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August 31, 26
スライド概要
自動車開発の経験があるエンジニア向けの、1回完結版(30分)です。ソフト・システム寄りの構成。
CCS急速充電のコントロールパイロット線上で動く HomePlug Green PHY を軸に、通信スタック、SLAC のメッセージ列、PLC-IC の機能ブロックと主要デバイス、結合回路とEMC、ソフト実装の分担、相互接続性の落とし穴までを扱います。
規格名・型番をそのまま扱うため、予備知識がない方には同じ範囲を全5回に分けた「超入門シリーズ」をおすすめします。
全16ページ。全ページに発表者ノート(読み上げ原稿)付き。授業・社内勉強会・セミナーで、そのままお使いください。
■ 超入門シリーズ全5回と、編集できる .pptx 原本
https://ev-plc-materials.pages.dev/
■ ライセンス
CC BY 4.0(クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際)
改変も再配布も、営利・非営利も自由です。出典だけ書いてください。
出典表記: 『EVの充電通信 学習資料』/ Mr.hoge / CC BY 4.0
社内技術 勉強会 / 30 分 EVのPLC-IC 入門 充電ケーブル1本の中で、何が起きているのか CCS急速充電のコントロールパイロット線上で動く HomePlug Green PHY と、 それを担う PLC-IC・周辺回路・ソフトウェアの全体像 2026年8月 / 対象:自動車開発の経験があるエンジニア(ソフト・システム中心)
この30分のゴールと進め方 0 この勉強会のゴール 1 説明できる 進め方(6章) 1 なぜ PLC なのか p.3 コネクタに線が足りない、という制約から始まった話 CCS急速充電で、コントロールパイロット線1本の上に何が乗っ ていて、車と充電器が何を話しているのかを、人に説明できる 2 CP線の物理層と HomePlug Green PHY p.4–6 1本の線に2つの信号を同居させる仕組み 2 構造が分かる PLC-ICの機能ブロックと、その外側の結合回路が何のためにある のかが、ブロック図レベルで分かる 3 4 EVのPLC-IC入門 PLC-IC の中身と主要デバイス p.9–10 機能ブロックと、実際に使われているチップ 周辺回路・ソフト実装・落とし穴 p.11–13 結合回路、ホストI/F、現場でよく踏む地雷 当たりがつく 自分の担当領域で、どこがトラブルになりやすいのか(SLAC・ 証明書・ノイズ・相互接続性)の見当がつく p.7–8 隣の充電器と間違えない仕掛け/充電開始までの流れ 5 3 つながるまで:SLAC と V2G シーケンス 6 充電以外の車載 PLC と今後 p.14–15 ハーネス削減用途、規制と次の規格 2 / 16
1 なぜ「電力線通信」を使うことになったのか 充電規格の設計上の制約から逆算すると、PLCという選択はほぼ必然だった 伝えるべき情報が増えた でも線は増やせない だから CP 線に重畳する DC急速充電では、電圧・電流の目標値、バッテリ の状態、絶縁試験の合否、さらに認証や課金まで コネクタの形状とピン配置は国際規格で決まって いる。信号に使えるのは CP(コントロールパイロ を双方向でやり取りする。 ット)、PP、PE のみ。 従来のアナログPWMで伝えられるのは「最大何ア ンペア流してよいか」という数値1つだけ。桁が違 専用の通信線を足す=コネクタ規格の作り直しで 非現実的。無線は、隣の車・隣の充電器との混信 う。 が解けない。 すでにある CP 線に、MHz 帯の高周波信号を重ね て流す。これが PLC(Power Line Communication)。 結果として CP 線は「1本のイーサネットケーブル 」になり、その上で IP 通信が動く。 できることの差 これまで:IEC 61851 の PWM だけ(普通充電) CCS の DC 急速充電:ISO 15118 / DIN 70121 EVSE ──(PWMのデューティ比)── EVSE 伝わるのは「最大電流」1つだけ 一方向・数値1個・数十バイト相当 EVのPLC-IC入門 EV ──(PLC / IPv6 + TCP)── EV 電圧・電流指令、SOC、絶縁試験、認証、課金 双方向・構造化メッセージ・数kB〜 3 / 16
