産業用ロボットにおけるUnityとAI技術の活用

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October 19, 20

スライド概要

Unityをはじめとするシミュレーション関連の分野は従来の産業用ロボットにおいて,事前の動作計画や検証といった用途で大きな役割を果たしてきました。しかし,近年,深層学習の登場により,これらのシミュレーション技術の活用は大きく異なりつつあります。本講演では,Unityが多く採用されているゲーム開発やビジュアライズといった用途とは別の産業分野でのUnityやAI技術の活用事例について,私たちの実際の取り組みを例として紹介します。

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リアルタイム3Dコンテンツを制作・運用するための世界的にリードするプラットフォームである「Unity」の日本国内における販売、サポート、コミュニティ活動、研究開発、教育支援を行っています。ゲーム開発者からアーティスト、建築家、自動車デザイナー、映画製作者など、さまざまなクリエイターがUnityを使い想像力を発揮しています。

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各ページのテキスト
1.

株式会社 エイアイキューブ 太刀掛浩貴 Generative Art — Made with Unity 産業用ロボットにおける UnityとAI技術の活用

2.

自己紹介 • 太刀掛 浩貴 (タチカケ ヒロキ) • ~2016年 東北大学 バイオロボティクス専攻 ✓ 製造業向けの作業支援ロボット • • • • • 機械設計 電気設計 認識 (自己位置推定) 制御 機械学習 (作業者の行動認識) …, etc. • 2016年 株式会社 安川電機 入社 ✓ 新規事業向けのロボット開発 • 深層学習 • 2018年 株式会社 エイアイキューブ 出向 ✓ 現職

3.

本日の内容 • 産業用ロボットにおけるUnityとAI技術(特に深層学習)の活用について 私たちの取組みを事例として紹介 • ばら積み部品をピックアップ? • AI? • シミュレーション? MONOistに掲載された記事[1] [1] MONOist, https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1912/24/news063.html (accessed 2020/9/25).

4.

本日の内容 • 過去の関連するプレゼンテーション資料 2019国際ロボット展(iREX2019)[2] JDLA 合格者の会[3] [2] 安川電機 e –メカサイト, https://www.youtube.com/watch?v=s3kHYTkDVNI (accessed 2020/9/25). [3] 一般社団法人日本ディープラーニング協会, https://www.youtube.com/watch?v=iUpJySHU7yQ (accessed 2020/9/25).

5.

本日の内容 • 今回は開発者の目線からお話しします!! 含まれる内容 • 製造業のおけるUnityの活用事例や 今後の方向性 含まれない内容 • Unity活用のノウハウ ⇒ 産業用ロボットの分野でUnityのようなゲームエンジンが今 or 今後 どう関わってくるか?の参考になれば幸いです

6.

エイアイキューブとは? • 安川電機について • 100年以上の歴史のある会社 • “メカトロニクス”という考えを初めて提唱したのは,実は安川電機 コア製品群 インバータ サーボ&コントローラ 産業用ロボット

7.

エイアイキューブとは? • 産業用ロボット活用の領域の拡大 人の動作の 模倣 一 般 産 業 導入に対する簡易性向上 ・安全柵なしでの設置 ・教示の簡易化 ・配置・移動の自在性向上 ロボットの新しい 活用領域の追求 ゴルフスイングロボット MotoMINI バイオ メディカル 搬送 液晶・半導体搬送ロボット 分析前処理ロボットセル ピッキング・パッキング パレタイジングロボット バイオメディカル用 双腕ロボット 自走式双腕ロボット 人協働ロボット 多能工型 ビジョン技術 7軸・双腕ロボット 塗装用途最適化ロボット 自 動 車 溶接 塗装 組立 スキルの拡大 ・各種センサーの利用 ・作業ツールの充実 レーザ溶接 アーク溶接 スポット溶接 新型7軸ロボット 力覚技術 多才さ、柔軟性、人との協調性 高生産性=正確性・多量・高速 ロボットに求められる能力

8.

