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March 11, 26
スライド概要
MLBをはじめ世界のスポーツ現場では、データ/AI活用が競争の前提となり、トレンドを大きく塗り替えつつあります。
横浜DeNAベイスターズがチーム強化にAIをどう活用しているか、特に昨年プロトタイプとして導入した「投手AI」を本格運用へと発展させ、投手育成とパフォーマンス向上をどう加速させたのかを紹介します。
主力投手の躍進や若手の台頭を裏側で支えたAIプロダクトに関して、深層から変革を進めてきた確かな成果を現場での実例とともにお届けします。
DeNA が社会の技術向上に貢献するため、業務で得た知見を積極的に外部に発信する、DeNA 公式のアカウントです。DeNA エンジニアの登壇資料をお届けします。
AIと挑むベイスターズの チーム強化最前線 大西 克典 1
SUBTITLE 大西 克典 IT本部AI・データ戦略統括部 2017年| DeNAへ新卒入社 ~現在 | 横浜DeNAベイスターズ×AIプロジェクト 新規立上し、以降プロジェクトを主導 現在はプロダクトマネージャーとしてチームを牽引
ベイスターズのR&D体制 ベイスターズR&DとDeNAで協力しながら野球界最先端のデータ/AIの活用を進めている Yokohama DeNA Baystars バイオメカニクスアナリスト データサイエンティスト DeNA (親会社) データアナリスト AIチーム 本日はココ 3
AIチームの取り組み AIプロダクトでベイスターズの投/打/捕を下支え キャッチャー ピッチャー バッター 捕手能力をAIで定量評価 コマンド(&AI metric)本格運用 動作解析 AI metric プロト運用 数年前から現場で活用 25年春から本格現場導入 25年7月からプロトを現場導入 4
AIチームの取り組み AIプロダクトでベイスターズの投/打/捕を下支え キャッチャー ピッチャー バッター 捕手能力をAIで定量評価 コマンド(&AI metric)本格運用 動作解析 AI metric プロト運用 数年前から現場で活用 25年春から本格現場導入 25年7月からプロトを現場導入 5
コマンド能力を計測できるように コマンドとは? コントロール コマンド ストライクゾーンに 投げる能力 狙ったところに 投げる能力 狙ったところに投げられているか AIで定量的に評価 映像からミット 構えた位置を計測 コマンドスコア化 6
コマンドは計測できるようになったが… 選手の育成を加速させるプロダクトになっているのだろうか? 当初のリクエスト 投手コーチ 制球力が測れなくて 困ってる コマンドを計測可能にしました 1軍レベルのコマンドって どれくらい? でもここが1軍レベルのコマン ドって特になかったです… AIチーム いやいや。コマンド測れるように なっただけで十分ありがたい! …単にユーザーが嬉しいだけで終わっていいのだろうか? 7
プロダクトの4階層フレームワークで整理 ● 投手コーチはコマンドを知りたいのではない ○ 1軍レベルに選手を引き上げたい 8
1軍ラインの可視化 開発方針をPivot ○ 1軍レベルの投手能力 と コマンド能力のギャップを埋めることに注力 → 他のデータと組み合わせて1軍ラインを発見し、イメージ湧きやすい形で可視化 1軍レギュラー 1軍平均レベル ??? ● ルーキー 9
投手コマンドプロダクトを本格化 プロト運用(2024) 簡易システムで試験運用 想定以上のニーズと価値が見えた 本格化(2025) 本格的にデータ分析できるwebシステム化 育成目標や日々の状態などを確認しやすく 10
どのように現場活用を進めたのか 投手AI定例 日次レポート 育成カルテMTG 目的: 目的: 目的: コマンドやPitching+(YDB R&D)な どのAI系データを元に、各選 手の状態や課題を議論する 選手の育成課題を議論して目 標を整理し、関係者全員で共 通認識を作る 日々のデータをSlackに投稿 し、昨日の登板内容を即座に 振り返れるようにする 参加者: コーチ / 監督 / アナリスト / AI / R&D 参加者: コーチ / コーディネータ / トレーナー アナリスト / R&D 関係者: コーチ / 監督 / 選手 / AI / R&D 結果によらない投球内容やコンディ ションを把握した上で、課題や改善 案を議論できるように 目標設定にコマンドデータも活用し てもらうことでより定量的な目標設 定が可能に 課題が解決できたのか、改善の兆候 が見られたのかを鮮度高く振り返る ことが可能に 11
チーム投手成績が大幅改善 *1: 投手WAR 控え選手レベルを基準値とした時何勝分貢献できたかを示す指標 [DELTA, Inc.] ● 投手チームWAR*1 ○ DeNAは投手貢献度が2024年→2025年で大幅向上 セ5位(24年)→セ2位(25年)と大幅向上 チーム防御率も同様にセ5位(24年)→2位(25年)と向上 12
投手AIデータ活用事例 個別の活用事例をいくつかピックアップして紹介! 13
投手AIデータ活用事例①:竹田祐 選手 ドラフト1位指名 即戦力投手として 期待されて入団 春先結果が出ず 育成カルテMTG 後半戦1軍で大活躍 取り組み方針を 全員で議論 8月緊急昇格し 以降6試合連続で活躍 14