2 全体像:CP線1本の上に積まれている通信スタック 下から2層+MACがPLC-ICの担当。その上はホストMCU上のソフトウェア アプリケーション V2G メッセージ(DIN 70121 / ISO 15118-2 / -20)— XMLスキーマを EXI でバイナリ化 セキュリティ TLS(-2 は任意、-20 は TLS 1.3 必須)+ 契約証明書 = Plug & Charge トランスポート TCP:V2G 本体 / UDP:SDP(SECC Discovery Protocol, ポート 15118) ネットワーク IPv6 リンクローカルのみ(fe80::/64)。グローバルアドレスは不要 データリンク HomePlug Green PHY MAC(AES-128 暗号)+ SLAC(ISO 15118-3 ) ICはEthernet NIC相当 ホスト MCU 上の ソフトウェア PLC-ICから見れば、やっていることは「イーサネッ トのフレームを運ぶ」だけ。だからLinuxからは普通 のネットワークカードに見える。 普通のIP通信が動く 一度つながってしまえば、上はIPv6・TCP・TLSと いう、Web と同じ道具立て。自動車特有の作法はほ とんどない。 PLC-IC 難所は上下の“境目” 物理(デジタル) HomePlug Green PHY:OFDM、おおむね 1.8〜30 MHz を CP–PE 間に 重畳 電気 IEC 61851-1 コントロールパイロット:±12 V / 1 kHz PWM(DCモー ドは 5% 固定) EVのPLC-IC入門 下側は SLAC(どの充電器とつながるかの決定)、 上側は証明書とEXI。トラブルの大半はこの2か所に 集中する。 CP 回路 4 / 16
2 物理層:1本の線に、2つの信号が同居している 1 kHz のアナログPWMと、MHz帯のデジタル通信。周波数が3桁以上離れているので共存できる CP 電圧で表される「状態」 ① IEC 61851 コントロールパイロット PWM 1 kHz / ±12 V / デューティ比で最大電流を通知。DC急速充電では 5% 固定=「デジタル通信を使う」の合図 ※図は見やすさのため幅を誇張。実際のDCモードは 5% A +12 V ケーブル未接続 B +9 V 接続済み・充電前 ← PLC 起動 C +6 V 充電中(換気不要) D +3 V 充電中(換気必要) E 0V EVSE 側エラー/電源断 F −12 V EVSE 利用不可 ② HomePlug Green PHY の OFDM 信号 おおむね 1.8〜30 MHz を数百本のサブキャリアに分割。CP–PE 間に容量結合で重畳。送信レベルは家庭用PLCよ り大幅に低い 1.8 MHz 放送帯・アマチュア無線帯には送信を抑える「ノッチ」が規格で定められている 30 MHz 電圧はEV側の抵抗とスイッチ(S2)で決まる。 ソフトから見ると「状態遷移のトリガ」として効いてくる。 EVのPLC-IC入門 5 / 16
2 HomePlug Green PHY:あえて“遅くて丈夫”を選んだ規格 IEEE 1901 のサブセット。速度を捨てて、低消費電力・低コスト・ノイズ耐性を取った HomePlug AV / AV2 との違い PHY レート 10 観点 HomePlug AV / AV2 Green PHY(HPGP) 狙い 家庭内で映像を飛ばす スマートグリッド/EV充電 PHY レート 200 Mbps 〜 1 Gbps 約 10 Mbps 変調 最大 1024QAM まで適応変調 ROBO モードのみ(QPSK + 強力な誤り訂正) 消費電力 大きい おおむね 1/4 程度。省電力モードあり 実装コスト 大きい 小さい(メモリ・処理量が少ない) 相互運用 ― 同じ媒体上で AV/AV2 と共存できる Mbps 級 一方、V2G 通信で実際にやり取りするのは 1メッセージあたり数百バイト〜数kB。 必要な実効スループットは高々 数百kbps〜 数Mbps で、10 Mbps 級で十分に足りる。 「速さ」より「安く・低消費で・ノイズに強 ROBO(Robust OFDM)モード = 同じデータを複数のサブキャリアに重ねて送る冗長方式。帯域は食うが、ノイズでいく く・確実につながる」を優先した設計。 つかのサブキャリアが潰れても復元できる。EVの過酷なノイズ環境ではこれが効く。 EVのPLC-IC入門 6 / 16
