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August 31, 26
スライド概要
電気自動車の急速充電で、車と充電器が何をやり取りしているのかを、予備知識ゼロから学べる資料です。全5回シリーズの第1回。
普通充電と急速充電の違いから始めて、なぜ充電ケーブルの中の細い線1本に信号を重ねることになったのか(電力線通信・PLC)までを扱います。
全14ページ。全ページに発表者ノート(読み上げ原稿)を入れてあるので、この分野が専門でない方でも進行できます。授業・社内勉強会・セミナーで、そのままお使いください。
■ シリーズ全5回のまとめと、編集できる .pptx 原本
https://ev-plc-materials.pages.dev/
■ ライセンス
CC BY 4.0(クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際)
改変も再配布も、営利・非営利も自由です。出典だけ書いてください。
出典表記: 『EVの充電通信 学習資料』/ Mr.hoge / CC BY 4.0
E Vの通信 やさしい 入門 1 全5回 第1回 EVの充電で、車と充電器は何を話しているのか なぜ「線に信号を重ねる」ことになったのか 所要 30分 / 予備知識は要りません。専門用語はその場で説明します。 第1回 EVの充電で、車と充電器は何を話しているのか 1 / 14
この講座の全体図 1 全5回で、EVの充電通信をひととおり分かるようにします。今日は「第1回」です 1 2 3 4 5 EVの充電で、車と充電器は何を話しているのか なぜ「線に信号を重ねる」ことになったのか 今回 1本の線に、2つの信号が乗るしくみ 周波数のはなしと HomePlug Green PHY 車と充電器が「握手」するまで SLAC と、つながったあとの手順 通信チップと、そのまわりの回路 PLC-IC の中身と、部品ひとつずつの役割 ソフトの作り・現場の落とし穴・これから 実装、トラブル、そして次の規格 第1回 EVの充電で、車と充電器は何を話しているのか 2 / 14
今日のゴール 1 この30分が終わったとき、こうなっていれば成功です 今日ここまで分かれば OK 1 EV の充電に2種類あることが分かる 「普通充電」と「急速充電」で、やっていることがまるで違う、という区別がつく 2 なぜ通信が必要なのかを説明できる 急速充電では、車と充電器が細かく相談しないと電気を流せない、という理由が言える 3 「電力線通信」という言葉の意味が分かる 電気を流す線に、そのまま信号も乗せてしまう、というやり方だと分かる 第1回 EVの充電で、車と充電器は何を話しているのか 3 / 14
1 まず基本:EV の充電には2種類ある 同じ「充電」でも、中でやっていることはまったく違います 普通充電(ふつうじゅうでん) 急速充電(きゅうそくじゅうでん) 家や職場、コインパーキングにある充電器。コンセントから来る電気 (交流)をそのまま車に送り、車の中の装置が電池に入る形(直流) 高速道路のサービスエリアやディーラーにある大きな充電器。充電器 に変換する。 の側で電気を直流に変換し、車の電池へ直接、大量に流し込む。 満充電まで数時間〜一晩。おもに「停めているあいだに充電する」使 30分ほどで8割くらいまで。「移動の途中で足す」使い方。 い方。 たとえると 普通充電は「ペットボトルで水を注ぐ」、急速充電は「消防ホースで一気に入れる」ようなもの。 ホースで入れるなら、相手のタンクの大きさや、今どれくらい入っているかを確かめながらでないと危ない。── この“確かめながら”が、今 日のテーマである通信です。 第1回 EVの充電で、車と充電器は何を話しているのか 4 / 14
1 充電ケーブルの中を、のぞいてみる 太い線と細い線が入っています。通信に使える細い線は、実質1本しかありません 急速充電ケーブルの中身 形も本数も、世界共通で決まっている コネクタの形とピンの並びは国際規格で決められています。メーカーが勝手 DC+ 電気そのものを流す線(プラス側) DC− 電気そのものを流す線(マイナス側) に線を1本増やす、ということはできません。増やそうとすると、世界中の充 電器と車を作り直すことになるからです。 だから、使える“合図の線”は CP 1本だけ CP は Control Pilot(コントロール・パイロット)の略で、日本語なら「制 PE アース。安全のための線 御用の案内線」。車と充電器のやり取りは、この細い1本を通して行うしかあ りません。 CP 合図をやりとりする線 ← 今日の主役 PP ケーブルが挿さっているかを見る線 ※ 円の大きさは、線の太さのイメージです 第1回 EVの充電で、車と充電器は何を話しているのか この制約が、あとの話をぜんぶ決めている 「1本しかない」という縛りがあったから、次のページ以降のような工夫が必 要になりました。ここを覚えておくと、第2回以降の話がすっと入ります。 5 / 14