投手AIデータ活用事例①:竹田祐 選手 春先結果が出ず だがしかし... 即戦力投手として期待がかかるも OP戦では打たれる その後は2軍でも成績が残らない状態に AIデータで見ると球速低下以外はドラフト前の 評価レベルと全く変化なし! 球速が3.7km/h*上がれば1軍で通用する見立て (*ドラフト前の平均球速よりやや低いくらい) ??? 1軍ラインまでの距離 コマンドスコア 15
投手AIデータ活用事例①:竹田祐 選手 育成カルテMTG 各選手の取り組み目標をまずは1つに絞るMTG 前述のデータを提供し、竹田投手は球速upを主軸に置 いて欲しいとAIチームから提言 目標を「秋までに平均球速147km/h達成」にセットし コーチ/トレーナー/バイメカ全員が一丸となり球速up に取り組む💪 入団してからずっとパフォーマンスが上 がってこなかった。 編成・スタッフ・コーチ陣みんなで話をし て、彼が今やるべきことを「シンプルにこ れだ!」ときめて、落とし込んで彼にやら せていこうよ。 - 入来コーチ[球団公式youtubeより] 16
投手AIデータ活用事例①:竹田祐 選手 その後の経過と1軍での活躍 ● ● ● 6月ごろから球速が徐々に上がり始める 8月途中に目標達成 ○ 達成翌週に他先発のアクシデントで緊急 1軍昇格 ○ → 見事7回無失点の好投 その後5試合もデータ期待値通りの活躍を継続👏 ○ 4勝1敗防御率1.69 17
投手AIデータ活用事例①:竹田祐 選手 ドラフト1位指名 春先結果が出ず 育成カルテMTG 後半戦1軍で大活躍 即戦力投手として 期待されて入団 だが、AIデータで見ると 球速低下以外はドラフト前の 評価レベルと全く変化なし 目標を「秋までに 平均球速147km/h」 にセット コーチ/トレーナー/バイ メカなど全員一丸となり 球速upに取り組む 8月目標到達 翌週緊急昇格し 以降6試合連続で活躍 我々はデータで道をはっきり示しただけで、頑張ったのは本人やコーチやスタッフだが 現在地と目標地点までの距離を明確にしてあげることで、全員が向かうべき方向がクリアになった 18
投手AIデータ活用事例②:石田裕太郎 選手 データではローテ級投手 実際はそこまでは活躍せず 登板機会も少なかった データの表現力足りな い部分から原因を究明 提案直後 完封 それを踏まえつつ 武器を最大限活かせる 新しい投球スタイルを提案 後半新スタイルが馴染ん できてローテに定着 結果がデータに追いつく ように (5/22) 19
投手AI定例の様子 原因究明& 新スタイル叩き台作成 コーチ陣とブラッシュアップ @投手AI定例 石田裕投手に提案 そのためにはこの球種をここ に投げきれてないのでは? (ファームでも丁度同じこと を取り組ませていたが) 投手コーチと共に 本人に新スタイルを提案 データの表現力足りない部分から 原因を究明 入来コーチ それを踏まえつつ 彼の武器を最大限活かせる 新しい投球スタイルの叩き台を AIチームが作成 スライダーの使い方こうした らもっと有効になりそう 相川コーチ(現監督) 直後の登板で見事9回1安打完封 シーズン後半新スタイルを 自分のものに進化させローテ定着 結果がデータに追いつくように シンカーの成分こうした方が 良さそうなので投げ方教えて 調整しておきます 小杉コーチ … 20
投手AIデータ活用事例③:宮城滝太 選手 ぱっと見のデータでは 1軍レベル未満 でもオープン戦抑えてる& コーチの感覚的にもいい投手 データの表現力足り ない部分から活躍の 理由を究明 それを踏まえ更なる活躍の ための修正点と投球スタイ ルをアドバイス リリーフ貢献度*1 チーム2位の活躍 宮城選手「あのアドバイス で頭がクリアになった」 *1:RP RAR [DELTA, Inc.] 21
データという武器の扱い方 ● データの裏側まで見る ○ データを表面的に読むだけで、無条件に信じるのはダメ ○ 表現力がまだ100%でない以上、データの特性を深く理解した上で扱うのが大事 ● データ or 感性の二者択一ではない ○ そもそも見解が一致する部分が大半 ○ 残りの見解が異なる部分をどう扱っていくかが肝 ● データと感性、両方を常に擦り合わせて進化させていく ○ データ側も感性を参考にアップデートしていく ○ 感性側もまたデータを参考にアップデートされていく 22
投手AI活用事例:その他の事例 投手A 投手B 投手C 去年より1段上の実力になっ ているのを観測 6月頃からコマンドが更によ くなったので配球面の updateを提案 簡単な修正で成績向上すると データで明確に見えていた シーズン途中から新スタイル を取得し成績向上 夏頃からの投球内容向上が データでも明確に説明できる ように その状態からの更なる課題を 発掘し、秋の重点項目に 他多数! 23
まとめ ● 2025年本格化させた投手AIプロダクト ○ 投手成績の大幅改善(セ5位→2位)に貢献 ● 具体的な活用事例を紹介 ○ 定量的な育成目標設定への活用 ○ データで見えているポテンシャルを引き出すための提案 ○ データ以上に結果を出している選手をさらに良くするための提案 ● データという武器の扱い方 ○ データの裏側まで見る ○ データと感性で互いに高め合っていく現場活用 24
川崎ブレイブサンダースにおけるAI活用 B1所属のプロバスケットボールチーム 川崎ブレイブサンダースでもAIを用いたチーム 強化プロジェクトが進行中 映像解析によって「トラッキングデータ」を作 成することでより詳細な分析を可能に 独自のスコアリングなどを用いて「編成」での 貢献をスコープにプロダクトを開発・運用中 ブース展示中 25
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