エイアイキューブとは? • i3-Mechatronics(アイキューブメカトロニクス) 1.Integrated 製品や周辺機器とのデータ統合によって状況を把握 2.Intelligent 統合されたデータを動きに変えて継続的な価値を届ける 3.Innovative 1,2を更に高めるための技術革新 新しいモノづくりを実現する手段としてAI技術を活用!!

9.

エイアイキューブが目指すこと モータのデータを核とした現場のデータ活用に、 AI技術を融合し生産現場に導入 今まで自動化が難しかった領域の自動化を実現 ものづくりの現場の自動化領域が拡大 お客様とinnovativeな状態を実現

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エイアイキューブの取組み ① 時系列データ解析 ② 画像診断・解析 ③ ロボティクス しきい値判定では難しい 機械の予兆の検知・予測 目視による異常検知や 製品の外観検査の自動化 産業用ロボットの 技術領域と応用範囲の拡大 異音・振動検知による 製造品質/工場の生産性向上 微細なキズ・ヘコミ・擦れの 検出,異物・不良の検出 嵌合作業、ピッキング作業の ロボット化など これまで取り組んだテーマの一例 • ボールねじ故障予知診断 • モータ異音の検査 • 溶接ビード研削状態の判定 • 車載基板の不良検査 • 食品内の異物の検査 FA機器の“機能”としてAIを実装 • ギヤ嵌合作業の自動化 • バラ積みピッキング • ロボット動作の自動生成

11.

産業用ロボットが製造現場のデータを活用するためには? • “機能”を実装するだけで十分か? 2017国際ロボット展(iREX2017)[4] [4] 安川電機 e-メカサイト, https://www.youtube.com/watch?v=N9E2ZOjyUW8 (accessed 2020/9/25).

12.

産業用ロボットが製造現場のデータを活用するためには? • “機能”を実装するだけで十分か? 2017国際ロボット展(iREX2017)[4] [4] 安川電機 e-メカサイト, https://www.youtube.com/watch?v=N9E2ZOjyUW8 (accessed 2020/9/25).

13.

産業用ロボットが製造現場のデータを活用するためには? • “機能”を実装するだけで十分か? ⇒ データ収集のプロセスとセットで考える必要がある • 製造現場のデータは“特定タスク”の“複数条件下”におけるデータ • 顧客ごとにタスクが異なる+性能が要求される = 画像や自然言語の分野で有効であった 汎化 → 特定のタスクへのチューニングという方法が採用しづらい • 自動化が難しい領域 = タスクの中でも環境や条件が変化する • 実機を用いたデータ収集のコスト • 試行回数を大きくできない • 人手で環境を構築/再構築する必要がある • 実機が壊れる … など シミュレーションの活用

14.

産業用ロボットが製造現場のデータを活用するためには? • 現実世界とシミュレーションとの違い • 周囲環境のモデルや観測値,動作指令から結果を得るプロセスにおいて 現実世界とシミュレーションでは違い(Reality gap)が存在する ⇒ シミュレーションで生成した動作指令が現実世界では機能しないことがある シミュレーション 状態 状態遷移 観測 Reality gap 現実世界 状態 状態遷移 観測値 Reality gap 観測 観測値 動作指令生成機能 動作結果 Reality gap 動作指令生成機能 動作結果

15.

産業用ロボットが製造現場のデータを活用するためには? • 従来のシミュレータの役割 • 事前の動作検証(経路計画・干渉判定など) 従来のシミュレータ (例:MotoSim[5]) [5] Yaskawa America, Inc., https://www.youtube.com/watch?v=WPFEEt8AeTQ&list=PLoQTh8O3tekKLMGU4_nlXrHV8uoZJdFz5&index=1 (accessed 2020/9/25)

16.

産業用ロボットが製造現場のデータを活用するためには? • 従来のシミュレータの役割 ⇒ 深層学習の発展によって,複雑な関係性を持つデータフローの一部を学習によって 獲得することが可能になった(色々と限界はある…) 例 画像 画像 画像 ボックスの位置・大きさ (高次元) (高次元) (高次元) (4次元)

17.

産業用ロボットが製造現場のデータを活用するためには? • 従来のシミュレータの役割 ⇒ 従来のシミュレーションの各データフローの一部にニューラルネットワークと 現場のデータを用いた学習のプロセスが加わる シミュレーション 動作指令生成機能 現実世界 Reality gap Reality gap Reality gap 動作指令生成機能

18.

