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June 12, 26
スライド概要
第125回日本皮膚科学会総会シンポジウム@京都国際会館にて使用したスライドです.
岐阜大学大学院医学系研究科脳神経内科学分野 教授
水痘・帯状疱疹ウイルス感染と認知症 下畑 享良 岐阜大学大学院医学系研究科 脳神経内科学分野
COI 開示 筆頭発表者:下畑 享良 岐阜大学大学院医学系研究科脳神経内科学分野・教授 本発表に関連し,明示すべきCOI関係にある企業などはありません.
ウイルス感染 と認知症 VZVと認知症 スコーピング レビュー 2025~2026 トピックス
端緒:COVID-19罹患はアルツハイマー病の発症リスクを上げる 6ヶ月 Lancet Neurol. 2024;23:562-563. (3つの研究をまとめたもの) 6~12ヶ月後の相対危険度は ADで3程度.入院と外来でほと んど変わらない. 12ヶ月 PDも外来患者で相対危険度が 2.5程度.
この結果から考えたこと • COVID-19に限らず,ウイルス感染が認知症を含む神経変性疾患の 危険因子である可能性があるのでは? • 神経に好んで感染する神経向性の強いウイルスが存在する.実際に COVID-19以外のウイルス感染と認知症の関係を検討した研究が 報告されるようになった.
神経向性(neurotropism)の強いウイルス ヒトヘルペスウイルス科 単純ヘルペスウイルス(HSV-1, HSV-2) エンテロウイルス(EV71, EV68など) 水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV) 狂犬病ウイルス Epstein-Barrウイルス(EBV) 日本脳炎ウイルス サイトメガロウイルス(CMV) 西ナイルウイルス インフルエンザウイルス Zika ウイルス SARS-CoV-2ウイルス ヒト免疫不全ウイルス(HIV) ポリオウイルス JCウイルス(JCV)
ヘルペスウイルス科ウイルスは生涯にわたり 宿主に潜伏感染し,神経系に感染する特徴を持つ 亜科 アルファ ベータ ガンマ ウイルス名(HHV) HSV-1 HSV-2 VZV サイトメガロ HHV-6 主な疾患 口唇ヘルペス 性器ヘルペス 水痘・帯状疱疹 先天性感染 突発性発疹 EBウイルス 伝染性単核球症 HHV-8 カポジ肉腫 神経関連疾患 ヘルペス脳炎 Mollaret髄膜炎 VZV脳炎,脳梗塞 CMV脳炎 HHV-6関連脳炎 CNSリンパ腫 多発性硬化症 免疫不全者で 神経合併症 重篤な感染であれば脳炎となる 軽症~中等症の場合でも神経炎症を来すのではないか?
英国UK Biobank(49万5896人)データは ウイルス感染症が認知症リスクになることを示した Nat Aging. 2024 Sep;4(9):1263-1278. ヒトヘルペス ウイルス科 上気道 下気道 • 感染症ごとに特定の部位に 脳体積の減少が生じる • その脳体積の減少は認知症 リスクと関連する
ウイルス感染はアルツハイマー病発症の リスク因子になりうる Rippee-Brooks MD, et al. Pathogens. 2024 ;13(3):240. ウイルス感染が 発症に関わるメカニズム
小括1 • 神経向性を有するウイルスの感染と認知症の関連が複数,報告されて いる. • VZVウイルスを含むヒトヘルペスウイルス科が認知症と関連するか, またその予防や治療が認知症発症の軽減に有効かが注目されている.
VZVと認知症 スコーピング レビュー
ではVZVウイルス感染は 認知症発症のリスク因子になるか?
スコーピング・レビューにて以下の臨床疑問を検討する • VZV感染は認知症発症のリスク因子か? • VZVワクチン接種は認知症の発症を抑制するか? • 抗ウイルス療法は認知症の発症を抑制するか? • VZV罹患による認知症発症のメカニズムは?