3 SLAC:隣の充電器とつながらないための仕組み Signal Level Attenuation Characterization = 信号の減衰量を測って、物理的に挿さっている相手を特定する メッセージの流れ(EV側 EVCC ⇄ 充電器側 SECC) なぜ必要か EVSE A EVSE B EVSE C 1 実線:実際に挿さっている (減衰 小) 破線:ケーブルから漏れて届く (減衰 大) 2 EV 3 4 時間の規定 独自実装で短縮すると「自社では動くが他社スタンドで落ちる」典型パターンに なる。具体値は最新版の規格書で必ず確認すること。 EVのPLC-IC入門 EVCC が「デジタル通信をする充電器だ」と判断して探索を開始 CM_SLAC_PARM .REQ / .CNF EV がブロードキャストし、届いた範囲の SECC が名乗り出る CM_START_ATTEN_CHAR.IND ×3 CM_MNBC_SOUND.IND ×10 測定用の「サウンド」を規定回数送出する PLC の信号はケーブルから漏れ、隣のスタンドにも届く。そこで「受信信号がいち ばん減衰していない相手=物理的につながっている相手」と判定する。 ISO 15118-3 は各段にタイムアウトを定めている。代表例が TT_EVSE_SLAC_init = 20〜50 秒(SECC が 5% PWM を出してから EV の 要求を待つ時間)。 5% PWM を検出 5 6 CM_ATTEN_CHAR.IND 各 SECC がサウンドの減衰量(dB)を平均して EV に報告 CM_SLAC_MATCH .REQ / .CNF EV が最小減衰の SECC を選び、NMK / NID(暗号鍵)を受領 論理ネットワーク(AVLN)成立 この 2 台だけの閉じたネットワーク。ここから先は普通の IP 通信 7 / 16
3 つながった後:充電が始まるまでの流れ SLAC 成立後は、ごく普通の IP 通信。プラグを挿してから電流が流れるまで、通信だけで数秒〜十数秒かかる ① ネットワークが立ち上がるまで IPv6 リンクローカル SDP TCP / TLS SupportedAppProtocol fe80::/64 を自動生成 UDP マルチキャストで SECC が返した DHCP もルータも不要 SECC を探索(port 15118) アドレス・ポートへ接続 V2G セッション開始 DIN 70121 / ISO 15118-2 / ここから充電の -20 のどれで話すか合意 本体シーケンスへ ② V2G シーケンス(DC急速充電の例) SessionSetup PreCharge ServiceDiscovery PowerDelivery(Start) PaymentServiceSelection CurrentDemand ×N 認証/契約証明書 PowerDelivery(Stop) ChargeParameterDiscovery WeldingDetection CableCheck SessionStop 体感待ち時間の正体 タイムアウト DIN 70121 との違い CableCheck(絶縁試験)と PreCharge(車側電圧に合 わせ込む工程)は物理現象を待つため、数秒単位でかか ISO 15118-2 の V2G_SECC_Sequence_Timeout は 60 秒。各メッセージにも応答期限がある。上位アプリの DIN 70121 は ISO 15118-2 の初期版がベース。認証・ 課金がなく DC のみ。市場の充電器には両方が混在して る。「挿してから流れ出すのが遅い」の主因はここ。通 処理が遅いとセッションごと落ちるため、応答は非同期 おり、SupportedAppProtocol での取り違えが相互接続 信自体を速くしても縮まらない。 で先に返す設計が要る。 性トラブルの定番。 EVのPLC-IC入門 8 / 16
4 PLC-IC の中身:機能ブロックで見る 結合回路より内側はほぼ 1 チップに統合済み。ホストから見えるのは「Ethernet の口」だけ PLC-IC(1チップ) CP 線 + 結合回路 AFE / ラインドライバ PHY ADC・DAC・可変利得アンプ と送信ドライバ。近年のEV向 けICは内蔵が主流 OFDM の変復調、誤り訂正( FEC)、時間・周波数同期 MAC HomePlug Green PHY / IEEE 1901。CSMA、AES-128 暗号 、AVLN 管理 内蔵CPU + ホスト I/F ファームウェアと設定(PIB) 。