産業用ロボットが製造現場のデータを活用するためには? • 従来のシミュレータの役割 ⇒ 従来のシミュレーションの各データフローの一部にニューラルネットワークと 現場のデータを用いた学習のプロセスが加わる シミュレーション 動作指令生成機能 シミュレーションと現実世界の違いがなくなるように, 現場のデータを用いて学習を実行 現実世界 動作指令生成機能 現場のデータ

19.

産業用ロボットが製造現場のデータを活用するためには? • 従来のシミュレータの役割 ⇒ 従来のシミュレーションの各データフローの一部にニューラルネットワークと 現場のデータを用いた学習のプロセスが加わる シミュレーション 動作指令生成機能 シミュレーションの データ収集によって 学習した機能が使える シミュレーションと現実世界の違いがなくなるように, 現場のデータを用いて学習を実行 現実世界 動作指令生成機能 現場のデータ

20.

産業用ロボットが製造現場のデータを活用するためには? • 従来のシミュレータの役割 ⇒ 従来のシミュレーションの各データフローの一部にニューラルネットワークと 現場のデータを用いた学習のプロセスが加わる シミュレーション 動作指令生成機能 シミュレーションの データ収集によって 学習した機能が使える シミュレーションと現実世界の違いがなくなるように, 現場のデータを用いて学習を実行 現実世界 動作指令生成機能 現場のデータ

21.

産業用ロボットが製造現場のデータを活用するためには? • 従来のシミュレータの役割 ⇒ 従来のシミュレーションの各データフローの一部にニューラルネットワークと 現場のデータを用いた学習のプロセスが加わる シミュレーション 動作指令生成機能 シミュレーションと現実世界の違いがなくなるように, 現場のデータを用いて学習を実行 現実世界 シミュレーションの データ収集によって 学習した機能が使える 動作指令生成機能 ✓ 製造現場のデータを活用するためのキーアイテムの一つになる(はず) ⇒ エイアイキューブ設立後,取組みを開始 現場のデータ

22.

具体的な取組み:ばら積みピッキング • ばら積みピッキング • タスク設定:取組みを形にするために“ばら積みピッキング”をターゲットに設定 把持物体の種類が既知な環境 把持物体の種類が未知な環境 (例: 配膳工程[6]) (例:物流倉庫[7]) [6] https://gazoo.com/article/daily/170424.html (accessed 2020/9/25) [7] https://www.asahi.com/articles/ASK6Y4SK0K6YPPZB00B.html (accessed 2020/9/25)

23.

具体的な取組み:ばら積みピッキング • ばら積みピッキング • 課題:物体の種類に対する網羅性の向上(=費用対効果の向上) ⇒ 目標:単一のシステムで複数の種類/条件に対応させる 物体をつかむ場所 決めて取る※1 把 持 物 体 の 種 類 従来のピッキングシステム (例 : MotoSight3D[8]) [8] 安川電機 e-メカサイト, https://www.e-mechatronics.com/product/robot/related/MotoSight3D/feature.html (accessed 2020/9/25). 決めないで取る※2 剛体 柔軟 不定形 ピッキング可能な 物体の種類が拡大

24.

具体的な取組み:ばら積みピッキング • ばら積みピッキング • 方法:シミュレーション内の観測値(= 画像)を現実世界と近づけた状態で 把持動作生成機能のためのデータ収集と学習を行う シミュレーション 把持動作生成機能 現実世界 Reality gap Reality gap Reality gap 把持動作生成機能

25.

具体的な取組み:ばら積みピッキング • ばら積みピッキング • 方法:シミュレーション内の観測値(= 画像)を現実世界と近づけた状態で 把持動作生成機能のためのデータ収集と学習を行う シミュレーション 把持動作生成機能 現実世界 Reality gap 把持動作生成機能

26.

具体的な取組み:ばら積みピッキング • ばら積みピッキング • 方法:シミュレーション内の観測値(= 画像)を現実世界と近づけた状態で 把持動作生成機能のためのデータ収集と学習を行う シミュレーション 把持動作生成機能 現実世界 把持動作生成機能

27.