スコーピング・レビューのプロトコル(PRISMA-ScR) (“Varicella Zoster Virus Infection”[Mesh]) AND "Dementia"[Mesh] を条件に2024年6月にPubMed検索した. Inclusion criteria;5症例以上による症例集積研究以上のエビデンスのある研究. 病態機序に関わる基礎研究. 2名が独立して抄録による1次スクリーニング,本文による2次スクリーニング 独立した第三者が意見が一致しなかった論文をスクリーニングし, 該当・非該当を判断する. 2名独立して論文内容を精読し,検討結果を照らし合わせる
スコーピング・レビューの結果 PubMed検索結果 57編 1次スクリーニング (抄録) 除外論文:26編 該当論文:31編 2次スクリーニング (本文内容) 非一致論文3編の 第3者による判断 スコーピングレビュー 対象論文:21編 除外論文:10編 ・5症例以下の症例検討:2編 ・総説・レビュー:4編 ・認知症と帯状疱疹との関係への言及無し:3編 ・学会抄録:1編
21編の研究デザインの内訳 • システマティックレビュー/メタ解析:3編 • 前方視コホート研究:1編 • 後方視コホート研究:12編 • 症例対象研究:1編 • 横断研究:1編 • 基礎研究:3編 ワクチン接種や抗ウイルス療法に関して 無作為化比較試験は存在しない.
提示する内容 ① システマティックレビュー・メタ解析3編のまとめ ② システマティックレビュー・メタ解析以外の研究のまとめ ③ VZV罹患による認知症発症についての基礎研究
①システマティックレビュー/メタ解析 その1 VZV罹患と認知症発症には関連がある 対象論文:9件 VZV罹患は認知症発症のリスク因子である HR 1.11(95%CI 1.02-1.21) 抗ウイルス薬により発症リスク低下する HR 0.84(95%CI 0.71-0.99) Gao J, et al. Neurol Sci. 2024;45(1):27-36.
①システマティックレビュー/メタ解析 その2 VZVワクチンの接種歴は認知症発症率を下げる 対象論文:5件(6研究) Shah S, et al. Brain Behav. 2024;14(2):e3415.
①システマティックレビュー/メタ解析 その3 VZV罹患と認知症発症には関連がないとする報告 対象論文:9件 VZV罹患の有無と認知症発症の関係 HR 0.99(95%CI 0.92-1.08) 認知症患者のVZV罹患歴の関係 HR 1.04(95%CI 0.86-1.25) 認知症の定義をアルツハイマー型認知症や 検体バイオマーカー(Aβ)に限定しても 関連性は示されなかった. ただし眼部VZV罹患は認知症発症に関連する HR 6.26(95%CI 1.30-30.19) Elhalag RH, et al. Medicine (Baltimore). 2023;102(43):e34503.
小括2 • CQに関連したシステマティックレビュー・メタ解析を3編を検討した. • うち2つはVZV感染と認知症の関連を肯定する研究で,1つは否定する 研究であった. • 無作為化比較試験はなく,前方視試験も1つのみという結果で,検討に 限界があることが分かった.