ホストへは SPI / Ethernet(MII) で接続 ホスト MCU 外付け ソフトから見ると Ethernet カード SLAC の役割分担に注意 設定は PIB(不揮発)に持つ SPI 接続の場合、ICは「SPI 経由のイーサネット NIC 」として振る舞う。Linux には Qualcomm QCA7000 系向けの qcaspi ドライバが標準で入って いる。 サウンドの送受信や減衰量の計算は IC 内のファーム ウェアが担当し、どの相手を選ぶかの判断はホスト側 、という分担が一般的。境界は製品ごとに違うのでデ ータシート確認が必須。 MAC アドレス、送信 PSD(出力マスク)、EV側/ EVSE側のどちらとして動くか、などをパラメータブ ロックで設定。量産時の書き込み工程まで含めて設計 する。 EVのPLC-IC入門 9 / 15
4 実際に使われている主なデバイス Qualcomm の QCA700x 系が事実上の業界標準。近年は第二ソースが立ち上がってきている デバイス ベンダー 位置づけ ホスト I/F 押さえどころ QCA7000 / QCA7005 Qualcomm 事実上の業界標準。EV側・充電器側の双方で長年の実績があり 、既存設計の大半がこれ SPI / MII 枯れている。Linux に qcaspi ドライバあり。新規設計は 後継への移行が進む QCA7006AQ Qualcomm 上記の後継。AEC-Q100 Grade 2(−40〜105℃)、AFE とラ インドライバ、10/100 Ethernet PHY、電源管理まで内蔵。 3.3 V 単一電源、QFN-68(8×8 mm) SPI / UART / Ethernet HPGP に加え HomePlug AV(200 Mbps 級) も対応。長い DC ケーブルでの SNR 改善を謳う。CCS / NACS 両対応 IS32CG5317 Lumissil (ISSI) AFE 内蔵のシングルチップ・フルオートモーティブ品。BMW が車載充電器向けに採用を公表 SPI / Ethernet 有力な第二ソース。NXP i.MX 93 と組んだリファレンス 設計が公開されている Green PHY 製品群 VertexCom ほ か CCS と NACS(SAE J3400)の両対応を表明。北米市場を睨ん だ選択肢 ― 採用実績はこれから。供給リスク分散の候補として評価対 象に入れる価値はある ※ 2026年8月時点の公開情報にもとづく整理。ピン配置・I/F・温度グレードの詳細は必ず最新のデータシートで確認すること。 選定で見るべき5点 車載グレード ドライバ入手性 FW の成熟度 供給と第二ソース 開発環境 AEC-Q100 のグレードと温度範 囲。充電口近傍は熱環境が厳し い SPI か Ethernet か。既存 OS・ BSP でドライバがそのまま使え るか SLAC・ISO 15118 の適合試験 に通った実績があるか 車両ライフサイクル(10年超) に耐える供給計画があるか 評価ボード、PIB 書込みツール 、スタック/OSS との相性 EVのPLC-IC入門 10 / 16
5 IC の外側:結合回路が何をしているか ソフト担当でも、ここだけは知っておくと切り分けが速くなる 1 信号の通り道 CP 線 1:1:1 の結合トランス 家庭用 PLC は昇圧する巻線比を使うが、EV は逆に送信レベルを下げる。充電ケーブルは短く減 衰が小さいため、そのままでは強すぎる。 DCブロック コンデンサ 1:1:1 トランス バンドパス フィルタ AFE 2 DC ブロックコンデンサ ±12 V の PWM(直流〜kHz)を IC 側に入れないための直流阻止。劣化や実装不良は IC 入力 の破壊につながる。 TVS / ESD 保護 + コモンモードチョーク(EMC 対策)は各段に併用 3 1.8〜30 MHz だけを通す。下は 1 kHz の PWM、上は車載機器由来の高周波ノイズを落とす。 4 「通信が通らない」の原因は、ソフトよりも結合回路と減衰にあることが多い。 5 使える。同じ構成で値が普段と違えば、コネクタの接触・はんだ・部品定数を疑う。 EVのPLC-IC入門 TVS / ESD 保護 CP 線は外部コネクタに直結し、人も触る。ISO 10605(ESD)、ISO 7637(サージ)相当の 保護が要る。 SLAC の CM_ATTEN_CHAR で報告される減衰量(dB)は、そのままハードの健康診断に 。 コモンモードチョーク/EMC CISPR 25 などの車載 EMC 要求と、放送・アマチュア無線帯への送信ノッチ。ここは規格適合 そのもの。 ソフト担当への一言 この dB 値をログに残す設計にしておくと、フィールド不具合の切り分けが劇的に速くなる バンドパスフィルタ 6 CP 側のアナログ回路 EVSE 側は ±12 V の発振回路、EV 側は分圧抵抗と S2 スイッチ。PLC の結合回路はこれに並列 にぶら下がる。 11 / 16