1 CP 線がやっていること:点滅で合図を送る オンとオフを1秒間に1000回くり返し、その「オンの長さ」で意味を伝えます たとえると 腕を上げ下げして合図を送るイメージ。上げている時間が長いほど「たくさん流していいよ」。この“上げている時間の割合”のことを、専門用語で はデューティ比といいます。 オンの割合 5% オンの割合 16% オンの割合 50% オンの割合 80% 特別な合図 最大 9.6 A まで 最大 30 A まで 最大 48 A まで 一般的な普通充電器。 出力の大きい普通充電器。 「これから細かい相談をします 」の意味。急速充電はここから 始まる。 第1回 EVの充電で、車と充電器は何を話しているのか 家庭用コンセント程度。ゆっく り充電。 6 / 14
点滅だけでは、急速充電はできない 1 伝えられるのは数字ひとつ。しかも、車から充電器へは何も言えません これならできる これはできない ○ × ○ ○ 充電器 → 車へ「最大◯アンペアまで」と伝える 車 → 充電器へ「準備できました」と伝える 異常が起きたら止める × × × 伝わる情報は、数字ひとつぶん。 第1回 EVの充電で、車と充電器は何を話しているのか 車 →「今は 350 ボルト、120 アンペアください」 充電器 →「電気が漏れていないか検査します」 充電器 →「どなたですか?請求先は?」 車 →「80% まで入ったので、そろそろ減らして」 必要なのは、文章でのやり取り。ケタが違う。 7 / 14
1 どうやって「会話」させるか ── 3つの案があった 実際に検討され、最後に残ったのが3番目です 案1:通信用の線を増やす いちばん素直な方法。でも、コネクタの形は 国際規格で決まっています。1本増やすとい うことは、世界中の充電器と車を作り直すと いうこと。 → 現実的ではない、として却下。 案2:無線でつなぐ 案3:いまある線に、信号を重ねる Wi-Fi や Bluetooth のように電波でつなぐ案 。線は要りません。ただし充電器がずらりと すでにある CP 線に、点滅の合図とは別の信 並ぶ場所で、どの車がどの充電器か確実に区 号をもう1つ重ねて流す。線は増やさない。 別するのが難しい。 コネクタも変えない。 → 隣の車と混ざる危険があり、主役にはなら → これが採用されました。 なかった。 たとえると 案3は「1枚の紙に、鉛筆で書いた文字と、蛍光ペンで書いた文字を重ねる」ようなもの。見分けがつく書き方をしておけば、同じ紙で2つの情報を 運べます。この“見分けがつく書き方”のしくみが、第2回のテーマです。 第1回 EVの充電で、車と充電器は何を話しているのか 8 / 14
1 その答えが「電力線通信(PLC)」 電気を運んでいる線に、そのまま信号も乗せてしまう技術です PLC どうやって重ねるのか 点滅の合図はとてもゆっくりした信号、重ねる信号はとても速い信号。 速さがまるで違うので、あとから分けられます。 Power Line Communication = 電力線通信(でんりょくせんつうしん) 何が乗るのか 重ねた信号の上では、実はインターネットとほぼ同じしくみが動きます 。パソコンをLANケーブルでつないだのと同じ状態になります。 「電気を流すための線」と「情報を運ぶための線」を、 分けずに1本で兼用してしまう、という考え方。 誰がやっているのか EV に限った技術ではなく、電力会社の検針や、 家庭用のコンセント LAN でも昔から使われています。 第1回 EVの充電で、車と充電器は何を話しているのか 車の側と充電器の側の両方に、この仕事だけをする小さな専用チップが 入っています。それが「PLC-IC」です。第4回で中身を見ます。 9 / 14
1 結果:CP 線が「1本の LAN ケーブル」になる 挿した瞬間に、車と充電器だけの小さなネットワークができあがります これまで(普通充電) 充電器 ──(点滅の合図)── 急速充電(PLC を使う) 車 充電器 ──(LAN と同じやり取り)── ・伝わるのは「最大◯アンペア」だけ ・電圧・電流の指示、電池の状態、検査、認証、課金 ・一方通行 ・双方向で、何度でもやり取りできる ・情報量は、数字ひとつぶん ・情報量は、数千文字ぶん以上 車 たとえると 分かりやすく言うと ── 充電ケーブルを挿した瞬間、車と充電器が LAN ケーブルでつながった状態になります。 そのうえで「何ボルトください」「電池はいま何%です」といったやり取りを、1秒に何回もくり返しながら充電しています。 第1回 EVの充電で、車と充電器は何を話しているのか 10 / 14