提示する内容 ① システマティックレビュー・メタ解析3編のまとめ ② システマティックレビュー・メタ解析以外のまとめ ③ VZV罹患による認知症発症についての基礎研究
帯状疱疹による認知症発症を抑制する要因がある? 背景因子 帯状疱疹 罹患後の治療 ワクチン接種 罹患の有無 感染部位 抗ウイルス薬 使用率 認知症の発症 病院への通院による危険因子 (HT,DM,LDL-C等)の改善
VZV罹患による認知症発症率増加について 肯定する報告と否定する報告がある 文献 研究デザイン Tsai MC, et al. 2017 後方視コホート研究 対象年齢 40歳以上 実施国 台湾 抗ウイルス薬使用率 不明 結果 HR 2.97 (95% CI 1.90–4.67) Chen VC, et al. 2018 後方視コホート研究 50歳以上 台湾 不明 HR 1.11(95%CI 1.04-1.17) Choi HG, et al. 2021 後方視コホート研究 65歳以上 韓国 全例 HR 0.90(95%CI 0.84-0.97) Bae S, et al. 2021 後方視コホート研究 50歳以上 韓国 HR 1.12(95%CI 1.05-1.19) Shim Y, et al. 2022 後方視コホート研究 50歳以上 韓国 28873/34505 (83.7%) 不明 Shin E, et al. 2024 後方視コホート研究 45歳以上 韓国 全例 HR 1.41(95%CI 1.37-1.46) Lophatananon A, et 症例対象研究 al. 2021 70歳以上 英国 全例 OR 1.088(95%CI 0.978-1.211) Warren-Gash C, et al. 2022 後方視コホート研究 40歳以上 英国 110,997/177,144 (62.7%) HR 0.92(95%CI 0.89-0.95) Schmidt SAJ, et al. 2022 前向きコホート研究 40歳以上 デンマーク ほとんどの全例 1年目以内 HR 0.98 (95% CI 0.92–1.04) 1年後以降 HR 0.93(95%CI 0.90-0.95) Weinmann S, et al. 2024 後方視コホート研究 50歳以上 アメリカ 不明 HR 0.99(95%CI 0.93-1.05) Ukraintseva S, et al. 後方視コホート研究 2024 75歳以上 アメリカ 不明 HR 1.23(95%CI 1.06–1.41) HR 1.09(95%CI 1.07-1.11)
VZV罹患による認知症発症率増加について 肯定する報告と否定する報告がある 文献 研究デザイン Tsai MC, et al. 2017 後方視コホート研究 対象年齢 40歳以上 実施国 台湾 抗ウイルス薬使用率 不明 結果 HR 2.97 (95% CI 1.90–4.67) Chen VC, et al. 2018 後方視コホート研究 50歳以上 台湾 不明 HR 1.11(95%CI 1.04-1.17) Choi HG, et al. 2021 後方視コホート研究 65歳以上 韓国 全例 HR 0.90(95%CI 0.84-0.97) Bae S, et al. 2021 後方視コホート研究 50歳以上 韓国 HR 1.12(95%CI 1.05-1.19) Shim Y, et al. 2022 後方視コホート研究 50歳以上 韓国 28873/34505 (83.7%) 不明 Shin E, et al. 2024 後方視コホート研究 45歳以上 韓国 全例 HR 1.41(95%CI 1.37-1.46) Lophatananon A, et 症例対象研究 al. 2021 70歳以上 英国 全例 OR 1.088(95%CI 0.978-1.211) Warren-Gash C, et al. 2022 後方視コホート研究 40歳以上 英国 110,997/177,144 (62.7%) HR 0.92(95%CI 0.89-0.95) Schmidt SAJ, et al. 2022 前向きコホート研究 40歳以上 デンマーク ほとんどの全例 1年目以内 HR 0.98 (95% CI 0.92–1.04) 1年後以降 HR 0.93(95%CI 0.90-0.95) Weinmann S, et al. 2024 後方視コホート研究 50歳以上 アメリカ 不明 HR 0.99(95%CI 0.93-1.05) Ukraintseva S, et al. 後方視コホート研究 2024 75歳以上 アメリカ 不明 HR 1.23(95%CI 1.06–1.41) 台湾 韓国 HR 1.09(95%CI 1.07-1.11) 英国 デンマーク アメリカ
