズが 特徴で、また主題もソクラテスの死 など(ロココと比較して)骨太のも のが多かった。 • さらに、彼の功績として歴史画の題 材に現代史を取り入れたことが挙げ られる。臨場感あふれるその表現は、 寓意的で静的な従来の歴史画とは一 線を画すものであった。 ダヴィッド《ソクラテスの死》

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ダヴィッド(3) ダヴィッド《ナポレオン一世の戴冠式と皇妃ジョゼフィーヌの戴冠》

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グロ • グロとアングルはダヴィッドの弟子 であり、新古典主義絵画を描いた。 • アントワーヌ=ジャン・グロはナポ レオンの肖像と遠征の絵で画壇にデ ビューしたが、後世の王政復古期に 師の古典主義的な教えと自身のロマ ン主義的な素質との板挟みになり自 殺した。 • 彼の特徴はそれまでにない生々しい 表現であり、代表作は『アイラウの 戦いにおける、野戦場のナポレオン1 グロ《アイラウの戦いにおける、野戦場のナポレオン1世》 世』である。

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アングル(1) • アングルはロマン主義の世代はあっ たが、新古典主義絵画を描いた画家 であった。 • 彼は線の優位と静的な構図の新古典 主義的な絵画を描き続けたが、これ は古典主義的な理想美によるもので はなく彼の美意識によるものであり、 純粋な線の効果を重視した。 アングル《自画像》

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アングル(2) • この線の優位は代表作の 『グランド・オダリス ク』に明らかで、この人 体は胴が⾧く関節も感じ られないが、官能的な女 性美を美しく表現してい る。 • 他にも『スフィンクスの 謎を解くオイディプス』 や『泉』などが有名であ る。 アングル《グランド・オダリスク》

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ジョン・フラクスマン(1) • ジョン・フラクスマンはイギリスの 彫刻家だが、ギリシャ神話を題材に 描いた独特のイラストレーションで も知られる。 • 彼は彫刻の分野で主に活躍したもの の、ホメロスの『イーリアス』『オ デュッセイア』の挿絵を描き、輪郭 の線画を特徴とするイラストレー ションが人気を博した。 フラクスマン《オデュッセイアの挿絵》

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ジョン・フラクスマン(2) フラクスマン《アキレウスに武器を与えるテティス》

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本日のまとめ • 19世紀にフランス革命が起こりまし た。身分格差と財政危機を原因とす るこの市民革命により、封建的特権 が廃止され、また共和制が成立しま した。その後ナポレオンの台頭によ り帝政が開始されましたが、周辺諸 国からの反発に遭い彼は没落してい きました。 • 帝政以前の時代には新古典主義が流 行し、思弁的で線的な絵画が流行し ました。 アングル《グランド・オダリスク》

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次回の内容 • 次回からはロマン主義・レアリスム (写実主義)について扱います。ナポ レオンの帝政のもと、新古典主義への 反発から生まれたドラマチックな様式 であるロマン主義や、ありふれた現実 に美を見出した写実主義により、近代 絵画は形作られていきました。 • 関連ワード 1. ゴヤ『マドリード、1808年5月3日』 2. ミレー『落穂拾い』 ミレー《落穂拾い》 41