具体的な取組み:ばら積みピッキング • ばら積みピッキング • 方法:シミュレーション内の観測値(= 画像)を現実世界と近づけた状態で 把持動作生成機能のためのデータ収集と学習を行う シミュレーション 把持動作生成機能 現実世界 把持動作生成機能

28.

具体的な取組み:ばら積みピッキング • まずは試作開発から・・・ • 社内でデモを作成 ⇒ 取組みとして本格スタート

29.

具体的な取組み:ばら積みピッキング • 試作開発で出た課題: • 扱えるオブジェクトのモデルやシーンに限界があった • メッシュ数,テクスチャ… など • もう少し綺麗なグラフィックスを使ってみたい • カスタマイズ性をあげたい • 把持動作の部分だけ実装して精度を高めたい • 学習に必要なアノテーションデータ等は内部で生成して,取得できる仕組みにしたい • 将来的に実環境の様々な設備・データと連携させたい • エコシステムを形成できるような仕組みが欲しい

30.

具体的な取組み:ばら積みピッキング • Unityの採用 • 苦労した点: • エンジニアはどこに? • Unityとロボティクスを両方分かるエンジニアがいない … • 打合せのときに使う用語が分からない • 本やセミナーに行って勉強 • 既存のシステムとの連携 把持動作のシミュレーション • ばら積みピッキングの学習用のシステムは既にあったため, それをいかすようなシステム設計 • 良かった点: • 事前知識がなくてもシーンの作成やデバッグができる • テストプレイですぐ確認できる • 他の人が作ったアセットが使える • コライダーの自動設定など全て自前実装しなくても ストアに売っている ばら積みのシミュレーション

31.

具体的な取組み:ばら積みピッキング • 学習型のばら積みピッキングシステム • データ収集+機能(=把持動作) 学習型ピッキングシステム 把持動作生成指令機能 入力 出力 把持動作生成指令機能 object mesh

32.

具体的な取組み:ばら積みピッキング • 学習型のばら積みピッキングシステム • ハードウェアの構成を変えずにデータを変更すると把持動作を適応させることが可能 同一のプロセス 学習型ピッキングシステム … ・・・ ・・・ 学習型ピッキングシステム

33.

具体的な取組み:ばら積みピッキング • 学習型のばら積みピッキングシステム • 同一システムでピッキング可能な物体の種類が拡大 形状が変形する人形 半透明のボトル 重量部品 袋入り菓子 ケーブル 柔らかい人形

34.

具体的な取組み:ばら積みピッキング • ばら積みピッキング≠最終ゴール ⇒ 現場のデータをモーションにつなげるための取組みの一部 2019国際ロボット展(iREX2019)[2] [2] 安川電機 e –メカサイト, https://www.youtube.com/watch?v=s3kHYTkDVNI (accessed 2020/9/25).

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今後の方向性 • 世の中の技術動向 • データ+シミュレーションに関連する技術が発展 ⇒ 今後のゲームエンジンはリアルなデータとのつながりが重要に!! シーン/パラメータの生成/調整[9] シミュレーションと実データの間 のギャップの吸収[10] 学習可能(微分可能)な 物理シミュレータ[11] [9] J. Devaranjan et al. ,“Meta-Sim2: Unsupervised Learning of Scene Structure for Synthetic Data Generation,” ECCV2020. [10] Y. Chebotar et al., “Closing the Sim-to-Real Loop: Adapting Simulation Randomization with Real World Experience,” ICRA2019. [11] Yi-Ling Qiao et al.,“Scalable Differentiable Physics for Learning and Control,“ ICML2020.

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現在の取組み • 製造業の様々な用途への展開 例:基板の傷検出 例:機械の異常検知 • 継続的な現場での実課題の解決へ • 顧客とともに新たな“モノづくり”のプロセスを目指す! • AI (深層学習等) で全てが解決するわけではない・・・( 全体の仕組みづくりが大切 ) ⇒ “ モノ”の革新が必要 = × …

37.

Thank you !! Email:Hiroki.Tachikake@ai3cube.co.jp