各国のVZVワクチンの推奨が影響している可能性がある ワクチン接種の公費補助がある国ではワクチン接種率がおそらく高い ワクチン接種率 国 ワクチン承認年度 接種の公費補助 台湾 2008年 × 3.1% 韓国 2009年 VZV罹患で 認知症増加 約70% 英国 2010年 〇 デンマーク 2014年 アメリカ 2006年 VZV罹患でも 認知症増加 しにくい 日本 2016年 × 〇 〇 各自治体(今後〇) Yang TU, et al. Hum Vaccin Immunother. 2015;11(3):719-26. Andrews N, et al. BMJ Open. 2020 Jul 7;10(7):e037458. 帯状疱疹ワクチンファクトシート 第2版 令和6(2024)年6月20日改訂 国立感染症研究所
VZVワクチン接種は認知症発症率を低下する 文献 研究デザイン Scherrer JF, 後方視コホート研究 et al. 2021 (VHA, MarketScan) 対象年齢 65歳以上 Lophatananon 症例対象研究 A, et al. 2021 70歳以上 Lehrer S, et al. 2021 参加人数 (ワクチン接種者/非接種者) VHA:27,419/108,597 MarketScan:24,612/148,178 ワクチン種類 Proquad, Varivax, Zostavax, Shingrix 結果 接種者の人数は明記無し 全体228,223 Zostavax 非認知症患者でワクチン接種者は有意に多い OR:0.808 (95% CI 0.657-0.993) 記載無 99/176 Zostavax (主), Shingrix ワクチン接種歴がある患者では認知機能障害患者 は有意に少なかった。(p=0.03) Harris K, et al. 後方視コホート研究 2023 65歳以上 212,417/1,439,574 Zostavax, Shingrix Lophatananon 後方視コホート研究 A, et al. 2023 70歳以上 854,745/8.8 万人 Varicella, Varilrix, Varivax, Singles, Zostavax Shingrix使用者は無 し ワクチンの接種歴は認知症発症リスクを有意に下 げる HR 0.7520 (95% CI 0.7378–0.7666) ワクチンの接種は認知症発症率を有意に下げる HR 0.78(95% CI 0.77-0.79) Ukraintseva S, 後方視コホート研究 et al. 2024 75歳以上 接種人数の明記無し 認知症, 死亡診断患者17,720 Zostavaxのみ 横断研究 ワクチン接種歴は認知症発症率を有意に下げる VHA:HR 0.69 (95% CI 0.67-0.72) MarketScan:HR 0.65(95% CI 0.57-0.74) 65歳-75歳の間のワクチン接種歴と認知症の発症 率は負の相関がある HR 0.79(95% CI 0.68–0.93)
帯状疱疹出現時の抗ウイルス療法で 発症率は低下とする報告が多い 抗ウイルス薬使用者 対象年齢 数/感染者 国 文献 研究デザイン Chen VC, et al. 後方視コホート研究 50歳以上 2,131/39,205 2018 Bae S, et al. 2020 後方視コホート研究 50歳以上 28,873/34,505 台湾 結果 抗ウイルス療法の処方は認知症発症 率の低下と関連していた. HR 0.55 (95%CI 0.40-0.77) 韓国 抗ウイルス薬の処方は認知症発症率 の低下と関連していた HR 0.79(95%CI 0.69-0.90) Warren-Gash 後方視コホート研究 40歳以上 110,997/177,144 C, et al. 2022 (2次解析) 英国 認知症リスクは抗ウイルス薬の処方の 有無で変化しなかった p=0.774 Weinmann S, et al. 2024 米国 抗ウイルス療法は認知症のリスクを下 げる HR 0.79(95%CI 0.70-0.90) 後方視コホート研究 50歳以上 21,493/25,332 各国のワクチン接種状況も考慮する必要がある
眼部・中枢神経,複雑性感染は認知症発症リスクを高める 脳神経と中枢神経感染は罹患1年以内の 認知症リスクが高い 眼部,中枢神経,複雑感染者は 単純感染者よりも認知症リスクが高い Schmidt SAJ, et al. Neurology. 2022;99(7):e660-e668. 眼部帯状疱疹の認知症リスク Tsai MC, et al. 2017 韓国 HR 2.97 (95% CI: 1.90–4.67) Weinmann S, et al.2024 アメリカ HR 0.99 (95%CI 0.93-1.05) Shin E, et al. Alzheimers Res Ther. 2024;16(1):57.