5 ソフトから見た作り:何を自分で書き、何を借りるか 下位はドライバとICのファームに任せ、作り込みは SLAC 制御・証明書・EXI に集中する 自分たちで作り込むところ ホストから見えるもの SLAC 制御 ネットワークインタフェース SPI 接続なら「SPI 経由の Ethernet NIC」。Linux は qcaspi ドライバが mainline に入って おり、eth1 のように見える。Ethernet 接続なら通常の MAC ドライバ。 生 Ethernet フレーム SLAC で使う HomePlug の管理メッセージ(MME)は Ethertype 0x88E1 の生フレーム。IP ではないので raw socket で扱う。 普通の IPv6 スタック SLAC 成立後は、リンクローカルアドレス上で UDP と TCP。特殊な作法は不要。 MME の送受信と状態機械。IC ファームとの分担境界を最初に確定させる。 タイムアウトとリトライは規格どおりに。 SDP UDP マルチキャストで SECC を探す。実装量は小さい。 EVSE 側のフルスタック実装(LF Energy) ▸ pyslac / iso15118 SLAC と ISO 15118 の Python 実装 ▸ RISE-V2G Java 実装。アーカイブ済だが参照用 状態管理とタイムアウト Vector、dSPACE ほか。PLC アナライザ CP 状態、PLC リンク、V2G セッションの3系統の状態を破綻なく束ねる。異 常系の設計がそのまま品質になる。 EVのPLC-IC入門 工数 大 V2G メッセージ / EXI ▸ EVerest ▸ 商用ツール 工数 小 TLS / 証明書チェーン Plug & Charge の中核。契約証明書、OEM プロビジョニング証明書、失効 確認、時刻同期。運用まで含めると最重量。 使える資産(自作しない) 工数 中 XML スキーマからコーデックを生成。手書きせず生成ツールを使う。バージ ョン差分の吸収が地味に効く。 工数 大 工数 大 12 / 16
現場でよく踏む落とし穴 6 つ 5 正常系はライブラリが面倒を見てくれる。難しいのは、つながらないときの切り分け 1 まず CP を疑う。5% の PWM が出ていない/状態B に入っていない、が最頻。次に減衰量。大きすぎれ ば接触・結線、小さすぎると隣のスタンドとマッチ してしまう。 4 2 SLAC が成立しない ーン不整合、失効リストの未更新、そして車両の時 刻ずれ。実装より運用設計の話。 EVのPLC-IC入門 3 タイムアウト設計の甘さ 車載充電器や DC-DC、インバータのスイッチング高 V2G_SECC_Sequence_Timeout は 60 秒。上位処 調波が 1.8〜30 MHz を直撃する。停止中は通るの 理が重いとセッションごと落ちる。応答を先に返し に通電すると落ちる、なら真っ先にこれ。 、重い処理は非同期にする。 5 証明書の運用 Plug & Charge 障害の大半はここ。期限切れ、チェ 充電を始めた途端に切れる 規格の“方言” DIN 70121 と ISO 15118-2 が市場に混在し、メー カーごとの解釈差もある。自社試験機だけで OK に せず、持ち寄り試験(CharIN Testival 等)で潰す 。 6 ログが取れない CP 線上の PLC は CAN ツールでは一切見えない。 専用アナライザか、IC のスニファ機能をログ経路と して設計に最初から組み込んでおく。 13 / 16