1 全体を1枚にすると、こうなります 下から上へ。今日は一番下の2段だけ分かれば十分です 話している内容 「350ボルトください」「電池は62%です」「あなたは誰ですか」とい 今日はここ った、中身そのもの だけで OK ソフトウェアの しごと 会話のルール インターネットとまったく同じしくみ(住所・通信手順・暗号)をその 第2回: 信号のやりとり まま使っている 第3回: 会話のルール 信号のやりとり 重ねた信号を、実際に送ったり受け取ったりする部分。専用のチップが 担当する チップと回路の しごと 電線そのもの CP 線。点滅の合図(1秒に1000回)と、重ねた信号が同居している 第1回 EVの充電で、車と充電器は何を話しているのか 第4回: チップと回路 第5回: 話している内容 11 / 14
1 今日の言葉、ひとことで この回で出てきた言葉を、ひとことで言うと CP 線 デューティ比 PLC(電力線通信) 充電ケーブルの中にある、合図用の細い線。 点滅のうち「オンになっている時間の割合」 電気を流す線に、情報の信号も重ねて流す技 Control Pilot の略。車と充電器の会話は、こ 。この割合で最大電流を伝える。5% だけは 術。線を増やさずに通信できる。今日いちば の1本で行われる。 特別な合図。 んの キーワード。 急速充電 / 普通充電 EVCC / SECC CCS 急速は充電器側で直流に変換して一気に流す EVCC は車の側の通信担当、SECC は充電器 急速充電のコネクタと通信の規格の名前。欧 方式。普通は交流のまま送り、車の中で変換 の側の通信担当。「車役」「充電器役」と読 州・北米で広く使われている。日本の する方式。 み替えて OK。 CHAdeMO とは別系統。 ※ 今日は覚えなくて大丈夫です。この5回のあいだに、自然と身につきます。 第1回 EVの充電で、車と充電器は何を話しているのか 12 / 14
今日のまとめ 1 持ち帰ってほしいのは、この3つだけです 1 2 急速充電には「相談」が要る 次回 ─ 第2回 大量の電気を短時間で流すため、車と充電器が電圧・電流・安全・課金まで細かくやり 取りする必要がある。 1本の線に、2つの信号が乗るしくみ でも、使える線は CP 1本だけ コネクタの形は世界共通で決まっていて、通信用の線を増やすことはできなかった。 今日「重ねる」と言った部分を、もう少しだけ具 体的に見ます。なぜ2つの信号が混ざらないのか、 そして EV で使われている HomePlug Green PHY という方式の話。 数式は出てきません。たとえ話で進めます。 3 だから、その1本に信号を重ねた これが PLC(電力線通信)。結果として、充電ケーブルは 1本の LAN ケーブルのよう に働く。 第1回 EVの充電で、車と充電器は何を話しているのか 質問はいつでも、その場で聞いてください。 13 / 14
この資料について 1 自由に使ってください。授業・社内勉強会・セミナーでの利用を歓迎します CC BY 4.0 規格の内容は変わります 数値や手順は規格の改訂で変わることがあります。実際の開発では、必ず最新の 規格書で確認してください。 クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際 ✓ そのまま使えます 学校の授業、社内の勉強会、セミナー。営利・非営利を問いません ✓ ✓ 特定の組織の見解ではありません この資料は学習用にまとめたものです。いかなる企業・団体の公式見解も代表し ません。 変えても構いません 一部だけ抜き出す、順番を変える、直す、翻訳する。すべて自由です 製品名・会社名について 配り直せます 各社の商標です。説明のために挙げているだけで、推奨や提携を示すものではあ りません。 そのまま、あるいは変えたものを、誰にでも再配布できます ひとつだけお願い ─ 出典を書いてください 『EVの通信 やさしい入門(全5回)』 / Mr.hoge / CC BY 4.0 https://ev-plc-materials.pages.dev 誤りを見つけたら 教えていただけると助かります。直した版を公開します。 2026年8月版 v1.0 / 第1回 EVの充電で、車と充電器は何を話しているのか 第1回 EVの充電で、車と充電器は何を話しているのか 14 / 14