眼部帯状疱疹=脳に近い三叉神経節にVZVウイルス潜伏 ハッチンソン徴候(下畑享良 神経症候学note;医学書院より)
小括3 • ワクチンや抗ウイルス薬は認知症リスクを下げる可能性がある. • VZV罹患による認知症発症のリスクは一貫していない.これには 事前のワクチン接種や抗ウイルス薬治療が影響する可能性がある. • 眼部,中枢神経感染は認知症リスクを高める. • 日本人を対象とした研究はない. • 前向きコホート研究や無作為化比較試験が必要である.
提示する内容 ① システマティックレビュー・メタ解析3編のまとめ ② システマティックレビュー・メタ解析以外のまとめ ③ VZV罹患による認知症発症についての基礎研究
HSV/VZV感染者の脳脊髄液ではアルツハイマー病様の Aβ, p-tauが変化が起き,神経炎症マーカーが上昇する Aβ40 p=0.0139 sTREM2 p-tau p=0.0007 ↑ ↓ ↓ p=0.0030 ミクログリア活性化 ↑ GFAP Aβ42 ↓ p=0.0262 Aβ42/40 p=0.0380 p=0.01836 ↑ Shinomoto M, et al. Transl Neurodegener. 2021 Jan 4;10(1):2.
VZVの罹患によるHSV-1再活性化が 認知症発症の原因となる(in vitro) • ヒト誘導神経幹細胞(hiNSC)にVZV単独で感染させた場合,炎症性サイトカインは 上昇するが, Aβ,p-tauの蓄積はなし. • しかしHSV-1感染後にバラシクロビルでウイルスを静止化させた細胞に, VZVを感染させると HSV-1が再活性化し,Aβ,p-tauの蓄積が確認された. Cairns DM et al. J Alzheimers Dis. 2022;88:1189-1200.
水痘にかかりやすい遺伝的要因を持つ人は 認知症のリスクが高まる 水痘感染者に関連する特定の7つの 一塩基多型(SNPs)が認知症リスクを 上昇させることを示した全ゲノム解析 研究が報告された. Zhou S, et al. J Med Virol. 2023 ;95:e28420.
小括4 森泰子,下畑享良.Annual Review神経2026 ミクログリアの活性化による神経炎症 HSV-1 再活性化 AD様 異常タンパク 血管障害
2025~2026 トピックス 1.ワクチンに関するさらなるエビデンス 2.抗ウイルス薬の早期ADへの効果
帯状疱疹 生ワクチンで認知症診断が 2.0%ポイント低下する • 生年月日に基づくワクチン接種資格(生ワ クチン;Zostavax)の有無を利用した「自然 実験研究」. • 1945年と1946年生まれという,年齢や生活 背景がほぼ同じ人たちを,制度上ワクチン を受けられるかどうかという違いだけで比 較し,交絡因子の影響を受けにくくした. • オンタリオ州の約23万人を対象とした解析 の結果,ワクチン接種群では,約5.5年の 追跡期間において,認知症の新規診断が 約2.0%ポイント低下した. Pomirchy et al. Lancet Neurol. 2026 Feb;25(2):170-180.
自然実験研究では 絶対リスクが1.8~3.5ポイント有意に減少する 研究 年 デザイン 対象者数 ワクチン種類 追跡期間 認知症リスク減少効果 Eyting et al. (Nature) 2025 回帰不連続デザイン (ウェールズ) 大規模EHR 生ワクチン 7年 絶対リスク3.5ポイント減少 (相対リスク20%減少) Pomirchy et al. 2025 (JAMA) 回帰不連続デザイン (オーストラリア) 101,219名 生ワクチン 7.4年 絶対リスク1.8ポイント減少 Pomirchy et al. 2026 (Lancet Neurol) 回帰不連続デザイン (カナダ) 232,124名 生ワクチン 5.5年 絶対リスク2.0ポイント減少 • ウェールズ,オーストラリア,カナダという異なる地域における自然実験研究で, いずれも生ワクチンの認知症減少効果が確認されている.