6 充電以外の車載 PLC:ハーネスを減らす用途 「新しく線を引けない/引きたくない場所」の特効薬。全体最適の主役ではない 12 V / 24 V 電源線に載せる トラクタ ⇄ トレーラ バッテリ監視(BMS) Yamar Electronics の DC-BUS( SIG60 / SIG100) SAE J2497(PLC4TRUCKS) セル監視 IC ⇄ 制御ボード 北米の大型車で、トレーラの ABS 警告灯をトラクタ 従来はデイジーチェーン接続の絶縁シリアル( 側に伝えるために電源線を使う。連結・解放を繰り isoSPI 等)や CAN が主流。そこを電力線経由に置 返す用途で「信号線を増やせない」典型例。実運用 き換えて配線と絶縁部品を減らす提案があるが、量 の歴史が長い。 産採用はまだ限定的。 バッテリの電源線の上に UART や LIN を通す車載 PLC トランシーバ。5〜30 MHz の中から 251 のキ ャリアを選べ、ビットレートは 9.6 kbps〜115.2 kbps。照明、センサ、アクチュエータ、空調、BMS などが対象。 向いている場面 それでも主流にならない理由 ・可動部・連結部をまたぐ(スライドドア、トレーラ、シート) ・帯域が小さく、電源線のノイズ環境が過酷 ・後付け/改造で新たに信号線を引けない ・機能安全(ISO 26262)と診断の作り込みが重い ・ノード数が多く、1本あたりの配線コストが効く ・CAN / LIN / 10BASE-T1S が十分に安く、成熟している ・必要な帯域が数十〜数百 kbps 程度で足りる ・部品点数(結合回路)が増え、EMC 適合の手間も増える EVのPLC-IC入門 14 / 16
まとめと、これから見ておくべきこと 6 今日のまとめ 1 これから見ておくべきこと 規制が実装を押す CP線を1本のイーサネットに変える技術 欧州では公共 AC 充電器への EN ISO 15118-2 適用が 2026 年から、ISO 15118-20 が PLC-IC 自体は Ethernet カード相当。難しさはその外側 ── 結合回路と減衰、 2027 年から求められる方向。適用条件は地域・設置区分で異なるため要確認。 SLAC、証明書、そして相互接続性にある。 ISO 15118-20(2022 年発行) 2 デバイスは Qualcomm QCA700x 系が標準 TLS 1.3 必須、双方向充電(V2G / V2H)、無線(WLAN)も選択肢に。PLC が唯一の 物理層ではなくなる。 QCA7006AQ で AFE・ラインドライバ・Ethernet PHY まで1チップ化。 Lumissil などの第二ソースが立ち上がりつつある。 NACS / SAE J3400 コネクタ形状は変わるが「CP 線上の PLC」という枠組みは同じ。主要 IC ベンダーは CCS / NACS 両対応を表明している。 3 ソフトの主戦場は上下の境目 MCS(メガワット充電) SLAC の状態機械、TLS と証明書運用、EXI コーデック、そして規格どおりのタ イムアウト設計。 ISO 15118-20 ベース。物理層は差動信号の方向で議論が進むが、差動 PLC 案と 10BASE-T1S 案の情報が混在しており未確定。要ウォッチ。 主な参照先: IEC 61851-1 / ISO 15118-2, -3, -20 / DIN 70121 / HomePlug Green PHY 仕様 / Qualcomm QCA7006AQ 製品ページ / Lumissil IS32CG5317 / CharIN / EVerest / Yamar Electronics DC-BUS EVのPLC-IC入門 15 / 15
この資料について ◎ 自由に使ってください。授業・社内勉強会・セミナーでの利用を歓迎します CC BY 4.0 規格の内容は変わります 数値や手順は規格の改訂で変わることがあります。実際の開発では、必ず最新の 規格書で確認してください。 クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際 ✓ そのまま使えます 学校の授業、社内の勉強会、セミナー。営利・非営利を問いません ✓ ✓ 特定の組織の見解ではありません この資料は学習用にまとめたものです。いかなる企業・団体の公式見解も代表し ません。 変えても構いません 一部だけ抜き出す、順番を変える、直す、翻訳する。すべて自由です 製品名・会社名について 配り直せます 各社の商標です。説明のために挙げているだけで、推奨や提携を示すものではあ りません。 そのまま、あるいは変えたものを、誰にでも再配布できます ひとつだけお願い ─ 出典を書いてください 『EVのPLC-IC入門』 / Mr.hoge / CC BY 4.0 https://ev-plc-materials.pages.dev 誤りを見つけたら 教えていただけると助かります。直した版を公開します。 2026年8月版 v1.0 / 自動車開発経験者向け 30分版 EVのPLC-IC入門 16 / 16