組み換えワクチンによる大規模コホート研究で 認知症発症リスクが約51%低下する • 米国カリフォルニア州の組換え帯状疱疹ワク チン(RZV;Shingrix)の効果を検討した大規模 コホート研究.対象は65歳以上の約33万人. • 結果として,RZVを2回接種した群では,認知 症発症リスクが約51%低下し,ハザード比は 0.49(95%信頼区間0.46–0.51)と強い関連が 示された. • 累積発症率が非接種群10.64%に対し,接種 群5.67%と明確に低下した. Rayens et al. Nat Commun. 2026 Feb 9;17(1):2056.
大規模コホート研究では 接種によりハザード比で11〜51%低下する 研究 年 Tang et al. (Vaccine) 2025 後ろ向きコホート 4,502,678名 組換えワクチン 最大6年 (RZV) 2回接種:HR 0.68(32%減少) 1回接種:HR 0.89(11%減少) 2025 後ろ向きコホート 1億人超 生ワクチン 複数年 組換えワクチン 組換えワクチン複数回接種で 最大の効果 生ワクチンは経時的に減弱 組換えワクチン 最大4.5年 (RZV) 2回接種:aHR 0.49(51%減少) Tdap比較:aHR 0.73(27%減少) Polisky et al. (Nature Med) デザイン Rayens et al. 2026 マッチドコホート (Nature Commun) 対象者数 329,000名 ワクチン種類 追跡期間 認知症リスク減少効果 • 組換えワクチン(RZV)の2回接種が最も強い効果を示す(32~51%減少). • 組換えワクチンの効果は年齢・人種間で一貫しており,女性でより強い傾向がある. • 生ワクチンの効果は時間とともに減弱する可能性がある(Polisky et al. 2025).
抗ウイルス薬バラシクロビルは アルツハイマー病(発症例)に有効か? 米国で行われた多施設共同第2相二重盲検プラセボ対照試験 Devanand DP et al. JAMA. 2026 Feb 10;335(6):511-522.
認知機能の低下は バラシクロビル群の方がむしろ強い! Devanand DP et al. JAMA. 2026 Feb 10;335(6):511-522. • 高用量かつ長期のバラシクロビル投与が,軽微 な神経毒性を通じて認知機能悪化として検出さ れた可能性も否定できない. • 抗ウイルス薬は発症後の治療ではなく,発症前 の段階での介入が意味を持つ可能性がある.
感染予防だけでなく,アジュバントが 認知症リスク低下に関与している!? 有意差あり Flu Taquet M, et al. npj Vaccines. 2025;10:130. 有意差あり 有意差なし 帯状疱疹 Flu RSV 帯状疱疹 RSV • 呼吸器感染予防のRSVワクチンでも認知症を予防できる.しかしインフルエンザワクチンには効果がない. • RSVワクチンと帯状疱疹ワクチンに共通し,インフルエンザワクチンに含まれていないAS01アジュバント( ミクログ リアや補体系を介してAβ除去に関わるIFN-γを活性化する)が効果をもたらしている?
小括5 • 自然実験,大規模観察研究とも,「帯状疱疹ワクチンが認知症リスクを 低下させる」という結論で一致していた. • とくに組換えワクチン2回接種による32-51%のリスク減少効果は臨床的に 非常に重要であり,認知症の負担を軽減するための低コスト・高リターンの 公衆衛生介入として位置づけられる. • 抗ウイルス薬に対する介入は認知症の発症前の段階で行う必要がある.
総括 • VZVは皮膚だけで完結するウイルスではない.帯状疱疹は「皮膚に現れた神経 感染症」と捉える視点が重要である. • 高齢者,免疫抑制状態,反復例では,皮疹や疼痛のみならず,頭痛,髄膜刺激 徴候,片麻痺,構音障害,ふらつきなどの神経症候にも注意する必要がある. これらを認める場合には,脳神経内科との速やかな連携が望ましい. • ワクチン接種による認知症リスク軽減効果が期待されるが,さらなるエビデンス の蓄積が必要である.